プレイレポート
[プレイレポ]王道なれど新鮮。「ペルソナ」開発陣による完全新作「メタファー:リファンタジオ」は,アトラスの研鑽が詰まったJRPGの最先端だ
すでに体験版が配信されており,その完成度の高さから話題性の高い本作だが,事前に製品版(PC版)をプレイする機会を得たのでレポートしよう。
「ペルソナ」開発チームが描く“王道のファンタジー”の姿とは。アトラス最新作「メタファー:リファンタジオ」ステージレポート[TGS2024]
東京ゲームショウが一般公開を迎えた本日(2024年9月28日),ソニー・インタラクティブエンタテインメントのPlayStationブースにて,アトラスが10月11日に発売を予定している新作タイトル「メタファー:リファンタジオ」を紹介するステージイベントが行われた。
「メタファー:リファンタジオ」完成披露会をレポート。体験版の配信発表や,コスプレイヤーのパフォーマンスと読経が融合したライブが行われた
セガとアトラスは,2024年9月25日に「ATLUS TGS2024 MEDIA BRIEFING」を品川プリンスホテルのクラブexにて開催した。本稿では,その第2部「メタファー:リファンタジオ」の完成披露会「ワールドメタファーサミット」の模様をレポートしていく。
「メタファー:リファンタジオ」,本編にデータが引き継げる体験版が本日配信に
アトラスは本日開催された「ワールドメタファーサミット」にて,10月11日に発売予定の新作RPG「メタファー:リファンタジオ」の体験版を本日配信すると発表した。体験版は本作の序盤を遊べるもので,本編へのデータ引継ぎが可能だ。
※2024年9月25日16:25ごろ,プレスリリースを追加
「メタファー:リファンタジオ」公式サイト
濃密なファンタジー世界で繰り広げられる政治劇
次代の“王”は誰だ?
物語の舞台となるのは,8つの種族が暮らす「ユークロニア連合王国」。種族差別が激しく,虐げられている種族は路地裏で野垂れ死ぬのを待つしかないような惨状だ。
主人公はエルダ族という種族らしく,角も長い耳もない。我々からしてみれば最も普通に見える外見だが,「メタファー:リファンタジオ」の世界では8つの種族にすら入っていない“9番目の種族”で,人口も極めて少数。存在自体が珍しすぎることから奇異の目で見られやすく,虐げられている部類の種族のようだ。
主人公と妖精のガリカは,王国軍に潜入している人物にメッセージを伝えるという“特命”を受け,王都にやって来た──のだが,ユークロニア連合王国は,王の急逝により,後継者をどうするかで荒れている状況だった。
次代の王として目されているのは,国教でもある「惺教」(せいきょう)の教主・フォーデン。そして,異例の若さで王侯の列に加わった将校・ルイ。しかし,ルイには問題があった。
ルイは武人としても魔道士としても常人離れした技を持っている。それゆえに,“寝室に忍び込んで王を暗殺した張本人”である疑いが強かったのだ。フォーデンら重鎮たちは,心臓を一突きに殺された王の死体を見ており,魔法を使ったセキュリティを潜り抜けて王の寝室に忍び込める者など,ルイ以外にいない──そう確信していたが,証拠がない。
十数年前にも王子の暗殺未遂事件があり,それもルイの仕業と見られている。
つまり,ルイは障壁となるものをひとつひとつ取り除きながら,ついに王の座に手が届くところまで上り詰めてきた。恐ろしい野心の持ち主であることを王侯たちは皆,気づいているという状況だ。
なお,本作のオープニングはルイが国王を暗殺するシーンから始まるので,これらの出来事はネタバレではない。
開幕からスゴい悪役として描かれるルイだが,一部の民衆からは強く支持されているという一面もある。前述のとおり,惺教が国教であり,その教主たるフォーデンは幅広い層に支持されてはいるのだが,その教えでは民の生活が一向に良くなっていない事実があり,国を大きく変えてくれそうなルイに注目が集まっているのだ。
このあたり,我々の世界における政治と選挙によく似ている。
一方,十数年前に起きた暗殺未遂事件では,王子の命こそ奪われなかったものの,刺客の魔道士により,ある呪いを受けてしまった。以後,王子は昏睡状態に陥り,衰弱が激しい。
事件のあと,一部の側近たちの手により,王子は行方不明ということにして匿われており,世間的には亡くなったと認識されている。
主人公は王子と仲が良かった。だから王子の呪いを解きたいし,できれば次代の王にもなってもらいたい。そのためにも,王子の命を狙い,王をも手にかけたルイのような男を決して王座に就かせるわけにはいかない。
跡継ぎだった王子が亡くなったことになっているため,フォーデンのような者が王座に就こうとするし,要職が与えられることを期待してフォーデンを支える者も出てくる。
それぞれの思惑が交錯する中,前王が死んだことで発動する「王の魔法」により,「民の信託を最も多く集めた者が次の王となる」という前王の遺志が明らかにされる。
「王の魔法」の効果はすさまじく,現在の有力候補の上位の顔が石に浮かぶ「顔石」という物まで各地に出現。ここまでされてはルイも前王の遺志に従わざるを得ず,王の座を巡る支持集め,競争が始まることになる。
このように文章で紹介すると,かなり複雑な背景を持つ物語と舞台ではあるが,これらはアニメーションを交えて語られるため,ひじょうに分かりやすく,アニメの第一話を観ているかのような没入感で入り込める。
筆者はまず,ここに感心してしまった。「種族差別の激しい世界での政治劇」と聞くと,重くてややこしい印象を受けるかもしれないが,RPGのストーリーとして馴染ませることに成功している。
固有名詞が多く出てくるので,最初は分からないことが多いかもしれないが,困ったらメニュー画面の「見聞録」から用語を確認できる。
RPGの華である戦闘は洗練されたターン制バトル
ダンジョン攻略はリソース管理も重要だ
「メタファー:リファンタジオ」の世界ではモンスターも多く徘徊しており,シンボルと接触することで戦闘に移行する。ターン制を採用し,弱点を突くことで大ダメージを与えられる,どちらかといえばオーソドックスなスタイルだ。
ただし,攻撃をミスしたり,敵からクリティカルヒットを食らったりすると「不安」状態になることがある。この状態では通常より敵の攻撃回数が増えたりするため,状態異常に関する状況の変化は大きい。序盤は「楽勝っぽいな」と安心していたら,状態変化を受けてから一気に苦戦することもあり,油断は禁物だ。
そして,最も重要になるのが「アーキタイプ」だ。主人公たちは特殊な“力”に目覚めることになり,その姿ごと大きく変化させて戦うことができる。
アーキタイプには「ファイター」「マジシャン」「ナイト」といったスタイルがあり,それぞれに応じたスキルを使える。ファイターはもちろん物理攻撃主体の攻撃手段が多く,魔法系の攻撃はできない。ナイトは防御系の能力が多く,攻撃手段には乏しい。
一方,マジシャンはいろいろな属性の魔法が使えるが,物理攻撃はさほど強くなく,装備可能な武器も杖や棍に限られる。
アーキタイプはその力に目覚めたキャラクター以外でも,MAGと呼ばれるコストと引き換えに使用できるようになる。また,特定のアーキタイプで修得した能力を「技の継承」により,別のアーキタイプの能力として設定できるようにもなる。
たとえば,回復系のアーキタイプ「ヒーラー」を多くのキャラクターで使い,回復系魔法を「技の継承」で設定すると,どのアーキタイプでも回復系魔法が使えるといった具合だ。
また,アーキタイプのランクが上がると新たな能力を習得したり,上位に位置するアーキタイプが解放されたりする。いろいろなアーキタイプを使っていくと,継承できる能力は増えるが,経験値が分散されるので個々のアーキタイプの成長は遅くなる。
悩ましいところだが,1つのアーキタイプを使い込んでいくことも重要だ。
また,「ジンテーゼ」と呼ばれる,異なるアーキタイプ同士による協力攻撃もある。通常より強力な反面,使用者が双方ともにMPを消費するので,乱発しているとアッという間にMPがなくなってしまう。使用者のいずれかでも状態異常になっていると使えないため,「ここぞ」という場面で発動できるようにMP管理と状態異常対策は万全にしたい。
MP管理と言えば,ダンジョンの攻略中は敵に対処しなくてはならないが,アイテムのほかにはMPを回復する手段がほとんどない。すべての敵を倒しながら進めば,避ける手間はなくなり,不意打ちを食らうこともないが,HP/MPはどうしても消耗してしまう。
肝心のボス戦にたどり着けても,MPが残っていないと強力なスキルも発動できない。MPの温存は重要だ。
RPGでは昔から「ダンジョン攻略中のMP管理」が攻略要素の1つとして存在していたが,昨今は親切なタイトルが多く,ボス戦の手前で全回復できることも多い。
しかし,「メタファー:リファンタジオ」には「マグラの穴」と呼ばれる休憩所こそあるが,そこでMPは回復しない(セーブはできる)。ダンジョンを隅々まで探索すると宝箱が多く見つかるので,できればじっくり探索したいところだが,そうすると必然的に敵と接触する機会も増える。
どれだけ戦い,どれだけ無視するのか。久々にMPというリソースの管理を真剣に考えることとなり,懐かしさを覚えた。
また,主人公パーティがレベルアップして敵が格下になると,フィールド上のシンボルを攻撃するだけで蹴散らせるようになる。道中のMP消費を抑えることにもつながるため,レベルアップは重要だ。
強くなればなるほど攻略の時短にもなるというわけで,懐かしいだけでなく,新たな試みも見られる。
新しい試みと言えば,もう1つ。
「旅人の声」では「ほかのプレイヤーはどんなアーキタイプの編成で,どのくらいのレベルでダンジョンを攻略しているのか」を知ることができる。自分のレベルが明らかに低ければ,「うわっ……私のレベル,低すぎ……?」と参考になるだろう。面白い試みだ。
敵の弱点を的確に突ける編成でないと苦戦するダンジョンも存在する。また,パーティメンバーの誰かが魔道士系のアーキタイプにしているだけで,敵が警戒して強くなってしまうダンジョンもあり,事前に「風聞屋」で情報を仕入れることでパーティのアーキタイプ構成を考える参考になる。
ダンジョンに挑む前に情報を仕入れ,編成を吟味する。この“冒険者感”はTRPGのようでもあり,「ダンジョンに入る前から戦いは始まっている」感がたまらない。
「難しいな」と感じたら,難度を下げるのも手だ。「FOCUS ON THE STORY」以外の難度はゲーム中でも変更できるので,普段は「NORMAL」で進めながら,とくに強いボス戦だけを「BEGINNER」にして挑んでもいい。
RPGは,旅だ
ユークロニア全土を駆け巡る,壮大な旅路
物語が進むと,「王権競技会」が始まる。平たく言うと,候補者たちの支持率争いのための催しだ。ユークロニア連合王国を構成する各国の三大首都を巡り,それぞれの課題をこなすことで,王としてふさわしい力を民に示すというわけだ。
王権競技会のスタートをもって,本作はRPGとしての“旅”の表情がグッと強くなってくる。
長距離の旅となるため,馬車などでは日数がかかりすぎて移動もままならない。そこでヒュルケンベルグの知り合いを頼り,手に入れた巨大な乗り物「鎧戦車」(がいせんしゃ)が主人公たちの拠点となる。
王権競技会そのものが選挙活動に近いため,これも「街宣車」とかかっているのだろう。ダジャレ好き……。
王権競技会の開始後,これまで物語の舞台だった王都を離れることになるが,鎧戦車に備えられていた謎の装置により,転移魔法(ファストトラベル)が可能だ。王都でサブクエストの受注/報告などを行いたければ,気軽に戻れる。
ただし,ダンジョンなどはファストトラベルの対象外。鎧戦車で日数をかけて移動する必要がある。
さて,「日数」と前述したが,本作ではストーリーの目的やサブクエストに期限が設定されていることがある。期限を過ぎるとクリア失敗というわけだが,「ストーリーの目的が◯日後に控えている」といった場合は,その日までは自由行動となる。
1日は昼と夜のパートに分かれており,夜はできることが限られる。夜間は鎧戦車でも危険を伴うため,移動ができないほか,ダンジョン探索もできない。
日中でないと出現しないNPCなどもいるため,「昼にしたいこと」「夜でもできること」を自分なりに整理したうえで,スケジュールを考えるのも本作の楽しさだ。
サブクエストはお金やアイテムが報酬として得られるのも魅力だが,「説得力」や「勇気」といった“王の資質”と呼ばれる特殊なパラメータが上がることもある。街中を探索していると,NPCとの会話によって王の資質が上昇するイベントを見つけられるので,スケジュールに余裕があれば成長を図るものもいいだろう。
主人公たちの旅は支持率を高めるためでもあり,人助け=支持率アップにつながる。
RPGにおけるサブクエストを「面倒だ」と感じる人もいるだろう。だが,本作では杞憂に終わると言っていい。
サブクエストには仲間を含む主要人物に絡む話もあり,ひとつひとつのサブクエストの行く末が気になってしまうからだ。これはやはり,登場キャラクターたちがちゃんと“立っている”ことの証明でもあるだろう。
世界よ,これがJRPGの最先端だ
RPGファンがお世辞抜きでオススメしたくなる1本
正直なところ,あらゆる面においてここまでクオリティの高いRPGが,完全新規IPとして現れたことに驚きを隠せない。続きが気になるストーリー,世界設定の重厚さ,好感の持てるキャラクターたち,戦闘システムの完成度,シーンに合った荘厳なBGM,アニメーションの質,声優陣の演技。すべての水準が高すぎる。
とんでもない大作が現れたという印象だ。
もちろん,「ペルソナ」シリーズで研ぎ澄まされた要素の数々が下地にあるのは間違いなく,魔法の名称に「タルカジャ」が出てきたり,「ペルソナ」シリーズにおけるコミュ的なシステムまで出てきたりしたときは少々笑ってしまったが,世界設定と照らし合わせても違和感なく溶け込んでいる。
逆に,「ペルソナ」シリーズで培ったシステムがここまでスッポリと,何の違和感もなくファンタジー世界に落とし込まれていることに驚かされた。
中でも特筆したいのは,遊びやすさとテンポの良さだ。戦闘時のエフェクトひとつ取ってみても,ちょうどいいテンポで表示され,ストレスがない。ボタンを連打していると,一部のエフェクトをすっ飛ばしてダメージ表示されるまでをカットできる。
本作は「ペルソナ」シリーズと同じくスタイリッシュな画面の見せ方が多いが,それによって演出や表示時間が冗長にはならず,全体的なテンポの良さと,スタイリッシュな見せ方および演出を両立できている。
剣と魔法のファンタジー世界を舞台に,主人公たちは志を同じくする仲間と出会い,各々が不思議な力に目覚め,戦う。こう聞くと,恥ずかしくなるくらいに王道のRPGだが,本作ではとても新鮮に感じる。
日本では1990年代,RPGブームと言ってもいいほどにRPGが乱立していたし,その多くがファンタジーの世界観だった。名作も多く生まれたが,一方でプレイヤーは少々食傷気味にもなり,映像技術の進化に伴う開発費の高騰などもあって,次第にその数は減っていった。
しかし,本作には「皆,忘れていないか? ファンタジーRPGは超面白いんだぜ。それを今から見せてやる!」という強い信念を感じる。
かつて夢中で遊んだ“王道のRPGの興奮”を今こそ再び。そうした熱いものを感じる一方で,本作の物語はホンモノの「王」を目指すための道を往く。その点でもまさに「王道のRPG」なのかもしれない。
現在配信中の体験版は,製品版にセーブデータを引き継げる。購入を迷っているRPGファンは,ぜひ試してみてほしい。
「メタファー:リファンタジオ」公式サイト
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