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なぜかゲームがうまくなる? NVIDIAブースでウワサの360Hzディスプレイを体験
確かに,NVIDIAのTuring世代コアのGPU新製品ラッシュは,一段落着いた感もある。タイミング的に何かをセンセーショナルに発表するとなれば,3月22日から開催予定のNVIDIA GPU Technology Conferenceあたりを想定しているのかもしれない。
とはいえ,まったく新ニュースがなかったわけでもなく,目玉の新ハードウェア技術の発表もあるにはあった。その筆頭に挙げられるのは,リフレッシュレート360Hzに対応した新世代G-SYNC対応ゲーマー向けディスプレイ技術の発表だ。
実際,ラスベガス市内のホテルの一室に展開されたNVIDIAのプライベートブースでは,実際にその「フレームレート360fps」表示の優位性を体験することができた。まずは,ここからレポートすることにしたい。
G-SYNC 360Hzの効果はいかほどか?
「ゲームが360fpsで動いています。動きがスムーズでしょ」というデモでは,いまいちピンとこない。そこでNVIDIAブースでは,「フレームレートは高ければ高いほど,すべてのプレイヤーにとってプレイしやすくなる」という持論を,身をもって体験してもらうため,来場者に2つの体験型デモに挑戦してもらうような展示を行っていた。
1つは,ごく幅の狭い隙間を素早く横切る10体の敵兵キャラをライフルで狙撃するチャレンジゲームだ。当然多く狙撃できたほうが好スコアとなる。最初はゲームを60fpsで動かして挑戦し,続いて同じ挑戦を360fpsで行う。
筆者は反射神経は悪くないほうだが,60fpsでのプレイでは1体も狙撃することができなかった。これが,同一シーンを360fpsでプレイすると半分の5体を狙撃することができた。敵を認識してから狙撃用のマウスクリックを行うまでの操作遅延が起きているからこそ,狙撃に失敗しているわけだが,360fpsでは,隙間を横切る初動の動きがよく見えるため,結果的に敵の認識が早まったようである。
2つめは,プレイヤーを中心とした360°円周上にランダムに出現する敵兵を45秒間内に何体頭部狙撃できるかを計測するものだ。敵兵は出現後,左右にランダムな横ステップで動くので,敵兵を見つけてから狙いを定める必要がある。
筆者のプレイ測定結果は60fpsで10体,360fpsで16体だった。
360fpsのほうが,敵兵の左右のランダムステップが見やすい。「頭部を狙いやすい」という直接的な効能よりは「敵兵の頭部が動いた先を狙いやすい」という実感が強かった。
担当者によると,だいたいのプレイヤーが,2つのテストで筆者と同じような結果になるとのこと。フレームレートが上がると,プレイヤーの操作遅延も減少するので,そういった部分も360fps時の好スコアにつながっているのだとは思う。前出の担当者によると,360fpsでプレイの鍛練を積むと,次第に60fps時のプレイのスコアも上がっていくとのこと。その原理はよく分かっていないようだが,もしかしたらインターチェンジ効果(高速な動きに目が慣れてくると,それまで早くて追従できなかった早い動きに対応できる現象。高速道路から下りたときのインターチェンジで同様な感覚になることから名付けられた)的なことが起きているのかもしれない。
NVIDIAとしては,「360fpsで既存のゲームがプレイしやすい」のはもちろん,「360fpsで鍛練を積めばそのゲームがうまくなる(かもしれない)」というストーリーで,この「G-SYNC 360Hz」を訴求していきたいようである。
この2つのミニゲームチャレンジとは別に,よくあるフレームレート別に映像を横スクロールさせて,その見え方の違いをアピールするG-SYNC 360Hzのデモ展示もあった。こちらは,筆者がソニーのRX100M6にて,毎秒960コマで撮影した40倍スロー映像(下記)を見てもらうと,「360fpsがどのくらいフレーム数が多いか」が分かりやすいと思う。
さて,気になる「G-SYNC 360Hzでプレイできるゲームタイトルにはどんなものがあるのか」という点だが,現在,GeForce RTX 2080 Tiを搭載したシステムにおいては「Counter-Strike: Global Offensive」「Rainbow Six: Siege」「Overwatch」「Fortnite」などで360fps動作が確認できているとのことだった。
G-SYNC Ultimate対応製品,G-SYNC Compatible対応有機ELテレビなども展示
NVIDIAプライベートブースでは,このほか,NVIDIAが発表した独特な技術のデモがいろいろと展示されていたので,それらも軽く紹介しておこう。
1つは「G-SYNC Ultimate」である。これは昨年のCES 2019で発表されたプレミアム版「G-SYNC」ともいうべきもので,「可変フレームレートの映像をスムーズに表示させるメカニズム」を提供するベーシックなG-SYNCに対し,追加で,
- G-SYNC HDR(関連記事)対応
- エリア駆動バックライトシステム搭載
- 4K/144HzのIPSパネル採用
- DCI-P3色空間対応
- 中間調応答速度4ms以下
などの条件を満たし,さらにNVIDIAが規定した映像表示品質テストをパスした製品に与えられる称号だ。
ブース内に展示されていたデモでは,G-SYNC Ultimate認証をパスしたASUSTeK Computer(以下,ASUS)のminiLEDベースのバックライトシステムを搭載した「PG32UQX」やAcer「Predator X32」を用い,両機で最大輝度となる1400nitに近い高輝度表現が体験できるようになっていた。
またNVIDIAは,昨年のCES 2019で,事実上のVESA Adaptive Syncに対応した「G-SYNC Compatible」を発表したわけだが,NVIDIAはこのG-SYNC Compatible対応が,一般的なテレビ製品にも波及し始めていることをアピールしていた。
ブース内で展示していたのは,LGのテレビ製品だ。LGは,G-SYNC Compatible対応に積極的だそうで,2019年は9機種,2020年には,さらに追加で12機種を発売すると予告しているそうだ。
このほか,映像制作分野向けの新製品なども展示されていた。
おまけ:DLSSの秘密
DLSS(Deep Learning Super Sampling)は,NVIDIAが誇る,推論アクセラレータに相当するTensorコアを活用して,レンダリング結果に対してさまざまなポストエフェクトを適用する仕組みのことだ(関連記事)。
DLSSでは,さまざまなポストエフェクト機能がラインナップされているが,気になるのがそのAI処理の要となる「学習データ」が,どうユーザーのもとに提供されるのか,という部分だ。
これは,GeForceドライバやコンパニオンソフトのGeForce Experience経由で供給されるものと理解している人も多いのではないかと思うが,実際には,DLSS対応のゲームプログラム側に内包されているのだという。なので,GeForceドライバやGeForce Experienceをアップデートしても,「そのゲームのDLSS」は進化しない。逆に,そのゲームがアップデートされた際には,ゲーム開発元がより新しいDLSS用学習データを組み込んでいれば,DLSSの処理結果に違いが表れることはあるかもしれない。
ただ,学習データの生成を担当するのはNVIDIAの役割なので,既存の学習データが,開発中のそのゲームと相性が悪いと判断されたときには,そのゲームに最適化された専用のDLSS用学習データを別途用意するケースもあるのだとか。たいていのケースではゲーム開発元はDLSS開発キットに含まれる「汎用の学習データ」を利用することになるとのこと。
豆知識的な情報だが,GeForce RTXマニアの人は覚えておいて損はないはずだ。
NVIDIAのCES 2020に関する当該ポスト(英語)
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