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レトロンバーガー Order 74:SFC版「アンダーカバーコップス」を英語ローカライズしたやつが届いたけど,やっぱ国内AC版やりたいなーとか言う編
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印刷2021/12/04 14:00

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レトロンバーガー Order 74:SFC版「アンダーカバーコップス」を英語ローカライズしたやつが届いたけど,やっぱ国内AC版やりたいなーとか言う編

画像集#013のサムネイル/レトロンバーガー Order 74:SFC版「アンダーカバーコップス」を英語ローカライズしたやつが届いたけど,やっぱ国内AC版やりたいなーとか言う編

料理に「美」を求めぬ人は、当てがい扶持に満足する犬猫の類と同じだと言っても差支えないでしょう。

 美食家として知られる芸術家・北大路魯山人は,著書「春夏秋冬料理王国」でこのように述べました。ここで言う“美”とは,金箔が乗っているとかではなく,言うなれば“美学”であり,つまるところ“スタイル”です。

 スタイルを欠くということは,形骸化,日和見主義,仏像作って魂入れず,そういったことでよろしくありません。特定のスタイルに染まることをよしとしないにしても,立川談志(七代目)氏や中村勘三郎(十八代目)氏の言葉として「“型通り”でない演技をするにも,型のできている者がやるなら“型破り”だが,型のできていない者がやるなら“型無し”だ」という旨のものが知られているように(出典に関しては諸説あります),テーゼ無くしてはアンチテーゼも成立しないものです。

 魯山人は好まないかもしれませんが,KADOKAWAのコミックNewtypeで連載されている「鍋に弾丸を受けながら」(※)に登場する料理は“粗にして野”ですが,決して“卑”ではありませんし,それらを食べ歩きするという行為は美学以外の何物でもありません。そう,食事は「いかにして食べるか」で,その意味合いが大きく変わってきます。

※原作:青木潤太朗/作画:森山慎。二次元の過剰摂取で脳に異常を来したため,自分を含め人間が美少女に見えてしまうという30代男性が,ご当地グルメを味わうために世界各国の危険地帯を旅する漫画。

 なので,その辺をピヨピヨ歩いているヒヨコちゃんをアライグマやオオトカゲがヒョイパクするのは単なる“摂食”ですが,死闘の中で人間がヒョイパクしたならば,そこには美学を見出すことができます。映画「ロッキー」で,ロッキーがジョッキいっぱいの生卵を一気飲みするようなもんです。巷には「女装は男にしかできない行為なのだから,最も男らしい行為である」というインターネットミームもあるように,ヒヨコちゃんのヒョイパクという粗野な行為をあえて人間がやるならば,それは実に人間的で美しい行為だと言えます。たぶん。

 というわけで,今回はヒヨコちゃんをヒョイパクするゲーム「アンダーカバーコップス」でやっていきましょう。先月,Retro-Bitのリプロダクト版カートリッジが届いたので! なお,筆者は過去にホビロンの羽毛が喉に引っかかってウェッとなったこともあり,ヒヨコちゃんは焼いて食べる派です。

Castlemania GamesやLimited Run Gamesでは販売終了となっていますが,オランダのNedgameやスウェーデンのSpel & Såntには在庫があるようです
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 アメリカのRetro-Bitは北米時間2021年2月17日,スーパーファミコン/Super NESおよび互換機向けソフト「Undercover Cops」を発表し,受注を開始した。本製品は,日本で1995年にバリエから発売されたスーパーファミコン用ソフト「アンダーカバーコップス」に英訳を施したものだ。

[2021/02/17 19:34]



Shakedown! Breakdown! Takedown!


 オリジナルの「アンダーカバーコップス」は,1992年にアイレム(旧法人。以下も同様)からリリースされたアーケードゲームです。ジャンルはベルトスクロールアクションで,奥行きが狭めのフィールドと高頭身のキャラクターを特徴とするカプコンの「ファイナルファイト」(1989年)を踏襲したスタイル……と言うよりか,格ゲーライクなコマンド技の要素が含まれているあたりは,同じくカプコンの「キャプテンコマンドー」(1991年)にインスパイアされたのかもしれません。

 本作のスーパーファミコン移植版が発売されたのは1995年3月3日のこと。アイレムは1994年にゲーム事業からいったん撤退していたため,F-1やプロレスなどのゲームを主に取り扱っていたバリエ(1997年に吸収合併され,現レイアップ)がパブリッシャを担当しました。

 アイレムがそんな状況だったうえ,1995年ともなればPlayStationやセガサターン,3DO,PC-FXといった新世代機がすでに発売されていた頃。まだまだスーパーファミコン市場は健在でしたが,健在なぶんだけ“損切り”のタイミングとしては狙い目だったでしょう。スーパーファミコン版「アンダーカバーコップス」の出荷は少数に留まり,予定されていたSuper NES(海外版スーパーファミコン)版は発売中止に。そんなわけで,今日の中古市場では箱説無しのカートリッジのみでも1万円超えがざらにあるプレミア価格で取引されています。なおアーケード版は普通に“人気のレア基板”なので「15万円で買えたら超安い」くらいの価格帯です。

 そんなソフトがRetro-Bitによって改めて英訳されて,54.99ドルから買えるというのは,欧米のファンからすれば曇華一現の僥倖でしょう。まあ日本人からすれば「あのレアソフトが日本語の入ってないバージョンになって復活!」という話なので,「うん……うん?」とビミョーな気持ちになったりはしますが。

豪華パッケージ! ……ではあるものの,やっぱりオリジナルは超え難いもの
画像集#014のサムネイル/レトロンバーガー Order 74:SFC版「アンダーカバーコップス」を英語ローカライズしたやつが届いたけど,やっぱ国内AC版やりたいなーとか言う編

 やっぱり,アーケード版の移植が欲しいですよね……。いちおう,本作を含む多数のアイレムタイトルを収録した「IREM Arcade Hits」(PC / Mac)がDotEmuから2011年に発売されていますが,音源の差し替えや超必殺技のオミットなどが行われた海外版がベースとなっているうえ,キーバインドが変更不可など環境は劣悪。しかもPC版は音源のエミュレートが大抵の環境でガビガビ,Mac版は最新環境だと正常に動作しません。と言うか,いつの間にかGreen Man Gamingでの販売が終了となっていましたので,現在買えるのは「もしかしたら昔のOSなら動くかもしれないMac版」だけです。本連載の初期にも一度「資料的なものを求めるマニアだったら買い」と言及,つまり「それ以外はまったくオススメできない」と取り上げましたが,もう「オススメできない」どころか「“物の試し”で250円を放り投げても構わないなら……」のレベルとなっています。損得で言えば缶コーヒーでも買ったほうが得です。

素人にはオススメできない「IREM Arcade Hits」(玄人にもオススメできない)
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 「アンダーカバーコップス」のほか「ジオストーム」「海底大戦争」「アイレム エアデュエル」といったアイレムの一部タイトルは敵組織がD.A.S.(デストロイ・アンド・サツジン)と設定されていて,ファンにはシリーズ作品として見なさていますが,この中で現行機種に移植されているのは「海底大戦争」のみ(ハムスターから発売された「アーケードアーカイブス 海底大戦争」)。「海底大戦争」2P自機のパイロット・高原 仁は,「アンダーカバーコップス」主人公の1人であるザン・タカハラ(高原 斬)の兄だったりしますが,兄に続いて弟もアケアカデビューしてほしいところです。


 「アンダーカバーコップス」の舞台となっているのは,世界的な戦争によって荒廃し,治安が崩壊した2043年のニューヨーク。D.A.S.シリーズとしては,「アイレム エアデュエル」劇中が2004年,「海底大戦争」はタイトル通り海中が主戦場なので,「ジオストーム」の戦後が「アンダーカバーコップス」だと捉えているファンが多いようです。アイレムがゲーム事業から撤退する直前にリリースされたという都合もあってか「ジオストーム」の詳細なストーリーなどは公表されていませんが,同作でD.A.S.が多数の女性を捕えていたことと,プレイヤーキャラクターの1人であるローザ・フェルモンドの“D.A.S.に捕えられて実験台にされていた”という過去は「つながっているのかも?」と感じさせられます。

「ニューヨーク1997」「マッドマックス2」「ロボコップ」といった1980年代のSF映画を組み合わせたような劇中の世界。なお「ロボコップ」の初稿をベースとした小説版(邦訳版はハヤカワ文庫SFより1987年に刊行) には“シルベスター・スタローンがクローンへの脳移植の失敗で逝去,享年97歳”という一節があり,現実のスタローン氏は1946年生まれなので97歳のときは2043年……なるほど?
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 ……まあ,ローザが実験台にされていたって設定は,Retro-Bit版の取扱説明書で初めて知ったんですけど。アーケード版のリリース当時,ゲーメストの付録として作られた小冊子「アンダーカバーコミックス」では,恋人を殺害されたのでD.A.S.を追っているということしか書かれていないんですよね。ザンも微妙に違っていて,Retro-Bit版の取説では「妻をギャングに殺された」,ゲーメストの小冊子では「恋人をギャングに殺された」となっています。なお,もう1人の主人公であるマット・ゲーブルズの「相手選手を5人も再起不能にしたことから,協会による虚偽の不正行為告発でフットボール界を追放された元選手」という設定は,表現の違いはあるものの変わっていません。

 海外アーケード版では,主人公達の名前がClaude(ザン),Bubba(マット),Flame(ローザ)と変えられていたので,設定も変わっているのだろう……と思わなくもないですが,エンディングデモでローザがラスボス・Dr.クレイボーンを見知っていた様子な辺りは,実験台にされていたという過去があった方が納得できます。それにゲーメスト小冊子を鵜呑みにしてしまうと,Dr.クレイボーンがD.A.S.の創設者であり,冗談めかした書き方でしたが「Armed Police Unit - Gallop」やアーケード版「ボンバーマン」(アイレムが開発・発売),「覇沙夢」(麻雀パズルゲーム)など数々のアイレムゲームの黒幕だったということになってしまいます。て言うか「覇沙夢」の黒幕って何。ゲーメストは筆者が初めて買ったゲーム雑誌ですし,いろいろな面でリスペクトしているものの,「あのゲームの設定,もとはメーカー公式じゃなくて,メストライターが勝手に書いたやつだよ」といった話も同業者から聞きますので,正直なところ情報ソースとしてはあまり信用できません。

海外アーケード版では変更されているキャラクター名。あっ,ローザの生年って今年だ
画像集#001のサムネイル/レトロンバーガー Order 74:SFC版「アンダーカバーコップス」を英語ローカライズしたやつが届いたけど,やっぱ国内AC版やりたいなーとか言う編

 まあ,細かいことは雰囲気で捉えておいたほうが良いでしょう。「海底大戦争」1P自機のパイロットは仁の妻・高原 麗ですが,2人プレイ時の専用エンディング(1Pと2Pが対戦して,勝者が世界の支配者として君臨する。制限時間内に決着がつかなかった場合は両者死亡)では1Pが勝っても“彼”と呼ばれます。あと「海底大戦争」自機のデザインって,セガサターン移植版の取扱説明書とPlayStation版の取扱説明書では,使用されているイラストがまるっきり別物だったりもしますし。D.A.S.シリーズとファンに呼ばれている4タイトルも,敵組織の名前以外でつながりを示す要素はほとんどありません。アイレムの代表的なタイトルである「R-TYPE」だって,“バイド帝国”とか言っていた最初期と「R-TYPE III」以降は設定がまるで違ううえ,アイレムソフトウェアエンジニアリングによるPS2用ソフト「R-TYPE FINAL」では「イメージファイト」などの設定も吸収・統合・再構成されています。

 あんまり真面目に考えると「『R-TYPE FINAL』のBydo labで,ゲインズってバイドが『この赤い機体はエースパイロット マット・ゲーブルズ大尉が搭乗していたもの』とされていたけど……R-TYPEシリーズの舞台は22世紀だから,『アンダーカバーコップス』のマットは最低(2101年時点)でも83歳……いや未来の医療技術ならワンチャン……?」と無駄に頭を悩ませたりする羽目になります。同名の人物と言えば,ローザの恋人だった“トーマス”は「スパルタンX」の主人公と同名なので,「お前の元カレ,演:ジャッキー・チェンなの……?」という疑念も涌いてきますが,仮にそういう想定だったとしても映画の権利元であるFortune Star Mediaは許諾しないでしょう。妄想を逞しくすれば「ローザの元カレが死んだのって24週目で急にシルビアが襲ってきたからでしょ」とファミコンロッキー的なことも思い付きますが,「『スペランカー』でスタート画面のBGMにあわせて特定の操作を行ってからゲームを開始すると空中を歩ける」といったファミマガ的ウソテクくらいありえないことです。仮定に妄想と比喩を重ねて,だいぶワケが分からなくなってきましたが,とにかく雰囲気で捉えましょう。


Breakdown! Takedown! You're busted


 閑話休題(あだしごとはさておきつ)。話を「アンダーカバーコップス」に戻しましょう。スーパーファミコン版はハードスペック相応に表現がプアになっていて,アイレム特有の砂っぽいテイストのドット絵も質感の大部分が失われています。また,アーケード版は最大3人同時プレイが可能でしたが,スーパーファミコン版は1人プレイ専用です。

 ただ,ゲームプレイの“触感”に関しては高水準で再現されています。有名ラーメン店とコラボレーションしたカップ麺の成功したやつみたいな感じです。ノリノリのディスコミュージックライクなBGMも,スーパーファミコン音源にうまく移植されています。

アーケード版(左)とスーパーファミコン版(右)
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 主人公達には「ぶん回していれば強い攻撃」や「どんな敵にも通じるスタンダードな攻撃」が無いので,敵の行動パターンを把握して,それに対応できる攻撃をぶちこんでいくのが攻略の基本となります。その点に関しては,カプコン系のベルトスクロールアクションとは異なる方向性を目指していた印象です。

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 本稿の頭から“ヒヨコをヒョイパク”と述べているように,本作で特徴的なのが回復アイテム。木箱やドラム缶などを壊すとハンバーガーやステーキなどが出てくるのはベルトスクロールアクション的には普通ですが(現実的にはまったく普通ではありませんが),本作ではヒヨコやカエル,カタツムリ,ネズミ,子豚といった生物が出てきます。それらも回復アイテムです。

体力を消費して放つ超必殺技。体力が減ったら,もちろん足元のヒヨコちゃんをヒョイパクヒョイパク
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 本作には回復アイテムの取得直後に無敵時間が発生するという仕様があるうえ,生物系の回復アイテムは画面スクロールにあわせてプレイヤーキャラクターについてくる(スーパーファミコン版は仕様が若干違うのですが)ので,ヒヨコやカタツムリを連れ歩き,難所に入ったらヒョイパクしながら敵をボコるというプレイスタイルが有効です。敵の視点からすると,変な奴が小動物をたびたび拾い食いして殴られても痛くない状態になって襲いかかってくるのですから,ずいぶん猟奇的な光景でしょう。

 Retro-Bit版は英語ローカライズされているものの,もともと日本語メッセージが表示されるシーンはわずかなので,プレイ自体に支障はありません。ただ,ローザでクリアした場合,スタッフロールがイメージソング「AN-NON と・き・め・きストリート」のカラオケ(なおアーケード版での曲名は「AN-NON ときめきストリート」)となって日本語歌詞が表示されるのですが,あの隠しフィーチャーはどうなっているのでしょうか。海外アーケード版では,これもオミットされていましたが……。

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 はい,答えは日本語歌詞のローマ字表記&英訳歌詞! あの珍奇ソングがグローバル仕様になりました。これなら全世界レベルで合唱できますね。

〽きたいにふくらむ むなもとの

おとめのサイズは ヒミツなの

ふれたらだれより ねつっぽい

おもいをあなたに あげるから

 そんなこんなで,海外の方々にとっては恐らく「パーフェクト」と言えるものに仕上がっているRetro-Bit版「アンダーカバーコップス」。ただ,先程も述べましたが日本人的には「もうちょっと」感が否めません。

 こうやってライセンスアウトは行われているので,国内スーパーファミコン版「アンダーカバーコップス」のリプロダクトや移植もできなくはないでしょう。どこかが制作・販売していただけたら,筆者は確実に買います。ハムスターだって「『ビジランテ』や『イメージファイト』はアケアカにしたけど『アンダーカバーコップス』をやるつもりはないよ」ということはないはずです。出たら買います。

 あとコラボカフェもやってほしいですね。食品衛生法をギリギリまで攻めたやつ。催されたら行きます。

  • 関連タイトル:

    アーケードアーカイブス 海底大戦争

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