インタビュー
[インタビュー]Skyとそのコミュニティ運営について,Jenova Chenが語る―――コミュニティは家族です。良かれと思ったことがうまくいかない時でも、お互いが愛し合っているということは変わりません
世界中で大人気の「Sky 星を紡ぐ子どもたち」(iOS / Android / Nintendo Switch / PS4 / PS5),海外の賞を総ナメにした「風ノ旅ビト」,スミソニアン博物館に展示されている「Flowery」(原題:Flower)などを開発した,thatgamecompanyのJenova Chen氏からそんな連絡が入ったのは,今年の秋のことだった。
2019年11月を最後に行き来ができなくなったのでまったく会えてないし,なるほど会食は大歓迎だ。しかし,彼がわざわざ4Gamerまで来てくれるのに,ご飯食べてサヨナラじゃあまりにももったいない。
「ご飯も食べるけどその前に久しぶりにインタビューを受けてくれませんか。この3年のことを聞きたいし」とオファーしたところ快諾,3年ぶりのインタビューとなった。
※古いバージョンの原稿を上げてしまっていたので修正しました(2022年12月8日15:00)
記事中にもあるが,3年前はまだ「Sky 星を紡ぐ子どもたち」がローンチ直後で,運営型のゲームというものが右も左も分からない状態で,前途洋々たるJenovaの話を聞いた。
あれから3年。Skyは当初の想像を(おそらくはJenovaの想像も)超えて大きなコンテンツになり,1億6000万を超えるダウンロード数と膨大なプレイヤーを抱える,世界有数の“オンラインゲーム”になった。
本当の意味での「One World」で動いており,文字どおり世界中の……富める国も,貧しい国も,男性も,女性も,大人も,子供も,お年寄りも,あらゆる層のプレイヤーがいるSkyは,この3年間,どのようなことを掲げ,どのようなことに注意し,どのようなアクションを取ってきたのだろうか。その片鱗をちょっとだけ聞いてみよう。
関連記事:いつか「ゲーマー」という言葉がなくなってほしい――「風ノ旅ビト」「Sky」を作ったJenova Chen氏が語る,ゲームというエンターテイメントにかける想い
関連記事:上田文人とJenova Chenが語る,アートと制作の苦悩,そして「ゲームを作る」ということ――イメージか,ロジックか
さて,すごくお久しぶりですね。コロナのせいで色んなものが止まっていましたけど,ようやくお会いできました。でも今日は,スタート前にまずプレゼントを持ってきたんです。これまでとは、かなり雰囲気が異なるグッズを作ってるんですよ。
4Gamer:
あれ,いつにも増してすごく豪華な箱に入ってる……。いつもありがとうございます。
Chen氏:
今回のは,とてもダークなデザインですよ。ようやく,ちょっと男性寄りのグッズを作り始めました。
4Gamer:
こんなに重たいものをハンドキャリーだなんて,ありがとうございます。
Chen氏:
これは「勇気を讃えるボックス」(Box of Courage)だから大丈夫(笑)。ちなみに,ゲーム内にある「捨てられた地(Golden Wasteland)」にいる暗黒竜をモチーフにしています。だから,真っ黒な箱を開けるときも,捨てられた地に光が差すようなイメージで……。
4Gamer:
せっかくなのでここで開けてみようかと思ってるのに,これがなかなか難しくて……。
Chen氏:
包装ビニールはキャンディのように簡単に開けられる作りにするべきでしたね(笑)。
ご存じだと思いますが,Skyのグッズにはそれぞれポエムが添えられていて,もちろんこのボックスにもあります。それはプレイヤー向けのメッセージでもあるわけですが,これは「勇気を讃えるボックス」なので,リアルの生活に勇気を持ちたいと感じている人,自分に対して批判的だったり,孤独を感じたりする人に,勇気を与えたいという思いで作っています。
4Gamer:
確かに全部違うポエムが入ってますよね。
それにしても,こんなに豪華なものをサンプルとはいえもらってしまっていいのかな,とちょっと申し訳ない気持ちになります。
Chen氏:
じゃあ代わりに,次のゲームを待ってぜひプレイしてください。次は,かなりダークなものになるかもしれません。
4Gamer:
え。ダーク……!? 本当に?
Chen氏:
おそらく。僕はSkyのプレイヤーが70%以上女性になるなんて想定しなかったし,自分たちのゲームは男性でも女性でも同じように魅力を感じられるものになってほしいと思っています。
Skyが若い男性のプレイヤーから受けた一番の指摘は,ゲームの中にで戦うことができないということです。それはすなわち「対抗」も起こらないことになるわけで,とてもつまらないから辞めました,と。
4Gamer:
「対抗」を好むプレイヤーにとっては,やることがないわけですね。
ゲームを運営するということは,自分の奥さんに何かをしてあげるときと同じような感じです
でもそれこそが,3年前のインタビューの時に聞いたあなたが作ろうとしていた世界ですよね。そこは別に後悔はないんですよね?
Chen氏:
その質問に対する意図を確認させてください。3年前に僕が作ろうと言っていて作りたかった世界ができた今,僕がそれに対して後悔があるかどうかということですよね?
4Gamer:
そうです。
Chen氏:
僕はここ3年の間に,自分が想定しなかった形で人間の本質に関して,改めていろいろ認識できてきたと思います。なにせゲームを運営し続けしないといけないので。
過去に「flOw」「Flowery」「風ノ旅ビト」を作ったときの経験とは違います。それらのゲームは,作り終わったら次へ進むことになっていました。人々から好きと言われようが,好きじゃないと言われようが,我々とプレイヤーの関係性はある意味ですごく純粋なものでした。ファンか,関心を持ってない人か,その2つしかありません。
でもこの3年間は,とても違う関係性でした。
4Gamer:
そこに結構戸惑いました?
Chen氏:
ご存じのようにSkyは運営型のゲームなので,毎月アップデートがあります。ある日突然,ファンだったはずの人に嫌われてしまうこともありますし,時にはプレイヤーの要望を優先してゲーム内容を変更せざるを得ない場合もあります。
自分が好きじゃないものを見たときのプレイヤーの反応として、激しい感情を表す場合もありますし,彼らなりの方法で意見を届けようとする様子も見てきました。この3年間,ファンの声を聞くということを学ばせてもらっています。
4Gamer:
それは言葉どおりの意味……ではないですよねきっと。
Chen氏:
ある意味では言葉どおりです。プレイヤーが本当に欲しいものは,彼らが言っている欲しいものとは違う場合が,多々あるんです。我々が何かをゲーム内に入れるとき,もちろん良いものだから入れようと思うわけですが,時には間違った意味に取られて誤解されてしまうこともあります。そこには確実に,愛情と憎悪の裏返しの感情関係があると思います。
thatgamecompanyとプレイヤーの関係は,リアルの生活にもよくある関係になっていると僕は捉えています。なんていうか,ゲームを運営することは,自分の奥さんに何かをしてあげるときと同じような感じです。
4Gamer:
なんかすごく実感がこもってるというか……。
ところで3年前にインタビューしたときに,幕張のホテルで最後に時間切れで終わってしまったのを覚えてますか?
Chen氏:
その日の午後は,まるまるずっとその部屋の中にいたのは覚えてます(笑)。
4Gamer:
そうです(笑)。それで,最後に僕はコミュニケーションとコミュニティについてあなたに聞いたんですけど,その答えを聞けないまま終わってしまいました。いまこそ,その続きをしませんか。
Chen氏:
そうですね。でも本当に3年前の僕が答えたとしても,その時の僕はコミュニティ運営について何一つ分かってなかったから……。いまなら,今までいろいろ学んできました。
僕がチームメンバーに言ってるのは,コミュニティは我々の家族だということです。良かれと思ったことがうまくいかないこともありますが,それでもお互いが愛し合っているということは変わりません。これは,僕がライブ観客(=リアルタイムのプレイヤー)を持つにあたっての,生存手引きみたいなものです。
自分たちが正しいと考えることであっても,そうすべきではない時もあります。もししたら,本当に“仲違い”をしてしまうかもしれないから。その状態に入ってしまうと,仮に正しいことをやったとしても,聞き入れてもらえずにとうてい喜んでもらえないから。
4Gamer:
なるほど。確かにかつての自分を振り返ってみても,オンラインゲームのプレイヤーというものはそういうものかもしれません。プレイヤーはどこまでも自分の望みしか言わないので,運営がそれを無条件に聞き入れてしまうと,ゲームがよくないほうに進んでしまいがちです。
例えばこれが普通のMMORPGだったら数値調整とかそういうことでもどうにかなる部分があるかもしれませんが,Skyに関しては,たぶんそうじゃないですよね。
Chen氏:
ええ,そうですね。そういう部分はあんまりありません。
4Gamer:
うまく言えないですけど,Skyはあなたが設計したユートピアなわけです。ユートピアの住人がやりたいことをそのまま聞き入れてしまっていて,それでもいいんでしょうか,というのが僕の素直な疑問です。
あなたがそれで満足しているのかなという心配というか不安というか……うまく言えないですけど。
Chen氏:
そうですね……一人のプレイヤーが過去2年の間,毎月僕にメールを書いてくれました。メールには,ゲームについて彼女が好きなところと嫌いなところが書かれていて,ゲームをどう調整してほしいか,細かい意見が書かれていました。
最初は……なんと言えばいいでしょうか,これは正直に言ってどのように受け止めるべきか図りかねていたと思います。でも時間が経つにつれ,彼女が書いてくれていることには少なからずいいアイデアがあると気付いたんです。
4Gamer:
ちゃんと読んでもらえてる時点で,その人はかなりラッキーだと思います。
いま僕は建築家として,すでに人が住んでいるビルの構造を変えているような,そんな風に感じます
Chen氏:
なので僕は,本当にプレイヤーの意見を取り入れたりもします。長く運営されるゲームだと,一番いいアイデアはコミュニティからのものだったりしますし。ゲームリリース時に僕たちの会社規模は40人ぐらいだったんですが,いまでは120人ほどがいます。
規模が大きくなってスタッフが増えてきている今では,チームの中に結構な割合でハードコアなSkyファンのプレイヤーもいます。
4Gamer:
それは心強いですね。
Chen氏:
そう。企画会議では,この人たちは「これはあまりいいとは言えない。プレイヤーはきっとこれを嫌うだろう」と自分の意見を言ってくれます。彼らは,自分たちのほうがゲームに投入している時間が長いから,僕よりもSkyについて知っていると言ってきます。
ある意味では彼らが正しいと思います。それで僕からすると,彼らは議会のメンバーのようで,まるで自分が政府を運営しているようにすら思えてきます。
4Gamer:
なるほど。組織が大きくなって,いまやそういう運営体制になってるんですね。しかし政府とは言い得て妙です。
Chen氏:
新しい政策を出そうとするときには,毎回キチンと議会のメンバーと共通認識を握っておいて,誰かが新しい政策を聞いて怒ったりしないことをあらかじめ確認しておくわけです。
最終的には,僕がすべての変更を一手でやるGodではないのです。たった一つの変更が,多くのプレイヤーの体験クオリティを殺すことになるかもしれないので。
4Gamer:
確かに議会政治ぽいです。
Chen氏:
ゲームクリエイターのことを,建築家と比較する人がいます。建築家はビルを設計して,中がどんなものになるかを図面でキッチリ設計しておいて,そこから建築に進みます。でもいま僕は,すでに人が住んでいるビルの構造を変えているような,そんな風に感じます。
4Gamer:
……ちょっとだけ寂しくなったりしませんか?
Chen氏:
寂しい……?
4Gamer:
例えば自分の話で言うなら,4Gamerは僕が作ったメディアで,2人からはじめて最初は5人とかしかいなかったです。大変だったけど,僕は僕が好きなメディアを作っていたのでそれでよかったんです。
でももうこんなに大きくなってしまうと,僕の意思と関係ないところで「4Gamerとして求められるもの」が多くあって,色んなものが暗黙のうちに必然の結果として決まっていきます。
4Gamerという名前は変わってないし,見てくれている人も昔も今もゲーマーなんだろうけど,なんだかちょっと寂しいなと思ってます。それと似たような感じ……といえばいいですか?
Chen氏:
なるほど,理解できました。
4Gamer:
読者のことを考えたらそれも正しいのだろうということは僕も分かっていますが,でもやっぱりちょっと……。そういうのに似てるかな,と今思ったんです。
Chen氏:
もしかして,あなたがやったことが読者の反感を買ったりしたんでしょうか。具体的に,どんなことでそういう気持ちになったんでしょうか。……これは僕の純粋な好奇心です(笑)。
4Gamer:
いや,そういうわけではないです(笑)。
人数が少なかったころは,全員の意思の統一が図れたんです。5人か6人か,あるいは10人ぐらいまでは,それができました。10人ぐらいの編集部の時は,基本的にスタッフの意思統一があって,みんなである程度納得して,合意のもとに決まったものが表に出たわけです。
でももう今となっては―――いや僕はもちろん立場上強力な決定権はありますが,でも現実にはそれは「4Gamer」が持つ法人格のようなものが基点となっていて,「読者はきっとこういうものが嫌いだろう」とか「メーカーさんはこういうのが好きだろう」とか,誰かヨソの人の意思のようなもので色々なものが決まっていくんです。
だから僕が……いや,ちょっとうまく言えないですね。寂しいというと変なんだけど,悲しいともちょっと違う。そういう複雑な感情です(笑)。
Chen氏:
自分の意見が通らないことが寂しいんですか?
4Gamer:
いいえ。自分の意見が必ず通るべきだとは思っていませんし,絶対に正しいとも思っていません。自分が作ったものが,もはや自分の手から離れていることが寂しいというか。
Chen氏:
なるほど分かりました。
……人にはいつも,子供時代の良き過去の黄金時代を追求したい気持ちがありますよね。これはおそらく,すべての“創造”に適用されると思います。僕も最初の頃,何もかもがピュアでシンプルで楽しかった。僕が今確実に言えるのは,政府を動かしている自分がもうピュアでシンプルでなくなっているということです。そういう話で言うなら,確かに僕も過去のシンプルさを懐かしんでいます。
でも,Skyを運営して3年。僕は政治に強く共感し始めています。昔は政治が大嫌いだったのに。そして今は,それが時として非難を受けやすい仕事だということにも気付きました。
4Gamer:
ホントそうですよね……。
Chen氏:
そうでしょう? それで,自分のそういう悲しみに向き合う方法は一つだけです。僕は好奇心旺盛な人だから,いまだにこういう新しいことから学ぼうとしています。
4Gamer:
例えばどんなことを指してますか?
Chen氏:
なんて言うんでしょう……ゲームデザイナーに探求したい可能性があっても,もしそれがある程度のユーザー規模がないと試せないものだとしたら,多くのクリエイターにとってはいつまでも試せないものなのです。
でもそれがもし,ライブ運営されて一定数のプレイヤーがいるゲームを持っていれば,そこでいろんな実験ができます。
4Gamer:
なるほどご自分の話ですね。
Chen氏:
例えば,人と人はどういうときにどういう反応や対応をするのかが見えます。これは,オンラインゲームじゃないとできないことです。我々が今トライしようとしているのは,数千ものプレイヤーのインタラクションに関連したことです。
これは,アクティブプレイヤーの人数と実験条件が揃わないので,ほとんどのゲームデザイナーにとっては実験できないことだと思っていますが,幸いにも我々には多くのアクティブプレイヤーがいてくれて,我々は数百万人ものプレイヤーにインタラクティブな体験を提供することを試せます。
4Gamer:
なるほど。変化による寂しさより,クリエイターマインドのほうが打ち勝っているわけですね。
Chen氏:
そう。これが私の原動力となって,毎日わくわく仕事できる理由です。たぶん僕が惹かれているのは,人と人の間のインタラクションを使って感情(エモーション)を作り出すことには,多くのポテンシャルが潜んでいるということだと思います。そこにあなたが同意してくれるかどうかは分かりませんが(笑)。
4Gamer:
いえ,理想的な答えをいただけて嬉しいです(笑)。
プレイヤーが欲しいのは消耗コンテンツではなく,インタラクションによって生まれる新しいゲームプレイです
Chen氏:
実に面白いです……どうしていつも僕のことがそんなによく読み取れますか。
4Gamer:
3年前はまだローンチ直後で,あなたが考える理想の世界を中心に聞いた記憶があります。でもあれから3年が経って,1億6000万ダウンロードというすごいゲームに成長して,クリエイターJenova Chenとして,何か苦しいことがあったんじゃないかなと思ってたんです。
もしかしたらこんなつもりじゃなかった……みたいなことがあったかもしれない。もしあったとして,そういうことをどのように消化しているのかなというのがずっと気になっていたので,いますごく理想的な答えが聞けてよかったです。
Chen氏:
そうですね。ほら,僕はゲームクリエイターなので,自分が悲しいと感じたときには,自分の刺激になるようなものを見つける必要があります。新しいおもちゃを探して,それによって新たな可能性を探るわけです。
自分をわくわくさせることは,おそらく可能性の境界線を押して,限界を押し広げることだと思います。
4Gamer:
すごくあなたらしい意見です。
Chen氏:
そうですか?(笑) 僕の過去のゲームを見てみると,どの作品も,当時自分が不可能だと思っていたものを実現しようとして作ったものです。不可能を,可能に。プレイヤーの皆さんが惜しみなく応援してくれているおかげで,面白い角度からSkyを運営できていることは,実は多くの不可能を可能にしてます。
4Gamer:
例えばその「不可能」とはどういうことを指してますか。
過去3年の間に,我々はこのゲームで多くの実験ができました。僕が一番好きな小説「星の王子さま」をSkyに入れることもできたけど,自分がこんなことを実現できるだなんて夢にも思わなかった。
大好きな文学作品を,そのために新規のゲームを作ることなく,運営しているゲームに入れることができたばかりか,たくさんのプレイヤーに,この作品を体験してもらうこともできたわけですから。
今年のクリスマスにも,すごくかっこいいものができちゃいます。世界にそれを公開するのはきっととても面白いことになるし,あなたがこの冬,そこでどんな体験をして,それに対してどう思うかをすごく知りたいけど,まだアナウンスされてないので僕からはまだ言えません。※
※インタビュー当時は未公開だったバーチャルコンサートを指している。
開演は日本時間12月9日13:30。「Sky 星を紡ぐ子どもたち」内で開催するAURORAさんのバーチャルコンサートは4000人以上が同時接続して感動を共有
thatgamecompanyは本日(2022年11月17日),同社が運営する「Sky 星を紡ぐ子どもたち」内で開催する,シンガー・ソングライター「AURORA(オーロラ)」さんのバーチャルコンサートに関する続報を発表した。日本時間の12月9日13:30に開演する本公演は,4000人以上のプレイヤーが同時接続し感動を共有する,これまでにない体験を味わえるという。
4Gamer:
いやちょっと待ってください。そこまで言ったのに(笑)。それは……コラボですか?
Chen氏:
んー……コラボはありますが,コラボそのものは実はサプライズじゃなくて,他人と関わって遊ぶ,その遊び方が目玉です。
4Gamer:
新しい遊び方を追加することによって世界を広げていくのがSkyの特徴ですが,そこが普通のオンラインゲームとは違うなといつも思っています。
Chen氏:
ゲームを運営しているとき,プレイヤーはいつも「もっとコンテンツをください」と言います。ただコンテンツというものはそれが消耗品であると,提供したコンテンツが消耗されたら何も残りません。
我々がこの3年で気付いたのは,プレイヤーが欲しいのは映像やストーリーのような消耗的なコンテンツではなく,インタラクションによって生まれる新しい活動であったり,新しいゲームプレイであったり,そういうものなのです。
4Gamer:
いやそこは本当にその通りだと思います。オンラインゲームのプレイヤーが本当に欲しているのは,新キャラとか新マップじゃないんです。
Chen氏:
そうでしょう? 我々が運営しはじめてすぐに学んだのは,一つのシーズンですごくいいストーリーを見せても,長くは続かないということです。プレイヤーのプレイを実質的に改善するのは,我々がインタラクティブなシステムを導入したときで,それによって長く続くインパクトが与えられます。
Skyという世界の面白さを維持するには,新しいゲームプレイを導入しなければならないことに気付いたんです。そうでないと,ゲームが死んでしまいますから。
4Gamer:
そうですよね。土地を追加しました,キャラを追加しました,エリアを追加しました……と言っても,消費したらそこで終わりです。プレイヤーを長くつなぎとめておくためには,結局は無限に作り続けるしかないというのが,いままでのオンラインゲームの運営であり経営だったわけです。それとは全然違うやり方でやろうとしてますよね。
Chen氏:
我々は,過去3年の経験を元にした面白いガイドラインがあります。1年は4つのシーズンがあるわけなので,プレイヤーを喜ばせるチャンスは1年の中に4回しかないのです!
4Gamer:
なるほど,年4回のメジャーアップデート。
Chen氏:
さて問題は,この4回の大型更新で何をするか,です。
Skyには,「Skyの世界でもっと物語が語られること」を待ってくださっているプレイヤーがたくさんいます。ですので,一つのシーズンはストーリーを展開します。これで残り3つ。我々は新しいゲームシステムも導入したいので,それもします。例えば今年は「潜水」を導入しました。
ただこれによって追加されるゲームシステムそのものは,プレイヤー間のインタラクションに大きな変化はもたらしません。ですので,もう一つのシーズンはインタラクションに変化を及ぼすものにしたいです。
これでストーリー,ゲームプレイ,ソーシャルインタラクションと,もう3つのシーズンアップデートを使ってしまいました。何か新しいことを試せるアップデートは1回しか残ってません。
……1年は,本当にあっという間に過ぎてしまいますね(笑)。
4Gamer:
なるほど。そうやって聞くと確かに1年は短いです(笑)。では12月のアップデートは,その「何か新しいこと」ですね?
Chen氏:
ふふふ,そうです。
4Gamer:
何かヒントは……。
Chen氏:
(考える姿勢)
今までにあなたが参加した,一番大きいオンラインセッションはどれぐらいの人がいましたか? 100人くらいですか? オンラインゲームで,どれぐらいの人と同時に遊んだか覚えてますか?
4Gamer:
あぁ……咄嗟に思い付きません。「同時」と言われると,実はそんなに多い数の経験はないかもしれません。
Chen氏:
世界的に記録として残っている最も大きいオンラインゲームのセッションは,「EVE Online」だと聞いています。そのゲームの中で大規模の戦役があって,とある年に7000以上ものキャラクターがその戦役に参加して,その戦役の同接プレイヤー数が2300人を越えました。それが歴史に残るイベントになったと,「EVE Online」のWikipediaに書かれていました。※
今回新しい何かを入れようとしたとき,もしかしたら我々がその世界的な同接記録を抜いちゃうかもしれないことに気付きました。
※「B-R5RBの大虐殺」と呼ばれるEVE Onlineで行われた戦役(wikipedia)
4Gamer:
え,そんな規模の話だったんですか。※
※すでに公開された情報だが,今回予定されているバーチャルコンサートは,4000人以上のプレイヤーが同じ画面で同時接続するようだ(関連記事)
Chen氏:
かなり楽しんで作ってます(笑)。僕には最後の仕上げをする時間が,まだまだ残ってますから。
4Gamer:
今はまだ,それがイベントなのかなんなのかも分からないですけど,そういうオンラインならではの,楽しいセッションはいいですね。
いま例に出た「EVE Online」は,大規模戦争がシステムとしてあるわけなので,大きな人数が集まりやすいタイトルだとは思いますが,そうじゃない世界にあえて大きな人数を入れるというのは大変なチャレンジだと思うし,参加する人も楽しいんじゃないかなと思いますね。
Chen氏:
そうですね。それについては……いやダメか。ここでネタバレしたら,帰ったあとで僕が怒られちゃいます。
(しばらく考えて)
ディズニーランドには,すごく厳しいセキュリティシステムがあります。パークにいる子供達や,その家族全員がちゃんと守られている状態にあるべきなのです。例えばマジックバンドという手首につけるバンドによって,もし誰かスマホを忘れたとしたら,スタッフがすぐにその人を見つけて忘れ物を届けられたりします。
我々は過去2年間にわたって,大人数のプレイヤーに対応できるように研究し続けてきました。例えば戦争ゲームには,レーザーや爆弾などがあって,大量の物理的な計算が必要です。そのため,世の中のサーバーにとって戦争をシミュレーションするのはすごく難しくて大変なことです。
4Gamer:
でもSkyはそういうゲームじゃないですよね。
Chen氏:
そう,Skyは違います。基本は社交的なゲームで,人々はお互いにハグしたり,手をつないだりする感じなので,ほかのゲームと比べてシミュレーションが全然たやすくなります。
我々は,リアルタイムで数百数千のプレイヤーを可視化するツールを開発しましたが,それは長いこと我々にとって,ディズニーのようにテーマパークを監視管理するツールでしかなかったのです。プレイヤーの環境を脅かす行為を発見するための機能,というわけです。
4Gamer:
なるほど。GMツールみたいなものをイベントに転用してるんですね。
Chen氏:
それをエンターテイメントに使うことは想定してなかったんですが,今回のイベントは「それを使って何か感情的なものを創り出すことに利用したらどうなるんだろう」という問いに対する初めての試みになります。
4Gamer:
確かに「大人数を一斉に出しても耐える」という部分は気付いてませんでした。ドンパチするゲームはそのすべてが計算なので,一斉にいろんなものを送るとそれだけでサーバーが大変なことになるけど,確かにSkyにはそういうことがなさそうです。
Chen氏:
最初に10万人の同接を解決するのは,結構時間がかかりました。最近ではようやく100万人の同時接続ができるようになりましたが。
多くのオンラインゲームは,並行して複数のサーバーがありますが,Skyには一つのサーバーしかありません。みんなが同じサーバーにいるゲームなんです。
4Gamer:
え。……そういえばいま初めて聞くんですけど,あれすべてをワンサーバーでやってるんですか?
Chen氏:
そうですよ。
4Gamer:
それはすごい……。
現実生活の社会的価値などがバーチャル世界に転換されない限り,そこで生まれた瞬間の我々は新生児のようなものなのです
Chen氏:
“政府”を運営するのは大変でつらいことかもしれないけど,僕にはそういうオモチャがあるから毎日ワクワクして楽しく起きられます。こういった構造は,ほかのゲームではできないことでも,けっこうできちゃいますから。
4Gamer:
しかもSkyってプレイヤーがすごく協力的なイメージがありますから,インタラクションが絡むようなことでも,いろんなことができそうです。
Chen氏:
うーん,まぁそう……かな?(笑) プレイヤーは基本的に変化をあまり好ましいものとみなさないことが多いですが,何か予期せぬいいものをサプライズとして提供できれば,プレイヤーの皆さんも変化を受け入れてくれると信じています。つまり逆に言うと,何か凡庸でしかない変更をしたら,プレイヤーには改悪と受け取られてしまう可能性があるわけですが。
4Gamer:
まぁでもSkyはたぶん普通のオンラインゲームとはまた違う感じだなぁ,という気がしています。誹謗中傷したり,攻撃したり,そういうことがあんまりない印象があるんですけど,実際のところはどうなんでしょうか。
Chen氏:
それはそのとおりですね。みんな結構優しいコミュニケーションを取ってるイメージがあります。
4Gamer:
……そこについて,すごく正直な話をしてもいいですか?
Chen氏:
どうぞ,どうぞ。
4Gamer:
実は僕自身は,3年前のインタビューのときにあなたが言っていた「優しいゲームの世界」は,広く普及したオンラインゲームの中では成立することはないだろうと思っていました。
部分部分ではうまくいくかもしれませんけど,オンラインという環境が災いして,全体としては“人の悪意”というものがどうしても前面に出てくるに違いないと思ってたんです。……でも実際には,そうじゃなかったです。
Chen氏:
ありがとうございます(笑)。もちろんこれは,簡単なことじゃなかったです。
僕がよく言うんですが,人間は誰でもダークな部分を持っています。我々はだれでもトロール(注:もちろんあのトロール。醜くて凶暴なモンスター)になりうるし,すごく優しい人にもなれます。オンラインという環境がゆえにグリーファー(注:オンラインゲームでゲームの欠陥やバグを使って嫌がらせをする人)になってしまう人もいます。
それは本当に制度で左右されるものであって,我々の社会次第で,人間性の中にもともとあるものうち,何を引っ張り出すのかが決まるのです。
4Gamer:
然るべき環境を整えれば,ちゃんとプレイヤーはそのように行動するのだ,と。
Chen氏:
スタンフォード大学ですごく有名な実験があります。「監獄実験」※
っていうんですがご存じですか?
※1971年に行われた実験「スタンフォード監獄実験」(wikipedia)
4Gamer:
詳細は忘れましたが,どんなものだったかはもちろん知ってます。なるほど,話はつながりますね。
Chen氏:
異なるバックグラウンドを持った8人の普通の生徒を呼んで,そしてその8人とそれぞれ近いバックグラウンドを持っている8人を実験に参加させました。
8人一組で,一組は看守役,もう一組は囚人役を演じます。演じてたったの2日で,思い付く限りの,州刑務所内でしか見られないような,囚人に対するひどい虐待行為が見られるようになりました。みんな普通のいい若者でしかなかったのに。
4Gamer:
確かに,環境が人の「側面」を引っ張り出してるいい例ですね。
Chen氏:
すごく古いことわざですが,「絶対的な権力が絶対的な腐敗を呼び寄せる」(Absolute power corrupts absolutely)というものもあります。ビデオゲームにおいても,人に権力を与えることによって,腐敗していくのです。
4Gamer:
それは,かつてのMMORPGでよく見かけた光景な気がします。
Chen氏:
「World War Z」というゾンビサバイバルゲームがありまして,そこではプレイヤーがほかのプレイヤーを束縛して,すべての装備や道具を奪うことができます。そのうえナイフで刺して,そのプレイヤーが血を流して最後に死んでいくところまで見届けることさえてきてしまいます。
そういう状況は,当然開発段階でシミュレーションし予期していたはずの通りに,最終的に強いプレイヤーは,街中で人々を束縛して,裸にして,嘲笑するようになります。それはリアル世界でも,きっと同じようなことが発生します。
4Gamer:
強い者が正義である,ということを表現してるんでしょうかねああいうのって。
Chen氏:
我々がゲームをデザインするとき,バーチャル世界に社会を構築するとき,プレイヤー全員が生まれたての子どものようなものといえます。なぜわざとそういう言い方をするかというと,現実生活の社会的価値や結果がバーチャル世界に転換されない限り,そのバーチャル世界に入る瞬間,我々は新たに生まれたようなものなのです。リアル社会で背負わなければならないようなものは,すべてなくなります。
多くのゲームやオンラインサービスはそうなっていて,YouTubeのコメント欄なども何を書いてもバチが当たらず,多くの“新生児達”が文字を書くことで最大のアウトプットを求めています。そして挑発的な内容へと昇華されがちです。
4Gamer:
なるほど確かに。
Chen氏:
話を戻しますと,Skyの秘訣は,現実生活と同じような社会影響を模擬的に再現するようにしたことです。例えば,僕がリアル社会の道で誰かを殴ったら,その場にいるほかの人が僕を否定します。それはすごく危険な行為で,もし小さい村でそれをやったら,僕は村民にボコボコにされる可能性すらあります。
しかしバーチャル世界では,僕がだれかを殴っても,なんのバチも当たらないですよね。
4Gamer:
そう。だからこそみんな好き放題できるし,実際にそうする人も大勢現れるのです。
Chen氏:
なのでポイントは,どうやってバーチャル世界に,現実と同じような社会的影響を入れるかということになります。Skyでの我々のやり方は,社会的地位やソーシャル関係は,すべて何かを投資した上にできたものだとしたことです。
その投資は時間であったり,労力であったり,時には金銭的なものもあります。その上で人に認められる必要があって,そこで始めて社会関係が築かれます。
4Gamer:
なるほどバリューを上げるんですね。
Chen氏:
投資したものを失う可能性があると考えると,バーチャル世界で接するときも現実生活のように道徳的に接しようとするでしょう。誰かの目の前に行っていきなり鼻を殴ることなんかしなくなります。模擬的に社会的影響を作るのは,バーチャル社会の無秩序を防ぐもっとも重要なポイントだと思います。
プレイヤーが侵害される可能性がある状況を,可能な限り排除するように努めています
4Gamer:
言ってることはすごくよく分かるのですが,個人的にはそれを……わざわざオンラインでやるのもなんかちょっと抵抗があります。まぁそうはいっても,小心者だからそうやって振る舞っちゃうんですけど!
Chen氏:
そうでしょう?(笑) まぁとにかくこれは,Skyのソーシャルシステムのベースとなるものです。それ以外にも,庭には抜かないといけない雑草が多くありますし。
4Gamer:
雑草?
Chen氏:
我々は,きれいな庭をメンテナンスしてるんです。我々は,その庭がフレンドリーであることを守っています。でもときどき雑草が生えてくるので,それは抜かないといけません。放置しておくと,庭がブサイクになっちゃいますから。
4Gamer:
たぶんまた,何かの例えなんですよね。
Chen氏:
1つ例を出しますと,先日βテストで猫の置物を導入しました。猫に近づくと,猫は爆発してあなたを吹っ飛ばします。私たちが当初想像していたのは,プレイヤーがその猫をどう使うのか,きっとクロゼットに猫を入れて,着替えに来るほかのプレイヤーを驚かせたりするんじゃないかなと。
4Gamer:
なるほど(笑)。
でも実際には,テストプレイヤーからは苦情が寄せられることになりました。これは修正してください,と。友達の間でこれをやられたら面白いけど,知らない人にやられて,着替えることすらできなくなってますと言われました。
それで修正が行われて,最終的にはプレイヤーが自らクリックしない限りは爆発しない仕様にしました。
4Gamer:
なるほど,そういうものが「雑草」なんですね。
Chen氏:
そう。もし着替えの目的でそこに行っただけなら,猫をクリックしなければいいのです。もしあなたが面白く吹っ飛ばされてみたいなら,それをクリックすればいいわけです。
我々はプレイヤーに選択肢を与えます。でもすべてはコントロールの下で行われるので,それらが悪用されて他人に悪ふざけされることはありません。プレイヤーが侵害される可能性がある状況を,可能な限り排除するように努めているんです。
4Gamer:
Skyのコミュニティ……というかコミュニケーションがすごく独特なのは,そういうことの産物だったんですね。
……実はこれも白状するんですが,僕自身は最初期のMMORPGからずっと見てきたので,たいがいのオンラインの世界には慣れているつもりです。そしてこれは変に悪い意味じゃなくて正直に言うんですが,Skyの世界はちょっと怖いです。
Chen氏:
怖い?(笑)
4Gamer:
みんなが優しすぎて,フレンドリーすぎて,ちょっとどうしていいか分からないです(笑)。
なんて言うんでしょう……分かっていただけるか微妙ですが,服屋の店員さんみたいな感じで,こちらとしてはコミュニケーションをしたくない時がいっぱいあるわけですが,それにも関わらず,圧倒的なパワーでコミュニケーション圧が来るんです,こちらに向かって。それがとても怖いです。
Chen氏:
そうなんですね。……うーん,面白いですね(笑)。
4Gamer:
いや待ってください。そういうことが嫌だと言ってるわけじゃないです。でもコミュニケーションをされたときに,コミュニケーションをしてきた人のことを考えちゃって,それに束縛されちゃって自分自身が楽しくなくなっちゃうんです。……いやこれ言い方難しいな。
Chen氏:
なるほど。なんか分かってきました。
4Gamer:
僕自身は,実はコミュニケーションがまったく得意ではありません。どこでも誰とでもすぐに打ち解けるようなタイプじゃないですし,すごく自己中心的で他人なんかどうでもいいねという割り切れた人でもありません。
そういう,僕みたいな小心者で半端な人からすると,Skyは“良心の塊”がこちらに向かって飛んでくるので,すごく対応に困ってしまいます。
Chen氏:
まず言いたいんですが,あなたはとてもコミュニケーションが上手な人です。それこそが,僕があなたには心を開いて色々話せる理由です(笑)。
「風ノ旅ビト」から「Sky」まで,確かに「私は一人でこのゲームを遊びたい」というプレイヤーがいます。「人に頼らずに,自分でゲームを完走できるようにしてほしい」と。そのためSkyも,「風ノ旅ビト」の哲学を存続させました。なぜなら,自分も反社交的な人ですから。僕は,人々がチャットするだけのゲームを作りたくないです。
4Gamer:
人々がチャットするだけのゲームとはいい表現です。
Chen氏:
それでSkyは,あなたが友達として受け入れない限りは,誰もあなたとチャットできない仕組みにしました。あなたがチャットベンチに座らなければ,誰もあなたに声をかけることができません。あなたには,すべてのソーシャル交流を断ち切る権利があるんです。
こここそが,内向的な人のためにデザインしたところです。本当に多くのゲーム開発者達やアーティスト……thatgamecompanyのスタッフもそうですが,本当に多くの人がとても内気な人です。いっぺんにたくさんの人と話すことになったら不安になる人たちです。
そのため,我々が社交的なインタラクションを含めたデザインをするときは,あなたが誰かとしゃべりたくなければ,誰もあなたと話すことはできないことを保障することが重要です。
4Gamer:
でも……拒否し続ければいいんだよ,というのは,それはJenova,あなたがコミュニケーションが上手な人だからだと思うんですけど。
Chen氏:
なるほど! いいですね,すごくいいですよ(笑)。
あなたもよくご存じの,SkyのリードオーディオデザイナのRitsu※は,日本で生まれ育った日本人です。ある日彼から「Jenova,あなたには理解できないかもしれないけど,日本人は人を拒否したり断ったりすることが本当に苦手なんです。そういった意見も実際に多くのプレイヤーから寄せられています。自分自身を隠せるモードを作りませんか」と言われました。
※リード・オーディオ・デザイナー兼ジャパン・ブランド・リードの水谷 立氏。今年の東京ゲームショウで,水谷氏にインタビューした様子も掲載しているのでぜひ合わせて読んでほしい。(関連記事)
4Gamer:
水谷さん,さすがです(笑)。
Chen氏:
言ってることが同じです(笑)。
でも僕はRitsuの要望には応じなかった。もし本当にそういうモードが出来ちゃったら,Skyの世界はきっと寂しいものになってしまいます,みんなが透明になるから。でも,自分がきっと何か日本人独特の感性に欠けているんだろうということは気付いています。何かあなた達の要望を実現する方法を探したいですね。
4Gamer:
ぜひお願いします。
例えば……「風ノ旅ビト」を,夜中に遊ぶじゃないですか。夜中に遊んでいて,さてもう寝ようかなと思ったときに,誰かが入って来るんですよ。自分の世界に。
Chen氏:
よくあることですね。
4Gamer:
その時の感じも似てます。寝たいのに,寝たら入ってくれた人に悪いから,あとちょっとだけ遊ぼうかな,とか。でもしばらく遊んでからふと気づいたら,その人はとっくにいなくなってたりして。僕は何に気を遣ってるんだろう,と。
Chen氏:
なるほど(笑)。でも僕が思うに,日本文化というものは,人とのつながりをより追求するようにできているんじゃないでしょうか。オンラインゲームにおける日本人の,同じ場所にいる相手に対する礼儀正しい反応を見ていてそう思います。
一方欧米では,そこにいる人に対してそんなに礼儀正しい対応はしません。少なくとも欧米のゲーマーは,自分がゲームからログアウトするときに,その場に残した人に謝る必要性は感じていないと思います(笑)。
4Gamer:
まぁそうですね(笑)。だから欧米のオンラインゲームは,昔からすごく気が楽です。
Chen氏:
日本人のSkyプレイヤーから聞いた話で印象的なのは,ダブルお辞儀※です。それをされたら,たぶんそれは日本人プレイヤーです。彼らは,そのままゲームから離れてあなたを一人ぼっちさせるようなことはしません。
まぁでもこれはカルチャーからくる側面なので,もしかしたら逆の観点で言うなら,Skyが日本ですごく人気が得られた理由なのかもしれません。
※「フレンドさんとお別れするときに無言でストンと落ちる人は少数でしょう」と書かれているように,お別れ(ログアウト)を惜しむアクションをあれこれするのは日本人の特徴らしい。(外部サイト)
4Gamer:
すごく分かります。ぜひ日本のプレイヤーの意見も,なんらかの形で反映させてほしいです。そうじゃないと,僕自身がさっきあなたが言ってた「きれいな庭の中の雑草」になっちゃう。
Chen氏:
そんなわけないでしょう!(笑)
もちろん,すべてのゲームがすべての人に向いているわけではないので,よりよいデザインにするにはニュアンスをもっと詳しく知りたいので,あとで会食のときに多く質問するかもしれませんが御容赦ください。
4Gamer:
もちろんオッケーです。
――2ページ目に続きます
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