HTCがTGS 2016の出展内容を明らかに。MSIのバックパック型PC「VR One」が初披露された説明会レポート

TGS 2016におけるHTCブースのイメージ画像。ルームスケールのコンテンツを体験できるように，1コマ分のスペースが大きい

　2016年9月12日，HTCは，9月15日に開幕する東京ゲームショウ2016（以下，TGS 2016）に，同社製VR対応型ヘッドマウントディスプレイ（以下，HMD）「Vive」の試遊ブースを出展すると発表した。同日，HTCが東京都内で開催した記者説明会では，試遊ブースと出展コンテンツの概要が，同社とパートナー企業によって発表されている。
　そこで本稿では，MSIがViveブースに出展予定というVR用バックパック型PC「VR One」（関連記事）の話題を中心に，記者説明会の概要をレポートしたい。

日本初公開のバックパック型PC「VR One」量産モデルをチェック

COMPUTEX TAIPEI 2016時点でのバックパック型PC試作機

　2016年5月末に開かれたCOMPUTEX TAIPEI 2016で，MSIは，VR Oneの原型ともいえるバックパック型PCの試作機を出展したことがある（関連記事）。試作機は，ハードケースタイプのバックパックかランドセルのような筐体内に，ノートPC向け「GeForce GTX 980」を備えたPC部分とバッテリーを搭載したもので，スペックからすればかなりコンパクトなシステムではあったが，いかにも試作品といった見た目をしていた。

　一方，今回，日本で初公開となったVR Oneの量産型モデルは，まったく異なった外見をしている。まず，ボディ全体は大幅に薄くなり，どことなく「モビルスーツのランドセル」を思い起こさせるような外観となった。サイズの具体的な数値は公表されていないが，重量は専用バッテリー込みで約3.6kgと軽く，説明を担当したMSIのDerek Chen氏は，「通学用のバックパック並み」と表現していた。

ステージ上で掲げられたVR One

　実のところMSIは，COMPUTEX TAIPEI 2016で試作機を披露する以前から，量産モデルとなった新しい筐体の開発に取り組んでいたのだという。試作機は，同社内部でも「量産品とするには十分ではない」という意見があったため，バックパック型PCとしてより優れた製品を実現すべく，すべてを捨てて一から作り直すことで，今回のVR Oneを完成させたということだ。

約3.6kgという重量は，背中に背負うアイテムとしてはかなり軽い

　VR Oneで大きな特徴といえるのが，PCの動作中でも交換可能な，ホットスワップ対応の専用バッテリーパックを2個装備していることである。動作中に片方のバッテリー残量がなくなったとしても，PCをシャットダウンすることなくバッテリーパックを外して，空になったバッテリーを充電したり，満充電された予備のバッテリーパック（別売り）と交換したりできるのだ。
　バッテリーパック2個合わせて，バッテリー駆動時間は約90分とのこと。イベントやパーティーなどで長時間使うような場合，このバッテリー交換ギミックはかなり役立つだろう。

　ただ，リリースやステージの説明では「ホットスワップ対応」と言っていたものの，現場で4Gamerが確認したところ，「ホットスワップには対応せず，バッテリー交換にはWindowsのシャットダウンが必要」という，相反する説明も受けた。どちらの説明が正しいのか，あるいは単に，現場にあった試作機ではできないという話なのか正直判断しかねる状況で，この点については後日確認したい。

銃の弾倉を思わせるというバッテリーパックは，VR Oneの下側左右に1個ずつ取り付けられている（左）。中央で縦方向に2列光っているLEDは，バッテリー残量を示すライトで，PC画面が見えなくても，外部からおおよその残量を把握できる仕組みだ。右写真はバッテリーパックを外した状態

　PC本体部分と肩にかけるストラップのついた背面パネル部分は分離可能で，必要であれば分離して，据え置き型PCとして使うこともできるという。そのうえ，PC本体部分と背面パネル部分の間には，2cmほどの隙間が空いているので，PCの熱が背中に直接伝わりにくい構造になっているわけだ。

背面パネル部分は，複雑な形状で中抜きされており，強度を確保しつつ軽量化を実現しているようだ（左）。PC本体と背面パネルの間には，右写真のとおり数cmの隙間がある

　PC部分は，GPUにノートPC用の「GeForce GTX 1070」を，CPUには「Core i7-6820HK」を採用しており，CPUはクロックアップ動作も可能になっているという。
　残念ながら内部は見せてもらえなかったのだが，背面側の赤いメッシュ部分が吸気孔となっており，2基の空冷ファンで取り込んだ空気は，本体側面の大きなヒートシンクを経由して左右へ排出する構造になっているそうだ。

VR One上部の赤いメッシュ部分は吸気孔になっており，空冷ファンが透けて見える（左）。排気は左右側面にある大型の排気孔から放出するので，背負った人に直接熱風がかからない（右）

　VR Oneは，MSIとHTCが緊密に協力して開発されたPCであるため，ViveでのVR体験を改善するための工夫がいくつも盛り込まれている。たとえば，通常，Viveを利用するときには，PCに「Link box」というインタフェースユニットを接続して，HMDはこのLink boxに接続する仕組みになっていた，それがVR OneでViveを使う場合は不要になるという。
　加えて，VR Oneの製品ボックスには，PCとViveのHMDを接続するための短い専用ケーブルも同梱されているそうだ。VR One自体はVive専用PCというわけではないので，おそらく専用ケーブルの側に，Link boxを不要にする仕組みが組み込まれているのではないだろうか。

VR Oneの上側面にあるI/Oインタフェース部（左）。左からMini DisplayPort出力，Thunderbolt 3（USB Type-C）×1，USB 3.0 Type-A×4，Viveへの電源供給コネクタ，ヘッドフォン出力，マイク入力という配置だ。右写真はVive接続用ケーブル類をつないだ状態

　さて，このVR One，VR体験施設やアミューズメント施設のようなアトラクションへ売る製品なのかと思ったが，なんと国内においては，コンシューマーをターゲットに販売を行うプランであるという。発売時期は2016年11月の予定で，価格はまだ確定していないが，およそ30万円台後半になりそうだという話であった。
　ケーブルの制約から解放されるという利点を考えれば，PC用VR HMDを所有する個人にとっても有用な製品ではあるのだが，はたして，これを買いたいという個人がどれほど国内にいるのか，他人事ながらちょっと心配になってしまう。

　なお，MSIは同時に，ノートPC用「GeForce GTX 1060」搭載のゲーマー向けノートPC「GS63VR Stealth Pro」（以下，GS63VR）または「GE62VR Apache Pro」（以下，GE62VR）と，Viveをセットにしたバンドルモデル2シリーズ計4製品を10月上旬に発売することも発表している。PC自体は，2016年8月に発表された同名のノートPCと変わらない。
　バンドルモデルの取り扱いは，アプライド，Amazon.co.jp，パソコンショップ アーク，PCワンズ，ビックカメラグループで行われるとのことだ。メーカー想定売価は，GS62VRのバンドルモデル「GS63VR 6RF Stealth Pro-VIVE」が34万5000円前後から，GE62VRのバンドルモデル「GE62VR 6RF Apache Pro-VIVE」が33万5000円前後からとなっている。

Viveブースの見どころをパートナー各社がアピール

　VR Oneの話だけでも盛りだくさんになってしまったが，今回の発表会では，HTCと共にViveブースに出展するパートナー企業各社の代表も登壇して，TGS 2016における展示の見どころを説明した。

　まず，AMDと組んで出展する講談社は，アイドル育成ゲーム「Hop Step Sing!」のVive対応版を出展する予定だ。ゲーム内では，Viveのワンド型コントローラをペンライトに見立てて振ることで，ステージで歌い踊るアイドルを応援できるという。
　なお，このゲームを動かすデモ用PCは，AMDのVRコンテンツ開発用途向けグラフィックスカードである「Radeon Pro Duo」を使用するそうだ。

Vive対応のアイドル育成ゲーム「Hop Step Sing!」

　KDDIは，VRを利用した次世代コミュニケーションの一例として，グランディングと開発中という“次世代VRマルチコミュニケーション”ソフト「スペースチャンネル5 VR ウキウキビューイングショー」を出展する予定である。
　ドリームキャスト向けダンスゲームとして名高い「スペースチャンネル5」のキャラクターや世界観を生かして，3人のプレイヤー（※実際のデモでは，1人は進行役のスタッフになる）が同時に1つのVR空間に入り込んで，ゲームを楽しめるものになるらしい。

体験システムの構成図（左）。3人のプレイヤーが1つのサーバーに接続して，一緒にVR空間でコンテンツを楽しむ仕組みだ。一般公開日のデモ実施時間は10時から13時までと短いので，体験したい人は早めに足を運ぼう（右）

　さらに，スクウェア・エニックスは，グリーが開発中であるVive対応ゲーム「乖離性ミリオンアーサーVR」のデモ版を，Viveブースに出展する予定だ（関連記事）。
　VR空間上でボスキャラクターとカードバトルで戦ったり，キャラクターとの簡単なコミュニケーションを楽しむものになるという。

バトル画面のイメージ画像

　そのほかにも，ドスパラとサードウェーブデジノスは，ユーザーサポート重視のゲーマー向けPC「GALLERIA Gamemaster」をViveのデモ用PCとして出展するとのことだ。

　TGS 2016のViveブースは，かなりの人気を呼びそうなので，ぜひ体験してみたいデモがあるという人は，なるべく早めに足を運ぶことをお勧めしよう。

HTCのVive公式Webサイト