レビュー
“ソニック”シリーズの原点に立ち返った2Dアクション「ソニックマニア」がファンに支持される3つの理由
現在,2Dアクションゲーム「ソニックマニア・プラス」(PlayStation 4 / Nintendo Switch)が発売中だ。2017年8月に発売された「ソニックマニア」(PC / PlayStation 4 / Xbox One / Nintendo Switch)に新要素「アンコールモード」やプレイアブルキャラクターを加え,さらにボリュームを増したアップデート版である。
メガドライブで発売された初代「ソニック・ザ・ヘッジホッグ」を彷彿とさせるドット絵の2Dグラフィックスと,スピード感を追求したゲームシステムは,新旧シリーズファンに高く評価されている。
今回は通常のレビューとは趣を少々変えて,メガドライブ時代から“2Dソニック”を愛する筆者がオールドファンの目線で,「ソニックマニア」(および「ソニックマニア・プラス」)が多くのファンに支持される“3つの理由”をお伝えしたい。
「ソニックマニア」公式サイト
【理由その1】
12のトリビュートステージには
2Dソニック初期5作品へのリスペクトが詰まっている
1991年に登場した初代「ソニック・ザ・ヘッジホッグ」はメガドライブユーザーだけでなく,国内外のゲーマーやゲーム業界に大きな衝撃をもたらした。筆者もそれをリアルタイムに体験していて,当時働いていたメガドライブ専門誌の編集部で初めてサンプルROMを起動した日のことを覚えている。「セ〜ガ〜♪」とボイスが流れ,ソニックのアニメーションと共にロゴが現れ,そして滑らかな高速スクロールのデモ画面を見たときの驚きは今も忘れられない。
そんなソニックシリーズも27年の歴史の中で,技術の進歩やハードウェアの変遷に伴い,3D表現へと移り変わってきた。そのターニングポイントとなったのは,1998年の「ソニックアドベンチャー」(ドリームキャスト)だ。
実は1994年の「ソニック・ザ・ヘッジホッグ3」もメガドライブ用の特殊チップを採用した3Dアクションゲームになる予定だったが,特殊チップの開発が遅れたため,一から作り直して2Dアクションゲームとして世に送り出された。こうした経緯があるものの,メガドライブで展開された2Dソニックが一つの完成形を見たことで,現在も2Dソニックには根強いファンが存在しているのだろう。
さて,2Dソニックシリーズの最新作となるソニックマニアだが,そのコンセプトは「クラシックシリーズ」と定義されたメガドライブ5作品のトリビュートである。
Dr.エッグマンがエンジェルアイランドで掘り出した謎の鉱石・ファントムルビーの力で時空が歪み,ソニック達もろとも別の世界に飛ばされてしまうというストーリーが展開。新規ステージに加えて,クラシックシリーズの5作品から印象的なステージがリバイバル収録されている。
- :Green Hill(「ソニック・ザ・ヘッジホッグ」)
- :Chemical Plant(「ソニック・ザ・ヘッジホッグ2」)
- :Studiopolis(新規)
- :Flying Battery(「ソニック&ナックルズ」)
- :Press Garden(新規)
- :Stardust Speed Way(「ソニック・ザ・ヘッジホッグCD」)
- :Hydrocity(「ソニック・ザ・ヘッジホッグ3」)
- :Mirage Saloon(新規)
- :Oil Ocean(「ソニック・ザ・ヘッジホッグ2」)
- :Lava Reef(「ソニック&ナックルズ」)
- :Metallic Madness(「ソニック・ザ・ヘッジホッグCD」)
- :Titanic Monarch(新規)
ソニックマニア最大の見どころは「リバイバルステージの構成」だ。
リバイバルステージのACT 1はオリジナルの形状を踏襲しつつ,ソニックマニアのゲームデザインに合わせて拡張。後半となるACT 2は新規に作成されている。そしてステージを手がけているのは,タイトルに由来する生粋の“ソニックマニア”である開発陣。当時の見た目を真似ているだけでなく,全編においてオリジナル版への多大なリスペクトが感じられるのだ。
例えば「Chemical Plant」の場合,毒々しい色の液体が要所に溜まっている。ACT 2で注射器を踏むと,その液体に薬品が注入されて凝固し,踏むと大ジャンプが可能になるというギミックが追加された。また,空中戦艦が舞台となる「Flying Battery」にはスクラップ置き場があり,鉄くずの中をソニックが潜っていくという仕掛けが用意されている。
それぞれのステージの世界観を損なうことのない新ギミックは,いずれも「分かってる!」と思わせるもので,懐かしさを覚えつつ新鮮なプレイ感覚が心地いい。
一方の新規ステージにも,どこかシリーズ作品を思い出させる雰囲気や仕掛けがあり,当時を知っていても知らなくても「こんなステージあったかも!」と思わせる完成度を誇る。
なお,新要素のアンコールモードでは各ステージのテイストが変更されていて,本編とは異なる雰囲気が楽しめる。オープニングに登場するエンジェルアイランド(「ソニック・ザ・ヘッジホッグ3」のステージ1)のシーンが,少しだけプレイできる点も嬉しい。
【理由その2】
現代に蘇ったドット絵のソニック達
“幻のキャラクター”も復活
ソニックシリーズと言えば,魅力的なキャラクターにも注目が集まるわけだが,「ソニックマニア」ではクラシックシリーズに登場したソニック,テイルス,ナックルズがプレイアブルキャラクターとなっている。もちろん,3人ともメガドライブ時代と同じクラシックスタイルのドット絵だ。
試しにソニックを操作しているときに,ゲームパッドを放置してみよう。「何してんだよ,早く行こうぜ!」と言わんばかりに,プレイヤーのほうを眺めてくるはずだ。これは,プレイヤーによって行動を制限されることを嫌う,ソニックらしいアピールに見える。こうしたアピールはメガドライブ時代から存在しているが,「ソニックマニア」では直後に走り出そうとするポーズも見せるようになった。
なお,「ソニックマニア」ではジャンプ後,もう一度ジャンプボタンを押したままにしていると,着地と同時にダッシュする「ドロップダッシュ」が追加された。スピンジャンプ後も高速で走り続けられるようになり,ソニックシリーズならではのスピーディな爽快感に磨きがかかっている。
尻尾による飛行は彼だけの特技で,スピンジャンプ後にジャンプボタンを連打すると一定時間,上空へと飛び上がれる。NPCのテイルスに飛びつけば,一緒に空を飛ぶことも可能だ。
ナックルズは滑空飛行が得意で,さらに特定の壁に張り付いて移動することが可能。そのため,ソニックやテイルスにはたどり着けない場所へ到達できる。「ソニックマニア」ではソニック達とは異なるルートを進む仕掛けが登場するが,「ソニック・ザ・ヘッジホッグ3」(ロンクオン時)や「ソニック&ナックルズ」において彼を操作したときのシチュエーションを踏襲しているようだ。
「ソニックマニア・プラス」(およびアンコールパック)の追加キャラクター,マイティー・ザ・アルマジロとレイ・ザ・フライングスクイレルにも触れておこう。彼らは知る人ぞ知る,ソニックシリーズ初のアーケードゲーム「セガソニック・ザ・ヘッジホッグ」のプレイアブルキャラクターである。
ソニックを加えた“主人公トリオ”として登場していたが,当時は明確なキャラクター設定が公表されていない。マイティーは1995年にリリースされたスピンオフ作品「カオティクス」(スーパー32X)に登場したが,その後は姿を見せず,レイに至っては前述のアーケードゲームのみの登場となった。
さて,そんな懐かしいキャラクターが20年以上の時を経て,なぜこのタイミングで帰ってきたのか? 「ソニックマニア」のアートディレクターを務めたTom Fry氏は,YouTube公式チャンネルのインタビュー映像において,「彼らはどうなったの!?」というファンの心配する声に応えると共に,そのキャラクターデザインが今回のクラシックソニックとマッチしていることを理由として挙げている。
防御力の高い自信家のマイティー。元気でテンション高めなレイ。晴れて2人の性格が設定され,それぞれに特徴的なアクションも用意されることになった。
マイティーの「ハンマードロップ」は上空から真下に降下するアクションで,攻撃手段だけでなく,木の上にあるアイテムを落とす効果もある。このとき,トゲの上に落ちたとしても,弾き飛ばされるだけでダメージは受けないというのも彼だけの能力だ。
一方,レイの「エアーグライド」は滑空だが,ナックルズのそれとは違い,滑空中に身体を上下させることで上昇下降を繰り返して飛行を続けられる。少々テクニカルな操作が求められるが,テイルス以上に長く空を飛べるのだ。
なお,マイティーとレイはアンコールモードに限らず,ストーリーモードでも使用可能。各ステージは彼らの特徴に合わせて調整されているので,あらためてプレイすることで新しい発見があるかもしれない。
今回,Dr.エッグマンの配下として登場するのは「ハードボイルドヘビーズ」(HBH)なる5体のロボット。もともとは「ソニック&ナックルズ」のスカイサンクチュアリに現れたエッグロボの集団だが,ファントムルビーの力によって個性的なエリートロボットへと姿が変えられている。
とくに注目してほしいのが,「ヘビーマジシャン」だ。ステージ「Mirage Saloon」のラストに登場するヘビーマジシャンは変身能力を持っており,ファングやビーン,バークといったマニアックなキャラクター達に姿を変える。これまたコアなソニックファンに嬉しいサプライズだ。
そのほかにも,メタルソニックやシリーズ作品に登場したボス,そして「Mean Bean」(「ぷよぷよ」の英題)対決といった,ソニックファンの琴線に触れるシーンが次々と出てくる。いい意味で,気が抜けない仕様と言えるだろう。
【理由その3】
「メガドライブ以上,セガサターン以下」のグラフィックス
これはメガドラの正統進化系!?
「ソニックマニア」はドット絵の2Dグラフィックスを採用しているが,「鮮やかで綺麗だけど,綺麗すぎない」ところに落ち着いている。その色使いもメガドライブを意識しているようだ。
グラフィックスの表現について,シリーズプロデューサーの飯塚 隆氏は「メガドライブ以上,セガサターン以下」と定めたことを明かしている(関連記事)。ソニックがループを回るときに細かな回転処理が施されていたり,バリアが半透明だったり,スペシャルステージの地面が滑らかに回転したりと,当時のプレイヤーが「メガドライブに欲しかった!」と言いたくなるような機能や処理がさりげなく盛り込まれているのも心憎い。
もちろん,ソニック達のドット絵もオリジナルを意識しつつ,新規に描き起こされたデザインだ。さまざまなギミックやシチュエーションに応じて見せるポーズが増えているので,キャラクターの魅力も増している。
「ソニックマニア」の難度は決して高くない。メガドライブ時代を知る人やアクションゲームを好んでプレイしている人なら,なるべく右方向を意識して走るようにするだけで,いずれはボスにたどり着き,ステージをクリアできると思う。リングを1個でも持っていれば,即ミスにならない伝統のルールも健在。セーブ機能が用意されているので,初めて2Dソニックを遊ぶという人も安心だ。
ただし,リングをたくさん持った状態でのクリア,スペシャルステージに行くためのビッグリング探し,そしてカオスエメラルドの収集といった“やり込み要素”は手応えがあるので,腕に覚えのあるゲーマーはぜひ挑んでみよう。
今回,オールドファンの目線で「ソニックマニア」の魅力を長々と語ってきたが,つまるところ筆者が伝えたいことは「2Dソニック,最高!」に尽きる。現在の主流である3Dソニックを否定するわけではないが,その原点には2Dグラフィックスのハイスピードアクションがあり,それを新作タイトルとして新旧ファンに提供してくれたことへの感謝を込めたものだと思ってほしい。
もしメガドライブ時代にソニックに出会った“同志”のなかに,まだ「ソニックマニア」をプレイしていない人がいるならば,今からでも強くオススメしたい。ソニックマニア(開発者)の手による,ソニックマニア(プレイヤー)に向けた2Dソニック最新作は,あのときのワクワクした気持ちを蘇らせてくれるからだ。
「ソニックマニア」公式サイト
- 関連タイトル:
ソニックマニア・プラス
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Sonic Mania Plus
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Sonic Mania
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