インタビュー
レジェンドクリエイターが名を連ねる「WORK×WORK」はどんなゲームに仕上がったのか。山中拓也プロデューサーとグラフィックスの今川伸浩氏に聞いた
企画に山根敬洋氏,シナリオに井上信行氏,グラフィックスに今川伸浩氏,サウンドに増子津可燦氏と,数多くの名作ゲームを世に送り出してきたレジェンド達が集結し,「今,自分達が作りたいモノ」を目指して開発が進められたという。
そんな本作について,「MOTHER3」や「聖剣伝説 LEGEND OF MANA」などでグラフィックス制作・アートディレクターとして活躍した今川氏と,本作のプロデューサーを務めるフリューの山中拓也氏に話を聞かせてもらった。
「WORK×WORK」公式サイト
レジェンドスタッフ達の秘蔵企画
4Gamer:
本日はよろしくお願いします。さっそくですが,まず本作の開発経緯からお話いただけますか。
ちょうど「Caligula Overdose/カリギュラ オーバードーズ」の開発に着手した頃に,音楽をお願いしていた増子さんから「仲間うちで考えている企画があるんだけど,混ざらない?」というご相談を受けたんです。それで企画書を見せてもらったら,なんだかすごい人達がコソコソと楽しそうにやっているのが分かったので,「ぜひ,やらせてください」と(笑)。
その時点で,すでに「WORK×WORK」のプロトタイプができており,パブリッシャを探すだけという段階だったので,フリューでもスムーズにプロジェクトを通過させることができました。それ以前の,例えばどうやって企画が立ち上がったのかなどは,今川さんのほうが詳しいのでは?
4Gamer:
それでは,今川さんが「WORK×WORK」のプロジェクトに加わった理由などを教えてください。
今川伸浩氏(以下,今川氏):
自分はかつて,「WORK×WORK」でシナリオを手がけている井上さんと一緒に「MOTHER3」などを開発していたんです。今回,その井上さんから「こういうゲームを作っているんだけど,グラフィックスをやってくれないか」というオファーを受けたのが始まりでした。
4Gamer:
それは,いつ頃の話ですか。
今川氏:
かなり前ですね。2016年に焼き鳥屋で2人で話をしたことを覚えています。井上さんが,簡単な仕様書というか企画書のようなものを用意していて。その時点ではノリこそ今と変わりませんが,ゲームとしてはもっとミニマムな内容でした。
山中氏:
僕が企画書を見た段階ではスマートフォン向けのステージクリア型RPGで,そこに今川さんのドット絵がフィーチャーされる,といった感じのゲームでしたね。
キャラクターに特化するのではなく,システムを掘り下げるような企画で,それだけでも十分面白いゲームになりそうだったんですが,僕は「せっかくこれだけのメンツが揃ったんだから,コンシューマゲームとしてやりたい」と考えたんです。お話いただいたときに真っ先に話したのが「コンシューマに作り直してもらいますが,いいですか?」という相談でした。
4Gamer:
コンシューマゲームにするにあたって,具体的にどんなところを膨らませたのでしょうか。
山中氏:
もともとの企画ではステージを次々にクリアしていくような遊びを主軸にしていたのですが,僕が加わってからは大きな根幹となる話を用意して,ストーリーを見せていく流れに変更しました。井上さんの書かれるシナリオとキャラを,もっとダイナミックに大きな展開で活かしたかったので。
一方で,ドット絵の可愛らしいキャラクターがラバーストラップのようにグネグネ動くというユニークな部分はこのメンツならではのものですから,なくさずに活かす方向に。
4Gamer:
最初の頃のストーリーは,どんな内容だったのですか。
山中氏:
実は,オレ様王子こと“18”と,ダメバイトの“ポチ夫”がいなかったんです。最初から,プレイヤーがダンジョンのインストラクターとなって,そこにやって来るいろんな仲間と一緒に冒険する……という形ではありましたが,王子とポチ夫という2人のキャラクターが加わったことで,ゲーム全体が変わっていきました。今川さん達からすると,最初に想定していたよりもかなり作業量が増えたんじゃないかと思います。
本当にものすごくボリュームアップしました。これはまさにコンシューマゲームの開発だなと。
4Gamer:
「WORK×WORK」の公式サイトでは,名作を手がけたゲームクリエイターが“今,作りたいRPG”を目指したという旨が書かれていますが,具体的にどんな部分を指しているのでしょうか。
山中氏:
例えば,敵キャラとして「オクラ」が出てくるんですよ。あとは登場人物のジジイ率がやたらと高かったり(笑)。そんな風に,「本当にコレがやりたいんだろうな」というのが端々から伝わってくるんです。
本来,プロデューサーである僕はゲームがもっと売れるように,もっと広い層に手に取っていただけるようにコントロールするべきなのですが,本作のクリエイターの皆さんにとって,そうした“王道”はすでにやりきった感覚があるのではとも思っています。「WORK×WORK」には,そんな王道からあふれ出た“もろみ”や“おり”がたくさんあって,それを捨ててしまうのではなく,すくい上げて世に出すのが僕の役目なんじゃないかと。
今川氏:
デザインに関しては,かなり裁量を任せてもらえたので,すごくやりきったと感じられました。とくに,今までだったら描かなかったようなモンスターも,このゲームならではの存在として楽しく描けましたね。
4Gamer:
デザインについては後ほどじっくり聞かせていただければと思いますが,なぜか食べ物をモチーフにしたモンスターが多いですよね。
山中氏:
そこは,半ば思いつきでやっている部分でもあるんです。クリエイターの皆さんの「こういうのがあったら面白いんじゃないか」という思いつきの最大の犠牲者が,今川さんじゃないかと。何を言っても今川さんが可愛らしく仕上げてくるので,悪ノリしてしまうというか(笑)。
2人のメインキャラクターを始め,一癖も二癖もあるキャラクター達
4Gamer:
それでは,18とポチ夫という2人の主要キャラクターについて教えてください。
山中氏:
18のほうが華やかなので誤解されがちですが,プレイヤーの分身となるのはポチ夫のほうです。ポチ夫は冴えないバイト君で,RPGの主人公らしくない地味な立場ですね。
そんな彼の前にエルリック王子,通称“18”が現れます。もともとは王国の第1王子だったのですが,諸々の理由で第18王子まで降格してしまい,ポチ夫がインストラクターのバイトをしている「勇者さまーランド」に本物の魔王がいると聞きつけて,「魔王を倒せば,再び第1王子になれる」と考えてやって来ます。
4Gamer:
立場も性格も正反対の2人ですね。
山中氏:
はい。タイトルの“WORK”という言葉には,“労働”のほかに“使命”という意味があります。つまり「WORK×WORK」は,労働をするポチ夫と,使命を抱いた18が出会ったことによって始まる物語なんです。
4Gamer:
ストーリーはどのように進行するのでしょうか。
山中氏:
18とポチ夫の身分の違いが,ときに軋轢を生んだり,ときにお互いの足りない部分を補い合ったりしながら展開していきます。いわゆる“バディもの”ですね。
4Gamer:
ポチ夫のルックスは非常に特徴的ですね。アフロヘアの主人公というのは,かなり珍しいと思います。
最初の企画書では,いかにもテーマパークのインストラクター然とした,オーソドックスなデザインだったんです。それをコンシューマゲームとして広げたときに,地味で冴えない部分を残しつつ,アイコン的なキャラクターにしようと。
そこで,これまた思いつきで「アフロなんて,いいんじゃないですか?」と言ってみたところ,実は今川さんがアフロ好きで……。
今川氏:
ええ,大好きなんですよ(笑)。
山中氏:
それで2人で自由にやった結果,アフロがすごくシンボリックでありながら,地味でダメな感じがうまく表現できました。
4Gamer:
いい感じにモッサリしていますよね。ダメっぽいけど,可愛らしいという。一方の18は,大きな王冠が特徴的です。
ポチ夫にアフロというシンボルができたので,18にも一目で王子だと分かるところを出したいということで,王冠を考えました。サイズが合っておらず,ブカブカな王冠ですが,そこには18が少し背伸びをしているという意味もあります。ちなみにシナリオの井上さんいわく,某アイドルの2人がモデルらしいです。
今川氏:
あとから聞かされて,「そうだったのか」と思いましたよ。
4Gamer:
18は当初,お客さんの立場なんですか。
山中氏:
そうなんです。王子としてわがままに育ってきたので,インストラクターのポチ夫は18にとにかく振り回されます。またポチ夫からすると,18はお客さんだし,偉い人だし,逆らえないんですよ。18の登場によって,ポチ夫はそれまでの人生では巡り会えなかったような事件に巻き込まれていきます。
4Gamer:
それではバトルについて教えてください。「WORK×WORK」のバトルは,勇者さまーランドにやって来たお客さんをダンジョンに案内する「インストラクターバトル」とのことですが。
山中氏:
基本的には,勇者さまーランドのアトラクションツアーとして用意されたダンジョンを,お客さんに気持ちよくクリアしてもらうとクエスト達成になります。お客さんはそれぞれの性格とやりたいことに沿って勝手に行動するので,プレイヤーはポチ夫を操作して,うまくサポートしていかなければなりません。例えば,ピンチのときには防御の指示を出し,逆に攻めどきには必殺技の指示を出すといったイメージです。
4Gamer:
さまざまなお客さんの個性に合わせて,指示を出す必要があると。
山中氏:
そのとおりです。シナリオの井上さんが作ったお客さんが,本当にメチャクチャなヤツばかりで(笑)。ダンジョンごとに登場する,いろんなお客さんとの出会いや,どんなモンスターが出てくるんだろうといったワクワク感が楽しいところですね。それこそ,テーマパークで新しいアトラクションに入るときの新鮮さや驚きを感じられるよう,各ダンジョンを作っていきました。
4Gamer:
18は,毎回バトルに参加するのでしょうか。
山中氏:
基本的に18はメインストーリーに関わる部分で登場します。「WORK×WORK」では,お客さん一人一人の背景がサブストーリーとして展開することもあるので,その場合には出てこないこともあります。ちなみに18は王子として才能に恵まれていますから,戦力としてはかなり優秀ですよ。
4Gamer:
ポチ夫自身は戦いませんが,成長要素はどうなっていますか。
山中氏:
ダンジョンをクリアするごとにお客さんに経験値が溜まっていき,少しずつ強くなっていきます。またポチ夫自身のレベルも上がって,アイテムの所持数やダンジョンに持ち込める種類が増えたり,次の指示を出すまでのクールタイムが短縮されたりします。ダンジョンによっては全然育てていないお客さんばかり集まることもありますから,意外と手ごわいですよ。
さらにダンジョンをクリアすると,ポチ夫は給料として“ヒトデ”をもらえます。このヒトデで新しい武器を買って,お客さんにレンタルすることで,より気持ちよくダンジョンをクリアさせることができます。
4Gamer:
えっ,ポチ夫の自腹でお客さんの武器を買うんですか……。
山中氏:
ええ,勇者さまーランドの福利厚生は最悪なんです(笑)。またワークライフバランス的な遊びもあり,集めたヒトデでお客さんにレンタルする武器を買ってもいいし,自分の部屋に飾る装飾品を買ってもいい,という仕様になっています。
4Gamer:
モンスター達も,勇者さまーランドの従業員なんですよね。
山中氏:
はい。18は「本物の魔王がいる」と思って勇者さまーランドにやって来るわけですが,従業員のモンスターにとっては寝耳に水のことです。そこでモンスター達は18に話を合わせて,だましだましやっているんですが,いつかはバレてしまうので,「さあ,どうしよう」というのがゲーム序盤のヤマとなります。
勇者さまーランドがある島はほんわかとした雰囲気ですが,その内側には結構ドロドロとした部分が潜んでいるので,「Caligula」シリーズが好きな人もグッと来るかもしれません。
4Gamer:
では,ストーリーの見どころも教えてください。18とポチ夫は,どのように互いに関わり合いながら成長していくのでしょうか。
山中氏:
それぞれ相手の世界を知らない者同士ですから,ポチ夫は18の自由さや破天荒な部分から,18はポチ夫が働いてお金を稼ぐといった自分の知らない部分から影響を受けます。ストーリー全体はとぼけたテンションで進んでいきますが,少しずつ人間らしい成長が見えて,「アレ,実はいい話かも?」と感じてもらえると思います。
登場人物はどれも普通のゲームではまず出会わないような変な人達ばかりなので,このビジュアルだからこそ生まれるシナリオのパンチ力を楽しんでほしいです。
4Gamer:
お客さんとして登場するキャラクターは,何人くらいいるのですか。
山中氏:
えーと,何人描きましたっけ?
今川氏:
40人前後……いや,50人くらいですかね。モンスターは150種類以上いるんですが。
山中氏:
「初代ポケモンを超えた!」と喜んだあとも,どんどん増えていきましたからね。
4Gamer:
多彩なモンスターのアイデアは,どうやって決めていったのでしょうか。
山中氏:
ほとんど大喜利ですね。何を入れたら面白くなるか,次々とホワイトボードに書き出していくんです。最終的にどれを絶対に入れたいかを決める段階で,今川さんの出した可愛い案は却下されたりとか。僕自身,初めての経験だったんですが,「どの野菜が強そうか」みたいな議論もありました。
今川氏:
何を言っているのか,まったく分からないですよね(笑)。
山中氏:
「ロマネスコが強いんじゃないか」みたいな話をすると,それが自然にキャラクターになっているんですよ。
4Gamer:
そんな中で,「オクラも強そう」という話になったわけですね。
山中氏:
オクラは,強固に支持する派閥があったんです(笑)。
ダンジョンにはそれぞれテーマがあって,そこにどんなモンスターが出てくるかを,サウンドの増子さんや,企画の山根さんが所属する熱中日和のプランナーさんまで含めて,メンバー全員で話し合いました。中には「花粉を出したい」という意見もあって……。たぶん,その時期に苦しめられていたんでしょうね。僕が最初に見た企画書には,すでに「クッキーのかけら」がありました。
今川氏:
ああ,それは自分が勝手に作ったやつです。何体かのモンスターは,勝手に作って「よろしくお願いします」と,当然のように入れておきました(笑)。
山中氏:
僕はただ,スタッフの皆さんが全開で楽しんでいる勢いを止めないようにしようと(笑)。
厚みがあってユニークな動きをするドット絵から生まれた表現
4Gamer:
今川さんの描いたキャラクターはどれも非常に可愛らしくて魅力的ですが,ご自身がドット絵に惹かれるようになったきっかけは何だったのでしょうか。
自分は,ちょうどスーパーファミコンが発売された頃にゲーム業界に入りました。ドット絵のゲームが全盛期で,遊んでいても,作っていても楽しかったですね。そのときからずっとドット絵を描いていて,途中で2Dのイラストや3Dグラフィックスもやりましたが,その頃に受けた影響は大きいです。「伝説のオウガバトル」や「ロマンシング サ・ガ」なんかは,今見てもすごいと思います。
山中氏:
そういった,当時のスクウェア(現スクウェア・エニックス)などがやっていた精緻なドット表現も素晴らしいですが,今川さんが逆に最低限の情報量で可愛らしいキャラクターを生み出していくのを見ると,まるで魔法みたいなんですよね。新しいキャラクターが上がってくるたびに「本当に可愛いなあ」と。必要ないのにプリントアウトしちゃったり(笑)。
4Gamer:
今川さんがドット絵を起こす際に,とくにこだわっている部分はありますか。
今川氏:
シルエットだけでどのキャラクターか判別できるように,できるだけシンプルなラインでデザインするようにしています。また,直線のほうがドット絵に適しているので,可能なかぎり曲線を使わず,直線の集合体で描いています。
あとは“サイズ感”ですね。きちんと描こうとするとどうしても大きくなって,ゲームの中でのサイズバランスが崩れてしまいますから,省略できるところはできるだけ省いて,サイズ感を整えています。
4Gamer:
「WORK×WORK」のドット絵は単なる平面ではなく,少し厚みのある独特の表現になっていますね。
今川氏:
あれは企画の山根さんやシナリオの井上さんが,当初から考えていたアイデアです。
山中氏:
ドット絵がラバーストラップみたいにぐねぐね曲がる,あの表現から企画がスタートしたという印象ですよね。僕が最初に見た企画書では,割り箸に貼り付けた絵を動かす人形劇──ペープサートのような,可愛らしい動きを使って話を作りたいと書いてあったんです。僕が「この企画はイケる!」と思ったのも,まさにその部分でした。
今川氏:
ほかにも,ボクセルアートを使ってみたらどうか,みたいな議論もありました。ただボクセルまで行ってしまうと,ドット絵より表現力が落ちる部分が出てしまうんです。そこでドット絵だけれど厚みがあって,それ自体がユニークな動きをするというところから,この表現が生まれました。
4Gamer:
独特の可愛らしい感じが出ていますよね。グニャっと曲がっておじぎをしたり。
山中氏:
そうですね。「WORK×WORK」は3Dグラフィックスでリアルな表現に迫るのではなく,「ドット絵を使って,何ができるのか」という,このチームだからこそのゲームに仕上がったと思います。
4Gamer:
今川さんが描いていて,とくに印象に残っているキャラクターはありますか。
「ウミウシちゃん」は描いていて楽しかったですね。いろんなバリエーションがあって。とくに幽霊やメカのウミウシちゃんが好きです。
4Gamer:
ウミウシちゃんは「WORK×WORK」のマスコットとしてフィーチャーされていますね。
山中氏:
ウミウシちゃんをマスコットにしようというのは,ずっと前から考えていたんです。「WORK×WORK」は知らないけれどウミウシちゃんは見たことがある,みたいになるといいなと。
4Gamer:
ウミウシちゃんは,ゲームの序盤から出てくるのでしょうか。
山中氏:
そうです。きっと,たくさん倒すことになります。
4Gamer:
その中には,いいウミウシちゃんもいたりとか……。
山中氏:
モンスターは全員,勇者さまーランドの従業員なので,基本的にいいモンスターなんです。彼らがなぜ生まれたのかについては大きな秘密があって,ゲームの終盤で明かされます。
4Gamer:
逆に,「こんなの,どうやってドット絵で表現するんだ」と思ったモンスターはいますか。
最初に困ったのは「あずきぼー」でした。
山中氏:
メチャクチャ固いモンスターにしようということで,アイデアが出たんですよね。今川さんがさじを投げたら,こちらも無理を言うのはあきらめるんですが,次々に叶えてくれるので,どんどん無茶なアイデアが出てくるんです。例えば,一般的なRPGで言うところのスライムの位置付けが,「WORK×WORK」だと「煮こごり」なんですよ。ちゃんと三つ葉も乗っていて。
今川氏:
「煮こごりを描くのか……」と思いましたよ。
山中氏:
スタッフ同士,いかにして相手を笑わせるかを考えながらゲームを開発するという,なかなか味わえない雰囲気の現場でした。
4Gamer:
ミイラなど本当に基本的なもの以外は,一般的なゲームでは見かけないモンスターばかりですね。
今川氏:
ちょっと「MOTHER」っぽさがあるかもしれません。
山中氏:
とぼけているけれど印象に残るという意味では,そういった雰囲気もありますね。ただ,モンスター達はイロモノとして登場するだけでなく,「次のダンジョンにはどんなモンスターが出てくるんだろう」と予想させ,それを裏切る役割もあるんです。
4Gamer:
確かに,動きを予想できないモンスターが多いですね。
山中氏:
ええ,どういう攻撃をするのか,見当が付きません。また彼らは倒したとき,まれに剥製をドロップします。お気に入りのモンスターの剥製を部屋に飾ることもできますよ。従業員なのに剥製とか,矛盾してますけれど。
4Gamer:
モンスター1体をデザインするのに,どのくらいの時間がかかるのでしょうか。
今川氏:
悩まなければ,1日に数体描けます。考えてから数日寝かせて,もう一度チェックすることもよくやりますね。
山中氏:
今川さんが上げてきたデザインを直してもらうことは,ほとんどなかったです。もっとも,あずきぼーの正解なんて誰にも分からないので,「きっと,これでいいんだろう」という感覚ですが(笑)。
4Gamer:
こうして可愛らしく仕上がったモンスターを,実際にラバーストラップ化する予定などはあるんでしょうか。
山中氏:
もちろん,いろいろ検討しています。皆さんに親しんでいただけるよう,頑張ります。モンスター人気投票なんかも面白いかもしれませんね。
今川氏:
ああ,いいですね。
山中氏:
またゲーム中は,遭遇したモンスターが図鑑に記録されていきますが,シナリオの井上さんが説明テキストをしっかり書いているので,そこもぜひ楽しんでほしいですね。
4Gamer:
煮こごりの詳しい説明が(笑)。
山中氏:
そこには,悲しいストーリーがあるんですよ。全体的にはとぼけていますが,たまに悲しい話もあったりします。もう,図鑑を眺めているだけで1日が終わっちゃいますね。
アットホームな現場で作られた挑戦作。発売後にはDLCの配信予定も
4Gamer:
それでは,「WORK×WORK」の開発の進捗についておうかがいします。
すでにマスターアップしており,あとは発売を待つのみです。ただ,発売後にDLCとして拡張シナリオを配信する予定なので,今川さんにはまだドット絵を描いていただいています。
また「WORK×WORK」はフリュー初のNintendo Switch向けタイトルで,かつできるだけ多くの方に触っていただくべく価格を抑えるというチャレンジもしています。会社としては,かなり挑戦的なタイトルという位置付けです。
4Gamer:
ほのぼのとした,人を選ばない雰囲気は,確かにNintendo Switchに向いていますね。
山中氏:
ええ,ぜひ持ち歩いて,いろんな場所でほのぼのとしていただければと。
4Gamer:
ところで,「WORK×WORK」は“ワークライフバランス”をキーワードの一つとして掲げていますが,お2人のワークライフバランスはいかがですか。
山中氏:
僕自身は,2017年から2018年にかけて「Caligula Overdose」とアニメ版「Caligula」,そして「WORK×WORK」と,非常にエキサイティングな経験をしました。「Caligula」は自分の内側にある闇を削り出す感覚で作っていましたが,「WORK×WORK」はチームのメンバーが考える面白さを自分の中に吸収していくような感じでしたね。それぞれ違う大変さだったので,不思議とバランスは取れていたように思います。
ただ,ワークライフバランスというと,ちょっと難しいですかね……。
今川氏:
「WORK×WORK」は相当ボリュームがあるので,そのぶん時間もかかったなと。楽しく作ることができたので結果的には良かったんですが,ワーク100%,ライフ0%と言っていいくらいのバランスでした。
山中氏:
今川さんは何を依頼しても本当にニコニコして「大丈夫です」と言っていたんですよ。その“大丈夫”の表面張力がどのくらいになっていたのか,気になります。
今川氏:
140%くらい行ってたかも(笑)。
4Gamer:
ワーク過剰で,ワークライフバランスどころの話ではなかったと。
山中氏:
まさに「WORK×WORK」ですよ(笑)。
4Gamer:
オチが付いたところで,最後に「WORK×WORK」に注目している人に向けて,メッセージをお願いします。
山中氏:
「WORK×WORK」は,作っている人間がとにかく楽しんでいたという,ゲーム開発においてなかなか珍しい環境で完成しました。大きなトラブルもなく,顔を合わせれば笑顔の絶えないアットホームな現場でした。きっとこの楽しさは,プレイされた方にも伝わると思います。息抜きや暇つぶしに最適なタイトルですので,ゲームからにじみ出てくる作った人間の楽しさを味わっていただきたいです。
今川氏:
このタイトルならではの独特の世界観が表現されていますし,個性的なキャラクターや,ほかのゲームには出てこないようなモンスターもたくさん登場します。またストーリーも例えようのない仕上がりになっています。じっくりとワクワクしながら楽しんでいただきたいです。
4Gamer:
ありがとうございました。
「WORK×WORK」公式サイト
(2018年8月22日収録)
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WORK×WORK
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