プレイレポート
24時間で変遷する塔に挑む「常世ノ塔」アーリーアクセス版のインプレッションをお届け。シンプルな“パターン構築”を突き詰めた2Dアクション
常世ノ塔は,現実の24時間ごとに構造が変化する塔を攻略していくローグライクアクションゲームだ。発表当初からその特徴的なシステムとビジュアルで注目を集めていたが,ついにその“塔”がオープンしたというわけだ。さっそく登ってみたので,本稿でインプレッションをお届けしよう。
「常世ノ塔(とこよのとう)」公式サイト
弾幕STGに近いプレイフィールを持つ
無駄を削ぎ落としたパターン構築アクション
ゲームの舞台になるのは,“価値ある魂”を選び出すという謎の巨大な塔「常世ノ塔」だ。プレイヤーは塔に呼び寄せられた魂の持ち主の1人となって,元の世界に帰るために塔の頂上を目指すことになる。
最大の特徴は,「現実世界での24時間が経過するごとに塔の構造がランダムに変化する」という点だ。塔の構造はサーバー上で共有され,世界中のプレイヤーが同じダンジョンを攻略する。なお,塔の構造が変わる時間は毎日0:00となっている。
一般的なローグライクのシステムといえば,侵入するごとに毎回ランダムに構築されるダンジョンを攻略していくものだが,本作では同じダンジョンに(制限時間内であれば)何度でも再挑戦できるのだ。
塔に登る前には,まず操作キャラクターを1人選ぶことになる。アーリーアクセス開始段階でのプレイアブルキャラクターは4人で,それぞれ異なるスキルを所持している。特にアンロックなどの必要はないので,まずは好みで選んでOKだ。
キャラクターを選んで塔に入ったら,さっそく攻略開始だ。出現する敵やトラップをうまく退けながら,とにかく上へ上へと登っていこう。
ゲームに触れてまず驚いたのは,なんといっても操作システムのシンプルさだ。塔の攻略で使うボタンは,基本的に「ジャンプ」と「スキル発動」の2つだけ。いわゆる“通常攻撃”すらも存在しないというシンプルっぷりには潔さを感じる。
そのため,塔に出現する敵はスキルで撃破するか,もしくはジャンプで避ける必要がある。スキルは,時間経過で回復する「MP」が最大値まで溜まった状況でなければ発動できないので,いざという時にMPを切らさないように注意したい。
スキルの効果は操作キャラクターによって異なるので,威力を発揮するタイミングを見極めるのも重要。キャラクターごとの能力差はスキル以外にないので,まずはひと通りのキャラクターに触れてみて,手に馴染むキャラクターを見つけよう。
塔は登れば登るほど突破が難しくなっていくが,冷静に観察すれば突破口が見えてくる構造になっている。ただし,キャラクターの初期体力は一律100で,確実な回復手段は稀に配置されているアイテム(位置固定)や,定期的に出現する回復アイテムショップだけと,かなり限定的だ。
そのため,初見プレイでクリアを目指すのではなく,何度も何度も繰り返しプレイする中で攻略法を確立していくのが基本的なスタイルになる。道中に出現する「アーティファクト」を獲得すればキャラクターの性能を強化できるが,単体で大きな効果を発揮するアーティファクトは少ないため,引き運よりも純粋なアクションゲームの腕前を求められている印象が強い。
ここまでの内容を見て,「じゃあ敵が出る度にMPが溜まるまで待って,少しずつ進めば良いのでは?」と考えた人もいるだろう。しかし,塔の同じフロアに長く留まっていると“カルマ”が少しずつ増え,これが最大値になると凶悪な死神がプレイヤーにまとわりつき,一瞬でHPを奪い去ってしまう。
次のフロアに進めばカルマは一定値が減少するが,完全に消滅するわけではない。そのため,できるだけ短時間でフロアを突破したいところだが,急ぎすぎるとMP回復が間に合わず敵を撃破することができない……。このジレンマによって,本作は高難度とテンポの良さの両立に成功している。
最初は「ダークソウル」シリーズのような死にゲーの雰囲気を感じていたが,出現する敵の行動パターンに再現性があり,カルマによる半強制スクロールが発生するため,どちらかといえば弾幕シューティングに近いプレイフィールを感じられた。
そんなこんなで遊んでいたら,1日目は30階の中程まで進んだところで時間が来てしまった。この時点では「このペースで攻略を完遂するのは少し難しいかもしれない」と感じていたのだが,2日目のダンジョンは初プレイで20階近くまで進むことができた。
というのも,敵キャラクターやギミックの挙動,スキルとアーティファクトの運用方法などは身についているため,構造が変化しても初見で対応できる場面が多いのだ。これならアクションゲームが不得意な筆者でも,いつか塔の頂上に上り詰めることができるかも……いや,きっとできる!
2日間で8時間ほどプレイしてみて,本作は“24時間で構造が入れ替わる塔を攻略する”というコンセプトを,限界までシンプルな仕組みの中で実現しているタイトルだと感じられた。複雑な要素を排除し,攻略パターンの構築に重きを置いた本作は,それを楽しめる人にとってはまさに無限に遊べる作品と言えるだろう。
ただ,システムのシンプルさを差し引いても,ゲーム全体がやや淡白に感じられる部分は気になる。アーティファクトは効果の重複を前提に作られているためか単体の効果が薄く,後半に入るまではゲームプレイに大きな影響を与えない。また,再構築されたダンジョンもフロア単位では同じ構造のものが多く(出現する敵は変化する),長く遊び続けた場合は単調に感じられるかもしれない。この辺りは,正式リリースに向けた拡張に期待したいポイントだ。
あと,これはゲームプレイとは直接関係がない部分ではあるのだが,個人的にはMODサポートの手厚さも注目に値すると思う。本作はキャラクターのドットやカットインの差し替えが容易な構造になっているため,今後はワークショップなどが大いに賑わうことだろう。こういった部分を楽しめるのも,インディーズならではと言えるかもしれない。
現時点でも歯ごたえがあり,今後の発展にも十分期待ができる作品で,ステージの攻略方法をコツコツ積み上げていく2Dアクションゲームを楽しめる人にはオススメのタイトルだ。
「常世ノ塔」公式サイト
- 関連タイトル:
常世ノ塔(とこよのとう)
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