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「スペース雑談会 スペースチャンネル5〜メキシカンフライヤーはどこからきたのか?〜」レポート。ササキトモコ氏をゲストに迎え,開発秘話とともに蔵出し音源も公開に
1999年12月16日にドリームキャストで発売されたSC5は,ダンスと音楽,そしてレトロフューチャーな世界観をストーリーに取り入れた,前例のない「ミュージカルアクション」として,世界中のプレイヤーを魅了した。
その人気は現在も根強く続いていて,発売から21年が経過した2020年2月にはVRタイトルの最新作「スペースチャンネル5 VR あらかた★ダンシングショー」(PC / PlayStation 4 / Meta Quest。以下,SC5 VR)がリリースされた。その発売を記念するライブイベント「スペースチャンネル 5 ウキウキ ミュージック フェスティバル オンライン」も同年11月に開催され,新旧ファンの間で盛り上がりを見せている。
「スペースチャンネル 5 ウキウキ ミュージック フェスティバル オンライン」レポート。SC5ファンはもちろん,セガファンも繰り返し体験したくなる,配信ならではの音楽イベントに
「スペースチャンネル 5」20周年と「スペースチャンネル5 VR あらかた★ダンシングショー」の発売を記念した,「スペースチャンネル 5 ウキウキ ミュージック フェスティバル オンライン」が開催された。イベントでは,シリーズのファンとって最高のライブやトークなどが行われので,その模様をお伝えしたい。
今回配信された特番は,SC5の発売から24周年を記念し,ゲームディレクターの吉永 匠氏,サウンドディレクターの幡谷尚史氏,そしてゲストに本作の企画立ち上げ時のサウンド面に強く貢献した,元セガ社員で現在はミュージシャンほかマルチクリエイターとして活躍するササキトモコ氏を迎え,今まで語られたことのなかった開発秘話などが明かされた。本稿ではその模様をレポートする。
番組は生配信され,SC5ファンにはおなじみのステージ「スペースポート」を背景に,登壇者がリモートで参加した。
最初のコーナーは,SC5の今年のトピックを振り返る「スペースチャンネル情報部」。発売から24年が経過している本作だが,現在もコンスタントに話題に上がるのがその人気を物語っている。
一つは,発売済みのSC5 VRのMeta Quest版が,今年10月に発売されたMeta Quest 3で動かなかったという声を受け,アップデートによって無事対応したということ。
同作はVR機器購入時に遊びたいマストなタイトルと西村氏も推奨していて,自身もハードウェア購入時に即購入したとのこと。吉永氏も非日常を気軽に体験できるタイトルだと推している。
またそれに伴い,同作のオリジナルグッズの在庫も復活し,現在通販サイトにて販売中だ。
スペースチャンネル5 - 2083オンラインショップ
続いての話題は今年8月に最新作が発売された「サンバDEアミーゴ」(Nintendo Switch / iOS / Meta Quest)に,SC5の楽曲「Go Go Cheer Girl!」がDLC楽曲として配信されたことだ。この曲は「スペースチャンネル5 パート2」からの選曲で,幡谷氏も「いい選曲」だとお墨付き。この曲で遊んでいるとマラカスの動きがチアガールのポンポンにも見えてくるともコメントしていた。
楽曲収録に伴い,吉永氏が楽しそうにゲームをプレイする動画も配信されているが,これは西村氏からの依頼だったそうで,ほかにもセガサウンドチームの大谷智哉氏や光吉猛修氏によるプレイ動画が配信中だ。
最後に昨年大きなニュースとなった,SC5の映画化について触れられた。吉永氏は「発表されていること以外のことは言えない」と前置きし,「現在は映画のプロデューサーやIPの管理担当などとともに対応中です」と返答。映画化は時間がかかるということを自身が実感しつつも,フェードアウトするようなことはなく,ちゃんと動いていることを明言し「気長に待っていてほしい」と述べている。
そしてここからはゲストとのトークコーナー。アバター姿で登場したササキトモコ氏は,現在はユニット「東京ハイジ」として活動中。セガ在籍時代に「NiGHTS」や「サンバDEアミーゴ」,「ROOMMANIA#203」など数多くのタイトルで音楽を手がけ,近年はSC5 VRの楽曲とともに,登場キャラクターの「ベツモロ」の声を担当している。
また「ROOMMANIA#203」「ニュールーマニア ポロリ青春」の架空のアーティスト「セラニポージ」もササキ氏のユニットで,2枚目のアルバムに収録された楽曲「ぴぽぴぽ」がTikTokの投稿楽曲として人気を得て,同曲を倍速にしたバージョンや,アルバムのデジタル配信が始まっている。
“冬眠”していたセラニポージの突然のブレイクに,当のササキ氏は「困る」とコメント。冬眠から覚める準備ができておらず,過去に一度くじけてしまったこともあって,再起動に時間がかかっているとのこと。
TikTokで楽曲がバズっている事情も知らなかったが,「求められているので,いつかは何かしたい」と感じているのだとか。
そして本題となるSC5のトークは,特番のサブタイトルにある「〜メキシカンフライヤーはどこからきたのか?〜」をメインテーマに語られた。
ササキ氏は,SC5の前身となる“背景がムービーのアクションアドベンチャー”に音楽の要素を入れるとなったときに,サウンドチームのスタッフとしてプロジェクトに参加し,当時セガがあった大鳥居にできたばかりのモスバーガーで,湯田高志氏(SC5ディレクター)と吉永氏と3人でよく打合せをしていたそうだ。
ササキ氏は新人の頃に初めてサウンドを手がけたメガドライブの「アイラブ ミッキー&ドナルド ふしぎなマジックボックス」(1992年)で湯田氏と一緒に仕事をしていたこともあって,この3人でのやりとりは本当に楽しくカジュアルで,ササキ氏もガツガツと積極的に意見を出していたという。
企画をプレゼンする映像を作っていたとき,湯田氏が「とにかく靴音にこだわっていた」とササキ氏は振り返る。すべてのアクションが音楽に合わさる仕組みを作るために,主人公の靴音をリズミカルに鳴らすことが目的だったと吉永氏は解説するが,その主人公はくだんのアクションアドベンチャーから流用していた男性だったため,ササキ氏は「男の人の靴音がよく分からず,何度も作り直しました」と語る。
そのプレゼンビデオを作るときに選ばれた楽曲が,SC5のメインテーマにもなる「メキシカンフライヤー」で,この曲を見いだしたのがササキ氏である。
当時,渋谷や六本木のレコード店を巡っていたササキ氏は,中でも「WAVE」には信頼を置いていて,六本木店の店頭のポップに誘われて買ったのが,同曲が収録されたコンピレーションアルバム「The Thriller Memorandum: Mood Mosaic Series」だったという。その中から2曲を選んで湯田氏に提出した後,選ばれたのが「メキシカンフライヤー」であった。
この曲は冒頭にわかりやすいフレーズが入っていたことと,キャラクターが歩いてゲームを見せるテンポにピッタリで,単純に格好良くて耳に残る曲として選んだと吉永氏。スパイ音楽テイストもあり,B級の“エセ感”のある怪しい感じが良かったとも語っていた。
こうして後のSC5を象徴するメインテーマが決定したものの,ササキ氏は自ら企画した「ROOMMANIA#203」の開発に専念するため,SC5のプロジェクトから離れてしまう。その置き土産として,SC5のサウンドコンセプトとなる,ラウンジミュージックについての長い論文を書いたのだとか。レトロフューチャーをコンセプトにしたSC5において,当時の「渋谷系」と呼ばれた音楽のように,要所にレトロな要素を取り込んで統一していくことが本作にマッチする音楽になるという内容で,それが後のセラニポージに多少なり影響しているかもしれないとササキ氏は述べている。
SC5と「ROOMMANIA#203」は,ゲームは真逆の内容ながら,昭和レトロな世界観と音楽の部分で分かち合っている部分も多い兄弟のような存在で,ともに“大鳥居のモスバーガー生まれ”という部分も一致した。
ここで西村氏が“ササキ氏がSC5の音楽をこのまま作っていたら”というIFについて尋ねると,「昭和レトロ感が漂って,こんなおしゃれになっていなかったかも」と答える。SC5は「メキシカンフライヤー」が最高の形でアレンジされていて,自身はメロディーメーカーでアレンジャーではないので,恐らくこれほどの完成度は見込めなかったかもしれないと続けた。
ササキ氏と交替でサウンドディレクターに就任した幡谷氏は,その後,床井健一氏という強力なパートナーを得て,楽曲の中でも格好いい曲を全て作ってくれたという。幡谷氏自身はバトルで高揚感を上げるゲームに密着した楽曲や,レポート3のアステロイドベルトなどを担当している。
トークはここで一旦終了し,ファン待望の蔵出し音源が披露された。その楽曲は,「スペースチャンネル5 パート2」のエンディング曲の「THIS IS MY HAPPINESS」。
この曲は,物語で誘拐されてしまうおっちょこちょいの大統領ピースが最後に歌う曲で,銀河レベルの事件が終わった後でも,彼ならプライベートなラブ&ピースのことを歌うのではないかというイメージで,幡谷氏がササキ氏に相談して作ったそうだ。
オリジナルを歌っているのはダニー石尾氏だが,幡谷氏はその仮歌を自身の“永遠の同期”である光吉猛修氏に歌ってもらおうと考えていて,ササキ氏に作ってもらった仮の歌詞を曲に当てたデモテイクとして作ったのが,ここで流れるササキ氏ボーカルの「THIS IS MY HAPPINESS」である。
番組のアーカイブがあるうちにぜひ聴いてほしいものだが,なんとなくセラニポージの曲のようであり,また,うらら本人が歌っているようでもあり,石尾氏や光吉氏の男性ボーカルとはまた違う,愛らしさがあふれた「ササキトモコバージョン」と呼んでも差し支えないデモテイクであった。
吉永氏もこの曲の歌詞が等身大だったことに驚きつつも,宇宙を救った壮大な物語を終えたあとに等身大のこの曲がかかることで,自分が宇宙を救ったんだという体験が自然に流れ込んでいったのではないかと,このバージョンを聴いてあらためて思ったそうだ。
SC5のエンディングの後味のイメージを「『オレたちひょうきん族』の後にシティポップが流れるような感じ(笑)」と幡谷氏は例え,ドタバタ喜劇を清涼感でスッキリさせてくれるような魔力があると続ける。SC5に“謎の感動”という言葉がよく使われる理由の一つに,このような楽曲の仕組みがあるのではないかと吉永氏は述べていた。
ササキ氏は最後に「SC5は立ち上げのときに関わってからすごく思い入れがあって,こういう節目に関わることができてとても嬉しい」とコメント。吉永氏もSC5というIPが忘れられてしまわないよう,こういう機会はまた作っていきたいと述べ,番組を締めくくった。
番組のエンディングは,光吉氏が歌う「THIS IS MY HAPPINESS」に乗せ,プレゼンムービーから最新のSC5 VRまでを紡いだ映像も披露された。番組のアーカイブは期間限定(配信終了日は未定)とのことなので,まだ見ていない人はお早めに。
また4Gamerでは過去に2回,SC5開発陣へのインタビューを行っている。併せて読んでいただければ,本作のさらなる深みを知ることができるかもしれない。
20周年を迎えた「スペースチャンネル5」開発陣が集結。“パート1誕生秘話”,VRで復活を遂げる“最新作に懸ける思い”を聞いた
「スペースチャンネル5 VR あらかた★ダンシングショー」の発売が目前に迫っている。今回のシリーズ復活を記念して,「スペースチャンネル5」シリーズの開発陣に集まっていただき,“パート1”の誕生秘話や当時の思い出,そして最新作への意気込みまでたっぷりと語ってもらった。
「スペースチャンネル 5 ウキウキ ミュージック フェスティバル オンライン」開催2周年記念(?)インタビュー。うらら&モロ星人誕生のヒミツを,2人のデザイナーが振り返る
2020年11月13日に行われた「スペースチャンネル 5 ウキウキ ミュージック フェスティバル オンライン」から,間もなく2年が経過する。これを記念して,「スペースチャンネル5」のデザイン面のキーパーソン,宮部由美子氏と茂呂真由美氏に当時のデザイン秘話を聞いた。
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