紹介記事
「リングフィット アドベンチャー」は,“ゲームへの熱量が己の肉体を作り上げる”トレーニングツールだ。ゲーマーだからこそ継続できる運動のポイントをまとめてみた
その話題性からもはや説明は不要であるが,発売されてすぐに入手が困難になるほどの人気となり,世界的な売上を記録した「Wii Fit」のようになる気配を感じさせる。
運動不足解消を目的として10年ほど筋トレを続けている筆者は,なんとなく「筋トレの効率化が図れたらいいなあ」くらいで購入したのだが,これが想像以上の大当たりで衝撃を受けた。長年続けているうちトレーニング内容が固定化し,代わり映えのしないメニューでマンネリ気味だった日々の運動が,本作のゲームとトレーニングの絶妙なバランスによって「マンネリを脱した効率的なトレーニング」に変わったのだ
使用者の好みで運動量や内容を細かく設定でき,誰でも気軽に運動とゲームが楽しめる本作は,“ゲーマーだからこそ運動を継続し,習慣付けられる”という面でも見事な仕組みとして機能している。本作のメインとなる,運動しながらゲームの世界を冒険する「アドベンチャーモード」を通して,その魅力をお伝えしていこう。
「忘年会や新年会といった会食が多く,お腹のたるみが気になる」「思う存分“積みゲー”を消化するつもりだが,家から出られなくなる」など,さまざまな悩みが生まれるであろう年末年始に役立つ情報にもなれば幸いだ。
「リングフィット アドベンチャー」公式サイト
“カラダで戦う”冒険に出発する前に――
冒険(運動)に役立つ装備とアイテムを紹介
まずは簡単に,「アドベンチャーモード」の説明から。基本的な物語やゲームシステムは先行プレイレポート(関連記事)で紹介しているとおり,悪の魔物「ドラゴ」から世界を守るため,冒険のお供で運動のサポート役でもある「リング」と一緒に冒険に出発。マップを移動してさまざまなステージに挑み,ターン制のコマンドバトルで敵と戦いながらそれを攻略していくというものだ。
ここまでの説明だとRPGの定番といった流れだが,移動やバトルを行うのは“己の肉体”であることが本作の特徴となっている。
ランニング(足踏み)でゴールに向かって移動し,途中で立ちふさがる敵とは筋トレやヨガで身体を動かして戦うというステージでのアクションだけではなく,カーソル移動の際もリング状のコントローラ「リングコン」を押し込んだり回したりして,身体を動かしながら操作する。
一部Joy-Conで操作するところもあるが,この,“何をするにも身体を動かす”ということが本作のベースにあり,これが少しゲームを進めるだけで自然に身についていくのだ。
さて,どのあたりが“ゲーマーだからこそ運動を継続できる”要素になっているのかをお伝えする前に,まずは冒険に旅立つ際にあると役立つ,プレイヤーキャラクターである自分自身の“装備”についていくつか紹介したい。
ここで言う装備とは,運動する際にあるといいトレーニング用品のことだ。とりあえず下記のものが揃えられるなら,日々の冒険(運動)が有利となるだろう。
・水筒やタンブラー
運動するうえで大事なのが水分補給だ。軽めに短い時間で運動するとしても,コップ一杯くらいの水は常備しておきたいところ。運動時間にもよるが,350ml〜500mlくらいの水筒やタンブラーは扱いやすく,また家に1つくらいはあると思うのでオススメだ。
・タオル
トレーニングの内容やメニューによって異なるが,軽めの設定でもしっかり運動できる分,快適に運動を続けるための汗対策が重要になる。リングコンを握り続けたり,レッグバンドをずっと巻いていたりすると汗も気になってくるので,使い慣れているタオルを1枚は用意しておくといい。
なお,リングコンのグリップとレッグバンドは丸洗い可能なので,こちらも定期的に洗濯すれば気になることも少なくなるだろう。
・ヨガマットとサポーター
本作は寝そべって行う運動が意外と多く,フローリングやカーペットの上だと肘や膝,腰,おしりなどを痛めてしまう可能性もあるので,それを予防する意味でもヨガマットはぜひ導入を検討してほしいアイテムだ。
足が滑りにくくなり安定した姿勢で運動できるようになるため,よりよい姿勢でトレーニングするうえでも欠かせない。また床への振動を抑えてくれるので,家の2階やマンションで使用するという人にとっては,下の階の家族や住人への配慮にもなって一石二鳥(?)だ。
関節の負担を軽減し,筋肉の動きを補助してくれるサポーターも,快適かつ安心して運動したい人に導入してほしいアイテムの1つ。こちらもヨガマット同様,性能を調べつつ予算にあったものを選んで購入しよう。
水筒やタンブラー,タオルなどは家にあるもので問題ない。ヨガマットやサポーターは家にない人もいると思うが,お店やネットで評判を調べて,「これなら出せる」という価格帯のものから試してみよう。
なお本作には,肩や腰,膝などを使う運動をボタン操作に置き換えられる「運動サポート」という機能がある。しっかりと各部位の負担を軽減できるので,「ヨガマットまではいいかな」という人はこちらの機能を活用するといいだろう。
ほかにもトレーニングウェアや室内用のフィットネスシューズなどもあると,より自分自身を“強化”できるが,とはいえ最初から高額のウェアや用具を揃える必要はない。「これからしっかりスケジュールを組んで運動するぞ!」と張り切って用具一式を購入したものの,三日坊主になって収納の奥に寝かすことに……なんて経験をした人も多いはず。
「布の服」や「こん棒」で物語が始まり,冒険が進むごとに強力な武器や防具に持ち替えていくというゲーム感覚で,まずは家にある着慣れたジャージやTシャツなどでスタートし,運動の習慣が付いたところで必要だと思ったら,より運動サポート性能の高いウェアや用具を揃えるか検討するといいだろう。
ゲームのやり込み要素や“自分で選ぶこと”が
自然とトレーニングの継続につながっていく
ゲーマーにとって本作で何よりの要素が,ゲーム自体がしっかりした内容でボリュームもあり,時間をかけて楽しめるところだ。冒険のメインとなっているバトルが,ゲームとして面白いのはもちろん,運動の継続につながる重要なポイントとなっている。
その中でも,バトルで使用するスキル(運動)のセットを自分自身で入れ替えられることは大きい。例えばゲーム側が用意したセットメニューを選ぶものだったら,そのメニューがしっくりこないと継続するのは難しくなる。戦う相手やステージによって決められたメニューだった場合も,“やらされている感”が嫌になって止めていたかもしれない。
自分でどこを鍛えたいか考えながら運動を設定できるし,「#脂肪燃焼」「#ぽっこりお腹改善」「#背筋の強化」といった表示があるため,1つの運動に飽きたとしても簡単に同じカテゴリ内の異なる運動に切り替えられる。さらに物語を進めていくと,通常のRPGよろしく新たなスキルを覚えていくので,長い旅路の中でセットが固定されて飽きてしまうこともないのだ。
また,リズムに合わせて連続でモモ上げをする「モモアゲアゲ」,床に座って両足を上げそれをパカパカと開閉する「アシパカパカ」といったように,スキル(運動)に“見た目そのまま”でユーモアある名前が付けられているところも嬉しいポイントだった。ひと目で運動の内容が分かるため,自分がその日やりたい運動を気軽にセットでき,これのおかげでトレーニングをしっかり継続することができた。
各種運動に設定された属性も,ゲームとしての面白さを生むだけではなく,運動の継続につながる要素となっている。
運動はその内容によって,黄色は腹筋,青色は足,赤色は腕,緑色はヨガと属性分けされており,敵の色に合った属性の運動をすると与えるダメージが大きくなる。基本的に一度のバトルではさまざまな属性の敵が登場するので,効率よく敵と戦おうとすると,結果的に各部位がまんべんなく鍛えられるのだ。
同属性の敵ばかりで連戦になったとしても,一度選んだスキルは連続して選べないため,違う属性のスキルを選ぶ流れがおのずと生まれる。複数の同属性スキルをセットしていても「青属性続きで足がもう動かない……ヨガで身体を落ち着かせて,呼吸を整えよう」といったように,疲れてほかの部位を動かす運動を挟もうと考えるのも,ゲーマーとしては当たり前だ。
このように“さまざまな運動を自分自身で選択する”という誘導が自然で,このあたりのゲームと運動のバランス取りは絶妙としか言えない。
攻撃力や防御力のアップ,経験値やお金の入手量増加,そしてHP回復と,さまざまな種類がある「スムージー」は,冒険を進めるうえで重要なアイテムだ。通常のゲームなら,町にあるショップに行き,冒険で入手したお金や素材を対価にアイテムを入手するところだが,本作ではこれも基本的に運動することで手に入るものとなっており,運動を続ける“引き”にもなっていた。
スムージーの材料はステージで入手できるのだが,作りたいスムージーの種類によって必要な材料は異なり,それらの材料が手に入るステージもさまざまだ。ステージ攻略に便利なスムージーを手に入れるためには,あらゆるステージを周回する必要があり,そのおかげ(?)でクリアしたステージでも何度も自身の筋肉を“追い込む”ことができる。この“自身の運動量”を対価に手に入れるところが,心にも筋肉にも響いた。
筆者は少しの運動量で効率よく材料を集めるため,ステージ中の入手アイテムが2倍になる「ごまスムージー」をよく使うのだが,もちろんごまスムージーを作るには材料がいるので,それを入手するためステージに挑むことになる。そうして手に入れた材料でごまスムージーを作り,それを使用してほかのスムージーを作るための材料を取りに行くことが多い。
……なんだか冗談のようだが,知らないうちにこの“軽めの運動量でアイテムを入手するためにごまスムージーを作ることを目的に,その材料が手に入れるステージに挑む”というルーティンが生まれ,気づけば逆に運動量が増え,“より動ける身体”になっていたのだ。
もちろんスムージー作りも身体を動かす必要があるのだが,これも“ゲーム中の回復アイテムを手に入れるため,プレイヤー自身の体力を絞り出す”みたいな不思議な感覚があって面白い。
ゲームを効率よく進めたいという気持ちによって
正しい姿勢で行う質の良い運動が生まれる
1人で自己流の筋トレをしていたころと大きく変わったのが,きっちりと正しい姿勢で運動できるようになったことかもしれない。
近年はSNSや動画サイトで情報を発信している人たちが多く,ジムに通ったり書籍やDVDなどを買ったりしなくても正しいトレーニング方法を学びやすい環境になった。しかし,それと実際に正しい動きや姿勢で運動できているかは別の話。いくら調べたことや学んだことを意識して運動したといっても,1人ではそれが本当に正しくできているかを確認しにくい。
実際,トレーニング後半で疲れたり飽きたりして動きが雑になって,「回数だけこなせばいいや」と自分を甘やかすこともあった。
そんな“手抜き”をすぐに指摘してくれるため,正しい姿勢をキープした運動が習慣付き,効率の良いトレーニングができるようになったのだ。
最初に正しい位置と姿勢でリングコンとレッグバンドを設定できたかどうかにもよるが,全体的にセンサーの精度は高く,スクワット系なら「もっとしっかり腰を落とさないといけないのか」,ツイスト系なら「もうひとひねり必要だったんだ」といった絶妙なラインで正しい姿勢での運動が学べる。連続した動きでも1つ1つをリアルタイムでチェックしてくれるため,少し乱れたとしてもすぐ修正できるのも嬉しい。
実は本作のバトルでは,この「正しい姿勢でしっかり身体を動かしたか」どうかによって攻撃力が変わる。つまり,正しい姿勢で運動ができていれば少ないターン(時間)で集中して効率よい運動できるし,逆であれば運動の効率の悪さだけではなく,ターン数が長くなって,バトルも不利になるというわけである。
このあたりは,「より効率的に,そして有利にバトルを進めたい」というゲーマー魂が働くことで運動姿勢も良くなるという,なかなかにくい仕組みとなっている。
そしてもう1つ,本作が自分の筋トレの日々に大きな影響を与えてくれたのが「トレーニングへの集中力を維持できるようになった」ことだ。
これまでの筋トレは,テレビや映画といった動画を流しながら行うことが多かったのだが,映像に意識が向かってしまい,トレーニングに身が入らないといったことも起きていた。筋トレだけに集中できるほどストイックにもなれず,とはいえ“ながら”だと運動自体も流したものになってしまう。このような理由で,運動を習慣づけたいけどうまくいかないという人は筆者意外にも多いのではないか。
自身の運動の成果がリアルタイムに,そしてダイレクトにゲーム内に反映される本作では,ゲームを効率よく進めることが「質の良い運動をする」ことにつながり,運動を怠けることが「ゲームで良い結果が生まれない」ことになるため,運動とゲームどちらかに意識が偏ったとしても,結果それはトレーニングの結果につながるのだ。おかげで筆者は1日15〜30分程度の短時間に集中してトレーニングできるようになり,日常生活にもメリハリが生まれたように感じている。
発売2か月を過ぎて本作を使ったトレーニングの習慣ができた筆者は,気づけば使い始めたころによく起きていた筋肉痛がなくなっていた。すべてが本作の影響かどうかは分からないが,自己流で筋トレを行っていたころに比べて正しい姿勢で運動できていることと,偏りなく全身をバランスよく鍛えられるようになったからだと考えている。試しに現在は「28」に設定している運動強度を,始めたころの「20」に下げてトレーニングをしてみると,当時はヒイヒイいって筋肉痛を起こしていたのがウソのように軽々とこなせるようになった。
全部で60種類を超える運動やヨガも,本作で出会うまでは知らなかったものが多く,「リングをこんな形でも使うの?」と驚かされることもたくさんあった。それらも間違いなく自分の筋トレ生活に新たな1ページを加えてくれたものとなっている。
プレイヤーの好みに合った運動量の調整や苦手な動きの簡略化,オーバーワークにならないように表示されるメッセージ,運動前と運動後のストレッチと,怪我なく安全に運動できるような配慮も素晴らしい。ほかにも,個性的なキャラクターと彼らの放つ独特のワードが面白いストーリーや,バリエーション豊かで見た目以上にキツいものがそろった「ミニゲーム」など,ここで紹介しきれない魅力も盛りだくさんだ。
“ゲーマーとしてのゲームに対する熱量が己の肉体を作り上げる”本作をぜひ体験してほしい。
「リングフィット アドベンチャー」公式サイト
- 関連タイトル:
リングフィット アドベンチャー
- この記事のURL:
キーワード
(C)2019 Nintendo