プレイレポート
SEGA AGES企画 第4回:「ファンタシースター」シリーズとの邂逅から30年。今一度,原点である第1作に触れる
セガの名作を現代に蘇らせるブランド「SEGA AGES(セガエイジス)」シリーズ。Nintendo Switch向けのプロジェクトでは,全19タイトルのラインナップが予定されている(18タイトルが配信中)。
今回,4Gamerでは“セガっ子”なライター陣に「心に残るゲーム」について,その思いを綴ってもらった。第4回は林 佑樹氏が選ぶ「ファンタシースター」だ。
ご存じのとおり,ファンタシースターシリーズは現在進行形のRPGである。つい先日には「ファンタシースターオンライン2 ニュージェネシス」(以下,PSO2:NGS)が発表となり,現役アークスとしては気になっているところだが,今回のテーマはシリーズの原点である「ファンタシースター」だ。
1990年11月21日,予約していたスーパーファミコンの購入をなぜかスキップして,メガドライブ本体と3本のソフトを手にしていた。その中に「時の継承者 ファンタシースターIII」があった。その後,一つ遡って「ファンタシースターII 還らざる時の終わりに」,続いてシリーズ第4作「ファンタシースター 千年紀の終りに」の順にクリア。そして,1994年に登場したメガドライブ移植版「ファンタシースター」にたどり着いた。
「ファンタシースター」は1987年にセガ・マークIII用ソフトとしてリリースされたが,同ハードを持っていなかったため,移植版でようやく第1作をプレイしたというわけだ。したがって,「ファンタシースター」の話だけで済むわけがない。ムリだ。
ファンタシースターシリーズ,とくに初期4部作では“千年紀”がキーワードになっているが,「ファンシースターオンライン」(2000年。以下,PSO)以降のシリーズ作品の骨子となる要素も多い。たとえば,3つ(もしくは4つ)の惑星が舞台であること,複数の種族の関係,中世の要素が漂うSF世界観,ダークファルスや深遠なる闇などが当てはまる。
ともあれ,「ファンタシースター」の舞台であるアルゴル太陽系は「ファンタシースターII 還らざる時の終わりに」「ファンタシースター 千年紀の終りに」でも同様であり,第1作に登場するキャラクターや出来事は伝説的に語り継がれている。
一方,「時の継承者 ファンタシースターIII」は外伝のような立ち位置だが,やはり第1作の存在は伝説として扱われている。
少し補足しておくと,「時の継承者 ファンタシースターIII」の舞台は惑星ではなく,都市型宇宙船“アリサ3世”である。そして,登場人物たちは前作「ファンタシースターII 還らざる時の終わりに」にて,惑星の消滅直前に脱出したパルマ人の子孫だった。
ただ,こうした“事実”が判明しても,1990年当時にはネット上の情報もなければ,ゲームの情報を入手する手段も限られていたため,いきなり第3作をプレイした筆者にはすべてを理解することはできなかった。
冒頭で触れたとおり,それから第2作,第4作をプレイして,シリーズに関する知識を深めると共に,千年紀の終わりを知る。そして原点である第1作「ファンタシースター」に遡ったわけだが,これはこれで時間旅行の気分が味わえて,個人的には恵まれていたと思う。
というわけで,「ファンタシースター」の話を始めよう。本作は古き良きRPG風の2D見下ろし視点でフィールドを冒険しつつ,ダンジョンでは3D視点というハイブリッドな構成だ。
当時としては戦闘システムもなかなか尖っていて,実にセガらしさを感じさせる。また,これも当時には珍しいことに,どこでもセーブが可能。そのおかげでメガドライブ移植版を快適に遊んでいた記憶がある。
なお,Nintendo Switch版には「AGESモード」が用意されている。オートマッピング機能の搭載に加えて,現代風のゲームバランス調整により遊びやすくなっているので,ストーリーを楽しむことを優先するのであれば,AGESモードをオススメする。ただ,ゴリゴリと強引気味に進めていたら,ちゃんと(?)ゲームオーバーになってしまった。ほどよく昔のゲームらしさも残っているのだ。
ストーリーはアルゴル太陽系第一惑星パルマにて,ラシーク国王のことを探っていたネロが殺害されるところから始まる。主人公の少女・アリサは兄を失った悲しみに暮れるが,ラシークが招いたという巨大な災いを打ち払い,平和を取り戻すために旅立ちをを決意する。
本作の移動手段は徒歩以外にも用意されている。惑星間の移動はスターシップ,地上では中盤以降にランドマスターなどの移動手段が登場する。とくに,序盤から定期便に搭乗できるスターシップは世界の広さをしっかりと実感させてくれる。
戦闘システムに目を向けると,敵との対話を試みるコマンド「ハナス」の存在が特徴的だが,それ以外はスタンダードなコマンドバトルである。ただ,キャラクターによって得意な攻撃手段や攻撃回数,効果範囲が異なり,役割分担は明確だ。
たとえば,タイロンは斧と銃を装備できるが,斧の場合は単体攻撃,銃の場合はグループ攻撃になり,状況に応じて切り替えられる。また,ミャウは2回攻撃が標準仕様になっていて,これも当時としては画期的だった。
メインキャラクターとの遭遇時には,キャラが大きく描かれる会話の演出が印象深い。最初に仲間になるミャウは,言葉を話すネコであり,RPGとしては尖っていた部分と言えるだろう。また,セリフは端的な内容に留まっているが,ほかのキャラや住民などに話を聞いて補完できたり,自身の想像を介入する余地があったりして,世界設定や背景はなかなか奥が深い。そのあたりを意識して遊んでみると,より楽しめるはずだ。
これは当然といえば当然なのだが,さまざまなシリーズ作品の元ネタの宝庫でもある。前述のラコニアをはじめ,ナウラ三姉妹のショートケーキや総督も元ネタは「ファンタシースター」だ。2000年以降のファンタシースターシリーズしか知らない人には,こうした要素を発見するという楽しさもあるだろう。
繰り返しになるが,Nintendo Switch版はAGESモードのゲームバランスがほどよく,昔のゲームには当たり前だった「理不尽な難しさ」を感じることなく楽しめる。ネットを探せば攻略情報が見つかるだろうが,あえてそれらを見ないで当時の感覚を体験してほしい。ファンタシースターシリーズ作品を遊んだことがあれば,逆算的に答えにたどり着けることもあるはずだ。PSO2:NGSの登場によって,“新たな千年紀”が始まるのかもしれない。その前に原点である「ファンタシースター」を遊んでみてほしい。
筆者がシリーズを通して,最も好きな配色のエネミーがこちら |
(たぶん)シリーズ皆勤賞のカオスソーサラー。これも思い出深いエネミーだ |
「SEGA AGES ファンタシースター」公式サイト
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