連載
僕はずっと,MMO世界の傍観者だったんです――不定期連載「原田が斬る!」,第3回は「ソードアート・オンライン」川原 礫氏とのVRMMO談義
アインクラッドに魔法がない理由
原田氏:
ちょっと話は変わりますけど,MMORPGの女性プレイヤーが,皆アスナみたいな娘だったらっていうのは,まあ世の男性MMOプレイヤーの理想じゃないですか。それはやっぱり,川原先生の中にそういう願いがあったりするんですか。例えば一緒に遊んでいる女性キャラクターが可愛く見えてきたりとか。
川原氏:
うーん,UOについて言えば,最初にやったときの感想として楽しそうなゲームではあるけれど,キャラのこの顔は“ないな”と(笑)。
原田氏:
まぁ,冷静になるとアレはないですね。でもですね,慣れてくると不思議に……。
すごい衣装を作れたり,色を染めたりできるので,やってるうちにやっぱり可愛く見えてきますね。実を言うと,UOでエルフが導入された時,僕はちょっと期待したんですよ。ついにUOにも萌えがやってくると。で,出てきたエルフがアレだった(笑)。
原田氏:
「リネージュ2」みたいなエルフならまだしも,UOのエルフじゃ萌えないですね。むしろ不気味というか,ガミラス星人でしたね。
川原氏:
顔が青いんですよね。そこでもう,ネトゲに萌えはないって一度諦めたんです。ところが,ROにはあったんですよ。いわゆる姫プレイが生まれたのって,恐らくROなんじゃないかな。
4Gamer:
姫プレイ,されてたんですか?
川原氏:
まさか(笑)。筋金入りの女キャラプレイヤーでしたけど,ネカマプレイはしてません。
原田氏:
そこは僕もです。中身がおじさんだと公言してたから,ネカマではなかったですね。ただそのせいで,自分の中の女性の部分が大分開発されましたね。普通に歩いていて男性キャラとかに「すごい良いドレスだね」とか言われると,ものすごく……。
川原氏:
嬉しかった?(笑)。
原田氏:
ええ,なんというか……今までに感じたことのない優越感が生まれてきて,価値観が変わりましたね。じゃあ川原先生は,ネットゲームを通して女の子とリアルで仲良くなったりとかは? オフ会でドキドキとか。
川原氏:
ないですないです(笑)。そんなイベントは起きなかったですね。そもそもオフ会なんて怖くて行けませんよ。
原田氏:
怖いってどういう意味で?
川原氏:
うーん,やっぱり中の人を知りたくなかったのかなあ。
原田氏:
僕は反対に知りたかったんですよね。UO〜EQと一緒に戦ってきたテキサス在住の女性プレイヤーがいたんですけど,その人とはICQで写真を送りあったり,リアルで手紙や電話までしていました。クリスマスにはプレゼントを贈り合うくらい,ずっと仲が良かったんです。リアルなドラマとゲームキャラのロールプレイがシンクロして……20代だったこともあり,超ときめいてました。
4Gamer:
海外だと,そのあたりがオープンなのかもしれませんね。原田さんはオフ会に出たことあるんですか?
原田氏:
何回か行きましたね。向こうはリアルと違う性別のキャラクターを使うってことが,当時あまりなかったですし,日本でも女性キャラクター使いの人と会うときは,けっこうドキドキしました。1年くらいずっと「この人,発言がかわいいなあ」なんて思ってた人に実際会ってみたら,10歳くらい年上のオッサンで「あり得ねえぞコラ!」みたいなのとか(笑)。でも,それも含めて皆の生き様が楽しかったので,僕はオフ会歓迎派になっていったんですよ。
川原氏:
僕はそこまで度量が大きくなかったですね。ちょうどその頃,直結厨って言葉が出回り始めて――これはまあ,ネットの世界でナンパするみたいな意味ですけど,そうは思われたくないって意識のほうが強かったんです。
原田氏:
ははあ,そういうのばっかりを目的にしてるのがいたんですね。
4Gamer:
「SAO」の作中でもキリトくんがそんな話をしていましたが,日本のネットゲーム界隈では,リアルのことを聞くのはマナー違反というか,そういう空気が強くあった気がします。海外はまた違うのでしょうけど。
川原氏:
結局のところ,MMORPGの中での僕は,ずっと傍観者だったんです。トッププレイヤー達のはちゃめちゃぶりを,ちょっと離れて眺めているっていう。彼らはそれはもう,とんでもなかったですから。
原田氏:
とんでもないというのは,どういう意味でです?
川原氏:
人格的にもですが,やっぱりその性能が強烈でしたね。対人戦で何十人に殴られても落ちやしない。そういう突き抜けた感じを,小説でも書けたら面白いだろうって,いつも考えてるんですけどね。
原田氏:
なるほど。これはEQの話ですけど,サーバーのトップを走るようなレイドギルドのリーダーって,やっぱりなんか,ちょっと変なカリスマを持っていたりするんですよ。オンラインだけで実際に会ったこともないのに,なぜか従いたくなってしまうような。まあ僕はのらりくらりで,なんだかんだ誰にも従わないギルドマスターでしたけど(笑)。
川原氏:
僕は「パーフェクトワールド」で初めてGvGを本格的にやったんですけど,その当時入っていたギルドのギルマスとサブマスが凄かった。週末の決められた時間に領土を取り合うので,金土日にかけて夜の3時間を拘束されるんですけど,僕がプレイしていた2年間,この2人はこれを1度も休まなかった。
原田氏:
それは凄い。そういう人達って,リアルでは何をやってるんでしょうね。
川原氏:
ほんと,どうされてるんでしょうね。そのギルドの場合は,どうもリアルでご夫婦だったみたいなんですが,とにかく周囲から寄せられる信頼がものすごくて。
原田氏:
僕の知り合いにも,ちょっと心配になるくらいログイン時間が長いプレイヤーが結構いましたが,その人のリアルには興味が沸きましたからね。僕が川原先生の立場だったら,取材がてらオフ会で会いに行ってたと思います。
川原氏:
そうですよね,確かにちょっと,知りたいって思ったこともありましたけど。ただ当時書いていた《アインクラッド》編は,あくまでもゲーム中で話が完結していて,プレイヤーのリアルは出てきませんでしたから。
4Gamer:
自分が《アインクラッド》編を読んで,不思議に感じたのはそこなんですよ,プレイヤーのリアルがほとんど出てこない。ネットゲームものというジャンルの特性を考えたとき,このゲーム内とリアルのギャップの部分って,物語の起点としてけっこう美味しいのでは?
川原氏:
それを描くと,ジャンル的にラブコメかミステリーになっちゃうんです。ネットゲームもののライトノベルとして考えると,そのどっちも辛い感じだった。今でこそ「ネトゲの嫁は女の子じゃないと思った?」(電撃文庫 刊)のような作品も成立していますが,2000年代前半だと,まだちょっと早かったんじゃないかな。
4Gamer:
なるほど。そうか,ちょっと邪道な感じにはなっちゃいそうですね。
川原氏:
王道のバトルものを書こうと思ったときに,プレイヤーのリアルはむしろ邪魔だったんです。デスゲームものにしたのも,生身とゲーム世界でキャラクターが二重に存在するっていう不都合を解消するためでしたし。例えPKに狙われてピンチでも……。
原田氏:
ゲームだったら安全が保証されてますからね。だからデスゲームだと。じゃあ,魔法については? アインクラッドには魔法が存在しませんけど,これも邪魔だったんですか?
川原氏:
魔法も僕の書きたいものには,邪魔だったんです。「SAO」のVRMMOと普通のMMORPGで何が違うかといえば,それは自分の身体を動かすことだろうと思ったんですよ。普通のネットゲームだとワンクリックで剣が振れて,下手すればオートで戦えたりしますけど,「SAO」では剣の振り方やその軌道,そういったフィジカルな部分の攻防を細かく描きたかった。
原田氏:
なるほど,ちゃんとプレイヤーの技術をベースにしたかったわけですね。
川原氏:
ええ。作中でも硬直をキャンセルするテクニックとかが出てきますが,あれはもう格闘ゲームに近い。そういうものを書こうとしたときに,魔法が出てきちゃうと……あれは遠距離からの必中攻撃だから。
原田氏:
確かに反応速度とかの話ではなくなっちゃいますね。それすごいですね。失礼な話かもしれないけど,僕がもし小説家になってMMOテーマで創作しようというときに,魔法を外すアイデアは出てこないですよ。何も考えず,剣と魔法の世界にしちゃうと思います。
川原氏:
あと,魔法を出しちゃうと,VR世界のソリッド感みたいなのが,薄れていく感じが僕はしていたんです。VRで魔法が使えると,ジャンルとしてはシューターになっちゃいそうで。
原田氏:
シューター……確かにそうですね。でもその直感はすごいですよ。VRだからこそ魔法って発想になってもおかしくないのに。
4Gamer:
そういえば《フェアリィ・ダンス》編以降のアルヴヘイム・オンライン(以下,ALO)では魔法が出てきますが,それでもバフとか回復がメインで,攻撃魔法は多用しない印象があります。
川原氏:
ALOは,閉鎖的だった《アインクラッド》編とは真逆の世界にしたくて,空も飛べてものすごく開放的な世界として作ったんですよ。だから魔法も使えるし,色合いも鮮やかだと。なので結局「SAO」は,《アインクラッド》編ありきの物語なんです。
打倒すべき敵としてのゲームシステム
4Gamer:
ところで,先ほど「SAO」の戦闘は格闘ゲームに近いという話がありましたが,川原先生はMMORPG以外のゲームはプレイされるんですか?
原田氏:
僕の勝手な川原先生のイメージだと,格闘ゲームはネオジオ系だと思うな。どうなんですか?
川原氏:
当たりですね(笑)。一番遊んだ格闘ゲームは「サムライスピリッツ」(以下,サムスピ)かなあ。初代と真サム,斬紅郎無双剣くらいまではかなりやりました。
原田氏:
きた! やっぱり! そこは気が合いますね。僕も自分が作ってるタイトル以外だと,格闘ゲームではサムスピが一番好きなんですよ。遊んだのはゲームセンターでですか?
川原氏:
ゲーセンですね。あの渋谷の火事のあった……。
4Gamer:
渋谷会館?
川原氏:
そう,渋谷会館。あそこがホームでした。あとは秋葉原のクラブセガにもよく行きました。あ,でも鉄拳シリーズも遊んでましたよ。2Dはサムスピでシャルロットとリムルル使い,3Dは鉄拳で準使いでした。「ソウルキャリバー」はソフィーティアとカサンドラで,筋金入りの女キャラプレイヤーです(笑)。
原田氏:
おお,ありがとうございます(笑)。僕は格闘ゲームだと女キャラは使えないんですよね。性能がどうとかじゃなくて,なぜか感情移入できないんです。MMORPGなら問題ないのに(笑)。
4Gamer:
格闘ゲーム以外はいかがですか,FPSとか。
川原氏:
「Halo」は結構やりましたね。友人の家にXboxを3台持ち込んで,ローカルで8人対戦とかやってました。でも,FPSはパッドでのAimが苦手で……。
原田氏:
同じですね。僕もFPSのパッド操作は苦手で,だからPCゲーマーなんですけど。
川原氏:
いや,僕はコンシューマゲーム派なんですよ。MMORPGだけ例外ですけど,ゲームはディスプレイじゃなくてテレビでやりたい。何が違うんだって話ですけど,体験の質がちょっと違う気がするんですよね。
原田氏:
それちょっと面白いですね。僕がPCゲーム派なのは,昔のアーケードがそうだったように,現在のPCがハイエンドだからって理由ですけど,川原先生は違うんですね。
川原氏:
PCゲームは,ゲームそのものにプレイヤーが介入する余地が残されているのが嫌なのかもしれない。チートとかは論外にしても,スタンドアローンなゲームのModもなんかピンとこなくて。そこは開発者の聖域であってほしいのかも。
原田氏:
ああ,なるほど。そこは開発者になった今も,ちょっと分かる気がします。ゲームとして,パッケージとして,作品として成り立っている中で遊ばせてほしいってことですよね。UGC(User-Generated Contents)とかを受け入れられないタイプですか?
川原氏:
うーん……いや,どちらかというと,プレイヤーがシステムに手を触れるのはいかがなものか,という感覚ですね。だから僕の書く作品に登場するゲームでは,システムは絶対的なもので,人の手は基本的に介在しない仕組みになってるんです。
4Gamer:
確かにメンテナンスも必要ないし,バグもAIが直しちゃってますね。
川原氏:
ええ。その上で,その絶対的な存在に挑むプレイヤーの姿を描きたい……んだと思います。
原田氏:
なるほど,面白いですね。あくまでプレイヤーごときが介入できるようなものであってほしくないわけですか。
4Gamer:
それって,「SAO」の大きなテーマだと思うんですが,であるがゆえに疑問に思うことがあるんです。心意システムというのがなぜ存在するのかということなんですけど,あれはシステムに触る行為ではないのですか?
川原氏:
心意システムもまた,プレイヤーに許された可能性として用意したものではあるんです。打倒すべき絶対的な存在としてのゲームシステム。それに挑むための武器として。
4Gamer:
心意のアイデアは,あとから出てきたものなんですか? それとも《アインクラッド》編の当初から?
川原氏:
アイデアは最初からありました。《アインクラッド》編にしても,「通常のゲームシステムの範囲で戦って,ラスボスを倒して開放されました」では終われないと思ったんです。それだと,ただ茅場が描いた筋書きどおりに事が進んだってだけになっちゃいますから。
4Gamer:
……確かにそうですね。
川原氏:
最後の最後は,主人公はその世界を形作るルールそのものと戦って,打ち勝たなくちゃならない。それには単に「ゲームがうまい」という以上の何かが必要だったんです。そう思うのは僕が古い作家だからなのかもしれないですけど,心意というシステムが生まれたのは,そういった経緯からです。
4Gamer:
その茅場晶彦についてなんですが,《SAO》事件の首謀者でありながら,彼は作中を通して好意的な描かれ方がされていますよね。彼については,先生はどういった印象をお持ちなんでしょうか。
川原氏:
茅場については,自分としても反省が大きいんです。僕は悪にも悪なりの正義があるっていうのが嫌いで,悪役はしっかり悪であるべきだと思っているんです。だけど茅場は初めて書いた悪役なのに……いや,であればこそなのかな,完全な悪として描き切ることができなかった。
4Gamer:
キリトくんも,半ば共感を感じている“ケ”がありますよね。
川原氏:
キリトくんは7:3の3ぐらいで「もしかしたら俺も……」って思ってるっぽいです(苦笑)。しかしまあ,茅場が悪であることは間違いないので,そこはしっかり決着をつけたいですね。
4Gamer:
最初に登場したときは,「機動警察パトレイバー the Movie 」に登場する帆場暎一のオマージュなのかもとも思ったのですが,いかがですか?
川原氏:
影響はちょっとあったかもしれません。ただ帆場暎一にせよ漫画版の内海にせよ,パトレイバーの悪役は手段と目的が逆転した愉快犯みたいなところがあるじゃないですか。茅場はしっかりとした目的があって動いているので,根本のところは違っていると思います。
原田氏:
お話を聞いていると,川原先生は構成をしっかり考えてから書くタイプなんだっていうのが,よく分かりますね。書くべきこととそうでないものの取捨選択がしっかりしているというか。
川原氏:
文庫はページ数で尺が決まってますから,取捨選択はどこかでしなくちゃならないんです。その中に,作家さんごとに譲れないものがあるという感じで。僕の場合は……物語や作品に対して誠実でいたいっていうところでしょうか(笑)。
オーディナル・スケール――VRとARの違い
4Gamer:
ここからは,2月18日に公開となった「劇場版ソードアート・オンライン -オーディナル・スケール-」(以下,オーディナル・スケール)についてうかがって行きたいんですが,本作の舞台はVRではなくて,ARのMMORPGなんですよね? これはいったい……どんな世界観なんでしょうか。
川原氏:
現実世界になっただけで,やってることは一緒なんですけど。ナーヴギアやアミュスフィアの次の世代のウェアラブルデバイスで,“オーグマー”というのが登場します。これを使って現実の世界にモンスターなんかを投影するんです。
原田氏:
耳のところにカチッと装着しておくと,肉眼で見えているものと合成される? つまり,そのデバイスをつけてる人しか見えないんですね。
川原氏:
そうです。アミュスフィアよりも小型軽量になっていて,視覚と聴覚と,あとは限定的な触覚――握った感じや触った感じを,脳に直接入力できるんです。
原田氏:
リアル世界でモンスターとかと戦うわけですか。
4Gamer:
そう聞くと,ちょっと危なそうに思えますね。
原田氏:
VRとARって結構いっしょくたにされがちだけど,僕の中ではまったく違うモノなんですよね。最近よくVRじゃなくてARについてのコメントを求められたりするんだけど,それを僕に聞くのはナンセンスだと思う。そもそもVRMMOをARに置き換えても同じものにはならない,異質なものという気がするんですけど……。
川原氏:
いや,脚本を書いてみて,これはオタク文化のものじゃないなと思いました。もっとチャラい,パリピ的な何かだなって。
原田氏:
でしょう! そうそう,そうなんですよ!
川原氏:
現実世界で集まって,ウェーイってやれる人達のものなんですよね。だから,キリト君は最初乗り気じゃないんですけど(笑)。
原田氏:
ああ,やっぱりそこまで分かって書かれているんですね。いや,すごいですね。前にARを本格的にやっている方と話したことがあるんですけど,彼らはどんな場所でもエンターテイメント空間にできることがARのウリだと言うんです。皆で集まったときに,ARでスカッシュやテニスで遊んで,ハイタッチができますとか。恋人同士でお酒を飲みながら,魔法で作った花火を眺められますとか。それを聞いて,ああ,こりゃまったく人種が違うんだなと。
4Gamer:
確かに(笑)。
原田氏:
僕はヨット部の主将で体育会だったし,見かけもこんななので誤解されがちなんですけど,魂の本質はそうじゃないんです。ARでパーティーを楽しくとか言われても,そもそもパーティーとか行きたくない。体動かすの楽しいですよって言われても,そもそもディスプレイの前から動きたくないから家でPCゲームやってるというのに!
川原氏:
最初はARにする気はなかったんです。単に現実の東京を緻密に再現したVR世界を舞台にした物語にしたかった。ただそうなるとですね,主人公達の肉体は埼玉の川越市にあって,ベッドに寝っ転がってるってことになるんですよね。それがその……なんか,埼玉からの重力に引っ張られてる感があって。
4Gamer:
埼玉からの重力(笑)。
川原氏:
書いててどうしてもね。秋葉原のUDXとか東京ドームシティとか,東京の名所で派手に戦ってても,心は埼玉に繋がれている。これはいらない情報だなと。それならもう,生身で東京行くしかないだろうということで,ARが出てきた。
原田氏:
最初はVRだったと。ARものとして書き始めてから,さっきのパリピ感に気づかれたんですか。
川原氏:
そうなんです。あとヤンキー感みたいなものも出てきちゃって。例えばこれ,ARで対人戦ってなったとして,相手がヤンキーだった場合ですよ。ゲーム内の剣や銃の戦いで終わるものだろうかと。エキサイトしたら,リアルな物理攻撃が飛んでくるんじゃないかって。
4Gamer:
ああ,ゲームセンターで連勝とかしてると,たまに発生するイベントですね(笑)。
原田氏:
昔のゲームセンターだと,そういうのありましたよね。あれおかしいな,さっきから台がドンドンってこっちに押されてくるんだけど? って(笑)。
川原氏:
昔,渋谷でサムライスピリッツやってたとき,当時の相棒がリムルルの無限ハメをやって,相手の怖いお兄ちゃんを怒らせたことがあって。2人で走って逃げたんですけどね。だからARの対人戦なら,恐らくそういうこともあるはずなんです。
原田氏:
僕はゲーム開発やプロデュースの現場にいるので,実際にそういった最先端技術を見たり触ったりする機会があるから分かるんですけど,川原先生の場合は,思考実験だけで気づいたわけですよね。さらに,そこを想像で脚本を書き上げたのもすごいですよ。
川原氏:
まだ想像が及んでない部分も多いんでしょうけどね。ただ,ゲームとしてのARは,ものすごくカジュアルなものになるだろうと。コアで複雑なシステムとかは,ARとは相性が悪い気がするんです。
原田氏:
確かにARは人の生活を豊かに,便利にするものではあると思うんです。例えばカーナビなんて,AR技術でもっともっと便利になる。そもそも車を持ってるとか,ドライブに行こうなんて環境が,一部のコミュニティからすると,「ん?」って感じではあるでしょうけど(笑)。
川原氏:
そういったアプリケーションは,便利になりそうですよね。ただゲームとなると,コミュニケーションツールの側面が強くなる気がして。どうしてもそっちに引きずられて,システムは簡略化せざるを得ない。そこに説得力を出すために,「オーディナル・スケール」ではランキング・システムを取り入れたんです。
4Gamer:
すべてのステータスがランキングによって決まる,と公式サイトに説明がありましたが,これはどういうものなんですか?
川原氏:
プレイヤーにAGIとかSTRとかといったステータスが一切存在せず,プレイヤーの順位だけが存在するというシステムです。順位の差によって,ダメージの補正値だけが存在するという。例えば,100位と101位の人が戦えばほぼ互角ですが,10位と100位の人が戦うと,補正が働いて100位の人は大ダメージをくらいます。
4Gamer:
レベル補正みたいな。でも,ランキング上位のほうが有利なんですね。
川原氏:
ええ,上に行けば行くほど強くなるという,超格差社会です。街中に落ちているアイテムを拾うことでもランキングが上がるので,最初はそれをがんばって強くならないと勝負にならないっていう。プレイヤーが持つ情報はランキングの値だけなので,システム的な負荷も小さいでしょうし。まあ,実際にゲームとして成立するかは別の問題ですけど。
4Gamer:
実際のゲームとしては,ちょっと過酷ですね。
川原氏:
そうですね。まあこのお話は,《アインクラッド》編で起きていたレベル格差の問題を,もっと強調して描くことが目的だったので。攻略組になりたくて,でもなれずに死んでしまった人達。この話は,そういう人達の話なんですよ。
原田氏:
なるほどねえ! これ,うちの二見※がゲーム化するときに困るやつですね。今までは疑似MMORPGで済んでたのに,今度はARでしょう。どう表現すんのこれ! みたいな(笑)。
※バンダイナムコエンターテインメント「ソードアート・オンライン」シリーズプロデューサー二見鷹介氏。
川原氏:
これはゲーム化しないと思いますけど(笑)。あ,でも東京を完全再現したゲームはやってみたいですね。「The Crew」(PC / PS4 / Xbox One)っていう,アメリカ全土を再現して自由に走れるレースゲームがあるんですけど,あれみたいなやつ。
原田氏:
それってつまり「グランド・セフト・オート」ですよね。それは二見が大変というより,開発費がえらいことになります(笑)。
川原氏:
それです! 東京を再現したスタンドアローン型のゲームで,何でもやり放題なやつをぜひ。僕,「グランツーリスモ」で東京を再現したコースがあったけど,すごく好きだったんです。ゲーム世界に再現された現実世界に,なんか惹かれちゃうんですよね。
原田氏:
それはすごく分かります。デジタルの良さですよね。
川原氏:
というわけで二見さん,ぜひよろしくお願いします。クビをかける覚悟で(笑)。
原田氏:
二見が大丈夫でも,我々上司にそれを承認できる度胸があるかなあ(笑)。
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