プレイレポート
2Dアクションゲームの皮を被った,フル“メタる”アクション! Nintendo Switch「ICEY」プレイレポート
美少女アンドロイドのICEYが,世界を支配する「ユダ」を倒す旅に出るという近未来SFチックなストーリーや,スピード感あふれるアクションが楽しめるのだが,本作の醍醐味はそこではなく,これでもかと盛り込まれたメタ要素にある。その一端をプレイレポートとしてお伝えしよう。
タイトル画面で「スタート」を選んでも
まだ“本当のゲーム”は始まらない
タイトル画面で「スタート」を選ぶと,いきなりゲームが始まる。世界観やキャラクター,目的などの説明は何もなく,唐突に放り込まれるのだ。
主人公らしきロボロボしい風体の女の子を操作しつつ,二段ジャンプや空中ダッシュといった操作を確認しながら敵を撃破していく。斬撃のエフェクトが美しい。
操作感は上々で,しっかり作られているという印象を受けたのだが,一方でよくある横スクロール型の2Dアクションゲームとも感じた。目新しさはさほどないのだ。
……しかし,最初のボスらしき敵を倒したところで,ゲームの様子がおかしくなった。
突然,画面がエラーのダイアログのようなもので埋め尽くされ,Windowsで聞き慣れたエラー音も鳴りだした。さすがに焦ったが,どうやらこれは演出のようだ。
無事に(?)ゲームが再開したのだが,さきほどとはちょっと様子が違う。まるで,もう1つ別のディスプレイ越しに,ゲームの画面を見ているような……。
右に進んでいくと,突然「あなたは……」と画面上で呼びかけられて,またまた焦る。
わけも分からず「はい」と答えると,「心の仮面を外しましたか」と質問される。
「と,突然何よ。人は皆,心に仮面をつけて生きていくものでしょ……」と,うろたえながら「いいえ」。
この後もさまざまな質問に「はい」「いいえ」で答えていくのだが,ここでの返答がゲームの難度設定になるようだ。
この質問が終わるとタイトル画面に戻されて,ゲームが再開するが,またしても様子が変わっている。
さきほど操作していた女の子が,カプセルの中で眠っている。どうやら,これが「ICEY」の本当のオープニングのようだ。
ナレーションボイスが流れ,この子の名前はICEY(アイシー)で,世界を滅ぼそうとしている邪悪な存在“ユダ”を倒すのが目的ということを説明してくれる。
世界観や目的など,ひととおりの説明が終わった後で,画面に「ゲームを開始する任意のキーを押してください。」と表示された。何らかのボタンを押すことでICEYが起動し,ゲームが始まるのだろう。
だが,[A]ボタンを押しても何も起こらない。「あれ?」と思い,ほかのボタンも押してみるが反応なし。ナレーターも「あ,あれ?」という感じでうろたえ始めるが,「……ICEYは,まだ夢の中なのだろう」とか言いながら1人で納得して,画面が暗転してしまう。
少し経つと,また同じ説明が始まった。思いがけず,「一度では足りない」の実績を解除してしまったが,一度で起動できる方法があるのだろうか……。ユダの説明では,ユダらしき画像もまた表示される。
そしてまたボタンを押して起動する場面になるのだが……動かない! あらゆるボタンを連打しまくってみたのだが,またナレーターが「夢の中云々」と言いながら,画面が暗転していく。
……待てよ。そうか,さてはこれも演出……と思ったものの,オープニングの導入としては,ちょっと長い気もする。3回目のユダ画像が表示されたときは,さすがに吹いてしまった。
3回目の起動画面でボタン連打してみるも,やはり反応はない。何なんだよもうー,とボタンを押しっぱなしにしたところ,ICEYが起動。
えっ,も,もしかして演出でも何でもなかったの……? 繰り返されるユダ画像で笑っていたのはこの世で自分だけかと思うと,急に恥ずかしくなった。
気になったので,別のアカウントを作って最初からゲームを始めてみたところ,ボタン押しっぱなしで一発起動した。「なんでこんな仕様に……」と困惑せずにいられなかったが,プレイを終えた今振り返れば,実に本作らしい仕掛けだったのだ。
ナビゲーターの“フリ”に乗っかって,
順路に逆らう新感覚反逆アクション
ようやく起動したICEYを操作していると,ナレーターが頻繁に「次に進むべき道」を指示してくる。
といっても,「こっちへ行け」という直接的なものではない。「ICEYは,矢印の方向に向かった」という感じで,あくまでナレーションという体裁を保ちつつ,やんわり指示してくるのだ。
ナレーターはいろいろ言ってくるが,当然ながら行動はプレイヤーに委ねられる。ナレーション通りに矢印の方向へ進んでもいいし,「押すなよ! 絶対,押すなよ!」的な“フリ”と判断して,あえて矢印の方向とは逆に進んでもいいのだ。
ナレーターに従わず,違う方向に進むと「ICEYは,こちらの道が気になったようだ」とフォローしてくれるが,あまりしつこく反抗していると……。
こういう反応を見せてくれると,プレイヤーとしては言われることと逆のことをやってみたくなるもの。このあたりで,大半のプレイヤーが気付くに違いない。このゲームは2Dアクションゲームを装った別の何かだということに。
「ICEY」というゲームを,その外側から眺めるナレーターの存在は,「ゲーム内ゲーム」の仕様を理解して遊んでいるプレイヤーがいてこそ意味を持つものだろう。
プレイヤーが意識的に寄り道することを想定して盛り込まれたネタの数々は方向性も豊富で,「次はどんなネタが見られるんだろう」と楽しみになってくる。メタな要素が盛り込まれているゲームは数あれど,ここまで大きく振り切ったものは,そうそうお目にかかれない。
「2Dアクションゲームを装った別の何か」とは書いたが,もちろん2Dアクションとしてもよくできている。高速ダッシュを使いこなして敵の背後を取り,撃破したときは爽快だ。
技は15種類ほどあるので,アクションが得意というわけでもない筆者は「そんなに使いこなせないよ!」という感じだったが,「イージー」であれば,弱攻撃と強攻撃を適当に組み合わせているだけでもなんとかなる。アクションに自信があるなら,オープニングの質問で難度を上げて挑むのもいいだろう。
ラスボスを倒した後が本番
作り手の裏を突くプレイで,隠された真実を暴け
ユダを倒し,「一応のエンディング」を迎えるまでは,さほどかからなかった。オープニングでの難度選択で「イージー」にしていれば,ほんの数時間あればたどり着けるだろう。
しかし,このゲームを本当の意味で味わうには,ここからが本番。プレイ中にいつでも確認できる「実績リスト」を見れば,取得していないものがまだまだあることが分かるだろう。
「反抗期か!」というくらいに,ナレーターが言うことにほぼ反発し,結構な寄り道を繰り返してきた筆者でも,未取得の実績が15個もあった。ゲーム中のマップは調べ尽くしながら進めてきたつもりだが,まだまだ“あまのじゃく”な遊び方が隠されているようだ。
聞いた話によると,このゲームにはもうひとつのエンディングがあるらしい。それを見るには“実績目当てのプレイ”をする必要があるそうで,実績マニアとしては血が騒ぐ。
他機種版に先駆けて日本語で遊べる,Nintendo Switch版「ICEY」。ステージ構成もコンパクトで,だからこそ,隠しネタを見つけるために奔走しても苦にならない。価格も1000円とお手頃なので,興味が湧いた人は,ぜひ一度遊んでみてほしい。
ところで,順路からそれた場所に隠されているネタのひとつに,ナレーターが「ゲーム開発は大変なんだ。だから……You,もう一本買っちゃいなよ?」と冗談めかして言ってくる場面がある。
本稿を書くにあたってのプレイ経験を生かせば,他機種版の実績もカンタンに取れるので,実績マニアな筆者としては,他機種版の「ICEY」を本当にもう1本買ってしまいそうになっているのだ。
「もう1本? I see.(分かったよ)」
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