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原作のビハインドストーリーを繊細に描く「舞台『囚われのパルマ ー失われた記憶ー』」東京公演ゲネプロ&舞台挨拶レポート
2019年6月27日,シアター1010(東京)にて,カプコンより配信中の体験恋愛アドベンチャー「囚われのパルマ」(iOS / Android / Nintendo Switch)を原作とした,「舞台『囚われのパルマ ー失われた記憶ー』」の幕が開けた。本稿では,東京公演開幕に先駆けて前日に行われた,舞台挨拶と公開ゲネプロの模様をお伝えする。ゲネプロ前の舞台挨拶では,出演するキャスト全員が登壇し,代表して主演のハルトを演じる太田基裕さんと,舞台オリジナルキャラクター篠木文乃を演じる前島亜美さんが公演への意気込みを語った。
前島亜美さん(篠木文乃役):
原作のゲーム「囚われのパルマ」のとても繊細で美しい世界観を大切に,丁寧に稽古をしてまいりました。稽古のなかでも原作のカプコンさんとたくさん意見交換をしまして,舞台としてどうやって表現できるかということを皆さんと作ってまいりました。製薬会社の話でもあるので,薬の研究や実験のシーンでは,小道具も本物を使っています。ぜひ細かいところまでじっくり見ていただきたいなと思っています。
太田基裕さん(ハルト役):
本日はお越しいただきありがとうございます。この「囚われのパルマ」という作品は,ゲームが原作なのですが,ゲームでは描かれない“ビハインドストーリー”が描かれています。この舞台は大阪で幕が開き,3公演という公演数ではあったのですが,来ていただいたお客様と非常にいい空間が共有できたなと自負しております。お客様からいただいたパワーで東京公演も,千秋楽までいい緊張感の世界観を表現できるよう,頑張っていきたいと思います。
舞台で描かれる,
ハルトを取り巻く複雑な人間模様
これまでに3作がリリースされている「囚われのパルマ」。ストーリーはそれぞれに独立しているものの,「孤島の収容所に囚われている記憶喪失の青年と,主人公(プレイヤー)が“相談員”として交流し,記憶を紐解きながら心を寄せていく」という共通したテーマがある。
本作の舞台では,その1作目である「ハルト編」のビハインドストーリー(前日譚)――ハルトが記憶を失う前に勤めていたシーハイブ医療センターを舞台に,彼が携わっていた研究や,なぜ記憶を失うことになったのかが語られる。
物語は,そのシーハイブ医療センターと,彼らが時々訪れるカフェ(食堂)での会話劇で綴られていく。前日譚だけあって,登場する人物の半分以上は舞台のオリジナルキャラクターというのが本作の特徴だろう。おそらくここは,ゲームを知っている人にとって最も気になる点ではないだろうか。
筆者はシリーズすべてをやりこんでいる「パルマ」ファンでもあるのだが,舞台に登場する場所やキャラクターたちは,実にしっくりと「パルマ」の世界観に馴染んでいると感じた。舞台オリジナルキャラクターとして登場する,ハルトと同じ研究チームのメンバー久保田,郷田,山辺,島本はそれぞれにキャラクターが立っていて,原作のゲームに登場したとしても違和感がないだろう。シリアスな話ながら,彼らがいることでどこか和んだ雰囲気になり,より世界観に現実味が帯びているように感じた。
また,エリート政治家・八木沼も同様。舞台を観ている途中「このキャラクターも原作に登場していたような……?」と思ったほどだ。また,ある目的のために派遣され,チームの紅一点となる篠木は,重要なポジションとして物語を動かす。カフェの店員・祥子は,登場するだけで場の空気が軽くなり,本作の癒やしの存在となっていた。
もちろん,原作ゲームに登場している政木の内面にも,深く触れられていた。ある意味,原作では分からなかった一面が,本舞台で1番多く見られたキャラクターかもしれない。また,狩谷に関しては,原作でのスマートなイメージそのままに,女性が演じることで凜とした美しさと,ミステリアスさがさらに増したように感じられた。
そして主役のハルトは,研究に対しては天才的なひらめきや忍耐力を見せるものの,人付き合いが極端に苦手であることが,両親・涼子と義人との幼少期の思い出を通して表現される。原作の序盤でハルトは記憶を失っているばかりか完全に心を閉ざしてしまっているのだが,彼が持つ繊細すぎるほどの雰囲気は,まさにイメージ通りだったように感じた。余談だが,シーハイブのあのおなじみの青いフードを被ってうつむく太田さんは,まさに原作のハルトそのものだった。
本作は,非常に静かな空気感(実際の研究所のような)で進んでいき,音楽などの演出も極端に感じるくらい抑えられている。昨今の2.5次元舞台で歌や踊りがないのは珍しいほうだと思うが,「パルマ」の世界観,とくに前日譚を語るという意味ではやはりこうした表現になるのだろう。
原作は女性向けのゲームとして発表されていたものの,蓋を開けてみれば,それまでのどんな女性向けタイトルとも違う独自の世界観に驚かされたことを,筆者は覚えている。そして今回の作品も2.5次元舞台でありながら,どこか一線を画しているように感じられた。
シリーズのファンである筆者はこの舞台によって原作への熱が再燃したが,ゲームを未プレイの人にもぜひ,ゲームを遊んでみてほしい。この舞台での物語を体験することによって,より原作を深く楽しむことができるのではないだろうか。
舞台『囚われのパルマ ー失われた記憶ー』公式サイト
「囚われのパルマ」公式サイト
「囚われのパルマ」ダウンロードページ
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