プレイレポート
思ってたより格ゲーだった。スマホ版「スカルガールズ」のプレイレビュー
今回は正式配信に先駆けてテストプレイができたので,本稿ではシリーズの概要からはじまり,ゲームの魅力について紹介していく。
「スカルガールズ」公式サイト
「スカルガールズ」ダウンロードページ
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※以下,ゲームの仕様および画面は開発バージョンのものとなり,製品版とは異なる可能性があります。
「スカルガールズ」シリーズのおさらい
まずはゲーム紹介の前に,大元の2D対戦格闘ゲーム「スカルガールズ」(Skullgirls)について軽く説明しよう。同名なのが紛らわしいが,ご容赦を。
本シリーズは元々,アメリカのゲームスタジオ「Lab Zero Games」が開発したインディーズゲームである。同スタジオについては4Gamerでもこんな記事などで長らく追ってきたので,深く知りたい人は別途読んでもらえると嬉しい。
ちなみに,スマホ版の開発は別のデベロッパ「Hidden Variable Studios」が担当しているのだが,このあたりの詳しい経緯に関しては後ほど掲載するインタビューで紹介できるはずだ。申し訳ないが,今しばらく待ってほしい。
スカルガールズの物語は,若い女性の願いを叶えるアーティファクト“スカルハート”をめぐり,変な髪形の女子高生(頭に寄生生物がいる)やサーカスの花形スター(頭に生物武器がいる),首が取れても大丈夫な猫耳盗賊(不死身の女性),ナースで忍者な普通の人間(特殊部隊の女性),さらに王女にロボにもはやなんだかよく分からない物体など,カートゥーンな美少女達(と少しの男キャラ)が荒れ狂って戦うというものである。
世界観は全体的にほの暗く,“ダークデコ”と呼ばれるアートデザインを基調としている。しかし,登場人物達の生き生きとした表情や挙動,脇を支えるジャジーなサウンドがどことなく諧謔的な空気を醸し出しており,ところどころで表面化するショッキングな設定もバイオレンスな展開も「ナンセンスなギャグの雰囲気」(いい意味で!)とうまい温度感で混ざり合っている。事実,鬱々とした作品だと思う人は多くないはずだ。
内容的には日本の対戦格闘ゲームをリスペクトしたというのだが,2010年代の格ゲー界に強めに吹き荒んだ「コンボゲーはちょっと」「操作が難しいのは嫌」といった細マッチョな格ゲーヘッズの声は聞こえなかったらしい。
2LK→2MP→2HP>jMK→jHK>2LK→2MK>
jMP→jHK>2MP→2HP>jLP×n→jLP+HP>
2LP→2MP→HK→623HP→236PP
などといった魔術にも似た方程式を暗記させ,「2回も弱パン始動したのに倒せないほうが悪くない?」と言わんばかりの尖った実態で,ディープな者達の心を射止めた。
やめろ飛ぶな立ってろペインホイール。パラソールの地面をドーンってやるやつ。大体後ろに控えているフィリアとダブル。お前も許さんぞフクア。さまざまな憤りが熱狂へと変換され,みんな大好きセレベラでダイナモッしていたプレイ体験の数々は,対戦格闘ゲームの内容が“分かりやすいほう”に規格化されはじめてきた昨今において,逆にスペシャルな記憶としてこびりついている。
しかし,スマホ版「スカルガールズ」は格闘RPGの名を冠していても,スマホゲームである。そのため,スマホゲームユーザーでも気軽に遊べて,旧来のプレイヤーでもファンサービスとして楽しめる,骨抜きになった切り身魚のような味わいになるのだろうと予想していたが,甘かった。「モバイル格闘ゲームの決定版!」のうたい文句は,思っていた以上にわりとガチだったらしい。
操作が難しい人はAUTOで楽しもうね!
大まかなゲーム内容は,ストーリーを進めてバトルをこなし,キャラクターを集めて育てて,疑似PvPやデイリーミッションでさらなる強化を目指すというものだ。
バトルでは1人から3人までのキャラクターでチームを編成して戦うが,属性相性や状態異常といった部分が戦略を左右する。実にRPG的である。基本的にスマホゲームらしい文脈で構成されているので,プレイの流れに難しいことはない。
肝心の操作は,画面タップで通常攻撃(連打でコンボ派生),ホールドでしゃがみ&チャージ攻撃,相手側にスワイプでダッシュ攻撃,もう一度スワイプあるいは素早く2回スワイプでノックバック攻撃,上スワイプでエリアル始動攻撃(タップで追撃),下スワイプでダウン攻撃,上にダブルスワイプで投げ,ダブルタップでガード,後ろスワイプでバックダッシュ,画面左上のアイコンでキャラクターチェンジ,画面左下のアイコンでスキル(必殺技・超必殺技・アウトテイク・バーストなどを計5つまでセット可能)を使用でき,これらを組み合わせて戦う。
なお,ここで伝えたいのは「プレイする前は覚えるだけ無駄なので体感に任せよう」ということである。
バトル中のキャラクター移動は「一定時間ニュートラル後に前歩き」「バックダッシュで間合い取り」「ダッシュ攻撃で切り込む」「各種の必殺技を駆使する」といったものだ。原則,1P側と2P側が交差することはない。
攻撃属性に上段・中段・下段は存在しないが,ガード後の有利不利,ガード不能な投げやチャージ攻撃(※スキル開放後),チャージ攻撃のしゃがみにダッシュ攻撃や突進技を差し込み,移動に対しては技を置いておくなど,格ゲーらしい戦術が存在している。
要点だけだとイマイチに思うかもしれないが,実際に遊ぶと“違和感なく格ゲーらしい駆け引き”が成立している。要素は多いが,直感的な指使いだけで十分こなせる範疇なので,操作も煩雑と言うほどではない。うまいことスマホで格ゲーを実現しているものだ。なにより,動作の見た目に不自然さがないから,仮に画面だけを見ていたら「普通の格ゲーの対戦模様」と思うくらいである。
基本的なコンボは通常攻撃(×n)のあと,エリアル始動から締め,ダッシュ攻撃からノックバックで吹き飛ばし(画面端で追撃可能),随所で必殺技をつなげてさらにコンボ,などが挙げられる。
シリーズの代表的なコンボ属性であった「ダウン引き剥がし」系の挙動は,特殊な例でなければそれほど機能しなさそうなので,ダウン攻撃のコンボパーツとしての価値は限定的である。基本は浮かし属性でなんやかんやするのがよさそうだ。当然,リリース後に不可思議なレシピが生まれる可能性は否めないが。
ただし,キャラクターがダウン状態であっても与えられるダメージに大きな補正が掛からないようなので(※テスト版での話),足払い後の無敵状態に入る前の追撃ならダメージが順当に加算される。やってる姿はちょっと不細工な絵面だが,簡単なコンボはしやすい。
セットしたスキルが「必殺技」ならクールダウン後に使用可能で,「超必殺技」ならゲージ溜めが必要となる。どちらをどれだけの割合でセットするかで立ち回りも変化する。スキルはコンボ中,起き上がりやガード後の割込みなどいつでも使えるので,バトル時は対戦格闘をやりつつ“MMOのスキル回し”をするイメージが近いだろう。
ひとつ注記すると,スキルの「バースト」はセットしても被撃時には発動できず,シリーズ特有のハメ防止機能どころかそもそも中下段が存在しないため,“弱体化の状態異常”を与える技,ならびに壁コン用の吹き飛ばしパーツとして存在しているので注意だ。
ついでに,本作にはアンサンブルアタック(いわゆるアシスト攻撃)が存在しないので,ガードしながら思考停止でリバーサルアシストを擦ることはできないし,画面をゴチャゴチャにされてなにが起きているのか分からないといった状況も起きない。甘えたアシストをダイアモンドダイナモで皆殺しにできないのは残念だが,フィリア使いとダブル使いの涙目には思わず笑みがこぼれてしまう。悪は滅びた。スカルガール(笑)。
そして「いや操作難しいだろう……」と思ってしまった人の感性は真っ当に正しいので,苦手に感じた人は「ファイト・アシスト」(いわゆるAUTO操作)を利用しよう。
AUTO操作では遊ぶ感覚が薄れると思うかもしれないが,本作ではAUTO中でも“通常攻撃以外のすべてのプレイヤー操作”を受け付けている。「攻撃的だが戦術的ではない」(by ヴァレンタイン)ほどよい塩梅に仕上がっているので,ぜひとも活用しよう。ぶっちゃけ普通に強い。
そのほか,メインコンテンツのストーリーモードでは,ギャングだらけの犯罪都市「ニュー・メリディアン」を舞台とするオリジナルの物語が描かれる。日本語ボイスはバトル中などのパートボイスなので,フルボイス仕様ではない。
テスト版の感想では,公式コミュニティで設定を語り合えるくらいの人には良質な餌となり得るが,そうじゃない人には“若干薄味なスマホゲーム的な内容”であることが否めなかった。拡張はすでに予定されているようなので,今後に期待したい。
そのうちきっと対戦機能がくるっぽい
ここまで置いてきぼりにしてきたRPG要素についてだが,簡潔にまとめると「レリック(ガチャ)からキャラクターや必殺技を入手」「それらをカード重ねやゲーム内通貨で強化・限界突破」というものである。レリックは通常プレイや時限ボーナスでも入手できるので,無料で遊ぶことはそう難しくない。
プレイアブルキャラクターは「スカルガールズ 2ndアンコール」までを含めた12体が登場する。現状,「マリー」「ロボ・フォーチュン」「フクア」の姿は見られなかった。キャラ&スキルにはゴールド,シルバー,ブロンズのレアリティと,属性ごとのカラーバリエーションが存在し,それぞれ能力値などが異なっている。
コンテンツの随所にはレアリティ縛りの特殊バトルが散りばめられているので,最強レアだけあればいいというわけではない。バトルではRPGらしく“数値差の影響”が大きいので,強化をおろそかにすることもできない。とはいえ,コアとなる対戦格闘システムの操作性が優れているので,2つの要素はうまく両立できている印象だ。
それでも難点を挙げると,レベル上げはちょっと厳しめのバランスかもしれない。キャラクターのレベルアップはキャラカードを重ねて経験値を与えるものだが,長い目で見なければ十分なリソースが集まらなそうであった。
バトル後に経験値が得られるのと,難度の上昇が緩やかなのと,レベルを上げすぎても対戦がワンパンで終わってしまうからつまないのとで,プレイの流れに乗っかればそれほど気にならないが,それでも労力が必要なのは確かである。
本作には「各プレイヤーが編成した防衛チームとの疑似PvP」は存在するものの,「プレイヤー同士のリアルタイム通信対戦」は存在しない。COM戦自体はやり応えがあり,プレイ自体の面白さも想像以上だと思っていてほしいが,最初から対戦格闘を求めている人にはちょっと肩透かしかもしれない。
なんて不安を煽ったが,昨年Lab Zero Gamesに行ったインタビューでは,「ほかのプレイヤーとの対戦モードはアップデートで追加予定」とのことだった。現時点では確証があるとは決して言えないが,言質くらいに覚えておけば,最初の数か月を「プレイに慣れるための時間」としてより有用に楽しめることだろう。
そしてこれまでスカルガールズを知らなかった人も,この機会にぜひとも遊んでみて,好みの(性能の)美少女を見つけてほしい。
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(C)2010 Autumn Games, LLC
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