プレイレポート
Switch版「クラッシュ・バンディクー ブッとび3段もり! ボーナスエディション」プレイレポート。懐かしいクラッシュを寝転びながら遊べる!
「クラッシュ・バンディクー」は1996年に誕生したシリーズで,これまで3Dアクションゲームを中心に多くのタイトルが展開されてきた。主人公のクラッシュは,悪の科学者・コルテックスの野望を打ち砕くべく,仮面の精霊・アクアクの助けを借りつつ冒険に挑む。
「ブッとび3段もり!」は,初代「クラッシュ・バンディクー」,続編「クラッシュ・バンディクー2 〜コルテックスの逆襲!〜」「クラッシュ・バンディクー3 〜ブッとび!世界一周〜」の海外版をリマスター(※)し,セットにしたものだ。美しいグラフィックスと,後述するオリジナル要素で,初期シリーズを振り返るのにもってこいの作品となっている。すでにPS4版が,ソニー・インタラクティブエンタテインメントから発売されているが,本作はそのNintendo Switch版というわけだ。
※編注:オリジナル版のコードやアセットをほぼ使用せず,グラフィックスも新たに書き起こされているため,正確に言えばリマスターというよりリメイクに近いが,開発陣は本作を完全なリメイクとせず,「remaster plus」と表現している(関連リンク)。
同シリーズは3Dアクションだけでなく,レースゲーム「クラッシュ・バンディクー レーシング」「クラッシュ・バンディクー 爆走!ニトロカート」やパーティーゲーム「クラッシュ・バンディクー カーニバル」など,さまざまなタイトルが展開されてきた。
当初はソニー・コンピュータエンタテインメントジャパン(SCEJ)から発売されて初期PlayStationの顔となった「クラッシュ・バンディクー」だが,その後はKONAMIやビベンディ・ユニバーサル・ゲームズ,Activision Blizzardとパブリッシャが替わっていき,本稿で紹介するNintendo Switch版はセガゲームスが日本販売を担当している。
開発当初の仮称が「Sonic’s Ass game」(プレイヤーが主人公の後ろ姿を見続けるため)だったのは有名な話だが,そんな「クラッシュ・バンディクー」が本家「ソニック・ザ・ヘッジホッグ」を展開するセガゲームスからパブリッシングされることになったのは運命のイタズラと言えるだろう。
日本展開においては,キービジュアルが日本向けに描き直されたり,チュートリアルが追加されたりしているが,この辺りは単なるローカライズに留まらない,カルチャライズのハシリだ。当時を知るプレイヤーであれば,ぬいぐるみのクラッシュが踊るCMや,ゲームタイトルを連呼するテーマソング「クラッシュ万事休す」,そしてコロコロコミックに掲載されたマンガ版などが思い出深いのではないだろうか。こうしたプロモーションは本家ノーティドッグの開発陣にも気に入られ,「2」や「3」ではクラッシュを放置すると踊るようになったり,隠しコマンドでムービーが見られたりもしていた。
今回の「ブッとび3段もり!」はあくまで海外版をベースとしたリマスターであるため,これらのムービーが収録されていない。また,日本版の独自要素だった初代作冒頭のチュートリアルも存在していないといった違いが存在するので,あらかじめ注意しておこう。なお,メッセージやボイスはちゃんと日本語になっているので安心してほしい。
セーブシステムの緩和によって,遊びやすくなった「クラッシュ・バンディクー」
「ブッとび3段もり!」では,3作品を順番に遊んでいくことで,シリーズの進化を実感できる。ステージの構造や操作感はそのままに,グラフィックスは3作とも現行機のクオリティにリニューアル。画面はイメージイラストがそのまま動き出したようなものとなっており,ファンにとってたまらないだろう。
もちろん,クラッシュの豊かな表情も原作通りに再現されている。放っておくと踊り出し,後方から恐竜に追いかけられる時は不安げに後ろを振り向くなど,活き活きと動いてくれる。リアルタイムで遊んでいなかった人も,シビアで良質なジャンプアクションゲームとして楽しめるのは言うまでもない。
初代「クラッシュ・バンディクー」は今から22年前となる1996年に発売された。コルテックスの洗脳から逃れたクラッシュは,恋人のタウナを助けるべく,アクアクとともに冒険の旅に出る。
3Dグラフィックスで描かれたステージを進み,ジャンプで崖を飛び越え,スピンで敵を倒すというゲームの基本構造はここで完成している。
敵や障害物の配置が良い意味でイジワルであり,「途切れた通路をなんとか飛び越えたら,そこには盾を持った敵が待ち構えており,突き飛ばして前の場所へ戻してくる」「坂道にコケが生えており,滑り落ちる先にはトゲだらけのトラップが配置されている」くらいのことは当たり前に起こる。現在で言うところの「死にゲー」的な体験を存分に楽しめるだろう。
もちろん「足場の端に行くと自動で主人公が踏みとどまって落下を防止してくれる」なんて近代ゲーム的な便利機能は存在しないため,シビアな操作が必要。それだけにクリアできた時の喜びは大きいものがある。
単にクリアするだけでなく,「ダイヤ」獲得のやり込み要素も印象的だ。ステージにはいくつもの木箱が配されており,スピンやジャンプによる踏みつけですべて破壊するとダイヤをゲットできる。ダイヤには白いものと色つきのものが存在しており,後者は取得すると特殊なルートが解禁される。
「木箱を壊す」といっても,これがなかなか楽ではない。ステージによっては,いくつかの木箱が,たどり着くのが難しい場所や,あらかじめ他のステージで色つきダイヤを入手しておかなければ入れない隠しルートに置かれているからだ。
ちなみに,このダイヤ獲得条件については,本作で少し優しくなっている。オリジナル版だと途中でミスし,中間ポイントから再開になると,それまでに破壊した箱のカウントがリセットされてしまうため,ノーミスですべての木箱を破壊しなければならなかった。しかし,本作では途中でミスしても白ダイヤについては獲得できるようになっているのだ。なお,色つきダイヤについては旧作同様にノーミスが求められる。
これに加え,セーブに関する制限も撤廃されている。オリジナル版ではダイヤの入手やボーナスステージへの突入時にのみセーブできたのだが,今回はマップ画面でいつでもセーブできるうえ,ボーナスステージではオートセーブがある。かつてオリジナル版で断念したという人は,これを機に再挑戦してみるのもいいかもしれない。
また,タイムアタックが可能となったうえ,あまりの高難度でオリジナル版では没にされたステージ「Stormy Ascent」が「あらしのしろ」(DLC名は「あらしのこじょう」だが,ゲーム内では「あらしのしろ」表記になっている)として遊べるようになっているのも,当時の腕自慢には見逃せないだろう。
あらしのしろは,降りしきる雨の中,城壁を登っていくステージだ。ジャンプのタイミングがとにかくシビアなうえ,少しでもミスするとどんどん下へと落とされてしまう意地悪な構造となっており,生半可な覚悟で挑んでは心を折られてしまうことは間違いない。ゲーム開始直後からチャレンジできるものの,しっかりと腕を磨いてから挑もう。
さらに,クラッシュの妹である「ココ」でプレイできる追加要素も見逃せない。オリジナル版では「2」から登場,「3」でプレイアブルになった彼女だが,今回は全作でココと交替できる。性能的にはクラッシュと変わらないものの,待機時のアクションやミスした時の演出が異なっているため,新鮮な気持ちで楽しめるだろう。
新アクションや,乗り物が追加された「クラッシュ・バンディクー2 コルテックスの逆襲!」
1997年に発売された「2」では,我らがクラッシュが,コルテックスに騙されて「パワーストーン」を集めるための冒険に向かう。
前作に比べて,全体的に難度が低めになったうえ,ステージセレクトが導入されているため,行き詰まっても別のステージを遊んで気分転換できる。ロケーションも雪山やジャングル,遺跡に宇宙などさまざまで,初代の翌年に出たとは思えないほど長足の進歩を遂げている。
「2」の目玉はクラッシュの新アクションと乗り物の追加だろう。クラッシュはスライディングやボディプレス,ロングジャンプやしゃがみ歩きを習得。狭い横穴をスライディングで通り抜け,ボディプレスで仕掛けを起動させるなど,クラッシュのアクションに関してはひとまずの完成を見た感がある。
また,機雷だらけの川をサーフボードで渡ったり,小熊に乗って雪道を爆走したり,ジェットパックで宇宙を飛んだりと,さまざまな乗り物によってステージ展開もバリエーション豊かになっている。本作の美しいグラフィックスで遊んでいると,カートゥーンの世界に入り込んだ感覚すら覚える。
トラップとして印象深いのは「ニトロ箱」の登場だろう。カウントダウン後に爆発する「TNT箱」よりも過激な,触れると即座に爆発するあの箱だ。今回のリマスターは海外版がベースになっているため,箱の文字こそ「ニトロ」ではなく「NITRO」だが,たまに飛び跳ねる特性はオリジナル版そのまま。ニトロ箱が静かになったところを見計らって通り抜けようとしたら,いきなり跳ねたのがクラッシュに当たって大爆発する……という当時のトラウマが蘇る体験ができる。ヘッドフォンの音量にはご注意を。
さまざまな国や時代を巡る「クラッシュ・バンディクー3 ブッとび!世界一周」
本作のラストを飾る「3」は1998年の発売。過去に遡ってパワーストーンを手に入れようとするコルテックスと邪悪の精霊・ウカウカを阻止すべく,クラッシュとココとアクアクは「タイム・ネジネジマシーン」でさまざまな時代を巡る。
“ブッとび!世界一周”のサブタイトル通り,中世ヨーロッパやアラビア,中国にエジプト,古代にアメリカなど,さまざまな時代と国がステージのモチーフになっている。アラビアでは魔法の絨毯が飛び,アメリカではバイクに乗って敵車とレースし,海ではジェットスキーに乗って水上を走るなど,展開の一つ一つが楽しい。
もちろんステージセレクトも続投しており,1ステージのプレイ時間は前作よりもさらに短めになっているため,レース面だけをちょっと遊んで気分転換するというようなこともできる。難度自慢のアクションゲームが2作を経て,遊びやすさも兼ね備えた優等生になった印象だ。
ライオンをけしかけてくるタイニー・タイガーや,火炎放射器で攻撃してくるディンゴダイルなど,ボスの面々も個性豊かだ。倒すと待望の「ダブルジャンプ」や,こちらも待望の飛び道具「リンゴバズーカ」,高速落下する「スーパーボディプレス」といった特殊能力を習得でき,ステージ攻略がさらに楽になる。
“特殊能力があるんだから,すでにクリアしたステージに戻ればダイヤが手に入るかもしれない”ということで,前作よりもリプレイへのモチベーションを強く感じられる。
オリジナル版ではココがプレイアブルになり,タイムアタックが導入されたのも「3」から。タイムアタックは文字通り,時間との勝負だ。ステージのあちこちにある数字の書かれた箱を壊すとタイマーが止まるため,急ぎつつも正確に操作し,さらにはしっかりと箱を壊していくことが求められる。通常のプレイとはまったく感覚が違ってくるのが面白い。
また,本作オリジナルの要素として,「きんみらいステージ」が収録されている。
ビームが行く手を遮る中,ボーッとしていると落とされるベルトコンベアの床や,狭い通路の向こうから攻撃してくるロボット,画面外から放たれるミサイルなど,なかなか歯ごたえのあるステージに仕上がっている。旧作にはなかった新規ステージなので,ファンは腕試しをしてみるといいだろう。
Nintendo Switchの携帯モードでは持ち歩きつつ遊ぶこともできるのだが,1ステージのプレイ時間が短めな「2」や「3」との相性がいい印象だ。ベッドに寝転んだ状態で遊んでいたはずが,ついつい熱中して起き出してしまった……ということもしばしばあった。
初めてのステージやタイムアタックなどの集中力を要するときはTVモード,気分転換やノンビリ遊びたいときは携帯モードと使い分けるとちょうど良い感じで,この辺りはいろいろなプレイシーンに対応できるNintendo Switchの特性ともマッチしている。
隠し映像や山口勝平さんによるクラッシュの決め台詞,ポケットステーション用のミニゲームといった日本版にあった要素のいくつかが収録されていないのがちょっと残念だが,現行環境での美しいグラフィックスと,初代におけるセーブの緩和,そして新作ステージ2つに,いつでも中断できる携帯モードでのプレイなど,旧作を遊び込んだ人でも充分に楽しめるものになっている。また,これまで遊んだことのない人も,本作をプレイして,長く愛され続けているクラッシュシリーズの原点を体験してほしい。
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