プレイレポート
【山本一郎】これはちゃんとWizardryだ。スマホにやってきた「Wizardry Variants Daphne」の,是々非々プレイレポ
ドリコムが,長い長い開発期間を経て満を持して放つ一品が,この「Wizardry Variants Daphne」(ウィザードリィ ヴァリアンツ ダフネ,iOS / Android / PC)です。通称ウィズダフネ。なんでしょう,この凄いBUSIN感が素敵です。
二次元ゲームに浸食されているスマホゲーム業界で,暗くてツラくてダルくてじめじめした楽しいゲームを持ち込んでくる,ドリコムの英断に感動です。
プレイ開始即“ウィザードリィな雰囲気”なので,いままでのウィズで徹夜した勢は割と感涙的なモチーフなんじゃないでしょうか。なんだかんだ私も,隙間時間や寝る前に,ちまちまダンジョンに潜って楽しませていただいております。
謎めいた主人公が遺骨を見つけてきて復活させるというギミックから,目的を達成するまで何度でも学園祭の前日をループすることを宿命づけられた「カースドホイール」(呪われた輪廻)という素敵な世界観は,かなりいい感じです。途中までは。
もちろんこの手のアプリですから,多少バグが多いのはサービスインしばらくは仕方ないと思いますし,ローンチしたドリコムも開発担当された皆さんも本当にお疲れ様でございます。満足してプレイしている人も多いんじゃないかと思います,おっさんばっかりかもしれないけど。まあ「Wizardryだしな」で許されることもあったりして。
序盤の強い雑魚敵の代表格エント。最初に出会うときは気持ち悪いだけでなく,滅法痛い。モンスターの造形が基本的にいい雰囲気なので,ダンジョンの気持ち悪さというかそういうものがちゃんと表現できている | 「かんぱい!」 冒険の苦労も,酒場で仲間と酒飲んで反省会して流す! ほとんど合コン気分だけど,物語的には一度死んだ連中だよなと思い出して酒はマズくなる。カップの数が毎回違うのは意味があるんだろうか |
ボス敵になぜか奇襲される。どんなに仕上がっているパーティでも,うっかり先制されると消耗が酷くてとても面倒なことになる。雑な仕様だが「まあWizardryだし」 | コミュ障のメンヘラ王女や,骸骨を連れた女,ノリは良いけどイマイチ話が通じないエルフ女との宴会。特に盛り上がらず,粛々と酒を胃に流し込む作業が現実的 |
他方で重課金バッチ来いのキャラ凸必須仕様は,やはりある程度小銭を持っている俺たちおっさんの財布めがけて「おら課金しろよ」という雰囲気をダンジョンの向こうから感じるのも事実でありまして,困ったもんだなあ。
というのも,まあまあプレイしている私ですら,かつて青銅等級昇格試験(Lv上限を30から40にするための試験)を突破できずにみんなレベル30で頭打ちになり,王様奪還後に「はじまりの奈落」のB8Fに湧いた強敵三連戦で躓(つまづ)いて先に進めずスタックしました。なんてこった。でもまあ「Wizardryだしな」。
そのころのフレンドを見るとみんなレベル45とか平然と突破しているのを見て,恥を承知で「お前らどうやって青銅超えたの」と聞くと,あっさり「課金して乗り越えるのが一番ですよ」などという特効薬をチラつかされて萎えます。マジかよー。
それでも武器防具を厳選して鍛冶屋にカネ掴ませて強化して挑もうと思っていた矢先,苦行のような「怨嗟の洞窟」がイベントで出現。
これがまた大変な荒業でありまして「水晶末」なるものをかき集めて強化用鉄鉱石だのよく分からんヘルメットだのを確保したいという話になるわけですが,確実に宝箱が出るわけではありません。
そのうえ金目の物は出ず,宝箱の副賞としてもらえるのは傷薬など消えものだけという修羅の仕様で,Wizardryらしくプレイヤーのやる気に正面から挑戦してくるのであります。助けてくれ。しかし,そこは「Wizardyだしな」。
なんでこんな廃凸仕様になってしまったのかと言えば,これはもうレベルデザインがJRPGの文脈に沿っていて,敵モンスターが強くなるにあたり,単純に「攻撃力」と「防御力」が普通にインフレしてくることが問題の9割であります。
悪く言えば,低いレベルで突入したらどんな良キャラがコンボを駆使して属性相性を揃えても防御力の高い敵には一桁ダメージしか与えられず,ある程度強くなってからでないと連戦にはとても耐えられないという仕組みになっています。
同様に,こちらも防具をきちんと揃えて防御力を上げておかないとレベルマックスでも敵のクリティカルで一撃死する素敵な仕様であり,これはもう「まあ,Wizardryだしな」と自分を自分で納得させる以外に乗り越えられる方法はありません。
実際に,昔のWizardryはこんなもんでしたし,イベントの依頼でうっかりボーパルバニーのアレを受けてしまうと,法外に強烈なウサギの前にプレイヤー側が死体の山を築く可能性さえもあります。どんなスマホゲームだこれ。
みんな大好きボーパルバニー。なおオリジナルWizardryでもバンバン首を刎ねるモンスターだったが,体感ではそれらよりもハネまくりな気がする | ギルド酒場の女主人も容赦なくタメ口。俺は仮面被った屍人みたいな「奈落から来た男」なのに気安くしゃべりかけ過ぎじゃないですか。同級生かよ |
思い返せば,俺たちが生きていたころのWizardryって,こういう理不尽もプレイ中のリスクだと甘受していて,即死攻撃とか「かべのなかにいる」とか灰からのロストも「Wizardryだしな」で受け入れてきたんですよね。
ダンジョンズ&ドラゴンズ(D&D)だってセービングロール失敗すれば死ぬし,クトゥルフの呼び声(CoD)もSAN値が削れて正気ロール失敗したら発狂してキャラごと廃棄になる。
そういうワイルドなゲーム性が許されてきたころの名作であるWizardryを,いまのヌルいキャラゲー全盛のアプリRPGに展開するリスクを,よくぞドリコムも取ったなあと思うんです。ある程度お布施はします。頑張ってほしい。
でも,素晴らしいギミックであるとも思う「カースドホイール」も,限られたダンジョンで失敗フラグを最初に踏ませて周回させる仕組みである以上,道中をもう一回これ踏破するんかっていう話になるとただの作業の連続になってしまうし,かといってフロム的な死にゲーを体験させようにもWizardryはWizardryなので強くなりきれずハードルをクリアできずにあっさり引退されることもあるのでしょう。
「攻撃力」「防御力」ではなくアーマークラスにして,弱くてもダメージが通ればワンチャン勝てるぜぐらいの戦闘システムのほうがよかったんじゃないかとは思いますね。
なにより,ゲームの仕様的に「時間を行ったり来たり」はフラグ管理が超面倒くさいうえに,キャラクターのレベルや関係値,重要アイテムは引き継いで,スクリプトとフラグは巻き戻るという形になりますからバグの温床になります。運営側のバグフィックスにクリティカルヒットしてクビが飛んでしまうわけですよ。
ユーザー的にも「詫び石はよ」という間もなくレベルも50で頭打ちですから,エンドコンテンツがない現状では離脱してしまう廃課金・歴戦の勇者も多いのではないでしょうか。
本作の特徴の一つである「カースドホイール」。ゲームシステムに落とし込んだのはよいのだが,面倒臭くて「よし戻ってみるか」という気にあんまりならないんですけど私だけですかそうですか | 宝箱から出る「ガラクタ」を,右手で元の姿にすると装備品などになる。なるのだが,さほど要らないものが山のように出てくるおかげで,ちょっと油断すると数百ものガラクタが溜まり,面倒くさいし邪魔でしかない |
キャラクターも人間のほかエルフ,獣人,ドワーフに絞って,ちゃんとキャラデザして反省会やって酒飲んで乾杯とかやってるの面白いと思うんですが,結構な課金をしないと途中から途端に骨ガチャ(=キャラガチャ)が引けなくなって,プレイヤーとしての楽しみが失われるのは残念です。
キャラゲー的な要素で言えば,エピソード的に大変なことをやらかしてるのに自己評価が異様に低い王女とか連れていろんなところにあるダンジョンを潜り,出てくるたびに合コンやって楽しかったね的な雰囲気だったら,ルナティックドーン的で(編注:例えが古いなぁ……)幅も広がったかと思うんですが,これはもう好みのところですかね。
長くダンジョンに潜っていると,キャラクター達がどんどん汚れてくる。汚さ過ぎる。こっち見んな。宿屋に泊まるとある程度は綺麗になるが,これがどういうゲーム内フィーチャーに結びつくのか知りません | 冒険者キャラクターのグラフィックスを見ると正直「んー」という感じなのだが(悪くはない),モンスターのデザインはどれも大変素晴らしい。往年のファミコン版Wizardryを思い出す |
そんなわけで,スタートダッシュ組で課金しなかった層は引退も出始めました。まあスマホ向けRPGでは宿命と言えましょう。ただ粗削りだけど「まあWizardryだしな」と言えるレベル以上に良い仕上がりにはなっているので,興味のある人はぜひダウンロードしてみるとよいのではないでしょうか。
……というところまで書いて置いてあったのを,担当編集が原稿を放置しやがってくれたわけですが,その間に冒頭で書いた「バグが多い」問題が大変大きなものになっており,「しばらく新機能は追加しないで,まず安定させます」と運営が言い切りやがりました。
まさか運営から,プレイヤーにクリティカルヒットのプレゼントが頂戴できるとは思ってもおりませんでした。「まあ,Wizardryだしな」と思ってプレイできる俺たちは全員マゾなのは間違いありませんから,このぐらいでクビ飛ばされたり壁の中に送り込まれてもへこたれることなく,経験値ももらえないまま鋼☆4のベース素材や冒険者のご遺体を求めてダンジョンを周回するのであります。頑張れ,ドリコム。
公式Xによれば
■今後の方針について
このような状況を受け,改めて開発・運用体制の大幅な増強を進め,特に,既に発生してしまっている不具合への対応,カスタマーサポート対応の促進,および新規施策等のリリースプロセスの見直しをおこないます。
それにより,みなさまに本来『Wizardry Variants Daphne』が届けたかった体験を安心して楽しんでいただける状態を作り出すことを最優先事項とし,来週以降,順次実装予定だった施策等の開始をすべて”時期未定”とさせていただきたいと考えております。(関連ポスト)
とのことで,これはなかなか思い切った決断です。
課金パワーでLv50に達しつつある担当編集も,バグや「なんだこれ??」という仕様が多いとは思っているようで,そういうものが積み重なっているのをまずはいったんクリアにしようということでしょう。国のお金を5億円使ってるわけですし,早く安定させて,楽しくもキツいWizardryライフを送らせてほしいと切に願う次第です。がんばってください。
「Wizardry Variants Daphne」に,政府関係金融機関から5億円の投資が決定。激化する市場で日本のコンテンツ産業の挑戦を支援
ドリコムは本日(2024年8月30日),開発中のスマホ向けダンジョンRPG「Wizardry Variants Daphne」に対し,日本政策投資銀行から5億円の投資を受け入れることを決定したと発表した。調達した5億円は,本作のプロジェクト投資資金として充当する。
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