プレイレポート
「大神 絶景版」プレイレポート。初代を知るファンに“大神の魅力”を教えてもらいながら遊んでみた
今回はPS4版のプレイレポートをお届けするわけだが,筆者自身はこれまで「大神」を遊んだことがなかった。ただ,筆者の嫁がPS2版やWii版を発売当時に遊び込んでいたので,ファンならではの“大神の魅力”をヒアリングしつつ,「大神 絶景版」をプレイしてみることにした。
「大神 絶景版」公式サイト
キャッチーな和風のグラフィックスが描く
「日本の神話・おとぎ話メガミックス」
大神の最大の魅力は「キャッチーな和風のグラフィックス」。未プレイだった筆者はそのように思っていたのだが,嫁によると「最大の魅力はグラフィックス単体ではなく,それによって描かれる物語」だという。
大神の物語は「古事記」や「日本書紀」をはじめとする日本神話がベースになっており,イザナギ,ヤマタノオロチ,サクヤ,スサノオ,そして主人公・アマテラスといった,日本人なら耳にしたことがあるはずの名前を持つキャラクターが登場する。日本神話のみならず,「舌切り雀」「桃太郎」といった日本の昔話,「南総里見八犬伝」「義経記」といった伝奇小説からの出典もあり,まさに「日本の神話・おとぎ話メガミックス」といった趣だ。神仏習合,八百万の神を祀る日本人のための作品と言えるだろう。
その昔,英雄イザナギと狼の白野威(しらぬい)によって倒されたヤマタノオロチが,とある出来事をきっかけに復活。闇に覆われ荒廃した世界に自然や生命力を取り戻すため,神木村のご神木,木精サクヤ姫が白野威の生まれ変わりである大神アマテラスを降臨させ,世界を救うことを託す。アマテラスの行く先々には誰もが知っている昔話をモチーフとするエピソードや人物が登場し,次はどんな展開が待っているのかとワクワクしてしまう。
こうした奇想天外な物語がゲームとして,まるで違和感なく溶け込んでいることには驚いた。“和風のグラフィックス”は背景やキャラクターの輪郭を墨で描いており,闇に包まれた世界には水墨画のような味わいもある。そしてアマテラスが自然を取り戻すと,浮世絵のような原色で華やかな雰囲気に一変。滝平二郎氏の切り絵か,はたまた藤城清治氏の影絵か,懐かしさも感じられる色使いだ。
一方,妖怪達との戦闘シーンでは,同じ原色でもやけに毒々しい雰囲気が強調され,不安感や危機感を演出している。
ご覧のとおり,スクリーンショットであってもキャッチーに感じられるだろうが,キャラクターが動いているときの演出も凝っている。アマテラスが使う特別な力「筆しらべ」をはじめ,戦闘時に表示される漢字が混ざったエフェクト,アマテラスが敵を倒したり,自然を取り戻したりしたときに草花が蘇る「大神降ろし」のシーンなど,随所に目を惹く演出が施されているのだ。
「世界観を壊さない演出のセンスとバランスが光る」というのが嫁の談だが,筆者も素直に頷ける。
「筆しらべ」のシステムと
適度な難度が初心者に優しい
大神はシンボルエンカウント式のアクションRPGだ。アクションの要素には,初代・大神のディレクターを務めた神谷英樹氏(現 プラチナゲームズ)のテイストが色濃く出ている。戦闘時の操作方法は多彩な攻撃を簡単に繰り出せるスタイルで,全体的に難度は易しめだ。嫁曰く「アクションゲームが苦手な私でもクリアできて,うまくなった気分になれる」とのこと。
とはいえ,ゲーマーにとって“ヌルい”というわけではない。3種の装備(鏡,勾玉,剣)を表と裏(メインとサブ)に装備して,効果の異なる攻撃を使い分けるというシステムには考える要素がたっぷりある。
そこにうまく組み込まれているのが「筆しらべ」だ。世界を絵のように切り取り,筆を走らせることでさまざまな奇跡を起こす。アマテラスが持つ“神羅万象を操る神業”,いわゆる必殺技である。
墨のストックがあれば,いつでも時間の流れを止めて,状況を判断しながら使えるが,敵によって効果の大小が異なるため,アクションゲームとしての戦略性を高めている。
筆しらべは戦闘時だけでなく,探索時にも使用可能だ。筆しらべによってゲームが進行したり,アイテムが手に入ったりするので,こうした“冒険”の要素も楽しい(ちなみにカプコン公式のジャンル名は「ネイチャーアドベンチャー」)。
仕草がいちいち可愛い動物達や
個性的なキャラクターに癒される
嫁が大神の購入を決めた理由は「ワン子(=劇中に登場するアマテラスの愛称)が可愛いから」だったそう。確かにアマテラスのモーションは,実際の狼(というより犬)のように愛らしい仕草を見事に表現している。戦闘時の勇ましい姿を見ていれば,そのギャップにキュンとしてしまうプレイヤーは多いはずだ。
物語の進行を狂言回しの役割を果たすイッスンに任せ,アマテラスは言葉を発しない。イベントシーンでもあたりをキョロキョロと見回したり,寝てしまったりと,動物らしさがいとおしい。
アマテラスのほかにも,多数の動物が登場する。筆しらべの力を司る筆神,里見一族に仕える八犬士,あるいはフィールドにいる野生動物なども,いちいち仕草が可愛い。なかでも野生動物にエサをあげるシーンは“最大の癒しポイント”として,毎回,じっくりと見入ってしまった。
一方,登場人物は前述のとおり,一部が日本神話や昔話がモチーフになっており,かなりの個性派揃いだ。極端にデフォルメされたキャラクターデザインは,往年の昔話ものアニメにも通じるものがある。また,サクヤ姫をはじめとする女性キャラクターに絶妙な色気が漂っているのも外せない魅力だ。
グラフィックス面が大幅に進化しているとはいえ,大神というタイトルが10年以上前に存在していたことに驚かされた。今もなお,熱心なファンが多いのも当然だろう。
特定のシーンでのカメラワークや,当時の映像をHD化したことによる輪郭のブラーが若干気になったものの,ゲームプレイに影響するようなものではなく,すぐに慣れると思う。
日本の神話や昔話に興味を持っている人には無条件でオススメできるが,そうでない人も大神によって興味を持つきっかけになるかもしれない(嫁はまさに後者。今では神社仏閣巡りを趣味とするほどになった)。アクションも冒険もサクサクと進められるので,まだ遊んだことがない人はこの機会を生かしてほしい。
「大神 絶景版」公式サイト
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(C)CAPCOM CO., LTD. 2006, 2017 ALL RIGHTS RESERVED.
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