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[GDC 2022]「Halo Infinite」のマルチプレイヤーBOTは,ゲーマーを研究することによって生まれた
BOTとは,マルチプレイモードの対戦相手が揃わないときに穴埋めしたり,練習相手として一緒にプレイしたりしてくれる,AI制御の仮想敵のこと。「Halo Infinite」においても,マッチの途中で相手や味方が抜けた際に,自動的にその役目を担ってくれる。
本作は,PC,Xbox Series X|S,Xbox One向けに同時リリースされただけでなく,Xbox Game Passでのデイワン・ローンチも決定していたので,343 Industriesでは普段はFPSを遊ばないようなカジュアル層も気楽に参加するだろうと予想していた。
BOTが強過ぎると,彼らが楽しいと感じる前にプレイしなくなってしまう恐れがあるため,彼らのレベルに順応できるBOT作りが大きな課題だ。しかし,2001年にリリースされた第1作から20年以上もプレイしているベテラン勢も少なくない人気シリーズだけに,そうしたコア層も満足できるものに仕上げなければならない。
そこで設定されたマルチプレイヤーBOTの目標は,以下のようなものだった。
1.ゲーマーが練習するのを助け,Halo Infiniteで成功できるよう誘う
2.新しいプレイヤーを含む,さまざまなスキルレベルに合わせたプレイを提供する
3.プレイヤーの意欲を高め,より手ごわい対戦相手の代用になり得る
この目標を実現するために考案されたのが,プレイヤーのスキルレベルを4段階に分けるというものだ。
「レベル1」(Recruit Bot):まだボタンの操作もうまくできない初心者。立ち止まってカモになることも多い
「レベル2」(Marine Bot):操作はこなせるが,武器やアイテムの用途や性能を理解していないプレイヤー
「レベル3」(OSDT Bot):一通りの対戦はこなせるが,例えば“キャプチャー・ザ・フラッグ”で旗を取りに行くタイミングなどを理解できていない段階
「レベル4」(Spartan Bot):複数の相手と対峙するときに,マップのどの地点で戦うのが効果的かといった,ゲームの流れやマップに精通しているプレイヤー
「Halo」シリーズに限らず,多くのFPSでは相手の攻撃をかわすために,ジャンプを繰り返したり方向転換を行ったりといった予測の付きにくい動きを行うが,ピョンピョンと跳ねるような動作を形容して,英語では「コンバット・ダンス」などと呼ばれる。
スターン氏は,このコンバット・ダンスに必要なスキルは何なのかを分析し,前後,左右,上下に移動を行う「Strifing Skill」,ヘッドショットなど,効果的に相手にダメージを与えるための「Aiming Skill」,いつどこで手りゅう弾を投入するかを判断する「Grenade Use」,的確に至近距離で相手を攻撃する「Melee Skill」,そして「逃げる/追いかけるタイミングへの理解力」の5つを規定した。
中でもスターン氏の解説で面白いと思ったのが,手りゅう弾とメレーコンバットだ。レベル1のプレイヤーは手りゅう弾の存在さえ知らず,使うことはほとんどない。レベル2になるとグレネードを思い出したときに使うが,レベル3になると相手に出会った瞬間や,死に際に投げたりする。レベル4のプレイヤーは,自分が相手に行ってほしくない場所に手りゅう弾を効果的に投げるといった具合で,歴然とした差が出てくる。
メレーコンバットも同様に,相手のシールドダメージなどを余裕をもって判断したり,相手にスキを与えずに飛び込んだり,逆に相手に不意打ちを浴びない距離を把握したりといった,ゲームへの理解が必要となる。ただ,BOT制作においてこの調整は難しく,タイミングをずらしたり減らしたりしてもBOTのメレーは効果的過ぎて,ベテランのテスター達でもやられっ放しの時期が長く続いていたという。結果として,人間プレイヤーにはない“クールダウン時間”がレベルに合わせて設定されることになった。
また,最後の「逃げる/追いかけるタイミングへの理解力」は,AIプログラマー達にとっての力の見せどころだった。対戦相手と出会って小競り合いが発生した際,劣勢になって後退するかどうかという判断は,残弾量や相手との距離,自分や相手の現在のシールドの状況,カバーや高低差のある地点があるかなど,さまざまな材料を基に行う。
BOTにも,そうしたさまざまなパラメータから判断し,「自信を喪失して撤退する」という人間的な思考を与える必要があった。逆に,相手が逃げた原因を推測し,追いかけるべきかどうかという複雑な判断も,プレイヤーのスキルレベルに応じてBOTに取り入れられているとスターン氏は解説した。
FPSにおけるBOTは決して新しいコンセプトではないものの,BOTが硬すぎるとか弱すぎるといった話はよく聞くし,本作においても例外ではない。今回の講演では,スターン氏ら343 Industriesのデザインチームが,より幅広いゲーマー層に対応できるだけの深みのあるBOTを作り出そうと試行錯誤していたことが十分に伝わってきた。その成果を,本作に飛び込んで体験してみるのもいいだろう。
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