インタビュー
「エースコンバット」大ファンのスーパーモデルが河野一聡ブランドディレクターと対談。日本国外からの熱烈な想いを河野氏に伝えた
本稿では,その模様をお届けしよう。なお,Ombelineさんの発言は通訳によるものを元にしている。
読者の皆さんは,まず「なぜモデルさんが,河野氏と……」と思うかもしれないが,実はOmbelineさんは非常に熱心なエースコンバットシリーズのファンであり,ファンコミュニティで活動したり,多数のファンアートを制作したりしている。今回の来日も,「エースコンバット7 スカイズ・アンノウン」(PS4 / Xbox One。以下,ACE7)の発売日(PC版はSteamで2月1日にリリース予定)にソフマップ秋葉原店で行われた記念イベントを目的としたものだった。
「エースコンバット7 スカイズ・アンノウン」発売記念イベントをレポート。開発陣へのミニインタビューもお届け
バンダイナムコエンターテインメントは,2019年1月17日に東京都のソフマップAKIBA4号店にて「エースコンバット7 スカイズ・アンノウン」の発売イベントを開催した。12年ぶりのナンバリング新作の発売日とあって多くのファンたちが訪れていた。本稿ではイベントとミニインタビューの様子をお伝えしよう。
河野一聡氏(以下,河野氏):
まず今回の対談にいたった経緯を説明しますと,「ACE7」の発売時期が見えてきた去年の暮れくらいに,上司から「エースコンバットの熱烈なファンがいるから,話を聞いてほしい」というオーダーがありました。詳しい話を聞いてみると,「出会って人生が変わった」と言うくらい本当にエースコンバットが大好きで,美術大学の卒業制作にエースコンバットをテーマにした作品を作ったりもしているそうで,その熱意を肌で感じれば,自分の中で課題となっていたファンとの関わり方の答えが見つかるんじゃないかと思い,お会いすることになったわけです。
ただ誤算だったのが,実はその人から以前ファンアートを贈られていて,「ありがとう!」とは思いながら,見逃していたんです。この仕事をしていると,世界中の人から毎日たくさんのメッセージやファンアートをいただくんですけど,すごい数なのでそうなってしまうことも多く,大変申し訳なく思っています。
――そんな熱烈なファンであるOmbelineさんですが,そもそもエースコンバットと出会ったきっかけは何だったのでしょう。
Ombeline Le-Mire Cahnさん(以下,Ombelineさん):
初めてエースコンバットと出会ったのは,13歳の夏でした。夏休みに,実家があるフランスの別荘に行ったとき,ルームメイトの親友が「これ,あなた好きじゃない? よかったらあげる」と言って,「Ace Combat X: Skies of Deception」(邦題:エースコンバットX スカイズ・オブ・デセプション。以下,ACX)のソフトをくれたんです。
――他のシリーズタイトルも遊ばれているのでしょうか。
Ombelineさん:
一番遊んでいるのは「ACX」ですが,「Ace Combat: Joint Assault」(邦題:エースコンバットX2 ジョイントアサルト。以下,ACX2)や「ACE COMBAT ASSAULT HORIZON」(PS3 / Xbox 360。プレイしているのは日本未発売のPC版とのこと)もやっています。
河野氏:
若いからPS2のタイトルはやってないかな?(笑)
Ombelineさん:
小さいころだったので,PS2は買ってもらっていませんでした(笑)。ただ,昔のタイトルも動画で全部見ています。
――エースコンバットシリーズのどういった部分が好きなのでしょうか。
Ombelineさん:
ストーリーや音楽の素晴らしさはもちろんですが,一番はシリーズを独特なものにしている世界観です。
河野氏:
ストレンジリアル(※)ですね。
※「エースコンバット04 シャッタードスカイ」のデザインコンセプトとして作られ,「ACE7」では劇中背景全般を指すようになった語。大まかに言えば「リアリティの強いフィクションの世界」という意味。
Ombelineさん:
ちなみにファンの間では,ナンバリングシリーズのストレンジリアルに対して,「ACE COMBAT INFINITY」を“リアルストレンジ”と呼んでいます(※)。
※エースコンバットのナンバリングシリーズは架空の地球を舞台としているが,「ACE COMBAT INFINITY」では現実の地球にナンバリングシリーズの設定(小惑星衝突の危機と,それを破砕するためのレールガン建設など)を持ち込んだものが舞台となっている。
河野氏:
それは知らなかった(笑)。
――好きなシーンなどはありますか。
Ombelineさん:
「ACX」のラストミッション“End of Deception”で,1機目のフェンリアを撃墜したとき,味方のパイロットが「They're only human! You can take them!(日本語版:あいつらもオバケじゃない! やれるぞ!)」と言ってくれるシーンがすごく好きです。「エースコンバット6 解放への戦火」の「Go dance with the angels(日本語版:天使とダンスでもしてな)」というセリフも好きですね。
河野氏:
戦闘中のセリフとはマニアックだなあ。そういえば,「ACX」はグリフィス1(主人公)のエンブレムを僕が描いたんですよ。
Ombelineさん:
そうなんですか! 私はあのエンブレムが大好きです。
「ACX」は,夏休みが終わって学校が始まっても,一日中PSPを握りしめて遊んでいたんですよ。とくにドイツ語のクラスでは見つかりにくかったので,バッグを机の上に立ててずっとやってました。と言っても,何かをしているのは先生にバレバレで,「ドイツ語で何か言ってみろ」と言われて「Das ist sehr gut!(That's very good!)」と誤魔化したりしていました(笑)。
河野氏:
あと,謎の儀式があるんですよね。
Ombelineさん:
毎年,「ACX」を出会った8月に必ずやって,クリスマスには「ACX2」をやって,春になると「ACAH」をやるんです。
河野氏:
僕よりもエースコンバットをプレイしているかもしれない(笑)。
――河野もOmbelineさんも美大出身ということで,Ombelineさんのファンアートを見ながらお話を進めていきたいと思います。
Ombelineさん:
これはgamescom 2017のトレイラーが出た時に描いたものです。印象深くて,1日に5回くらいは見ていました。
河野氏:
この絵はTwitterで見かけた覚えがありますね。
――これを描いたのがOmbelineさんだったとは……。
河野氏:
全然知らなくて(笑)。
Ombelineさん:
こっちは2015年のPlayStation Experienceでトレイラーが出たあとに,気持ちが高ぶって描いたものです。
河野氏:
発表したのも,もう4年前かあ。
Ombelineさん:
これは「ACE7」が発表される前,「ACE7」に出会えることを夢見て描きました。現実世界とストレンジリアルを組み合わせた構図なんです。
河野氏:
この絵を見ながら「ACE7」を作ってたんですよ(笑)。
Ombelineさん:
本当ですか!?(笑)
Ombelineさん:
この絵は「ヒントをくれないかな?」という気持ちで河野さんに贈りました。
河野氏:
これを受け取ってから2年半,ずっと返信をしていなかったんですよね。
Ombelineさん:
いえ,「Thank you」と言ってくれた覚えはありますよ。
河野氏:
じゃあ言ってたかな(笑)。
――全然覚えていないじゃないですか(笑)。
Ombelineさん:
これは大学に提出した課題です。イギリスの大学では入学前に提出する課題があるのですが,そのために描いたんです。迷彩をアニメーションさせるのが大変でした。
――それにしても,すごい枚数を描いていただいているんですね。
河野氏:
こんなにたくさんファンアートを描くのは,どういう気持ちがあるんですか?
Ombelineさん:
エースコンバットのコミュニティ活動を普段からやっているんですが,他にもイラストを描く人がいて,そこからインスピレーションを受けます。それに描けば描くほど上達するので自分のためにもなるし,ポートフォリオに使えたり,アップロードすれば自分の作品集にもなるので,とても楽しいんです。
河野氏:
コミュニティの話が出ましたが,最初のうちは苦労されたとか。
Ombelineさん:
エースコンバットのファンは,本当にシリーズが大好きで真剣な人達ばかりなので,コミュニティへ入った当初は「ゲームできるの?」とか「本当に女の子かも分からないぞ」とか言われて,学校のテストみたいに「どの戦闘機が好きか」といった質問を浴びせられまくったんです。それに答えても,「そんな普通な答えじゃつまらない」と言われたりして,マニアックな機体を「あれも好きだけど」と答えていくうち,「やるじゃないか」と認められて,それからみんな優しくなりました。
コミュニティでは“Orca”という名前でやっているのですが,みんな知ってくれていて「Orca girl」と呼んでくれます。
河野氏:
gamescom 2017でトレイラーが出たとき,コミュニティで「キャラクターのモデルなんじゃないか」と言われていたんですよね。
Ombelineさん:
コミュニティの傾向として,“情報が出たら解析する”というものがあるんです。gamescom 2017のトレイラーも解析されていたんですが,イオネラの横顔が私に似ているんじゃないかと……でも「I don't know」しか言えない(笑)。
河野氏:
いま本人の横顔が見えたけど,確かにちょっと似てるかな(笑)。
――我々もいろいろな場でPVを出していますが,gamescom 2017トレイラーは一番ファンが盛り上がりましたね。
Ombelineさん:
アクションもあるしストーリーもあるし,音楽も素晴らしかったです。
河野氏:
エースコンバット“らしい”トレイラーでしたね。あれは苦労しました。それ以前の,PlayStation Experience 2015でサプライズ発表したときはどうでしたか?
Ombelineさん:
実はそれ以前に,誰かが「ACE COMABT INFINITY」の最後のミッションで,どこかに“PSX7”という表記を見つけていて,「これはPlayStation ExperienceでACE7が発表されるんじゃないか」という仮説を立てていました。
河野氏:
たしかに,そんな匂わすことを書いた覚えがあります。
Ombelineさん:
最初は誰も信じていなかったのですが,コミュニティの60人くらいが「もし本当に出たら困るから」と,Discordでつながったままストリーミングを見ていました。終盤になっても発表されないので,「ほら,無かったじゃないか」という雰囲気になっていたんですが,VRタイトルの最後に発表されて。
Ombelineさん:
トレイラーが始まった途端,ボイスチャットの全員が叫んで,そうでない人もテキストチャットに歓声を書き込んで,ほかにもスクリーンショットを撮っている人がいたり……とにかくクレイジーなお祭り騒ぎで,すごく思い出深い瞬間でした。
河野氏:
そういったコミュニティの声を聞けると,本当に嬉しいですね。
Ombelineさん:
エースコンバットシリーズに関する発表がない間,ネガティブな人は「もうナンバリングは出ないんじゃないか」とか「このままシリーズが終わるんじゃないか」とか言っていたんですが,「そんなはずはない! 絶対にACE7は来る」と言ったりファンアートを出したり,コミュニティで支え合っていました。
河野氏:
そういう話を聞くと,本当にACE7を作って良かったと思います。
――ブランドディレクターである河野に伝えたい気持ちなどがあれば,お願いします。
Ombelineさん:
本当に感謝しています。このゲームに出会えたお陰で,ジェット戦闘機への想いに火が点いたり,絵を描くようになったりして,自分の進む道が決まりました。今は「戦闘機のパイロットになりたい」という夢もあるんです。
河野氏:
アーティストでスーパーモデルでパイロットか……(笑)。
実は,僕らもファンに感謝しているんです。僕らがゲームを作っているというより,彼女のような熱い人達がエースコンバットを求めてくれているので,僕らがゲームを作れているんですよ。基本的にエースコンバットはファンである皆さんのものなので,発売以降は“ファンのもの”だと思って,これからも可愛がってください。
Ombelineさん:
エースコンバットが他のゲームと違うと感じるのは,今回の機会もそうですが,ファンと開発チームの距離感が家族のように近く感じられることだと思います。
河野氏:
ありがとうございます。これからもバンバンとツイートします(笑)。
最後に,短い時間ながら4Gamer独自のコメントももらえたので,それを掲載しよう。
4Gamer:
エースコンバットとの付き合いはソフトをもらってからとのことですが,もともと戦闘機は好きだったのでしょうか。
Ombelineさん:
はい。小さいころから飛行機が好きで,赤ちゃんのときに最初に覚えた言葉が「plane」だったくらいです。ジェット戦闘機もカッコいいと思っていました。
4Gamer:
私は日本人なので“ご当地品”である航空自衛隊のF-2を使うのが好きなのですが,フランスが母国ですとフランス空軍のミラージュやラファールが好きだったりするのですか。
Ombelineさん:
半分はアメリカ人なので,F-22も好き……と言うべきなんでしょうけど,やっぱりフランスで身近に飛んでるミラージュやラファールは大好きです。フランスでは毎日朝に見えるんですよ。
河野氏:
朝10時に飛ぶんですよね。
4Gamer:
逆に敵機のF-2を落とすとき,私はちょっと「ごめんなさい!」と思うんですけれども,フランス機を攻撃するときはどうでしょう。
Ombelineさん:
No! 「ポイントが入る!」というだけです(笑)。
4Gamer:
ドライですね(笑)。エースコンバットシリーズは,魅力的な登場人物も楽しみのひとつです。お気に入りのキャラクターなどはいますでしょうか。
Ombelineさん:
「ACX」のCrux(通信士のユジーン・ソラーノ)が,すごく優しくて大好きです。あと「ACX2」のサラ・アンデションも,「Hello. Antares」という挨拶の声が好きですね。
河野氏:
「似てる」と言われた「ACE7」のイオネラはどうでしょう。
Ombelineさん:
トレイラーで見ただけなので,まだ憧れていい人なのか分からないですね。
4Gamer:
河野さんのお気に入りキャラは誰なのでしょうか。
河野氏:
僕が好きなのは「エースコンバット04」の“黄色の13”や,「ACE7」のミハイといったライバルキャラです。ただ,それは表向きで,実はコゼットもすごく好きです。「ACE7」も,話が何も決まっていない段階で「王女を出そう」って決めてたんですよ(笑)。
Ombelineさん:
ちなみにコミュニティだと,「ACE7」ではゴールデンレトリバーが大人気です。みんな崇拝してます。
4Gamer:
Ombelineさんは,「ACE7」でマルチプレイモードも遊ばれる予定ですか。
Ombelineさん:
もちろん! コミュニティではトーナメントのスケジュールも決まってます。
河野氏:
彼女はストリーミング配信をやろうとしているんですよ。
4Gamer:
「ACE7」のマルチプレイのマッチング範囲は,どのようになっているのでしょうか。
河野氏:
ワールドワイドでのマッチングとなっています。
4Gamer:
ということは,マルチプレイを遊んでいればOmbelineさんと戦えるかもしれないわけですね(笑)。それでは最後に,Ombelineさんからマルチプレイの戦場で出会うであろう日本のプレイヤーに向けてメッセージをお願いします。
Ombelineさん:
Hi! I'm Orca. Find me in the skies!(ハイ! 私はオルカです。空で私を探してください!)
4Gamer:
ありがとうございました。
「エースコンバット7 スカイズ・アンノウン」公式サイト
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