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大ボリュームのVRアドベンチャー「東京クロノス」リリース直前イベントをレポート。クリエイター陣が開発の裏話を披露
東京クロノスは,クラウドファンディング(関連記事)を始め,開発段階からさまざまなプロモーションを行ってきたが,その集大成として3月18日に「『東京クロノス』制作共犯者ミーティング Final」と題したイベントが,ゲームの舞台と同じ東京・渋谷で行われた。本稿では,開発陣と声優陣が出演したイベントの模様をレポートしていこう。イベントの模様はYouTubeライブでも配信されており,アーカイブで確認もできる。
イベントの司会進行は,桃野夕役の木戸衣吹さんと,MyDearestの代表取締役兼東京クロノスの総合プロデューサー岸上健人氏が担当。同時に柏倉氏と三木氏,さらに東国ユリア役の柚木尚子さんと,主人公・櫻井響介役の上村祐翔さんも登壇し軽快なトークを展開した。
「画面の向こう側へ行くアドベンチャーゲーム」をテーマに制作されたという本作。その進捗状況について,発売直前ということもあって岸上氏は「できてます。自信があります」と発言した。続けて氏は,「皆さんのおかげで東京クロノスは血の通ったものになったと思います。ありがとうございます」と,クラウドファンディングで協賛してくれた人,イベントに参加してくれた人やSNSなどでコメントを寄せてくれた人など,作品に関わったすべての人に向けて感謝の言葉を述べた。
「狼と香辛料」の支倉凍砂氏も登壇した開発者裏話トーク
ステージでは,木戸さん,柚木さん,上村さんの3人による朗読劇が行われた後,開発者の裏話も明かされた。岸上氏,柏倉氏,三木氏の3人のほか,シナリオを担当した小山恭平氏,落合祐輔氏も登壇し,制作にまつわるエピソードを聞かせてくれた。
東京クロノスは,岸上氏が企画書を三木氏に持ち込んだことからスタートしたという。三木氏は「(岸上氏の)意気込みがすごかった」と当時を振り返りつつ,VR専用タイトルということで機材の普及率など懸念材料がある中でも,企画そのものに魅力を感じて賛同した説明する。こうして,ビジュアルを映像のプロである柏倉監督が担当し,シナリオをプロデューサーとして携わる三木氏が監修する布陣ができたわけだ。
メインのシナリオライターである瀬川氏については,VRに興味がある若い世代のミステリ作家ということで,白羽の矢が立ったとのこと。ちなみに,VRのゲームなので,三木氏は最初1〜2時間プレイできる程度のシナリオなのかと思っていたそうだが,岸上氏から出された提案は,普通のアドベンチャーと同等のボリュームだったそうだ。これは文庫本でいう3〜4冊分に相当する分量となるため,瀬川氏と親交のあった小山氏と落合氏がプロジェクトに合流することになる。
これに関して,落合氏は「VRで東京クロノスのような本格的なアドベンチャーというのは初の試みです。この企画に自分も協力したいと思いました」と快諾したそうだ。小山氏が,岸上氏から熱烈なメッセージをもらったと打ち明けると,岸上氏の行動力や企画に対する熱量の凄さに話題がシフトし,岸上氏にまつわる逸話が暴露されていく。文字に起こすと単なる迷惑行為に思われてしまいそうなので詳細は省くが,どこか楽しそうに話す出演者の顔を見る限り,岸上氏が発揮する情熱が求心力の一端を担っていることは間違いなさそうだ。
なんとか完成に漕ぎつけた東京クロノスについて,岸上氏が三木氏に率直な感想を聞くと,「スケジュールが厳しすぎる」とコメント。氏は,自身が何度も校正を行うタイプであるとしたうえで,優先順位を決めて仕事に取り組んでいるが,スケジュールが厳しすぎるために,どうしても東京クロノスの優先順位を上げざるを得ない場面があったという。「ソードアート・オンラインの原稿を差し置いて(東京クロノスの原稿を)読んだことがある」と打ち明けると,会場からは大きな笑い声が上がった。
開発者トークの中盤から,「狼と香辛料」の原作者である支倉凍砂氏がサプライズゲストとして登場した。狼と香辛料は現在VRアニメーションのプロジェクトが動いており,VRつながりのゲストである。ちなみに,狼と香辛料もクラウドファンディングを行っており,その成果は……東京クロノスの数倍を達成したとのこと。
アニメ版のスタッフ/キャストが総揃いの「狼と香辛料VR」だが,声優事務所への連絡など細かいディレクションも支倉氏自身が行っているという。支倉氏への負担は大きくなるが,原作者のエッセンスが随所に散りばめられていると考えるとファンにとっては嬉しいのではないだろうか。
では,なぜ狼と香辛料をVRアニメーション化することになったのか。そのきっかけは,支倉氏のサークル宛てに海外から届いたモーションキャプチャスタジオからの売り込みメールだったという。そのメールの差出人が日本に来ているタイミングで会ったとき,狼と香辛料なら海外でも人気が出るはず,と半ば説得される形でプロジェクトをスタートすることになったとのこと。
ただ,そのスタジオは,AAAタイトルのゲームやハリウッドの下請けをするような大きな会社だったこともあって,残念ながら一緒に仕事することはなかったようだ。
東京クロノスの印象について聞かれた支倉氏は「ボリュームがあり得ない」と感じたそうだ。氏は,狼と香辛料VRでは,1時間のボリュームでも相当な費用/作業量があったと明かしたうえで,東京クロノスのエンディングまでのプレイ時間(15時間程度)は信じられないボリュームだと述べる。
また,支倉氏は東京クロノスのユーザーインタフェースは良くできているとも話す。さらに背景も良いと話すと,岸上氏は渋谷のスクランブル交差点を約8000ポリゴンで表現していると説明した。
支倉氏は,東京クロノスでは同時に表示されるキャラが多いことにも驚いていた。しっかりと描かれたキャラをVR内で表示しようとすると限界があるが,東京クロノスではどうなっているのかは,実際にプレイして確かめてほしい。
後半には,出演者への質問をTwitterを通じて募集するコーナーも設けられた。「どのキャラを友達にして渋谷で遊びたいか」という質問に,柏倉監督は東国ユリアをチョイス。その理由は「振り回してくれそうだから」。小山氏は悩み相談を聞いてくれそうな神谷 才,落合氏と三木氏はひたすらかわいい桃野 夕を推す。支倉氏はクールな印象の二階堂華怜が気になるようだ。そして,岸上氏は一部で熱狂的な人気になっているという両角 愛の名前を挙げた。
東国ユリア |
神谷 才 |
桃野 夕 |
二階堂華怜 |
また,VRサービス「cluster」の中で,「東京クロノス最速ネタバレありクリエイタートーク in VR」というイベントを,2019年3月30日19:00から行うとアナウンスがあった。柚木さんも参加するというこのイベントは,ネタバレありということでゲーム本編をクリアしていることが参加の条件だ。
東京クロノスの配信はもう間近。大ボリュームのVRアドベンチャーがどんな仕上がりになっているのか,楽しみにしたい。
「東京クロノス」公式サイト
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