企画記事
イマーシブ・フォート東京の「Identity V 第五人格」アトラクションで脱出なるか!? リアルでロッカーにギュウ詰めの体験レポ
どういう体験かできるのかというと,こういう体験だ。
同パークではオリジナル作品の催しに加え,「Identity V 第五人格」「推しの子」「東京リベンジャーズ」の常設アトラクションもあるなど,ゲームやアニメとのコラボが盛んに行われている。
入場はチケット制で,基本の「1dayパス」(大人6800円/子供3000円。2024年11月時点の価格)に加え,一部有料アトラクションは追加料金がかかる。もちろん,1dayパスだけでも遊び倒せる場所だ。
そんなわけで,私も満を持してイマーシブしてみることにした。
結論から言って想像以上に楽しかったので,未体験の人やコラボ作品のファンは,本稿でその片鱗を感じていただければ幸いだ。なお,催しごとの重大なネタバレは控えているが,まっさらな状態で楽しみたいなら回れ右(ブラウザバック)。ここまでの情報だけで突撃しよう。
「イマーシブ・フォート東京」公式サイト
女神の面影を残す街で,次世代の体験を
りんかい線の東京テレポート駅から徒歩数分。ゆりかもめの青海駅からなら駅直結で1分。イマーシブ・フォート東京はそんな立地にある。シンボル的には,お台場のヴィーナスフォート跡地,もしくはユニコーンガンダム立像のすぐ近く,なんて書けば伝わりやすいだろう。
現地に向かって歩いていると,なにやらゴスっぽい服を着ていらっしゃる人々をチラホラ見かける。当初は「今日はライブでもあるのかな?」なんて思っていたが,彼女らの大半は私と同じく,イマーシブ・フォート東京の入場口へと吸い込まれていった。
あとから聞いたが,この日はハロウィンキャンペーンの期間中で,仮装をしてパークを楽しめる時期だったそうな。
それにしても,開場前にも関わらずこの盛況っぷり。平日のお昼12:00(施設の開店時間)から大にぎわいの様相である。
人気のほどを目の当たりにしながら,入場口の暗がりを抜けると……青空が映し出された天井に,ヨーロッパ風の街並み。懐かしい。
ここイマーシブ・フォート東京は,かつてお台場の象徴であった大型ショッピングモール「ヴィーナスフォート」の内装が,ほぼそのまま活用されている。同施設はコロナ禍の2022年春,多くの人たちに惜しまれながらも閉館されたが,すぐさまシアター型アトラクションのマーケティング企業「刀」が名乗りを上げ,約2年かけて跡地を整備した。
入場前は「ここにヴィーナスフォートあったなあ」なんて思い出に浸っていたのに,いい意味で当時の姿そのままだったことで,以前遊びにきた記憶が蘇ってくる。これだけでもうれしいサプライズだ。
しかしだ。見慣れたはずの場所なのに,なにか違う。
というのも館内では,路上でいきなりシンガーが美声を響かせたり,軍服姿の人物が急に走ってきたり,それを来場者らしき人たちが(節度のある)全速力でゼェハァしながら追っていたりと,明らかに異様な光景が広がっていた。それも頻繁にだ。そうした様子を目にしていると,だんだんと非日常の世界に踏み入れた感覚が湧いてくる。
ここイマーシブ・フォート東京は,いわばヴィーナスフォートの居抜きだけれど,“起こっていること”がまるで違ったのだ。
「Identity V 第五人格」のハンターって
リアルだとこんなに怖いの……?
入場直後からさまざまな非日常感に出会いつつ,フワフワした心持ちでたどり着いたのが,アトラクション「第五人格 イマーシブ・チェイス」だ。ここはNeteaseGamesの非対称対戦型マルチプレイゲーム「「Identity V 第五人格」とのコラボエリアとなっている。
本アトラクションは“リアルでスリルな脱出体験ゲーム”だ。参加者は「サバイバー」となり,迫り来る「ハンター」をかわしながらチーム全員でエリアからの脱出を図る。まさに原作再現な体験だろう。
体験中はただハンターから逃げ隠れするだけでなく,参加者全員にランダムで割り振られる,弁護士や機械技師などの「スキル」も行使できる。ゲームおなじみのサバイバーたちの特徴がリアルに置き換えられていることで,原作経験者には想像しやすい内容となっていた。
本アトラクションは最大6人で挑戦する必要があるため,今回は来場者グループに混ぜてもらった。実際,現地に6人組で来る人たちの割合は少なく,参加者のほとんどが“その場で知らない人たちと組む”ことになるという。こう聞くと心理的障壁を感じるかもだが,1人参加の人も普通にいて,体験自体も非日常ゆえに,自然と団結できるようだ。
私は5人グループと即席チームを結成したが,このうち私と1人を除いて「原作ゲームは未プレイ」とのことだった。
それでも皆さん,みんなでルール説明を読み込み,積極的な姿勢で臨もうとしていた。つまるところ,原作が好きかどうかに関わらず,アトラクションとして魅力的に思える内容だったのだろう。
列待機中は,スタッフからも軽く事前説明を受けて,その場で貸し出される専用端末を腕にマジックベルトでしっかりと固定しておく。これはアトラクション内の「暗号機」の解除に必要になるのだとか。
いよいよチームの出番がやってきて,施設内部へと案内される。そこはいくつかのドアがある,やや広めの一室だった。
すると次の瞬間,原作メインストーリー「記憶の灰燼」の主人公であるアリス・デロス(に扮するキャスト)が現れ,エウリュディケ荘園の隠し部屋で,蝋燭を片手に本を調べるあのシーンを再現してくれる。
これだけでもう原作ファンならワクワクが止まらない!
この場には我々サバイバーたちがいるため,ゲームでの状況とはまるで違うが,この世界におけるハンターの存在や印象深いセリフも聞かせてくれて,にわかに興奮してしまった。
デロス嬢に見送られ,次の部屋へと進む。なお,第五人格 イマーシブ・チェイスには“いくつかのコース”があるが,どのロケーションに誘われるかは,このときにならないと分からない仕組みだ。
そして扉を抜けると……原作の代表的なキャラクターの1人,庭師のエマ・ウッズが囚われていた。エマちゃんを解放してあげると,その場で映像を交えながら具体的なルールを説明してもらえる。
ただ,このときは説明内容よりも,彼女の身振り手振りに釘付けになってしまった。というのも“エマちゃんの動き”がすごいのだ。
ボタンの目の再現メイクもビックリなのだが,それ以上に衝撃だったのが身動きだ。原作キャラクターたちは,デフォルメされたマスコット的な3Dモデルゆえに,動作がオーバーだったり,やたらクネクネしていたりするが,このエマちゃんが“それを生身で再現”してくれる。
CGだからこそ可能な所作だと思っていたのに,まさか人ができる動きだったなんて……声のトーンも原作CVの斎藤千和さんボイスにかなり寄せていて,「このエマちゃんスゴイ」と感心しきりだった。
さて,エマちゃんからは「腕の端末で5つの暗号機を解読する」「制限時間内に全員で脱出する」「誰かがハンターに捕まってロケットチェアに拘束されたら,仲間が助けに行く」ことが重要だと教えられた。さらに,最奥のゲートを開く暗証番号も“口頭で”教えてくれる。
端末にはメモ機能もないため,みんなで覚えておくしかない。
そしてこのタイミングで,役職(スキル)が参加者に割り振られる。端末にはそれぞれが使用できるスキル名と,その効果が表示される。私は暗号解読速度が速いパッシブスキルを持つ「囚人」になった。
役職は計6種類あり,スキルのなかには端末をタップして手動発動するものもある。スキルの発動タイミングがカギを握るのは当然なので,この場でも各自の役割を教え合う作戦会議が行われた。
ただ,開始直前のわずかな時間ということで内心,超焦った。
心の準備もできていないまま,いよいよゲームの幕が開けた。クリア条件は“全員で脱出”だ。非対称型対戦ゲームでよくある「自分だけ逃げられてラッキー!」はできない。必ず全員で生還を目指す。
私たちが恐る恐る踏み込んだのは「精神病院」だった。ここまでのアナウンスが10分程度で,プレイの実時間は3分。3分とだけ聞くと短く思うのだが,実際の体験はてんやわんやで,濃密な180秒になる。
制限時間を意識してキビキビ動きたいが,エリア内はかなり暗い。それに未知の恐怖を前にどうしても慎重になってしまう。
けれど,赤く光る目が視界に入った途端,体は反射的に動いた。
ハンターだあああぁぁぁあーーー!!!!
「ハンター,デカすぎない……?」本能でヤバいと感じる見た目の異様さに,なるべく近づきたくないと心がせき立てられる。だが,ハンターの意識がこちらに向いているのが分かってしまう。こ,こっわ〜……!
なんとか部屋中央のベッドをはさんで回り込み,その先の部屋に飛び込んだ。そこで「あれっ,今ここにハンター来たら袋のネズミだよね……」とハッとし,暗号機を探すのもおぼつかなくなってしまう。
冷静になればなんてことのない作業なのに,不安と焦りが募るとこうも難しくなるものなのか。原作ゲームでも毎回ビビり散らかしているし,やはり自分がこういう状況に慣れることはないようだ。
そのうち,チームメイトがハンターに捕まってしまった。連れていかれる先は当然,絶望のロケットチェアだ。
どうにか隙を見つけて助けにいくも,焦りから椅子の解除マークが見つけられない。モタモタしているとまたハンターがやってきて,やむなくその場を脱兎のごとく離脱……(助けられなくてごめんなさい!)。
そうこうしていると,あっという間に制限時間が迫ってきた。私たちは残り1つの暗号機を見つけられずに右往左往。最後は時間切れとなってしまい,脱出ゲートの前でハンターに追い詰められ――。
このスリル,病みつきになりそう。
ということでもう1周! 再び参加者の待機列に戻り,今度は複数グループが入り交じる合同チームにお邪魔した。チームメイトのなかには数えきれないくらい挑んできたベテランもいて,非常に心強い。
先ほど言ったが,同アトラクションは実際にはじまるまでどのコースが選ばれるか分からない。また,生還時・失敗時の状況に応じてスコアも算出されるため,タイムと合わせて記録狙いの遊びも楽しめる。ゆえにリピーターも多く,休日は60分待ちになることもあるとか。
ほどなくして二度目の挑戦がはじまり,エマちゃんの部屋から「今度こそクリアしてやる!」と意気込んで飛び出すと……そこには知らない景色が広がっていた。お次はどうやら「軍需工場」のようだ。
やはりというか,先ほどの精神病院とはエリア構成が異なっている。工場のほうはとくに,中央の長い一本道がネックとなっていて,ネズミのように小回りしてハンターから逃げるのは難しそうだった。
案の定,接近してくるハンターに対して,とにかく後退するしかない状況に追い詰められる。しかし,通路の片隅に「ロッカー」を発見! ここではロッカーに隠れることで“ハンターに見つからない”のだ。しかも原作と違って大型ロッカーなので,2人は隠れられてしまう。
だが,その場には私も含めてサバイバーが3人いた。断腸の思いで2人に譲ろうとしたら「いいから!」といった手振りで招かれ,3人で一緒のロッカーにイン。ありがたすぎて,ちょっと泣きそうになる。
さらに少しあとのこと,もう1人がロッカーの前まで逃げてきた。そこで3人とも思いを1つにし,その人も一緒にイン! さすがにすし詰めで,ドアが少々開いてしまう状態だったが,後ろの人が「遠慮しないで!」といった手つきで肩を引き寄せてくれて,ピッタリ閉じられた。
これぞ即席ながらもチームワーク!
ロッカーの通気口の隙間から外をうかがっていると,ハンターはこちらに気付かず,目の前をとおりすぎていった。その隙にみんなで飛び出て,全員で探索を再開する。そういえば,これまでいろんなゲームでロッカーに隠れてきたが,リアルで隠れたのは初めてかも。密かに感激。
探索に戻ると,チームメイトがすべての暗号機を見つけていて,あとは脱出ゲートに向かうだけだった。そこで私は,脱出ゲートに暗証番号を入力する大役を譲ってもらったが,緊張して番号を間違えて……。
チームメイトのフォローでなんとか番号を入力しきったが,なぜか入力失敗に。どうも番号は合っていたのだが,アナウンスを待ってから入力しなければならなかったようで。お作法まですっ飛ばしてしまったことにより,またもハンターに追い詰められてしまい――。
二度目はドキドキハラハラしつつも順調に進み,皆さんが花を持たせてくれた形だったのに……申し訳ない気持ちでいっぱいになった。
一応,後続の未体験者たちを萎縮させるつもりはないので,「こういうハプニングもまた楽しめる体験だよ」とだけ伝えておこう。
第五人格 イマーシブ・チェイスをクリアできたグループは,特典として「脱出記念写真」を撮影できるとのこと。うらやましい。
体験中は恐れに恐れ,焦りに焦り,まるでホラー映画の第一被害者のような仕草ばかりしていた。ゲームでの遊びをそのまま実体験できるこのアトラクションは,ファンならぜひやっておきたく,また原作を知らなくても刺激的な内容のため,人を選ばず楽しめるものであった。
アッと驚く巻き込み型アクションショー
ド派手な格闘ありの「スパイ・アクション!」
後ろ髪を引かれる思いで,第五人格 イマーシブ・チェイスをあとにすると,大通りになにやら人だかりができていた。
するとまもなく,見るからにマフィアのボスっぽい出で立ちの人物が,銃を手にした荒くれ集団を引き連れてやってきたではないか。
こちらは「スパイ・アクション!」というショーで,ジャンルとしては“ストリート・エンターテイメント”となる。
実施時間のスケジュールは決まっているが,開始の合図はなにもなく,ゲームで言うところのシームレスイベントのように突然はじまる。イマーシブ・フォート東京らしい“遭遇感”を強く感じる入りだ。
マフィアたちはすぐに周囲の観客たちに因縁をつけはじめ,みんなを一列に並ばせたり,両手を上げさせたり,身体検査まではじめたりとやりたい放題。どうやらなにかを探しているようで……?
マフィア団員たちは赤いツナギに仮面という見た目なことで,私の大好きなドラマ「ペーパーハウス」を彷彿とさせる。
場に不穏な空気が漂ったところで,スーツ姿の凜々しいエージェントたちが颯爽と登場! マフィアを豪快なアクションで制圧しだす。
エージェントもマフィアも身の動きがキレッキレ。観客の数十センチ先でくり広げられる格闘は,ハラハラドキドキのひと言だ。もはや,ステージの一員として舞台に参加しているような体験である。
エージェントたちは身を張って観客を守ったり,ちょっとしたお手伝いを頼んだりとサービスたっぷり。それらを目にして,「ははーん。これはヒロインになるために最前列を狙うショーだ」と確信した。
終始,勢いのある展開で事件も一件落着……かと思いきや。クライマックスには驚きの展開もあって,思わず声をあげてしまった。
それくらい,いつの間にか夢中で見てしまっていた。
混沌に満ちた「今際の国のアリス」
イマーシブ・デスゲームへようこそ
お次は,2024年7月にオープンした新規アトラクション「今際の国のアリス イマーシブ・デスゲーム」に参加してみた。
こちらはNetflixの人気ドラマ「今際の国のアリス」を題材にしたアトラクションだ(ドラマの原作は,同名のマンガ作品)。
同作は,理不尽な「げぇむ」を強いられる人々の様子を描いた作品で,本アトラクションでもそれが見事に再現されている。
あらかじめ書いておくが,こちらは“ネタバレ厳禁のデスゲーム体験”となるため,内容については概要のみにとどめていく。
本アトラクションの参加には,事前に「同意書(Web)」の提示が求められる。というのもこちら,原作さながらの危機感を再現すべく,参加者は「首輪」を装着する決まりだ。この首輪は「自分の意志に関わらず,ゲーム失敗時に2秒未満の電流が流れることがある」というもの。
この時点でちょっとビビッてしまった。
自分の意志によらずってところが,怖い……。
だからこそ,参加者は健康面に懸念がないことや,事故を防ぐための諸注意に気を配れるかを,あらかじめ同意しておく必要がある。書面に書いてあることもかなりガチめなので,読んでいるだけで不安になってくる。もちろん,身の安全は厳格に配慮されているわけだが,怖いもんは怖い。デスゲームの恐怖を参加前から味わってしまう。
それでも「大丈夫,大丈夫……」と自分に言い聞かせた。自主的にデスゲームに参加しておいてなんだそりゃという感じだが。
スタッフに同意書の画面を見せて入場すると,その先にイカつい首輪がズラリと並んでいた。「1人1台」。ドラマでもよく見た張り紙が貼ってある。首輪を手に取ると,それなりの重さがあるが,見かけよりかは軽い。首輪正面の大きなボックスが電流を生み出すのだろうか?
天井一面に投影されている超巨大スクリーンの指示に従い,首輪を首に巻いてバックルでとめる。首の後ろにある電極部はヒヤッとした。
ベルト側面にはダイヤル式の南京錠が付いていた。これがまた“自分では絶妙に見られない位置”にあり,取り扱いには誰かの手が必要だと思わされる。そう,このデスゲームもまた他者の協力が必要だ。知らない人に話しかけるのは恥ずかしい,なんてしていたら――。
続々と集まる参加者で場内が埋まったころ,人混みの中心をかき分けるようにしてキャストが現れた。この親しみあるあんちゃんは,原作に登場する組織,あるいは舞台「ビーチ」の一員のようだ。
さらに,ビーチの主「ボーシヤ」とのビデオ通話が天井に投影される。ボーシヤを演じるのは,ドラマと同じく俳優の金子ノブアキさん。
そのうち,げぇむのチュートリアルがはじまったが……ここでいきなり電流を受けてしまった。冷静に振り返ると,刺激の強さはEMS美顔器や低周波治療器(パッドを貼りつけて電気で肩こりをほぐすアレ)を“強”モードで使ったときくらいの程度だったかと思う。
けれど,げぇむ中という心理的な影響により,思った以上に効いた。声を出してしまうほどのビリビリに感じた。場の空気って怖い。
そして「そうだ。げぇむは底意地が悪いんだっけ……」と苦々しく思い出したころ,げぇむがスタート。お題の謎を解けば,首輪を外して生還(クリア)できるが,制限時間を超過してしまうと……。
失敗の恐怖を身をもって知った参加者たちは,生き残るべく会場を駆け巡り,謎を解読していく。みな真剣な表情で天を仰いでいた。こちらの心理を煽りに煽ってくるドラマBGMがなんともニクい。
私はプレイ中,海外からやってきた人と一緒に謎を解くことになった。もちろん同行者や仕込みではない。「誰かー!! 誰かー!?」と必死に声を出して手を上げて,藁にもすがる思いでつかんだ出会いだ。
言語の壁もあり,お互いカタコトで身振り手振りを交わしたが,どうにかできた意志疎通で手がかりを得られてすごくうれしかった。
聞くところによると,イマーシブ・フォート東京の来場者は日本人が比較的多めだが,平日は海外旅行者も多く遊びにくるという。
さて,最終的に私が首輪を外せたかというと……。
ダメでしたー!
これが本当の“かぶりつき”
「ザ・シャーロック」は新しい観劇のカタチ
首のコリもほぐれたところで最後に,没入×ウォークスルー型シアターと銘打つアトラクション「ザ・シャーロック」へ。
こちらの主題はもちろん,アーサー・コナン・ドイル作の「シャーロック・ホームズ」シリーズだ。イマーシブ・フォート東京の代表的なアトラクションで,その体験時間は約90分にも及ぶ。
なお,参加者らは事件を傍観する“いない者”の立場だ。いわば歌舞伎の黒衣のような存在であると自認すべく,みな入り口で渡されるバンダナで口元を覆う。これにより,私たちは演者を気兼ねなく間近で見られる。ただし,ときには「バンダナを外して表舞台に立つこともある」と覚えておこう。それと,参加予定者は口鼻周りのお化粧を事前に考慮だ。
※いない者ゆえに,観劇中は一部エリアをのぞいて“会話厳禁”です
専用ゲートを抜けると,そこにはイイ雰囲気のバーが広がっていた。ここで参加者グループごとにテーブルにつき,アトラクションの導入ストーリーや,ステキなジャズソングを楽しみながらシナリオの開始を待つ。バーカウンターではオシャレなドリンクの提供もありだ。
壇上の女性シンガーさんはとても力強い歌声で,ジャズのスタンダードナンバーを歌ってくれた。そのうえ観客1人ひとりの目を見るファンサもあって,何度もキュンとした(ファンになっちゃったかも……)。
シナリオ開始後は,名探偵シャーロック・ホームズが連続殺人事件に挑むショーが展開される。しかし,従来の演劇と大きく違うのは,“舞台がステージ上で繰り広げられるわけではない”という点だ。
パーク2階の約1/3を占有して表現された19世紀ロンドンの世界には,ホームズをはじめとするさまざまな住人が暮らしている。彼らが街のどこでなにをするのかは,それこそ“生きた登場人物たち”なので追わないことには分からない。そこで参加者は自由に選び,観て回るのだ。
具体的な遊び方としては,まずどこかに行って「誰かがなにかを話していたり,どこかに歩いていったりする様子」を目撃する。
このとき,参加者はシナリオの主役であろうホームズについていき,彼の調査ぶりを拝見してもいい。あるいはホームズから離れて,いずこへと去っていく事件関係者を追い,その人となりを探ってもいい。
ときには,なんらかの事件の発生に遭遇することだろう。しかし,一本道をはさんだ裏道では,なぜそれが起きたのかを知る者同士が対話しているかもしれない。こうした物語をどう観て,どう歩き,どう知るか。視点のすべては私たち参加者側に委ねられている。
オープンワールドゲームのライフシミュレーター的側面を知っている人などは,この構造をすんなり理解できることだろう。
今回は街に出たところで,ちょうどホームズとワトソンを発見したので追ってみた。2人は話しながら,なかなかのスピードで歩いていく。
うっかりすると置いていかれそうなので,こちらは必死に早歩き。「ホームズ足はや! 脚の長さ違いすぎ?」なんて考えが頭をよぎる。
ホームズたちに続いて探偵事務所に入ると,ほどなくして1人のお嬢さんがやってきた。優美な装いの彼女はシャーロットと名乗り,「行方不明の婚約者を探してほしい」と名探偵に依頼する。
ホームズはあまり気乗りしない様子だったが,ワトソンが報酬をエサにそれをとりなして,しぶしぶ調査がはじまることに。
なお,ゲームの開始タイミングは“参加者ごとのグループ記号”によって変わるため,誰もが最初にこの場面に遭遇するわけではない。なにを目撃するところからはじまるのかも人それぞれだ。
それにしてもキャストが近い。目と鼻の先で芝居が繰り広げられていて,演者と観客の距離感とは思えない。オペラグラスなしでも登場人物の表情や小道具までチェックできてしまう。従来型の観劇ならば,この景色は壇上の共演者でもなければ見られないものだ。
キャスト側も舞台上のように大きく声を張るわけではないので,演技もより自然に感じられる。こんなのなかなかお目にかかれない。
再びベイカーストリートに出たホームズとワトソンを追うと,警察官から「殺人事件の捜査に協力してほしい」と呼び止められていた。
ホームズは声がけに応じて,すぐさま現場へと赴き,凄惨な姿になった被害者や周囲の状況をつぶさに観察していく。一応,彼の視線の先に注目してみたが,なにが重要な手がかりになるのやら……?
ちなみに私はここでホームズを追っているわけだが,「事務所から出ていくシャーロットを追う」という選択もある。このときはぶっちゃけ,誰1人としてシャーロットを追わなかった。おそらく私も含めて全員,彼女のことは舞台をはけたものとして認識し,「退出していく彼女も追う対象になる」といった意識を持てていなかったのだ。
こうした選択肢は演者に教えられたり,指示されたりすることはない。とっさに自分で判断しなければならない。
まさに自分の足で稼いで紡ぎ上げる物語体験。これに気付いてからが,ザ・シャーロックの本当のスタートだ。
今回は触りにとどめるが,この事件はホームズを追っているだけで真相が見えてくるものではない。もちろん,分かりやすくホームズだけを追っても楽しめる作りになっている(と思われる)が,脇役と思わしき者がバーで飲んだくれる些細な姿を張ることで,得られる情報もある。
このロンドンで起きている事件は,こうした細かなシーンをすくい上げていき,多面な表裏を自分なりにまとめていくことで,やがて真相にたどり着ける。選択肢が無数にあるため,すべての出来事を1回で観ることはかなわない。ときには同行者と別行動し,ベイカー街のそこら中で起きている物事を報告しあうのも手だろう(会話はバーでしよう)。
私もミステリードラマが好きでよく観るが,この場では名探偵の推理をただ享受しているだけではもったいないと思えた。せっかく画面の向こう側に入れる機会なのだから,次回体験するときは自分がホームズに……いやワトソンの助手になるくらいの気概で臨みたい。
場内にはこのほか,パーク屈指のチケット競争率を誇る,より“ドラマに巻き込まれたい”人におすすめだという,花街を舞台にした没入×ウォークスルー型シアター「江戸花魁奇譚」もある。
また,パーク全域でくり広げられる「熱狂!フォルテヴィータ事件簿」も,バラバラに見えた出来事が1つにつながっていく快感を味わえるのだとか。こちらはパークのあちこちに出没する登場人物たちに話しかけていくことで,事件の真相が見えてくるらしい。街角で歌う歌手や,観客を訓練をしていた軍人も,この事件簿の一部だったそうな。
これ以外にもアトラクションはまだまだある。詳しくは公式サイトを見てもらうのが一番分かりやすいだろう。
イマーシブ・フォート東京が生まれて半年以上。同パークがこれまでさまざまなメディアで取り上げられていた理由が,ただの大型宣伝でなかったのだよく理解した。これは人気になってしかりだ。
どのアトラクションも世界感に没入できて,今でも1つひとつの体験が印象深い。作品やキャストを推したい気持ちも生まれた。それが「今度はどんな体験ができるかな?」だったり,「次こそはクリアしたい!」だったりの気持ちを生み,リプレイ性の高さにつながっている。攻略することにワクワクするゲーマーとの相性は言うまでもない。
演劇好きの人も新たな体験にハマれること間違いなしなので,再誕した東京の新名所をチェックしてみてはいかがだろう。
最後にアドバイスだが,アトラクション次第ではけっこう歩くことになるので,行くときは歩きやすいスニーカーがオススメです。
「イマーシブ・フォート東京」公式サイト
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