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本日発売のSwitch向けADV「MazM: オペラ座の怪人」プレイレポート。オペラ座に燃え上がる愛と恐怖を描く,古典小説のゲーム化作品
物語の舞台となるのは19世紀末のフランス。1909年に発表された小説「オペラ座の怪人」をベースに,華やかなオペラ座に謎の怪人が出没する奇怪な事件と,哀しくも美しいラブロマンスが描かれる。
ニンテンドーeショップ「MazM: オペラ座の怪人」製品ページ
古典作品をアドベンチャーゲーム化するMazMシリーズ
さまざまな古典作品をアドベンチャーゲームとして楽しむ「MazM(メズム)」シリーズの最新作でもある本作の基本的な筋書きは,原作をなぞったものとなる。原作が著者による擬似ノンフィクションとして書かれた部分が,1910年を生きる名もなき探偵が過去の事件を振り返る体裁に置き換えられているなど,再解釈された部分はあるが,原作を既読であったり,あるいは演劇などで原作に触れたりした人にも受け入れやすいだろう。そうした人には今さらかもしれないが,序盤の物語をざっと紹介してみたい。
ときは19世紀末,パリのオペラ座には奇妙な噂が飛び交っていた。謎の怪人が人知れず跋扈し,関わった者は命を落とすのだという。実際に舞台監督が謎の死を遂げてからは,歌手やスタッフ達は震え上がり,「次は自分の番だ!」と恐怖に怯える始末だ。
そんな状況にあっても,オペラ座の支配人が交代する歓送式の舞台が上演される。若き歌手クリスティーヌ・ダーエは,そんな舞台で人々の注目を集めることに。うだつがあがらない脇役歌手だったはずの彼女が,この舞台で神がかった歌声を披露したのだ。彼女の幼馴染みであるラウル・シャニュイ子爵はこれを目撃し,かねてからの恋心を燃え上がらせる。熱烈に求愛するラウルに対し,しかしクリスティーヌは奇妙な態度をとる。好意があるようなそぶりを見せつつも,「自分には近づかないように」と警告するなど,その行動が一貫しないのだ。
実は,クリスティーヌにはある秘密があった。姿を現さずに彼女を見守る謎の存在「音楽の天使」から,「類い希なる実力を授ける代わりに,世俗の物事に関わることがないように」と厳命されていた。クリスティーヌもラウルを愛しているのだが,音楽の天使との間で板挟みになって苦しんでいたのだ。
そんな問題を抱えつつも,クリスティーヌとラウルは急接近してしまい,音楽の天使は怒り狂う。呼応するように怪人の活動も活発化し,オペラ座では次々と怪事件が巻き起こるのだ。果たして,怪人の正体とは。クリスティーヌとラウルの愛はどのような結末を迎えるのか。そして,華やかなオペラ座に隠された,哀しくも美しいもう一つの愛とは……?
ネタバレにならない範囲で序盤のストーリーを紹介したが,これでも物語の半分にも満たない。ボリュームは充分なので,じっくりと進めて行くといいだろう。
物語の面白さを最大限に楽しむためのアドベンチャー要素
アドベンチャーゲームとしての本作は,さまざまな登場人物を操作してマップを移動し,怪しい場所を調べたり,会話をしたりして進めていくオーソドックスなスタイルだ。難度は高くないので,行き詰まることはまずないだろう。物語を楽しむためのエッセンスとして,こうしたマップ移動や調査の要素が取り入れられているという印象だ。
加えて,ヒント機能も充実している。次に何をすべきかの直接的な指示が受けられるのだが,この使用回数はマップ上にいる猫を捕まえることで増やせるのだ。とくにややこしい場所に隠れているわけでもなく,道や廊下の真ん中に猫は堂々と寝そべっているので,どんどん集めていくといい。
プレイ中にはアクセントとしてミニゲームも登場するが,「タイミング良くボタンを押す」「決められた方向にアナログスティックを倒す」などシンプルかつ低難度なものなので,アクションが苦手な人でも問題なく楽しめるはずだ。
登場人物は多いが,詳細な人物事典があるので心配は無用だ。彼らの人となりはもちろんのこと,お互いにどのような関係にあるかも確認できる。関係の変化も時系列順に綴られていくため,物語を振り返るの役立つだろう。
また当時の地理や歴史,文化などを解説するヘルプが充実しており,「オペラ座にある無数の照明はガス灯でまかなわれており,火事が洒落にならなかったので消防係が待機していた」「オペラ座のボックス席は舞台が見やすい場所ではないが,ステータスや社交界の偵察のために使われていた」なんてウラ話が読めるのも楽しい。
そして本作をプレイして再確認したのが,古典である「オペラ座の怪人」が持つ物語としての面白さだ。
オペラ座は,歌手からスタッフまで,さまざまな人々が入り乱れる小社会だ。そして現実の世界と劇で描かれる,虚構世界の狭間にある不思議な空間でもある。そんな場所で,まるで演劇のように奇妙な事件が起こる……という舞台設定だけでも興味を惹かれるのに,演出が大がかりなのがまた面白い。
スタッフが変死すると,オペラ座に存在しないはずのパイプオルガンの音で葬送曲が鳴り響く。華やかなパーティには仮面と黒衣の怪人が現れ,人々を恐怖のどん底に叩き込むといった具合で,読者を飽きさせない。ここにラブロマンスが絡むのだから,面白くないわけがない。原作小説は日刊新聞に連載されていたそうだが,当時の読者達はドキドキしながら続きを楽しみにしたのではないだろうか。舞台や映画,漫画などで再解釈され,繰り返し語り継がれるのもうなずける面白さだ。
難点があるとすれば,普段ゲームを遊ばない人でも楽しめる作りの弊害として,ゲーム慣れしている人には少々ペースが遅く感じられるかもしれない,というところだろうか。キャラクターの移動速度があまり速くないのに加え,イベントシーンで画面が暗くなったり揺れたりといった演出が頻繁に入るため,もどかしさを感じる人もいるだろう。イベントシーンを早送りする機能も用意されてはいるが,最大の2倍にしても一般的なゲームよりはゆっくりしている。物語の先が気になるのに,なかなか進めないといったこともあり,この辺りは好みが分かれるところだ。
「オペラ座の怪人」自体は非常に有名な作品だが,物語の細かい所を忘れている人も多いはず。本作をプレイして,その魅力を再確認してはいかがだろうか。
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(C)2021 Growing Seeds Corp. All rights reserved. Published by CFK.
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