プレイレポート
「インクリナティ」デモ版プレイレポート。“生きたインク”で描かれた動物の兵士たちを率いて戦う,一風変わったストラテジーゲーム
「インクリナティ」は,紙の上にインクで描かれた動物の兵士を動かして戦う,一風変わったストラテジーゲームで,そのデザインはかなり個性的な内容となっている。今回,発売前のバージョンをプレイする機会を得たので,そのプレイレポートをお届けしよう。
紙の上に動物の兵士を描き出そう
本作は,絵に命を吹き込む「Living Ink」(生きたインク)で絵を描くマスター2人が戦うストラテジーゲームだ。ターンごとにインクを消費して兵となる絵を描き,その兵同士を戦わせていくものとなっている。「絵を描いて兵を」と聞くと分かりづらいかもしれないが,それはゲーム上の演出であって,ゲーム性としては,対戦系のカードゲームでカードを場に出すようなイメージだ。基本的には,相手マスターのライフを削りきれば勝利となる。
兵は人ではなくウサギや犬,キツネなどといった動物で,可愛らしい。剣を持ったウサギ,槍を持ったウサギ,弓を持ったウサギなどさまざまな兵がおり,兵種によってそれぞれ攻撃方法は異なる。槍ウサギや弓ウサギは射程が長いので,離れた位置から攻撃できるが,剣ウサギは隣接している相手でないと攻撃できない。ただ長射程を持つ弓ウサギは体力がかなり低く設定されているなど,各兵種に長所と短所がある。ターン制で,描いた兵が出現したターンは「昼寝」の状態で行動不可となる。
画像を見ると分かるように,フィールドは横一直線。兵を置ける場所もだいぶ限られているので,意外とシンプルなゲームなのではと感じるかもしれない。しかし,新たな兵は空いている場所にしか描けないこと,絵を描く材料であるインクの供給量に制限があること,「障害物」によるマス目の占拠といったシステムなどで,高い戦略性が生まれている。
「障害物」はフィールド上に最初から配置されていることもあるが,自分で描くこともできる。手押し車や岩など,種類もさまざま。空いているマスは兵が描けるマスではあるが,油断していると敵兵が侵攻してくる可能性があるマスでもある。障害物をどう利用するかも戦略のひとつだ。
また,ある程度ターンが経過すると,「終焉の大炎」という炎が両マスターの背後に出現する。この炎に飲まれると,兵だろうがマスターだろうが即死。炎は1ターンごとに中央へ向かって迫っていくため,モタモタしていると,両マスターが炎に焼かれて決着してしまうというわけだ。
「押し出し」という要素にもふれておこう。これは兵もしくはマスターが,敵兵を強制的に移動させる。しっかり考えたうえで配置されているであろう敵兵の位置を崩せるので,非常に重要だ。押し出しによって,「終焉の大炎」に押し込むという強引な攻撃手段もある。
本作では,マスター自身も絵として参戦するが,「SWAT攻撃」や「癒し(兵の体力回復)」など,マスターにしかできない行動もある。「SWAT攻撃」は,マスター自らが相手の兵にダイレクト攻撃するというもので,相手に隣接していなくても可能なのが強み。距離が無制限というわけではないが,そこそこ遠くからでもダメージを与えられる。
面白いのが,兵を描くごとにマスター自身がだんだんに飽きてくるという点だ。本作には「退屈レベル」というものがあり,これが上がると,次回以降のステージでの兵コストが上がってしまうのだ。退屈レベルは,次のステージで別種の兵を描いたりすることで下げることもできるので,異なる種類の兵を交互に使っていきながら勝ったほうがいいということになる。絵を描いて対戦しているという設定を生かしたユニークな要素と言える。
1人用モードとなる「アカデミーモード」にはストーリーが用意されており,さまざまな地形の戦闘フィールドを次々に攻略していくことになる。そのため,「その1戦に勝てばいい」という戦い方を続けていると,退屈ステータスによって兵コストがだんだんキツくなってくるというわけだ。目先の勝利だけでなく,先まで見据えた戦い方も必要になってくる。
進化するステージ。加わる“高さ”の概念と,さらなる兵種
アカデミーモードは,ステージを進めると兵の種類が増え,その都度,戦い方を変えていく必要がある。隣接した相手を一撃で丸呑みしてしまう最強の生物「ナメクジ」相手では,チュートリアルですら,なかなか正解が見えない。
横一直線だと思っていたフィールドも,ステージが進むと2階,3階のものが登場し,高さの概念が追加される。高さのあるステージで危険なのが,「押し出し」だ。兵を「終焉の大炎」に突っ込ませることができるという点で元々危険ではあったが,高さのある場所から押し出しで突き落とされると,その兵は即死するのだ。
最初のエリアのラストステージでは,チュートリアルでお世話になったマスターと対戦することになるのだが,このマスターが3階に位置している。マスターによる敵兵の押し出し移動は,隣接していなくても一定範囲内であれば可能なため,近接攻撃兵で近付くと,マスターの元に辿り着くまでに「押し出し」で落とされて即死という,どうしようもない事態になる。筆者はやられること前提で複数の弓兵を描き,弓が届く距離まで移動できた奴は片っ端から攻撃という戦法でゴリ押したが,果たしてこれが正解なのかは分からない。
未完成な部分も感じられるものの,ベースはしっかりしている。今後に注目したいタイトルだ
本作は,プレイヤーとCPUが交互に兵を動かすターン制ではなく,兵ごとに行動するタイプのターン制なのだが,各兵の行動の早さが何によって決定されているのか少し分かりづらい印象はある。
ただ,ベースとなるゲームシステムはすでに高い完成度を誇っており,プレイヤーが1ターン内にできる行動は決して多くなく,そうなると必然的に正着手までの手順は限られてくるはず……なのだが,詰め将棋のようなシビアさがある。1手のミスが後々致命的になってくるので,慣れるまでは操作ミスを含め,なかなか勝てない状況が続くことも珍しくない。味のある世界観ながら,戦略ストラテジーとしてはかなり高難度の部類に入ると思われる。
また,「尊敬」というポイントを使用することで取得できる「アクションハンド」「才能」という要素も重要だ。1人プレイ用のアカデミーモードでは,プレイヤーがどの兵を取得していくのかに加えて,どの「アクションハンド」「才能」を獲得していくかでその後の戦い方も変化していくため,結果は毎回同じではないといった,ローグライク的な一面もある。
一方のローカライズは,現段階ではやや微妙だ。海外作品の翻訳にありがちな,「言いたいことはなんとなく分かる」系のものが多く,ものによっては何を言っているのか分からないこともある。さらにウインドウ内の文字が大幅に溢れていることも多く,まだまだこのあたりは要調整といった感じだ。
熟練者同士の対人戦が盛り上がりそうな予感はある。どんな兵の部隊編成にするのか,「アクションハンド」と「才能」の選択をどうするのかといった部分は,カードゲームのデッキ構築にも似た楽しさがある。
現状は未完成という点もあるが,今冬からアーリーアクセスが始まる段階というのだから当然と言えば当然である。開発が進むにつれ,改良されていくだろうし,アーリーアクセスを経てどのような進化を遂げていくのかが楽しみである。体験版も用意されているので,本稿を読んで少しでも興味が出た人はプレイしてみてほしい。
「インクリナティ」公式サイト
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(C)2021 Daedalic Entertainment GmbH.
Daedalic and the Daedalic logo are trademarks of Daedalic Entertainment GmbH, Germany.
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