紹介記事
「遙かなる時空の中で」で魅力的なのは男性キャラだけじゃない! 神子たちの素晴らしさを開発チームへのインタビューと共にお届け
コーエーテクモゲームスの女性向けゲームブランド「ネオロマンス」の最新作となるNintendo Switch用ソフト「遙かなる時空の中で7」が,2020年6月18日に発売となった。「遙かなる時空の中で」(以下,遙か)シリーズは女性向け恋愛アドベンチャーのため,男性キャラクターが話題になることが多いが,実は主人公をはじめとする女性キャラクターも負けないくらい魅力的だ。実際に女性キャラクターの人気も高く,イベントでキャストが大歓声を浴びるほど。
筆者のような「カッコいい男性だけでなく可愛い&綺麗な女の子が好き」という女性ゲーマーは多いし,「遙か」シリーズのように「女性から好かれる女の子」の描き方に力を入れている作品も数多くリリースされている。
本稿では「遙か7」の発売に合わせて,シリーズの主人公である「龍神の神子」を中心とした女性キャラクターの魅力を紐解いていく。また,開発を手がけるルビーパーティーに,理想の主人公像をはじめとする女性キャラクターの作り方について,メールインタビューを行ったので,その模様も合わせてお届けしよう。
「遙か」シリーズとその主人公たちをおさらい!
「遙か」シリーズの舞台となっているのは,平安時代や鎌倉時代など,日本のある時代によく似た異世界。そこに召喚された主人公は,自身が龍神の神子であることを知り,「怨霊」によって危機に瀕した世界を救うため,「八葉」と呼ばれる四神の加護を付けた男性たちと過酷な運命に立ち向かう。
2020年は,第1作のPlayStation用ソフト「遙かなる時空の中で」(2000年リリース)の発売から20周年に当たり,ゲーム史を見てもこれほどの歴史を重ねているアドベンチャーゲームは珍しいだろう。いかに本シリーズが愛されているかが分かる。
舞台となる異世界は文化的な背景だけでなく,各時代の事件や偉人たちも史実とリンクしている部分が多い。主人公たちや「怨霊」の存在など,シリーズ独自の味付けを施しつつ,歴史を絡めた重厚なストーリーを構築しているのも「遙か」シリーズの魅力だろう。
本シリーズで平安時代の風習「物忌み」を知ったり,教科書を読んでもあまりピンとこなかった院政期に興味を持って調べ始めたり……といった筆者のようなプレイヤーもいるのではないだろうか。
本シリーズの大きな特徴の1つが,女性向けゲームには珍しくバトル要素があることだろう。システムは作品ごとに異なるが,バトルに慣れていないプレイヤーでも遊びやすい設計と,“五行思想”の相性を考えない力押しでは苦戦する絶妙なバランスは共通している。
また,怨霊との戦いという苦難を共に乗り越えることで男性キャラクターとの間に信頼関係が生まれ,それが恋に変化していく(最初から神子を大切に思ってくれているキャラクターもいるが)シナリオ展開が秀逸で,筆者は何度も涙腺を刺激された。
「遙か」シリーズの主人公は,現代に暮らす女子高校生たち。彼女たちはさまざまな因果で異世界へと導かれ,自分の使命の重さや,現代との文化・思想的な違いに戸惑いながらも,人々との出会いを通して世界の危機を知り,神子として成長していく。
恋愛アドベンチャーではあるが,恋愛だけではなく,主人公たちの内面的な成長がしっかり描かれていることもファンに愛される理由だと筆者は感じている。
また,主人公の性格は天然ボケや恋愛に対する鈍感さこそあるものの,無邪気さやあざとさは控えめで,内面的な強さや自立した姿勢が重視されていると感じる。それは女性が求める“女の子”の理想を描こうとしているからかもしれない。
それでは,歴代の主人公たちを振り返ってみよう。(※名前はデフォルトのもので,本編では変更可能)
元宮あかね(声優:川上とも子)
鬼の首領・アクラムによって,平安時代によく似た“京”に召喚される。彼女をサポートする八葉だけでなく,敵対関係にあるが複雑な事情を持つアクラムとの禁断の恋も……。通常の水干風装束のほか,ファンディスク「遙かなる時空の中で 舞一夜」では十二単姿を見ることもできる。
高倉花梨(声優:川上とも子)
前作から約100年後,院政が敷かれている“京”が舞台で,政治だけでなく,八葉たちも院派と帝派に分かれていた。主人公もどちらかの勢力を選ぶことになり,それによって八葉たちとのイベントも変化。複雑な人間関係にもめげずに使命をまっとうする主人公は応援したくなる存在で,恋愛が報われたときの喜びもひとしおだった。
春日望美(声優:川上とも子)
源平時代に似た異世界に飛ばされ,源氏の武者たちと一緒に行動していた主人公を待っていたのは,実際の歴史とは異なる悲劇だった。ある事情から“運命を上書きする”能力を手に入れた彼女は,その力を使って大切な人たちを救うために戦うことを決意。シリーズ初となる,自らバトルで戦う神子で,男性陣にも負けないほど勇ましい。最強キャラに成長させることもできる。
葦原千尋(声優:川上とも子)
龍神の神子や八葉のルーツが描かれる本作の主人公は,ある人物から,自分が異世界・中つ国の姫だと知らされる。故郷に帰った彼女は多くの人たちの手を借りながら,滅亡した祖国を復興させていく。彼女は物語中にある事情で見た目に大きな変化が起こるのだが,その姿もかわいい。
蓮水ゆき(声優:高橋美佳子)
シリーズ10周年記念作品。主人公は,留学から帰国するために乗った飛行機が事故に巻き込まれ,気がつくと幕末に似た異世界にいた。彼女は不思議な“時空の砂時計”で現代と異世界を行き来して運命を変えられるが,その代償として自身の「命のかけら」が少しずつ失われていく。美しくも儚い雰囲気と,文字通り命がけで頑張る姿が健気で,守ってあげたくなる主人公だ。
高塚 梓(声優:斎賀みつき)
祖母のお見舞いに行った主人公は,怨霊が蔓延る異世界の帝都・東京に召喚される。彼女は鬼の首領・ダリウスと出会い,彼らの棲む蠱惑の森で暮らすことになるのだが,鬼の一族と帝国軍の思惑に巻き込まれることに……。冷静な性格で,見た目もクール系美人なのに,不意に見せるかわいらしい部分に筆者は何度萌えたかわからない。また,シリーズ作品で初めて「黒龍の神子」(詳細は後述)が主人公になったことでも,発表時から話題になった。
本稿を書くために改めてシリーズをプレイしたり,設定資料集に目を通したりしたのだが,歴代の主人公たちは性格的にも,漫画家の水野十子先生によるキャラクターデザイン的にも魅力的な女の子ばかりだと再認識した。
プレイヤーの分身でもあるため,尖った個性を持たせることはせず,それでいて選択肢や服装などでさりげなく人柄を感じさせる演出がなんとも心憎い。物語の主人公としても,憧れたり,背中を押したくなったりと,好感が持てる女の子になっている。
女の子同士の絆も尊い!
「遙か」シリーズには,主人公以外にも個性豊かで華やかな女性キャラクターたちが多数登場する。その中でも特に印象深いのが,主人公と対になるもう1人の神子たちの存在だろう。
龍神の神子には,陽の気を司る白龍に選ばれた「白龍の神子」と,陰の気を司る黒龍に選ばれた「黒龍の神子」の2人がいる。白龍の神子は黒龍の神子の後に召喚され,怨霊による穢れに弱いため,八葉が役目の補佐としてつくのが習わしだ。
龍神の神子たちは,敵や政治の思惑によって敵対関係になる場合もあるが,本質的には強い絆で結ばれていて,深い友情を育むことができる。さらに一部のキャラクターとは,個別イベントや友情エンドも用意されているのだ。
お互いのことを知るなかで対立が解消されていったり,女の子同士だから気軽にできる恋の話で盛り上がったりと,攻略対象の男性たちと過ごすのとはまた違った嬉しい時間を楽しめる。そんな彼女たちを紹介しよう。なお,「遙かなる時空の中で4」には,主人公と対になる神子は登場しない。
ラン(声優:桑島法子)
鬼の一族・アクラムに仕えている少女で,感情に乏しく,どこか人形のような雰囲気をまとっている。しかし主人公と話すうちに自分を取り戻していき,かわいい笑顔も見せてくれるようになる。
平 千歳(声優:桑島法子)
院によって認められた龍神の神子だが,主人公同様に鬼の一族や政治の思惑に利用されている。幼いころから強い力を持っていたため,兄以外には気味が悪がられてきた辛い過去があり,本当は共にいられる存在を求めているのがなんとも切ない。
梶原 朔(声優:桑島法子)
黒龍とは恋人同士だったが,平家によって彼が消滅させられて,尼僧になる。異世界に来た主人公を優しく見守ってくれるお姉さんのような存在で,彼女が教えてくれた“舞”が重要な役割を果たすことも。
八雲 都(声優:斎賀みつき)
少年と見間違うほど凜々しい主人公の親戚。黒龍の神子としての強い力のせいで家族の愛に恵まれず,孤独から救ってくれた主人公のことを過保護なくらいに大事にしている。
駒野千代(声優:高橋美佳子)
京都の商家の一人娘で白龍の神子に選ばれ,帝国軍に身を寄せている。あまり身体は強くないが,前向きで気丈ないい子。どうやら郷里に好きな人がいるようで……。
ほかにも,龍神の神子に仕える星の一族や,敵対する鬼の一族などの女性たちが物語に彩りを加えてくれる。
懸命に己の役目や願いのために生きる彼女たちには共感できる部分があり,敵であっても完全には嫌いになれないのだ。
「遙か7」ではどんな女性たちとの出会いや,イベントが待っているのか。本編を遊ぶのが待ち遠しい。
ルビーパーティーに神子たちのことを聞いてみた!
「遙か」シリーズの生みの親であるルビーパーティーに,魅力的な主人公や女性キャラクター作りの秘訣,最新作「遙か7」に登場する女の子たちの魅力を聞いたので,その模様をお届けしよう。
4Gamer:
「ネオロマンス」シリーズには,たくさんの魅力的な主人公が登場しています。「遙かなる時空の中で」シリーズ,または「ネオロマンス」作品における主人公の理想像はありますか?
ルビーパーティー:
ネオロマンス作品全体ですと,本当にいろいろなタイプの女性が揃っていると思います。「金色のコルダ」など,まったく台詞が登場しない表現方法もあります。
ですので,主人公の理想像とは,ユーザーの分身としてその物語に共感・没頭していただける,心の相棒のような存在でしょうか。
「遙か」シリーズは,越えるべき様々な運命と直面し,戦っていく役目が主人公に課されているため,芯の強さが自然と描かれるようになっていますね。
4Gamer:
主人公はプレイヤーの分身ともなるキャラだけに,性格・個性の付け方が難しい部分もあると思います。こだわっている点や,気をつけていることを教えてください。
ルビーパーティー:
主人公は物語の運命を背負っていますので,その個性が作品の象徴物と紐付けられることも多いです。たとえば「遙か3」の「月」,「遙か5」の「雪」などですね。なお,物語上では詳しくは描かれないこともありますが,家族や趣味,育った環境なども詳細に設定されています。
4Gamer:
発売後やキャラクター発表後の反響には,どのようなものがありましたか?
ルビーパーティー:
毎タイトル,本当に多くのご意見・ご感想をいただき,いずれも感謝の心で受け取っております。
「遙か」シリーズのファンの方は作品が和風の世界観からなっているためか,美しい季節折々の装飾が施された便箋で感想をしたためて送っていただくこともあり,温かい心遣いに開発一同励まされております。
4Gamer:
主人公の現代と異世界(平安,戦国時代など)が融合した衣装も素敵です。キャラクターデザインを手掛ける水野十子さんにオーダーする際,指定している要素はあるのでしょうか。
ルビーパーティー:
キャラクターの人物,性格と簡単な外見イメージ設定をお送りしてデザインを起こしていただくのですが,いつも水野先生は複数案を送ってくださり,こちらが想定していた以上のものを提案してくださいます。
たとえば今回の「遙か7」の主人公はミニスカートにタイツですが,いただいたデザインにはパンツスタイルやロング丈のものもあって,どれも可愛くかっこよく,美しかったです! その分,デザイン選定は悩ましくなるのですが……。
「乱世の運命を越えるBOX」同梱の「原画資料集」では,デザインラフ全点が掲載されていますので,もしそちらがお手元に届くようでしたらデザイン決定版はどこから採用されたのかを確認するのも楽しいかもしれませんね。
4Gamer:
「遙か」シリーズには,対となる神子など,主人公以外にも魅力的な女性がたくさん登場します。彼女たちの描き方についてのこだわりを教えてください。
ルビーパーティー:
過去作の中には,個別のルートやエンディングがある女性キャラクターがいます。友情を育み,彼女たちとの運命を乗り越えていく……という女性同士ならではのドラマも重要視しています。
今回の「遙か7」には女性キャラクタールートこそ明確に存在しませんが,鬼や星の一族という重要なポジションに女性が存在します。彼女たちとのドラマもしっかり描いていきますので,ご注目ください。
4Gamer:
主人公の戦闘ボイス収録や,キャラクターソングのレコーディングで気をつけている点を教えてください。
ルビーパーティー:
キャラクターボイスは,音響監督やキャストご本人と最初の収録で一緒に役作りをします。
「遙か7」のキャストのみなさまは「遙か5」から3作連続でのご出演ということで,それぞれの役の背景を読み込んだうえで収録に臨んでくださいました。いずれのキャラクターも命を吹き込まれ,より魅力的になったと思います! ゲームプレイでご堪能いただければと思います。
「遙か7」の主人公,天野七緒はどのような女性でしょうか?
ルビーパーティー:
一言で言えば,決断する女性です。白龍の「前に進む」という性質が七緒の性格にも表れています。障害に突き当たっても決して立ち止まらず,どんな状況でも何かできることはないか考えて行動に出る,そういうところは父親の信長によく似ていると思います。
4Gamer:
主人公をサポートしてくれる星の一族の筒見屋姉妹,鬼の一族ターラについて注目してほしい点はどこでしょうか。
ルビーパーティー:
つばきは穢れを浄化し,世界に龍神の加護を取り戻すという目的に向かって一緒に進む頼れる仲間です。立場的には龍神の神子に仕える星の一族ですが,それを越えた年上の友人のような存在です。
南蛮貿易を行っている堺の大商人で,今風に言えば女性経営者ということになるでしょうか。有能なビジネスウーマンらしく,主人公のことをばっちりサポートしてくれます。友情は時として恋よりも頼りになる――場合によってはそう思うときが来るかもしれません。
あやめは,「わたくし,いっぱい頑張ります!」と張り切って,主人公の身の回りの世話や占いの仕事をしてくれます。その可愛さ,健気さに癒やされます。
一生懸命仕えてくれる点では「遙か」の藤姫や「遙か2」の紫姫と同じですが,その2人よりもう少し活発な感じです。
主人公の行く先々に付いてきてくれる,ある意味一番強い絆で結ばれた相手かもしれません。
ターラはゴージャスなブロンド美人で,主人公にとっては手強い敵です。女性の星の一族が久し振りに出てきたように,女性の鬼の一族も久し振りに登場しますが,彼女がどういう運命をたどるかはルートによって大きく変わります。
主人公と立ち位置は逆ですが,ターラもまたこの時代の歴史の流れに翻弄される1人だと言うことができるかもしれません。
4Gamer:
最後に,4Gamer読者にメッセージをお願いします。
ルビーパーティー:
2019年の4月にこのプロジェクトが正式に発足してから,長いようで短い開発期間を経て,ようやく「遙かなる時空の中で7」を皆様のお手元にお届けできるようになりました。
どうか主人公の七緒や八葉たちとたくさんの喜び哀しみを共にしながら,乱世を最後まで駆け抜けてください。
プレイする皆様の心に残る作品になれば幸いです。
4Gamer:
ありがとうございました。
攻略対象となる男性キャラクターはもちろん,主人公たち女性キャラクターもこだわりと愛をもって作られている「遙か」シリーズ。
最新作「遙か7」が気になった人はぜひプレイして,本作の奥深い物語や,かわいい女の子たちの魅力を味わってほしい。2章まで遊べる体験版も配信中なので,「遙か」シリーズ未体験の人は,そちらからプレイしてみるのもいいだろう。
「遙かなる時空の中で7」公式サイト
イラスト/水野十子
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