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印刷2017/03/04 00:00

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[GDC 2017]「シドマイヤーズ シヴィライゼーション VI」のリードデザイナーが語る,すでに成功している作品を改良するためのアイデアとは?

Civ6のリードデザイナー,エド・ビーチ氏
画像集 No.001のサムネイル画像 / [GDC 2017]「シドマイヤーズ シヴィライゼーション VI」のリードデザイナーが語る,すでに成功している作品を改良するためのアイデアとは?
 「シドマイヤーズ シヴィライゼーション VI」(以下,Civ6)でリードデザイナーを担当したFiraxis Gamesのエド・ビーチ(Ed Beach)氏が,GDC 2017において「プレッシャーはまったくなし: Civilization VIというゲームシリーズの成功を受け継いで」(Absolutely No Pressure: Continuing a Successful Game Series with Civilization VI)という講演を行い,同作のデザイン過程を語った。

 Civファンならばおなじみの名前であろうビーチ氏は,「シヴィライゼーション V」(以下,Civ5)の開発に携わり,その拡張パックとなった「Gods & Kings」および「Brave New World」でもリードデザイナーとして活躍してきた人物だ。
 Civ5がリリースされたのは2010年のことだが,そうした大型拡張パックの導入やSteam Workshopに連動したファンメイドのMODによって延命し,これまでに数千時間,さらには数万時間も費やして遊んでいるプレイヤーも少なくない。実際,Civ5はCiv6がリリースされる2016年10月の時点でも,「Dota 2」や「カウンターストライク:グローバルオフェンシブ」に続く常時接続プレイヤー数を記録しているなど,発売から6年経ってもその人気は衰えていなかった。

新作がリリースされる直前でも,Civ5は多くの人にプレイされていた。「プレッシャーはまったくなし」というセッションタイトルとは裏腹に,ビーチ氏は相当なプレッシャーの元で新作を開発してきたようだ。何せ,Facebookのマーク・ザッカーバーグ氏さえ,E3 2016のニュースに興奮の色を隠しきれず,世界にメッセージを配信していたほどなのだ
画像集 No.004のサムネイル画像 / [GDC 2017]「シドマイヤーズ シヴィライゼーション VI」のリードデザイナーが語る,すでに成功している作品を改良するためのアイデアとは? 画像集 No.005のサムネイル画像 / [GDC 2017]「シドマイヤーズ シヴィライゼーション VI」のリードデザイナーが語る,すでに成功している作品を改良するためのアイデアとは?

 そんな息の長いゲームに,そもそも新作が必要だったのだろうか。ビーチ氏は,「Civ5の最大の問題点は,1つの戦略でどんな状況でも勝ててしまうこと」だという。その戦略とは,「建設する都市は4つ。国立大学の建設を急ぐ。合理主義を急ぐ。決して自由思想は選ばない」といった科学重視のものだ。

 「Gods & Kings」ではユニットのヘルスを増やすことで,「10体の弓兵でタンクを撃破する」という,長らくCivシリーズの問題点とされてきたコンバットを修正したり,宗教や近接海戦ユニットを導入したりといった改良も行われた。
 「Brave New World」においては,観光や国連の追加によって勝利条件を意義深いものにするとと共に,思想主義というゲーム後半の選択肢を増やすといった,さまざまな英断を行ってきたビーチ氏だったが,上述した絶対的な攻略法をなくすには,細かい部分で改良を積み重ねていく必要があったわけだ。ビーチ氏によると,主な改良点は以下のような5つに集約される。

○ タイルの意味を考え直す
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 Civシリーズの大きな特徴が六角タイル(ヘクス)であるが,Civ5では川沿いに農業地を立て,それ以外の場所には街を立て,そして特産品を生み出し,丘陵地を鉱山にするという最適化パターンがあり,少し味気ないものになっていた。
 そこでCiv6では,「施設のスタックを止める」というコンセプトのもと,商業や軍事,宗教施設はもちろんのこと,遺産を建設を「1つにつき1タイル」に制限したことで,プレイヤーがすべての遺産を占有してしまうことは難しくなった。結果,プレイヤーの選択の幅を広げることに成功したのだ。

○テクノロジーツリーを改良する
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 ヘクスタイルと同じく本作ではおなじみのテクノロジーツリーだが,これもビーチ氏らの懸念材料になっていた。これまでと同じ仕様でいくとなると,例えば海に繰り出す予定がなくても「航海術」を研究しなければ,その先のテクノロジーを研究できないといったような展開が生じるからだ。そこで考案されたのが,「海岸線に到達した場合に閃きを得て,航海という技術の開発が行われる」というもの。テスト段階では,「航海」のほか20種類ほどの初期テクノロジーに“ブースト”というコンセプトを導入して,3〜4か月ほどの綿密なテストが行われたという。

○社会制度の自由な変更
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 「Brave New World」で導入された思想主義を始め,Civ5の社会制度では,一度決めたら十分なボーナスを得るまで変更することはまずない。しかし,6000年を超える歴史の流れの中で,さまざまな要因で一時的に社会制度が変化してしまうということは実際に起こり得るし,旧来のCivシリーズでも,わりと自由に変更できていた。そのルーツに戻るべく,社会制度にも大きな変更が加えられたのだが,当初は1つ1つの制度にもブーストを盛り込むなど複雑化しており,この部分では相当な試行錯誤があったらしい。

○ユニットの混雑
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 Civ5では,複数のユニットをスタックさせるという行為が禁止され,戦略性は大幅にアップしたものの,半島のような狭いマップではユニットが混雑してしまい,攻略するのが難しくなっていた。そこでCiv6では軍団制が導入されたり,サポートユニットという新要素が加わったわけだ。

○“地形チート”の解消
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 Civ5では,最後の移動ポイントを使って丘陵や森にユニットを動かし,防衛力を高めるという行為が一般的に行われていた。筆者は,それはそれで戦略の1つとして捉えていたが,ビーチ氏らデザインチームは,それを問題視していたらしく,「特定のユニットがどこまで移動できるのか」をより明確に理解できるよう,その移動範囲があらかじめ表示されるように変更された。

 最後に,ビーチ氏はCivシリーズを「マップにより突き動かされていくゲームシステム」と定義し,プレイのたびにマップが自動生成され,その探索や攻略にプレイヤーが魅力を感じることで,26年という長い歴史を誇るフランチャイズになったと解説した。「なぜ,聞いたこともないようなマイナーな歴史人物をリーダーに選ぶのか?」といった気になる点も少なくないが,Civ5と同じく,Metacriticでも高い評価水準をキープしており,シリーズの名に恥じない成功を収めているのは間違いない。

年季の入ったベテランプレイヤーの多いCivシリーズだけに,こうした本格的なポインターまでを利用して,ゲームの問題点を指摘するファンも少なくない。ビーチ氏いわく,Firaxis Gamesはフォーラムなどでのプレイヤーの意見はしっかりと見聞しているとのこと
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 「オーストラリア文明 & シナリオパック」など,コンテンツの追加も定期的に行われているだけに,「あと1ターンだけ,もう1ターンだけプレイして終わろう……」と中毒者を輩出する本作の成長と進化を,今後も楽しみにしたい。

「シドマイヤーズ シヴィライゼーション VI」公式サイト

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