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「Skyrim」の新作ボドゲなど,新作発表も続々。過去最多の出展者数で沸いた「ゲームマーケット2023秋」全体レポート
会場の配置は前回から引き続き,西館のアトリウムを活用した形式となった。公式X(旧Twitter)で行われた発表によると,来場者数は2023春の2万2000人を上回る2万5000人とのことで,来場者数は順調に増えているようだ。
「ゲームマーケット2023春」レポート。約2万2000人が来場し,コロナ禍前の活気を取り戻した会場には,「FFVII」ボドゲなどの新情報も
国内最大のアナログゲームイベント「ゲームマーケット2023春」が,2023年5月13日と14日に東京ビッグサイトで開催された。アークライトやホビージャパン,オインクゲームズなど多くのメーカーがブースを構えていたので,その様子をお届けしよう。
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また,出展数はコロナ禍以前と比較しても過去最多数となっている。その影響からか,企業ブースのサイズはやや縮小されていた印象を受けた。なお,2024年4月27日と28日に開催される次回(2024春)は会場を東館1〜3ホールに移し,床面積はより大きくなる予定とのことである。
こうした変化は,ゲームマーケット運営事務局の体制が前回から大きく変わった結果発生したものでもあるという。本稿の後半では,3代目事務局長を務める草野彰宏氏に新体制の現状や,今後のゲームマーケットについて,インタビューで聞いたので,気になる人は最後まで読み進めてほしい。
「ゲームマーケット」公式サイト
「Skyrim」ボードゲームの日本語版が2024年発売。カナイセイジ氏の新作情報も明らかに
まずは現地で確認できた新情報から紹介していこう。中でも注目は,ホビージャパンブースに掲載された告知ポスターだ。
ロゴと発売時期だけがデザインされたシンプルなポスターだが,4Gamer読者のゲームファンなら「Skyrimだ!」と一瞬で理解できることだろう。現地では詳細が不明だったが,後日に実施された公式生放送(時間指定リンク)の中で,本作は「The Elder Scrolls V: Skyrim The Adventure Game」の日本語版であることが明かされている。
クラウドファンディングで約125万ユーロ(現在のレートで約1億9600万円)もの支援を受け,2022年にModiphius Entertainmentから発売された本作は,1〜4人プレイに対応した協力型のボードゲームだ。パッケージには2つのキャンペーンが収録され,実に27時間以上を楽しめる重厚な内容になるという。
ボードゲーム版「The Elder Scrolls V: Skyrim The Adventure Game」がクラウドファンディングに成功
Modiphius Entertainmentは,ボードゲーム「The Elder Scrolls V: Skyrim The Adventure Game」のクラウドファンディングが,開始約30分で目標金額に到達したと発表した。インペリアルやノルドなど6つの勢力を使い,最大4人のプレイヤーがキャンペーンを行うという内容で,拡張パックの販売も予定されている。
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そのほか,約2年前から発表されていた言語創造ボードゲーム「エスペライゼーション」の制作状況を紹介するポスターや,お馴染みの“新作発表パズル”も用意されていた。残念ながら掲載時点ではキャンペーンには参加できないが,これから解きたい人のために答え合わせは写真のキャプションにリンクとして掲載しておく。
ホビージャパンの向かいにあるスクウェア・エニックスのブースでは,「ラブレター」などで知られるゲームデザイナーのカナイセイジ氏とのコラボ企画が発表されていた。
すべてのイラストが伊藤龍馬氏の描きおろしとのことで,ポスターには「FINAL FANTASY XII」に登場したパンネロやモンブランの姿を確認できる。詳細はまだ明かされていないので,今後の動向が気になる人は,スクウェア・エニックスやホビージャパンの発表に注目しておこう。
企業ブースのサイズは全体的にやや縮小されていたものの,そのぶんコンセプトや外観をしっかりと作り込んだブースが多かったように感じられる。
すごろくやの新作「キウィズの王様」や,ittenが手掛ける人気作のリニューアル版「トーキョーハイウェイ レインボーシティ」のブースはいずれも近いコンセプトを持ち,コンポーネントの“巨大版”がドカンと展示されていた。
巨大コンポーネントをPOPなどと組み合わせることで,迫力ある展示とルール説明をこなすのは,ルール理解がネックになるボドゲの展示としてなかなかうまいやり方だ。
特設ブースもさまざまな形で用意されていたが,とくに面白かったのが「外箱なし」「販売数100個まで」「持ち込み作品は1種類」「ポスター類は机の前面に1枚まで」という条件でゲームを販売する小型ブースが集った「チャック横丁」だ。
上記のようなレギュレーションであるため,パッケージイラストやポスターによる集客が難しい出展プランだが,そのぶん出展者が独自の工夫を凝らした作品が並んでいた。
たとえば,日本玉碁協会の「玉碁」は正12面体を用いた“3次元囲碁”という非常に尖ったゲームなのだが,分解したパーツをチャック袋に入れたものが販売されていた。こういった純粋なアブストラクト系のゲームはアートで勝負するのが難しいのだが,チャック横丁では存在しているだけで十分に目立つ存在となっていた。
そのほかにも,レーザーカッターで切り取ったコマを用いたゲームや,さまざまな日用品が詰め込まれた化粧ポーチを使った謎解きゲームなど,独特なコンポーネントを持つゲームが多数展開されていたのが印象的だった。
パッケージやポスターではなく,ゲームそれ自体のコンセプトなどが“ウリ”になる場所という意味で,チャック横丁は旧来のゲームマーケットの雰囲気を残した貴重な場所だと感じられた。本コーナーは次回のゲームマーケットでも用意されるとのことなので,興味を持った人はぜひ足を運んでみてほしい。
マタタビの売人と取引をする「路地裏ニャンニャのマタタビおかいものゲーム」。チャック袋のパッケージを,アンダーグラウンドなテーマを引き立てるパーツとして用いる発想に驚かされた(紹介リンク) |
地下鉄の駅名を使った神経衰弱「乗換衰弱」。各駅名は2枚ずつ含まれているが,カードの裏面には駅に通っている地下鉄の路線カラーが表示されている(紹介リンク) |
体長,歯の本数,足の数といったステータスを持つ動物カードを使ったゴー・アウト系ゲーム「カメレオンチェンジ」。ルールカードによって参照するステータスがどんどん変化するのが特徴だ(紹介リンク) |
口紅やコットンといったアイテムから持ち主の情報を探る推理ゲーム「ある化粧ポーチからの推測」。普通であれば絶対にボードゲームでは使わないコンポーネントが山盛り(紹介リンク) |
レーザーカッターで切り出したというコマが可愛らしい,連想系のお絵描きゲーム「ユメクイ」。パッケージには大きめのチャックケースが用いられ,このまま持ち運びやすい形状になっている(紹介リンク) |
ストローを使ってピンポン玉に息を吹きかけて動かす「ピンポンを吹いて」。敵の陣地に玉をねじ込むパーティーゲームだ。制作できる数に限りがあるとのことで,販売可能数が限られているチャック横丁はちょうどいい場所だったのかも(紹介リンク) |
新体制でゲムマはどう変わった?「行くと楽しいことが起こる」と思えるイベントを目指して
記事の冒頭で予告した通り,ここからは3代目事務局長を務める草野彰宏氏へのインタビューをお届けする。運営体制の変化に伴って行われている施策や,ゲームマーケットの今後などを語ってもらった。
4Gamer:
お忙しいところ,お時間をいただきありがとうございます。事務局の運営体制が代替わりし,今回が2度目の開催になりました。改めまして,現体制が目指している方向性について,うかがわせてください。
草野氏:
事務局長に就任するにあたり,先代の刈谷圭司さんはもちろん,ゲームマーケットの創始者である草場 純さんにもご挨拶させていただき,理念や方針について繰り返し話し合う機会をいただきました。各自の考え方はあれど,先達のお2人からは「のびのびと好きにやってくれ」という言葉をいただいています。
大きな裁量をいただきましたので,今後は新たなチームでもっとお客様の声を受け止め,より出展しやすい,より来場しやすいイベントにしようと心がけているところです。コロナ禍以前と比較しても出展者数は最多となり,一定のご評価はいただけたものと認識しております。
4Gamer:
具体的な変化としては,どんなものがありますか。
草野氏:
ステージイベントの復活や,現地だけで遊べるゲーム「デュエルボーイ」のオフィシャル化など,事務局側からの企画を意識的に増やしたことでしょうか。これからは,「ゲームマーケットに行くと楽しいことが起こる」と思っていただけるようなコンテンツを提供できれば,と思っています。
4Gamer:
出展者向けの施策ではいかがですか。パッと分かる部分では,サークル配置の変化が目に付きましたが。
草野氏:
ブースの配置では,お預かりしてすぐに切り替えた部分です。以前は運営の円滑化を主目的として,一般ブースと企業ブースを明確に分けていました。その形式であれば,レイアウトを作るのも容易ですし,来場者さんも目的に合わせて動ける……と,実際メリットは多いのですが。
4Gamer:
そうなると,企業ブースが目当ての人は一般ブースに足を運びませんね。
草野氏:
ですので,前回からは企業ブースを壁にまんべんなく配置し,新しいクリエイターさんの作品に目を向けやすくなる環境作りを進めました。ただ,そのぶん運営は大変になり,変えた姿が完璧というわけではないので,今後もフィードバックを受け止めつつ調整を重ねていく所存です。
4Gamer:
アトリウムを使うことで,移動距離が大幅に削減されたのはうれしい変更でした。
草野氏:
そこは東京ビッグサイトさんともご相談させていただき,実現した部分です。使う以上は“単なる通路”として使うのはもったいないので,そこから「アトリウムで誰が何をやるの?」という話を詰めていきました。一般にしても企業にしても特殊な感じが出てしまうので,これは非常に悩みました。
4Gamer:
現状ではアークライトブース,および本部やイベント用ステージなど,運営に関連するものが置かれています。
草野氏:
12時までに整列して入場される熱量の高い方はホールに直接来場されるので,主にお客様がいらっしゃるのはホール内なんですよね。なので,ホールには企業・一般を問わず可能な限り多くのブースを配置したい。となると,運営機能とアークライトを“外”に出すのがスマートな形かなと考えました。ブースとしても物販だけでなく,よりイベント全体をエンタメとして楽しめるような施策を,多く提供できればと思っています。
4Gamer:
ゲームマーケットといえば,試遊卓の存在が象徴的だと思います。2022年秋に復活しましたが,感触はいかがでしょうか。
草野氏:
今回も前回と同様の形式でご用意しています。従前のように試遊用のテーブルをドンと置く出展スタイルを提供できれば良いのですが,それにはもうふた回りくらいは広い会場を確保する必要があるんです。無理に卓を拡大すると,その結果として落選者を増やしてしまうことになります。
4Gamer:
コロナ禍以降に出展者が大幅に増えた結果,感染症対策とは関係のない部分で“以前どおりの試遊卓”を作るのが難しくなった,ということですね。
草野氏:
おっしゃるとおりです。1回試遊卓をなくした結果,そのぶん出展者数が増えたというのが実態でした。つまり試遊卓が一切なくとも,枠いっぱいまで出展にご応募いただけるのが,現在のゲームマーケットなんですね。より床面積が広い場所を借りられるようになれば,かつての大きな試遊卓を実現できる可能性もあるのかなと。
4Gamer:
しかし,ビッグサイトより広い場所となると……。
草野氏:
そうなんです。次回(ゲームマーケット2024春)では東1〜3ホールを使って開催する予定です。面積的には今回の1.4倍くらいになるのですが,それでも旧来の試遊卓を実現するには足りないんですよ。
4Gamer:
東4〜6ホールも使う必要が出てきますね。
草野氏:
まさにそうで,東1〜6ホールすべてをいっぺんに借りられるような状態になれば,可能性はあるかもしれません。ただ,出展者様や来場者様がそこまで大きな会場を求めているのか否かは別軸の話です。出展費用はどうしても上がってしまいますから,それほど会場の選択肢がないなかで,慎重に考える必要があります。
また以前の形式で受け取ったフィードバックの一部には,試遊卓と売場に複数の人員が割かれる関係で,個人での出展が難しいという声もありました。現状はブースの横幅を広げて対応することで,1人でもご出展いただける状況になっているかと思います。
4Gamer:
今回のゲームマーケットにおけるトレンドはいかがでしょうか。以前と比較すると,マーダーミステリー関連のブースがやや減ったような印象ですが。
草野氏:
マーダーミステリーブースが縮小したので,そう見えるかもしれません。今回は事務局側から場所を提供し,Studio OZONさんに運営をお願いしましたが,会場の都合で以前のような大きなスペースは用意できませんでした。
4Gamer:
マーダーミステリーブースに限らず,今回は企業ブースの大きさが均一になっていましたね。これは,やはり出展者を増やすための施策ですか?
草野氏:
今回は西1〜2ホールという小さな床スペースでの開催だったので,それを踏まえての調整ですね。前回は非常に多くの落選者を出してしまい,その反省として,今回はより巨大なエリア出展プランを無くしています。結果,より多くの出展が叶いましたが,それでも落選者は出てしまっているので,まだまだ改善の余地はあると考えています。
4Gamer:
今回からの試みとしては,「チャック横丁」の新設があります。個人的にも楽しませてもらいましたが,どういった発想から生まれた企画でしょうか。
草野氏:
出展ブース数が増え,コロナ禍で試遊卓がない時代を経て,昨今ではビジュアルを重視した作品が増えてきました。もちろん,イラストやグラフィックスデザインもゲームを構成する重要な要素ではあります。しかし,ボードゲームの評価における“アイデア”や“作り込み”の比重が,相対的に下がっているように感じられるのも事実です。
また美麗なビジュアルを描く,もしくは外注しないと参入できないような風潮も,我々としては望んでいません。もっと気軽にアイデアを試せる,出展に踏みきれる,そんな施策が必要と考えていました。そこで,ゲームデザインそれ自体をフィーチャーした出典形態としてトライさせていただいたのがチャック横丁です。
4Gamer:
ゲームデザインに注目してもらうのが目的だと。
草野氏:
そうですね。凝ったパッケージなどを作れないレギュレーションで,ポスターの掲出にも制限があるんですが,その分,ゲームそのものの魅力で勝負していただけるのではないかと。出展料も手頃ですし,今回のフィードバックを生かしつつ続けていきたいと思っているので,気軽に出展してもらえたらうれしいです。
4Gamer:
レギュレーション内で可能な限りの試行錯誤をされていて,なんだか,昔のゲームマーケットに近い感覚を味わえた気がします。
草野氏:
浅草・台東館時代のゲームマーケットに出展していた者が社内にもいまして,まさにそうした着想から生まれた企画という側面はあります。とはいえ,あくまで今あるゲームのための企画なので,単なる思い出の再現にはしたくない想いもあります。
4Gamer:
ステージイベントでは,前回から予告されていたSPIEL Essen(ドイツで開催される世界最大級のボードゲームイベント。以下,SPIEL)とのコラボが正式発表されました。この詳細を聞いてもよいでしょうか。
草野氏:
コラボが具体的な形になるのは,2024年10月のSPIELです。その内容は,コンセプトである「SPIEL会場でゲームマーケットを再現する」を目指し,両者で話し合っているところです。次回ゲームマーケットでは「海外挑戦プラン」を用意していまして,ご応募いただいた作品はSPIELでも展示する手筈です。奮って参加していただきたいです。
4Gamer:
なるほど。国産タイトルの海外展開を主導しているヤポンブランドの取り組みに近いように感じましたが,それとはまた別口なのでしょうか。
草野氏:
ヤポンブランドさんにも声をお掛けして,「できればご一緒しませんか?」と相談しているところです。ヤポンブランドさんは長期にわたって活動されているので,初挑戦である我々のプランと噛み合うかは,まだ分かりません。ただ仮に方向性が違ったとしても,相互に協力しつつ進めるつもりです。
4Gamer:
それは安心しました。
草野氏:
誤解を生まないためにも,協力体制にあることも合わせて発表すべきだったかもしれません。話し合いは発表以前から進めているので,とくに軋轢などはありません。
4Gamer:
分かりました。期待しています。最後に,毎回のゲームマーケットを楽しみにしている人に向けて,何かメッセージをいただけますか。
草野氏:
皆さんにお楽しみいただくため,さまざまな企画を用意して開催しているゲームマーケットですが,より洗練させるためには皆さんのフィードバックがとても重要です。それを受けて,より多くの方に満足いただけるイベントに発展させていきますので,ぜひご意見をお寄せいただけたらうれしいですね。
4Gamer:
本日はありがとうございました。
「ゲームマーケット」公式サイト
- 関連タイトル:
スカイリム:アドベンチャーボードゲーム
- 関連タイトル:
エスペライゼーション
- 関連タイトル:
TOKYO HIGHWAY
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