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印刷2022/03/10 16:00

インタビュー

「シヴィライゼーション」の生みの親,シド・マイヤー氏にインタビュー。今なお前線で活躍を続けるゲーム業界のレジェンドは何を思う?

 欧米では“シミュレーションゲームの父”として知られるゲーム業界の大御所で,「シヴィライゼーション」シリーズの生みの親でもあるシド・マイヤー(Sid Meier)氏に貴重な単独インタビューを行う機会を得た。

Firaxis Gamesを率いるゲーム業界最古参のゲームデザイナーであり,現在もゲーム業界の第一線で活躍し続けるシド・マイヤー氏。2014年,Firaxis Gamesにて筆者撮影
画像集#002のサムネイル/「シヴィライゼーション」の生みの親,シド・マイヤー氏にインタビュー。今なお前線で活躍を続けるゲーム業界のレジェンドは何を思う?
 現在68歳のマイヤー氏については,「シドマイヤーズ シヴィライゼーション」という人気ストラテジーシリーズの看板タイトルにその名を刻んでいることから多くのゲーマーにも認知されており,プログラマー,デザイナー,そしてプロデューサーなど,さまざまな形で40年以上にもわたってゲーム業界の発展に寄与してきたゲームクリエイターだ。
 もともと,1975年にミシガン大学を卒業後にエプソンでキャッシング機のエンジニアとして働き,そこで得たプログラミングのノウハウを使ってゲームを自主制作していたが,ちょうど40年前の1982年にラスベガスに出張した際に,元海軍のパイロットでビジネスマンとして成功していたビル・スティーリー(Bill Stealey)氏と出会ってMicroProseを設立した。このあたりの経緯については,「奥谷海人のAccess Accepted第646回:活動を再開したMicroProseの歴史と現状」関連記事)で紹介している。

シド・マイヤー氏が,盟友ビル・スティーリー氏とともにMicroProseを立ち上げてから,今年で40年となる。1996年にFiraxis Gamesを設立するまで,そしてそれ以降も,さまざまなアイデアを盛り込んだゲームがマイヤー氏を中心としたアメリカ東海岸で生み出されている
画像集#003のサムネイル/「シヴィライゼーション」の生みの親,シド・マイヤー氏にインタビュー。今なお前線で活躍を続けるゲーム業界のレジェンドは何を思う?

 マイヤー氏の名を知らしめたのは,「Spitfire Ace」(1982年),「Solo Flight」(1983年),そして「F-15 Flight Eagle」 といったフライトコンバットシミュレーターゲームだったが,ほかにも潜水艦シミュレーションの「Silent Service」(1985年)や戦闘ヘリを扱った「Gunship」など,幅広いタイプのゲームを手掛け,いつの頃からか“シミュレーションゲームの父”という異名で知られるようになった。
 もちろん,単にさまざまなシミュレーションゲームを開発したというだけでない。例えば「F-15 Strike Eagle」には発射したミサイルの視点に切り替わる,いわゆる“キルカメラ”を搭載されているし,「F-19 Stealth Fighter」(1988年)では当時まだ一般向けに公開されていなかったステルス戦闘機を,可能な限りの資料を集めて具現化している。プログラミングからゲームデザインまで,当時はかなり攻めた作品作りで知られていたのだ。

 さらに1987年,マイヤー氏はMicroProseのそれまでの作風とは全く異なる「Sid Meier's Pirates!」リメイク版が2004年に発売)を発表。カリブ海を舞台に,主人公が船で自由に航行して冒険するゲームだが,オープンワールド型アドベンチャーでありながら,船で戦うストラテジー性やフェンシングで対決するアクション性といった様々なジャンルを詰め込んで,Apple IIやIMB PC,Commodore 64などに向けてリリースされた。
 ちなみにマイヤー氏自身の名をゲームタイトルに冠するというのは,コメディ俳優でMicroProse作品の大ファンであり,「ゲーム業界にもスターが存在して然るべき」と考えていた故ロビン・ウィリアムズさんのアイデアだったという。

 この「Sid Meier's Pirates!」の成功に手ごたえを感じ,広大なマップの中でプレイヤーが意のままに活動するというアイデアを練りこんだのが,今から30年ほど前にリリースされた「シドマイヤーズ シヴィライゼーション」となる。「もう1ターン,もう1ターンだけプレイしてから寝よう」と思いながら徹夜してしまうプレイヤーが続出し,高い中毒性で知られた本作は,eXplore(探索),eXpand(拡張),eXploit(開発),eXterminate(殲滅)という4つの基本工程で多角的にプレイする。いわゆる4Xゲームと呼ばれるストラテジーゲームの基本デザインを実践した最初のゲームである。
 同作の存在により,マイヤー氏は“シミュレーションゲームの父”だけでなく,“ストラテジーゲームの父”とも呼ばれており,その後のストラテジーゲームに大きな影響を与えることになった。

 1993年,MicroProseは名作が多かったにもかかわらず経営難に陥り,「Falcon」シリーズで知られたSpectrum HoloByteの傘下に入る。もっとも,同社の経営も芳しくはなく,1996年,マイヤー氏はオーディオエンジニアのジェフ・ブリッグス(Jeff Briggs)氏および,若きデザイナーのブライアン・レイノルズ(Brian Reynolds)氏とともに退社して,新たにFiraxis Gamesを設立するに至った。レイノルズ氏は2000年に独立したものの,マイヤー氏とブリッグス氏は2005年にTake-Two Interactiveに買収されて2K Gamesのゲームブランドとなって以降も,ずっとFiraxis Gamesの経営と開発に携わっている。

メリーランド州スパークスにあるFiraxis Gamesのオフィス
画像集#004のサムネイル/「シヴィライゼーション」の生みの親,シド・マイヤー氏にインタビュー。今なお前線で活躍を続けるゲーム業界のレジェンドは何を思う?

 マイヤー氏が,何を考えてゲーム作りをしているのかについては,ゲーム開発者向け会議の基調講演を行っているので,そのレポートをお読みいただくのが早いだろう。

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 シド・マイヤー(Sid Meier)氏といえば,1980年代前半より,数々の名作ゲームを手がけてきた,業界の最古参にして現役ゲーム開発者の一人である。今回のGDCでは,そのマイヤー氏が「ゲームデザインの心理学」と題した基調講演を行った。多数の聴衆に対し,「シミュレーションゲームの父」が語った内容をお届けしよう。

[2010/03/13 19:06]

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 業界のリーダーによる基調講演がなくなったGDC 2012ではあるが,誰もが認める実力者の一人であるFiraxis Gamesのシド・マイヤー氏がセッションを行い,自らのデザイン哲学について熱弁を振るった。過去のGDCで発言した「デザインとは,興味深い選択の連続」という言葉が,インターネットを通じて語り継がれているようだが,マイヤー氏自身の真意はどこにあるのだろうか。

[2012/03/08 17:14]

 また,2014年には「Sid Meier’s Civilization: Beyond Earth」の開発中に,Firaxis Gamesのスタジオを訪問しているので,そちらの記事も参考になるはずだ。今回のオンラインインタビューで筆者に与えられたのは30分間だっただめ,じっくり話をするというわけにはいかなかったが,ここ最近の“レジェンド”が何をしているのかよくわかるだろう。

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 海外では2014年10月24日に発売されるシミュレーションゲーム最新作「Sid Meier’s Civilization: Beyond Earth」。このたび,開発を担当するFiraxis Gamesにてスタジオツアーが開催され,同作のクリエイター陣に話を聞く機会を得た。開発チームの意気込みや現場の内情なども垣間見えるインタビューをお届けしよう。

[2014/07/24 13:39]



シド・マイヤー氏インタビュー

ゲームデザインにとっては最初の15分が重要なように,

最後の15分も重要です


4Gamer:
 本日はよろしくお願いします。ゲーム業界でのキャリアをスタートさせてから40周年,おめでとうございます。今と昔,ゲーム業界の印象はどのように違いますか?

マイヤー氏は,ゲームファンばかりでなく,ゲーム開発者や業界入りを志望する人たちにとっても,役に立つ経験談をゲーム開発者会議などで語る機会も多い,気さくな人物だ
画像集#006のサムネイル/「シヴィライゼーション」の生みの親,シド・マイヤー氏にインタビュー。今なお前線で活躍を続けるゲーム業界のレジェンドは何を思う?
シド・マイヤー氏:(以下,マイヤー氏)
 あまりにも違い過ぎてどこから話したらいいのかよくわからないけど,ずいぶんと違うことは確かですね。昔は,まだゲーム業界というものさえなくて,日中の仕事をキープしたまま,夕方や週末にゲームを作っていたという感じです。MicroProseを設立したあとも,最初の数作は自宅でマニュアルをプリントアウトして袋に詰めるところまで自分でやってましたからね。最初にMicroProseブランドとして全米で流通されたゲームは「Solo Flight」だったと思います。その頃になって,ようやくゲーム作りに専念したような感じで,当時は今のゲーム開発者ほどプレッシャーはなかったかも知れません。

4Gamer:
 MicroProseがスタートしたばかりの頃は,1年に5作くらいリリースされていましたね。

マイヤー氏:
 そうですね。最初は年間5作くらい作っていて,しばらくすると2作,そして1年に1作がやっとというようにペースも落ちていきました。その理由はメモリーですね。当初のゲームに対応していたAtari 8-bitシリーズは使えるメモリが24KBくらいしかなかったので,しばらく開発しているといっぱいになって,その時点でもう何もできなくなってしまって終わりって感じで。あまりクオリティなどは意識していませんでした。
 ゲーム開発の前例やお手本になる参考書のようなものがなかった時代ですから,私自身ゲームを開発しながら学んでいるような感覚で,徐々に友人に声をかけて仲間を増やしました。私が作ったAtari版を,他の人がApple IIやCommodore 64向けに移植して,新しいプラットフォームが出てくると,その人材を増やしていくわけです。ゲーム市場が大きくなるにつれて,我々も大きくなっていく感じで,今から思えば,その環境は非常にリラックスして心地良かったです。

4Gamer:
 その環境の中で,1987年に「Sid Meier’s Pirates!」をリリースされました。

マイヤー氏:
 大きな起点になったゲームであり,その後は「Red Storm Rising」(1988年)や「F-19 Stealth Fighter」「F-15 Strike Eagle II」(1989年),そして「Sid Meier’s Railroad Tycoon」(1990年)や「Covert Action」(1990年)など,3年ほどの間に次々と面白い作品を手掛けることになりました。
 ゲーム開発者として非常にクリエイティブな時期だったと思います。出回り始めたIBM PCの扱いにも我々はずいぶんと慣れ,ハードディスクドライブに記録し,C言語を使うようになり,ゲーム開発が次のレベルに達し始めていたのです。

4Gamer:
 なるほど。そうやって「シドマイヤーズ シヴィライゼーション」が誕生する下地ができていくわけですが,すでに販売されていたAvalon Hillというボードゲームメーカーの「Civilization」とは関係なかったとか。

マイヤー氏:
 そうなんです。そんな名前のボードゲームがあるってことを知らなかったんです。Avalon Hillについては,同じメリーランド州のバルチモアに会社があって,それ以前にも一緒に仕事をしたことはあったのです。当時のボードゲームのデザイナーは,1988年にうちに来て「Sid Meier’s Railroad Tycoon」を共同で手掛けたブルース・シェリー(Bruce Shelly)のように,台頭してきたゲーム市場に魅力を感じた人も多かったようで,我々にとっても彼らのデザイン知識は大いに役立ちました。

4Gamer:
 「シドマイヤーズ シヴィライゼーション」は,マイヤーさんにとっては難しいプロジェクトでしたか?

マイヤー氏:
 難しいと言いますか……,今までとは違うもの,野心的なものという心持ちでしたね。ゲームを企画するにあたって影響を受けたのは,「Empire」という1977年にリリースされた古い“ウォーゲーム”であり,1989年にリリースされて話題になっていた「SimCity」だったんです。
 当初は,建物が成長していくように,町の1つ1つが大きくなって複数の都市になり,それが国家を成長させていくというようなリアルタイム要素があったのですが,どうも面白いと思えるゲームにならなかった。だから,そのプロトタイプは1度保留にして,「Covert Action」を先に作ったんです。それでまた,プロジェクトに手を付け始めて,プロトタイプを作り直した際にターンベースにしたら手応えを感じたんです。そこから,「テクノロジーツリー」という要素を生み出したり,他のリーダーを登場させて外交を行ったり,七不思議を建設できるようにしたり,経済や交易のシステムを考案したりとさまざまなゲームシステムを加えていきました。
 若い頃に「Empire」をプレイした際,「これで自分の周囲が見えない世界のほうが面白くなったんじゃないか」というアイデアが浮かんだことがあったのを思い出して,それがシヴィライゼーションで“フォグ・オブ・ウォー”と呼ばれるシステムを考えました。特に航海しているときのワクワク感が実現できたのはよかったですね。すべての要素がうまくマッチしていった感じです。

今の水準から見れば,大したことがないようなグラフィックスではあるものの,4Xゲームと呼ばれるストラテジージャンルにおけるゲームデザインの基礎を実現し,テクノロジーツリーやフォッグ・オブ・ウォーといった,今でも多くのゲームで使われる要素を生み出した
画像集#007のサムネイル/「シヴィライゼーション」の生みの親,シド・マイヤー氏にインタビュー。今なお前線で活躍を続けるゲーム業界のレジェンドは何を思う?

4Gamer:
 マイヤーさんは,以前「ゲームは最初の15分で,そのゲームの面白さを伝えなければならない」とおっしゃっていましたね。

マイヤー氏:
 モバイルゲームが出てきてから,さらにゲーマーたちは気が短くなっているかもしれません。今では1分かな(笑)。(シヴィライゼーションの)PC版に関して言えば,ゲーム開始時点の楽しさは非常によくできていると思います。ユニットを作って探索させ,新しい資源を見つけてテクノロジーを開発し,最初にあった文明と外交交渉しては近付いてきた蛮族と戦うという,序盤の流れですね。
 今も昔も,ゲーム開発においては「そのゲームをプレイすれば楽しい時を過ごせる」ということを,端的に伝えられるようにデザインしなければなりません。プレイヤーの時間を,我々のゲームに費やしてもらうわけですからね。もちろん,ゲームデザインにとっては最初の15分が重要なように,最後の15分も重要です。最後の15分に差し掛かったころでいったんゲームを止めてしまうのであれば,プレイヤーの気をひくのに失敗していると感じます。

4Gamer:
 現在,ストラテジーゲームジャンルにおいても,定期的に新しいコンテンツをリリースするといったライブゲーム化が一般的になっていますよね。

マイヤー氏:
 そうですね。ゲーム市場もずいぶんと大きくなり,遊べるゲームの選択肢も増えているので,拡張パックやDLCはファンをつなぎ止める手法として発展してきました。数か月ごとに新しいコンテンツを追加して,ちょっと飽き始めていたファンにアピールしたり,マーケットプレイスでセールが行われることで新しいプレイヤーを獲得したり。昔のように新作を出して終わりというのではなく,ゲームが常に新鮮なものであることが要求されるようになりました。ゲームが楽しいからプレイし続けてもらうだけでなく,プレイし続けることの楽しさを高めていく方向性ですね。

GDC 2017におけるシド・マイヤー氏とブルース・シェリー氏。シェリー氏はその後テキサスでEnsemble Studiosに参加して,シヴィライゼーションの開発で得たノウハウを生かしたRTS「Age of Empires」(1997年)を生み出す
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シヴィライゼーションがファンに愛されてきた理由

他の人に自分の作品を委ねても,O.K.なんだということを学びました


4Gamer:
 その後のシリーズ作品では,「シドマイヤーズ シヴィライゼーション II」(1996年)のブライアン・レイノルズ氏,「シドマイヤーズ シヴィライゼーション III」(2001年)のジェフ・ブリッグス氏にリードデザイナーが引き継がれています。さらに「シドマイヤーズ シヴィライゼーション IV」(2005年)のソーレン・ジョンソン氏,「シドマイヤーズ シヴィライゼーション V」(2010年)のジョン・シェイファー氏も,ストラテジージャンルの第一線で活躍してますね。

マイヤー氏:
 現行の「シドマイヤーズ シヴィライゼーション VI」PC / PS4 / Xbox One / Nintendo Switch)のリードデザイナーをしているエド・ビーチ(Ed Beach)や「Sid Meier's Civilization: Beyond Earth」(2014年)を開発したウィル・ミラー(Will Miller)を含め,チームには優れた才能を持つ開発者たちがいます。彼らと出会い,参加してもらえたことを幸運に感じます。
 特にシヴィライゼーションは,そのゲームについてコアゲーマーたちと同等の深い知識を持ち,根本的なゲームメカニクスや何が楽しいかを理解していないと後を継げないシリーズです。彼らのクリエイティブなエネルギーに頼って,新しい息吹を吹き込んだことで,ここまで多くのファンに愛されるシリーズになったのだと思っています。
 私自身は,2008年に「シヴィライゼーション レボリューション」PS3 / Xbox 360 / ニンテンドーDS)を手掛けましたが,コンシューマやモバイル向けを念頭に置いてデザインし直すという意義がありました。本編を私がやり直すとなると,やはり第1作目が完成形と見てしまって悩んでしまうでしょうね。

4Gamer:
 (Railroad Tycoonの)ブルース・シェリーさんからは,「マイヤーさんの横でゲーム開発のイロハを学んだ,まるで大学のような場所だった」と聞いたことがありますが,プロジェクトをリードする人材は,どのように選んでいるのですか?

マイヤー氏:
 多くの場合,彼らはその前のプロジェクトでアシスタントを務めており,すでにシヴィライゼーションについて熟知し,彼ら自身で新しいアイデアを温めていたり,その作品に組み込む時間的な余裕がなかったゲームシステムを次の作品に活かしたいと考えていたりします。しっかりと自分の役割をこなしたのだから,次はリードデザイナーとして羽ばたいてもらおうと考えて,昇格させてみるわけです。

4Gamer:
 最もお気に入りのものはなんでしょう。

マイヤー氏:
 お気に入りは,やっぱり自分が手掛けた作品ですね(笑)。それ以外だと,どれも素晴らしい作品であるのですが,やはり「シヴィライゼーション II」のブライアンには感謝しています。自分の作品を別の人に任せるというのは,それまでの私が経験したことのないプロセスでしたが,ゲームに新しい深みを与え,私自身も楽しく開発サポートを行うことができました。
 しかもブライアンはMODをサポートしてゲーマーが手を加えることを許可してしまったんですからね。でも,それがあったからこそ,多くのファンに長く愛されるシリーズに成長したのでしょうし,他の人に自分の作品を委ねてもO.K.なんだということを私も学びました。

1996年にリリースされた「シドマイヤーズ シヴィライゼーション II」も,ゲーム史上の傑作に数えられる作品の1つだ
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4Gamer:
 開発のアシスタントというと,ご子息のライアンさんがゲーム業界入りしていますね。「Sid Meier's Civilization: Beyond Earth」の頃は,ゲームテスターだったとお聞きしました。
 
マイヤー氏:
 ええ。その後は大学を卒業して,Blizzard EntertainmentやGoogleで働いていたんですが,4年ほど前に戻ってきて,今はFiraxis Gamesに在籍し,私の良きパートナーになってくれています。父親である私が言うのもなんですが,彼も良い才能を持つプログラマーだと思いますよ。

4Gamer:
 ご子息が業界入りすることには躊躇しましたか? それとも大歓迎でしたか?
 
マイヤー氏:
 私が強制したりはしませんでした。MicroProseの時代からゲーム開発現場に出入りしていたので,ゲーム業界に入るのは彼にとっても自然なことだったのかもしれません。大学を卒業する前は,プログラミングの道に進むか,彼が情熱を注いでいたシェフの道を選ぶかに悩んでおり,それならゲーム業界のほうが安定しているという助言はしましたけどね(笑)。

4Gamer:
 これまでのシヴィライゼーションシリーズは,だいたい5年くらいの間隔で新作がリリースされてきましたが,「シヴィライゼーション VI」の発売からは6年目に入っています。新作の予定はあるのでしょうか。

マイヤー氏:
 それを,私の口からここで話すことはできません(笑)。言えることは,クオリティの高い映像やサウンドを作って,著名な俳優にナレーションをやってもらっているところ,ってことですかね。まぁ,“何か”を近々発表するってことですが(笑)。

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4Gamer:
 ちょっと違う角度から質問しますが,マイヤーさんご自身は,ここのところ毎日をどのようにして過ごされているのでしょう?

マイヤー氏:
 私自身は,新しいアイデアのためのプロトタイプ作りに集中しています。それをやっているのが一番楽しいですね。例えば,かなり昔に恐竜をテーマにしたゲームのアイデアを温めていたのですが,それはまだ実現していません。この年になっても,まだ達成できていないことを実現してみたいと感じます。新しいアイデアを思いつくたびに,数か月をかけてプロトタイプを作って,面白い戦略性があるかどうかといったことを確認しています。それが今,私がやっていることですね。

4Gamer:
 そういえば,1997年にリリースされた「Sid Meier's Gettysburg!」も,そうして生み出されたプロジェクトだったとか。

マイヤー氏:
 ええ。アメリカの歴史や市民戦争のような題材は個人的にも興味を引くところで,それを楽しいゲームとして表現できるかどうかを突き詰めたプロジェクトでした。グローバルにアピールできるようなテーマではありませんが,私のアイデアを優先したことで実現しました。ただ,私個人のゲームとしてもMetacriticで高い評価を受けているのは,ここで念を押させてくださいな(笑)。

マイヤー氏が,オリジナル作品で生み出したテクノロジーツリー。今ではRPGやアクションゲームなど,さまざまなゲームジャンルに応用されている
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4Gamer:
 フライトコンバットシムの新作にも期待したいところなのですが,その予定はあるのでしょうか。

マイヤー氏:
 フライトコンバットシムというジャンルについては,もうやり尽くした感じがあります。何か新しいアイデアを思いつけばいいんですけど,ここしばらくは残念ながら私の優先事項に入っていません。

4Gamer:
 ゲーム業界は,クラウド,VR,メタバースなど,さまざまな方向に広がって進化していますが,新しいテクノロジーでマイヤーさんが最も気になっているものはありますか。

マイヤー氏:
 ゲーム業界は常に変化してきました。CD-ROMが登場してそれまでは考えられないほどの容量を持ったゲームが実現したり,インターネットで他のプレイヤーとつながったり,モバイルデバイスでどこでもカジュアルにゲームを楽しんだりと,ほんの数十年でゲームの在り方を大きく変える出来事を体験してきました。そうした新しいテクノロジーがエンターテイメントに昇華され,ゲーム市場は常にエキサイティングなものになってきたのだと思います。その意味では,私はすべてのテクノロジーにすごく興味がありますし,ゲームデザインや遊び方にどのような変革をもたらすのかには注目しています。

4Gamer:
 それでは最後に,日本のファンにメッセージをお願いします。

マイヤー氏:
 私たちのゲームをプレイしていただいていることに,“ありがとう”と言いたいです。もしゲームデザイナーの道に進みたいとお考えでしたら,私が若かった頃とはくらべものにならないほど,無料で使える素晴らしいツールや,多数のゲームデザイナーたちが生み出してきたアイデアが溢れていますから,私が今もプロトタイプ作りを止めないように,小さなゲームでも良いのでどんどん作ってほしいと思います。

4Gamer:
 ありがとうございました。マイヤー氏のライフワークになりつつある恐竜ゲームを,いつかプレイできることに期待しています!

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