プレイレポート
カードゲームとRTSの融合を目指した意欲作「VALIANT TACTICS」プレイレポート。戦略と知識とスキルがぶつかり合う“ガチ”の対戦ゲーム
昨今ではMOBAやタワーディフェンスなどのゲームジャンルに吸収されつつあるRTSに,新たな方向性を示す意欲的な作品として発表された本作は,果たしてどんな作品に仕上がったのか。本稿では,正式リリース後のVALIANT TACTICSを実際に遊んでみたので,そのプレイレポートをお届けしていく。
「VALIANT TACTICS」公式サイト
登録を済ませてゲームを開始するとさっそくチュートリアルが始まり,ゲームの基本を解説してくれる。チュートリアルでは手厚くプレイ方法を教えてくれるので,そのまま進めていけば,ゲームの基本システムと,世界観やキャラクターなどを理解できるだろう。
基本的なチュートリアルの終了時にはレギュレーション「スタンダード」で使用できる全カードが配布される。VALIANT TACTICSには対戦レギュレーションとして「スタンダード」と「ヴァリアント」が用意され,スタンダードで遊ぶ限りにおいて,プレイヤーは100%平等な対戦が楽しめるわけだ。
名称の通り,スタンダードは比較的シンプルな能力を持つカードで構成されている。まずはスタンダードでゲームの基礎を覚え,より多様なカードプールでゲームを遊びたくなってきたらヴァリアントに手を出してみるのが順当な流れだろう。
ゲームの流れと両フェイズの役割をチェック。2つのフェイズがDCGとRTSの融合を実現
本作は,カードを使ってユニットや建物をフィールドに配置する「タクティカルフェイズ」と,配置したユニットに指示を与えて移動と戦闘を行う「アクティブフェイズ」を繰り返しながら,敵指揮官の撃破や拠点の破壊を目指すゲームだ。
“DCGとRTSの融合”を謳う作品だけあって,タクティカルフェイズでは時間が停止するが,アクティブフェイズではリアルタイムでゲームが進行する。また,視界に敵を収めなければ敵の位置を把握できないので,単に強力な軍隊を作り上げるだけでなく,敵の動向を偵察しながら次の一手を考えていかなければならない。
ここまでの説明でなんとなく想像は付くかもしれないが,本作のルールは,はっきり言って難しい。TCGとRTSの両方にある程度慣れていなければ,最初は何をすれば良いのか戸惑ってしまうだろう。というか,両方のジャンルに馴染みがある筆者でも,最初は把握すべき要素の多さに圧倒されてしまった。
というわけで,以下にゲームの流れを図化してまとめてみた。各フェイズの詳細は順に紹介していくので,大きな流れを理解するための
■タクティカルフェイズ
コストを支払ってカードを使用し,戦力面を強化するフェイズ。ユニットを場に出すためのカードはもちろん,使い切り型のカードもこのフェイズでしか使用できない。
使用可能なコストはターン経過によって増え,ゲームの進行に応じて強力なカードが使用可能になる。要するに,一般的なDCGにおける“ターン開始時のセットアップ”と“カードのプレイ”を行うのがタクティカルフェイズだ。
ユニットカードを使用できる範囲は自拠点から手前3マスまでだが,建物カードと併用すれば,カードを出せる範囲を拡張することも可能
ユニットカードには多種多様な情報が記録されているが,最初から全部の要素を勘案してデッキを組んだり,ゲーム中にステータスを確認しながら遊ぶのは極めて難しいので,とりあえず「コスト」「攻撃力」「HP」「兵種」(後述)をしっかり見ておこう。索敵範囲などの細かな要素は後から覚えていけば良い。
カードの種類 | |
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ユニット | 戦場にユニットを呼び出すカード。敵対するユニット同士が接触すると戦闘が発生し,互いにダメージを与え合う。HPが0になるとユニットごと消滅する。フィールド上に配置する建物などもユニットに分類される |
スペル | 味方やフィールドに影響を与える使い切り型のカード。多くのスペルには,特定の兵種(メイジ)の味方がフィールドに存在することが発動条件に設定されている |
作戦 | 味方やフィールドに影響を与える使い切り型のカード。指定ユニットの能力を変化させたり,フィールドに罠を設置するなどの効果が多い |
また,タクティカルフェイズではユニットの移動先を指示できる。後述する“指揮範囲”の外にいるユニットにも指示を出せるので,単独行動をさせているユニットを更に遠くへ移動させるなど,タクティカルフェイズを活用すれば特殊な作戦行動が可能だ。
これは実際にプレイして驚いた点なのだが,本作ではデッキ構築段階で5枚の初期手札を“固定”できる。以降は毎ターン1枚ずつデッキから補充する形になるが,カードゲームにおいて初動で絶対に躓かないのは心強い。この仕組みをデッキの特徴を伸ばすために使うか,対応の幅を広げるために使うかはプレイヤー次第といったところか。
なお,タクティカルフェイズで使用しなかったコストの半分は,以降のターンで“EXコスト”という形で使用できる。ただし,どれだけEXコストを溜めても通常のコスト上限を超えるユニットを場に出すことはできない。
例えばコスト上限3でEXコスト3を持っていた場合,3コストのユニットを2体出すことは可能だが,6コストのユニットを出すことはできない。基本的に相手も自分も同量のコストしか使用できない点は覚えておこう。
■アクティブフェイズ
タクティカルフェイズが準備段階なら,アクティブフェイズは実行段階だ。配置したユニットに移動指示を与え,ユニット同士を戦わせたり,敵拠点の城壁に取り付いて攻撃したりと,リアルタイムで変化する状況を読み取って的確な指示を出さなければならない。
ただし,両プレイヤーは最初から「指揮官」と呼ばれる特殊なユニットを持っており,指揮官の“指揮範囲”の外側にいるユニットには指示を出せない。加えて指揮官が撃破されると問答無用でゲームセットになるので要注意だ。
ユニットにはさまざまな種類が存在するが,戦場の主役は「騎兵」「槍兵」「弓兵」の3兵種。これらの兵種は3すくみの関係にあり,機動力の高い騎兵は弓兵に強く,槍兵は騎兵に強く,遠距離から攻撃できる弓兵は鈍重な槍兵に強い。セガの三国志大戦シリーズなど,アーケードTCGに触れたことがある人には馴染み深いルールだろう。
移動の手段は複数用意されており,ユニットを個別にクリックしても,範囲選択でまとめて移動先を指定しても,画面右下に表示される出撃中のユニット一覧で行動するユニットを指定しても良い。画面左には特定の兵種をまとめて選択できるパネル(ホットキーあり)も用意されているので,状況に応じて使い分けよう。
有利な兵種を戦場に出すためには,相手が場に出したユニットの兵種を偵察するのも大切だ。しかし,ユニットには“視界”の概念があり,その外にいる敵ユニットは視認できない。どのタイミングで,どの程度のリソースを使って敵情の確認を行うか,もしくはどうやってこちらの情報を隠すか,といった読み合いが序盤戦の要となってくる。
兵種と特徴 | |
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基本三兵種 | |
騎兵 | 移動速度に優れ,移動時に受けるダメージを減らす能力を持つ。4コスト以上の騎兵は長距離移動でパッシブスキル「ランスチャージ」が発動し,敵ユニットと接触した際に大ダメージを与えられる。 |
弓兵 | 極めて長い射程を持つが,同コスト帯と比較すると攻撃力とHPは低めに設定されている。兵種の特性としての固有能力はないが,高コストの弓兵は敵ユニットに直接ダメージを与えられるスキルを多く持つ。 |
槍兵 | 移動速度が遅いが,コスト比のステータスが非常に高い。槍兵は騎兵のランスチャージを正面から迎撃できるほか,周囲に味方槍兵がいるとHPが上がるパッシブスキル「槍兵連隊」を持つので,まとめて運用しやすい。 |
その他の兵種 (スタンダードで主に使われるもの) |
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レンジャー | 戦闘能力は低いが移動速度に優れる兵種。指揮範囲外からでも行動できる「単独行動」や,潜伏(相手の視界に映らなくなる)状態になるスキルを多く持ち,情報アドバンテージの獲得を得意とする |
メイジ | 弓兵に近い性能を持つユニット。移動速度を低下させたり,直接ダメージを与えたり,特殊なスキルを多く持つのが特徴。 |
工兵 | 戦闘能力が低いかわりに,自身の周辺に建物や建造ユニットを作成できる。 |
建物 | フィールド上に配置できる特殊なユニット。ユニットの駐留や周辺の敵への攻撃など,RTSにおける“タワー”に近い感覚で使用できる。ユニット数上限に数えられない。 |
建造ユニット | 通常のユニットのように移動と攻撃ができるユニット。建物と同じく,工兵が建造する必要がある。 |
ステータスと相性だけでなく,各ユニットが持つスキルも戦闘の結果を大きく左右する。ターンの経過で累積していくスキルポイント(SP)を消費して発動できる「アクティブスキル」はとくに影響力が強く,効果的にSPを使えるか否かが中盤以降で戦いの成否を分けることになる。
すべての基礎はユニット同士のバトル。基本を覚えて,その先にある深みを味わおう
ルールの大枠を把握したら,初期デッキを使ってAIと対戦しつつ細かな部分を把握していこう。
実際の対戦となると最初は何をすれば良いのか分からず戸惑ってしまう人もいると思うが,そんな時は「攻め時に使うユニットとスキル」を事前に決めておいて,すべてが揃ったタイミングで攻撃を開始するのがオススメだ。
とりあえずデッキの中で“エース”と位置付けたユニットを場に出し,必要なSPが溜まったら一気に前進。事前に考えていたタイミングでスキルを使用し,敵のユニットを撃破していくのだ。
VALIANT TACTICSではユニットを回復する手段が少なく,撃破されたユニットぶんのコストは単純な損失となる。敵拠点にダメージを与えられなくとも戦って勝てばどんどん有利になっていく(逆もまたしかり)ので,まずはスキルを使って敵ユニットを撃破する流れを覚えるのが最優先。うまく行動が噛み合って敵のユニットを殲滅できたら,敵主力の近くに控えているであろう敵指揮官を探して撃破するか,敵拠点を落としてやろう。
視界の細かな管理や調整は,そうした基本的な試合の流れを覚えてから考えればいい。ゲームを続けていけば「なぜか攻め込むタイミングに相手が待ち構えてるぞ」とか,「妙に不利な相性で戦わされてるな」とか「建物ってやたら強くね」と感じるシーンが増えてくるはずだ。
そうなったら,相手にやられた行動を参考にして戦略に組み込んでみよう。その流れを繰り返していけば,少しずつ本作のゲームシステムと読み合いの基礎が染み付いてくるハズだ。
本作の対戦システムは情報量が極めて多く,誰でもカジュアルに楽しめる作品とは言い難い。カード1枚だけを見ても大量のステータスとスキルが並び,最初は投入したカードの能力を把握するだけでもひと苦労だ。カジュアル路線のゲームが多い昨今においては極めてニッチな作品と言える。
ただ,そういった情報量の多さが,プレイヤーの意思決定に幅広い選択肢を与えている。相手の状況を確認して使用するユニットを考え,現在位置を予想して行動するなど,常に柔軟な対応が要求される。そして,対応が見事にハマッた瞬間の“してやったり感”は,ほかには代えがたい体験だ。
ゲーム自体の難しさは開発側も承知しているようで,カードプール別にレギュレーションを分けたり,ゲーム内には手厚いチュートリアルや初心者向けミッションを個別に用意したりと,プレイヤーがゲームに馴染むための工夫は多く用意されている。
インターフェース面を含めて調整・整理が必要な要素が存在するのは確かなので,このあたりは今後の改善に期待したい。1対1に特化した奥深い戦略ゲームを探していた人は,この機会に「VALIANT TACTICS」に触れてみてほしい。
「VALIANT TACTICS」公式サイト
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