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印刷2017/09/23 19:27

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[TGS 2017]Daedalicの新作,「State of Mind」と「AER - Memories of Old」をプレイしてみた。同社CEOへのミニインタビューも

 東京ゲームショウ2017では,ドイツのパブリッシャであるDaedalic Entertaimentがブースを出展している。ブースでは開発中のアドベンチャーゲーム「State of Mind」PC/Mac/PS4/Xbox One/Switch)と,まもなく発売されるオープンワールド型探索ゲーム「AER - Memories of Old」PC/Mac/PS4/Xbox One)が試遊できたので,その模様を簡単にレポートしよう。

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2048年,ベルリン。


 「State of Mind」は,2048年のベルリンを舞台としたアドベンチャーゲームだ。ゲーム世界は三人称視点のフル3D画面で構築されており,アナログスティックを使って主人公を操作して世界を旅していく(つまり,いわゆるポイント&クリック型のアドベンチャーゲームとは異なる)。そんな「State of Mind」の大きな特徴としては,3つが挙げられるだろう。

 1つめは,その世界観だ。
 「State of Mind」はディストピアSFに分類される世界観を有しており,科学技術こそ高度に発展しているものの,人類の社会は行き詰まろうとしている。資源の枯渇や人口爆発といった問題に対する解決策としてVR世界への「精神の移住」が進められているが,これも移住と呼ぶよりは脱出と呼んだほうがいいかもしれない。

 ともあれ,この世界では人間の精神をVR世界に完全に「アップロードさせる」ことが可能となっており,すでに多くの人々がVR世界における理想都市で生活している。だが本作の主人公であるRichard Nolanは,VR世界へのアップロードの過程で何らかのトラブルに巻き込まれ,不完全なVR世界と現実世界の双方に存在することになってしまった。守るべき家族を持つNolanは自己の再統一を目指して探索を開始するが,やがてその旅は大いなる冒険となっていく……というのが,「State of Mind」の概要となる。

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 「State of Mind」世界の描写は,ディストピアSFが好きなゲーマーにとっては非常に楽しめるものと言えるだろう。
 ロボット技術やサイバー化技術は現代よりずっと進んでいるし,さまざまな家電も未来的なもの(「食事を印刷する3Dプリンタ」がキッチンに置かれていたりする)だが,開発者が「State of Mindに登場する科学技術の多くは,現状において研究が進んでいる技術。このゲームが表現する2048年のベルリンは,架空のものだけれど,『あり得る未来』だと考えている」と語るとおり,世界の空気には強い説得力がある。

 また,「ロボットが人権を要求する」「軍が人工的な生命体を作ろうとする」など,技術の発展によって新たに発生する,技術と社会の摩擦も重要なテーマとして描かれているという。このあたりもまた,好きな人にはたまらないテーマだ。

干渉可能なオブジェクトに近づくとメニューが開く。ちなみに主人公は目を軽くサイバー化しており,「Examine(調べる)」を選ぶと物体の解説が表示される
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 2つめは,グラフィックスのスタイルだ。
 「State of Mind」のグラフィックスは,意図的にローポリゴンで作られている。古いゲーマーにとっては懐かしさを感じさせるビジュアルだが,解像度そのものは高く設定されており,シャープな印象を受ける画面となっている。

 開発者は,このローポリゴンによる美術表現を「リアリスティック・ローポリ」と呼んでおり,その意図として「最新技術を駆使したCG映像を作ることも可能だったが,最新の技術に頼った絵作りは,数年後には『昔はこれでも凄かったよね』と言われてしまう可能性が高い。何年か後に本作をプレイしたときにも,プレイヤーに『古びた』感覚を与えないために,ローポリゴンを選んだ」と語っている。

人もロボットもローポリ。必然的に,人とロボットの境目の曖昧感も伝わってくる
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 3つめは,ゲームシステムだ。
 「State of Mind」の主人公はNolanだが,プレイヤーは必ずしもNolanだけを操作するわけではない。状況によっては別のキャラクターが同行することがあり,操作キャラを切り替えていくことで,「複数のキャラクターが協力して問題を解決する」という課題も用意されている。これはとりわけ新しいシステムではないが,遊んでいて面白いのは間違いない。

 なお,この手のアドベンチャーゲームでは,なにかと御無体な「謎」が提示されがち(極論を言うと「池にケーキを投げ込んだら池が蒸発しました」的な「謎解き」)で,さらに複数キャラによる協力があるとなると,組み合わせが爆発的に増えてストレスになるのではないかという不安もある。だが開発者いわく「すべての謎はロジカルに設計されており,何をすべきかのヒントは必ず提示されている」とのこと。このあたりの難易度設計にも期待したい。

2人を別々に操作して謎解きすることも
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 「State of Mind」はまだ開発中の段階で,リリースは2018年の第1四半期が見込まれている。プラットフォームとしてはPC,Mac,Linux,PS4,Xbox One,Nintendo Switchが予定されているという(開発者は「Switchでリリースされるゲームの中では,現状で最も大人向けのゲーム」と自負していた)。


鳥になって自由に空を飛ぶ「AER」


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 「AER」は三人称視点のオープンワールド型ゲームで,世界を探索することが目的となる作品だ。デベロッパはスイスのForgotten Keyで,Daedalic Entertainmentはパブリッシャとして協力している。
 本作においてプレイヤーはAukという少女になり,失われてしまった古代の神を蘇らせるために世界を旅する……と言うと,割と普通のゲームに聞こえるが,ここにも3つの大きな特徴がある。

 1つめは,世界が「空に浮いている」という点だ。
 「AER」の世界は,空中に無数の浮島が浮いているという構造になっている。浮島の広さやデザインは当然それぞれに異なり,存在する高度が違うこともある。プレイヤーはほかの島を仰ぎ見ることもあれば,はるか下に見下ろすこともあるというわけだ。

 そのうえで,主人公であるAukは鳥に変身し,自由に空を飛ぶことができる(開発者いわく,Aukが「選ばれた」のは,この能力を持つがゆえだと言う)。鳥に変身したあとも基本的な操作は変わらず,プレイヤーは鳥に変身したAukを操って別の浮島を目指すことになる(つまり,いわゆるファストトラベルではない)。

 ゲーム世界はオープンワールドになっており,プレイヤーは好きな島を選んで,好きなように探索を進めて構わない。島では動物や精霊,あるいは主人公以外の知性を持った存在(人間かどうかは不明)と交流していくことになる。

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 2つめは,主人公が死ぬという概念もなければ,誰か(何か)を殺すという要素も存在しない,純粋に探索と謎解きに特化したゲームであるという点だ。

 Aukは鳥に変身して空を飛べるが,鳥になって飛行している途中に人間の姿に戻って雲海のはるか下に落下しても,「死ぬ」ことはない(結果的に「リスポーン」的な処理になるのはご愛嬌)。また高所から地上に落下した場合も,着地の瞬間に急減速して穏やかに着地するようになっており,落下ダメージでリスポーン地点に送還されるといったことは起きない。
 なお,AERの「謎解き」も,あくまで合理的に解ける範囲のものであり,理不尽な謎はないとのこと。

水面に落ちてもダメージを受けたりしない(そもそもHPゲージがない)
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 3つめは,アートスタイルだ。
 「State of Mind」と似たようなローポリで描かれた世界は,美しく,かつ温かみを感じるものだ。ただし技術的には「State of Mind」で使われているものとは異なり,この2作品がいずれもローポリのアートスタイルを採用しているのは「純粋に偶然」だそうだ。

 「AER」はPC,Mac,Linux,PS4,Xbox One向けに,2017年10月25日に発売される予定だという。

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Daedalic EntertainmentのCEOに聞く


 「State of Mind」と「AER」について,Daedalic EntertainmentのCEOであるCarsten Fichtelmann氏にいろいろと聞くことができたので,合わせてお伝えしよう。

4Gamer:
 「State of Mind」をSwitchでリリースすることに決めた理由を教えてください。

Fichtelmann氏:
 確かに現状,Switchの市場はものすごく大きいというものではありません。ですが我々は,将来的にSwitch市場が世界中でより大きくなることを願っています。また,「State of Mind」は来年の第1四半期までの間にSwitchでリリースされるゲームの中でも,とても際立った個性を持った作品になっているという確信もあります。

今のところ東京ゲームショウ限定公開のSwitch版「State of Mind」
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4Gamer:
 任天堂が提供するプラットフォームにおいては,「サードパーティの作品がなかなかヒットしにくい」という指摘はしばしば耳にします。これについてはどうお考えですか?

Daedalic Entertainment CEOのCarsten Fichtelmann氏
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Fichtelmann氏:
 過去にはそういう側面もあったかもしれませんが,Switchについて言えば,開発も販売も非常にやりやすいという印象です。
 開発においては,「State of Mind」はUnreal Engine 4を使っており,独自のシェーダも使っていますが,とくに不自由を感じることはありません。もちろんUI周りなど,Switch専用に作り込まねばならない部分はありますが,それはどんなプラットフォームでも同じです。
 また販売においても,昔は任天堂のプラットフォームでゲームをリリースする場合,専用のカートリッジなどを生産しないと厳しいものがありました。ですがSwitchにおいては,任天堂は状況を変えようとしています。
 実際,任天堂はライバルとなるプラットフォームをよく研究していると思います。そしてニンテンドーeショップがより大きな成功を収めれば,「ゼルダ」や「マリオ」のためにSwitchを買ったというユーザーが,別のゲームも遊んでみようと思うようになるでしょう。
 願わくばそこで選ばれる「別のゲーム」として,「State of Mind」をダウンロードしていただけると,とても嬉しいですね(笑)。

4Gamer:
 「State of Mind」について,とくにうかがいたいのですが,なぜ舞台としてベルリンを選んだのでしょうか?

Fichtelmann氏:
 いろいろと理由はありますし,物語の核心に関わるのでお話できない部分もありますが(笑),お話できる範囲で言えば,「State of Mind」は分断の物語という側面を有しているからです。「State of Mind」においては,VR世界と現実世界は分断されています。そしてベルリンという街もまた,それほど遠くない過去において,分断されていました。このことは,舞台としてベルリンを選ぶにあたって大きな理由の一つとなっています。

4Gamer:
 「State of Mind」をアドベンチャーゲームとして作ろうと思ったのはなぜでしょうか? テーマ的に考えて,FPSにも,TPSにも,RPGにもできたと感じるのですが。

Daedalic Entertaiment PR MANAGERのSandra Friedrichs氏
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Fichtelmann氏:
 弊社のラインナップにおける多様性の担保,という側面がありますね。
 弊社はこれまで,たくさんのゲームをリリースしてきました。「Tales of Monkey Island」はポイント&クリック型のアドベンチャーゲームですし,「Shadow Tactics」はステルス・ストラテジーとして好評を得ました。「The Pillars of the Earth」のようなビジュアルノベルも多くのユーザーに楽しんでいただいています。
 このようなラインナップのなかで,弊社がこれまで作ってこなかった新しいゲームを提供していきたいと思い,「State of Mind」を作っています。なのでアドベンチャーゲームといっても,弊社がこれまでリリースしているものとは,メカニズムもテイストも違っています。
 これに加えて,一つ「State of Mind」の特徴を言いますと,このゲームはゲームパッドでのプレイに向いているという側面もあります。もちろんPCでプレイされる方でしたらマウスとキーボードで遊ぶこともできるのですが,できればゲームパッドで遊んでみてほしいですね。

4Gamer:
 今,日本のゲーム市場はモバイルが非常に強い状況にあります。「State of Mind」や「AER」をモバイルでリリースするといった計画はありますか?

Fichtelmann氏:
 我々は日本市場を重視していますし,実際のところ,我々がモバイルでもリリースしている「Skyhill」というゲームは,日本で有名な人に実況放送していただけたことで,「このゲームが世界で一番たくさん遊ばれている地域は日本です」という状況になっています。
 ですがモバイルでのリリースということになると,また別の問題が発生します。と言うのも,モバイル市場の売上のうち95%は基本無料ゲームであり,買い切り型のアプリはほとんど売れないからです。「買い切り型はまったくうまくいかない」というわけではないですし,弊社でも成功例はあるのですが,難しいですね。かといって我々としては,作品を「基本無料」で提供したいとも思っていませんし。

4Gamer:
 最後に,4Gamer読者にメッセージをお願いします。

Fichtelmann氏:
 今年の年末には,非常にユニークな体験ができるゲームである「AER」がリリースされます。PCでもPS4でも遊べますので,ぜひ試してみてください。

4Gamer:
 ありがとうございました。

 独特なテイストのグラフィックスと空気感を持つ「AER」と「State of Mind」は,東京ゲームショウ2017では3ホールのC18ブースで試遊できる。日本人(および日本語が堪能なスタッフ)も複数人スタンバイしているということなので,この機会に試遊してみてはいかがだろうか。
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