プレイレポート
日本一ソフトウェアのダンジョンRPG「ルフランの地下迷宮と魔女ノ旅団」プレイレポート。斬新な設定と,手触りのいいゲームシステムが好印象
本作は,魔女ドロニアとその弟子ルカ,そして彼女らが扱う書物「妖路歴程(ようろれきてい)」による迷宮探索物語を描くダンジョンRPGで,魔女や魔法が登場するファンタジーの世界観を持ちながらも,斬新な設定やシステムを特徴としている。ディレクターに「魔女と百騎兵」を手掛けた泉 達也氏,キャラクターデザインに原田たけひと氏,サウンドに佐藤天平氏と,同社おなじみのクリエイターが開発に携わっていることにも,注目しているファンは多いのではないだろうか。
そんな本作のプレイレポートを,さっそくお届けしていこう。
ゲームの主役となるのは作り物の「人形兵」と,それを率いる書物「妖路歴程」
物語の舞台となるのはタイトルにもなっている「ルフラン」の街。ここは「呪いの瘴気」で満ちていて,入ることさえままならない地下迷宮があり,この探索に魔女ドロニアと弟子のルカが名乗りを上げることになる。しかしゲームでは,彼女が迷宮に直接乗り込むわけではない。本作の主人公的な存在である彼女だが,その役割はあくまで迷宮探索の指揮を執ることであり,実際に迷宮探索を行うのはプレイヤー,つまり冒頭で述べた書物「妖路歴程」(以下,レキテイ)なのである。
レキテイとなったプレイヤーは,魔女によって作り出された「人形兵」達とともに迷宮へと潜入し,探索や戦闘を行う。その結果がレキテイに書き込まれ,戻ってきたときにドロニアがそれを読んで結果を知る,というわけである。
影絵芝居を思わせるオープニングは味がある。佐藤天平氏によるサウンドも物語を盛り上げている |
プロローグでは,プレイヤーの意識が妖路歴程に宿る演出を,チュートリアルとともに体験する |
レキテイが連れている人形兵達は,ダンジョンRPGにおける実質のプレイヤーキャラクターと言える。ただし,一般的なダンジョンRPGのように自由に作れるわけではなく,いくつかの材料が必要だ。その一部は迷宮内で見つけるもので,ゲームを進めることでキャラクターが増えていく仕組みとなっている。
人形兵は「人形素体」と「魂の小瓶」を1つずつ消費して作れる。まずは「ファセット」と呼ばれる職業を選択する |
そのほか男女のビジュアルタイプやボイス,性格,スキルなどを選択可能だ |
彼らを1〜8人からなる「カヴン」(部隊)に組み込むことで,「旅団」(パーティ)を編成できる。カヴンは,最大5組まで用意できるので,本作の迷宮探索は,最大40人のパーティで行うことが可能だ(そのうち,戦闘で戦う「アタッカー」は15人)。
というと,かなり複雑な編成システムになっていそうだが,そこに至るまではお膳立てが必要であり,ゲームをかなり進めてから可能となる。序盤のうちは3〜5人のアタッカーでも十分なバランスで,ゲームを遊んでいく過程で作り込まれたゲームシステムに慣れさせていく体裁を取っているので,初心者やダンジョンRPGをしばらく遊んでいないようなプレイヤーにもやさしい作りとなっている。
カヴンの編成には「結魂書」が必要であり,四角い枠に人形兵を配置する。1人でもいればカヴンとなり,最大5組のカヴンが迷宮に挑む旅団となる |
結魂書によって,配置できる人形兵の数は異なる。最初は1人しか配置できないが,宝箱などから複数の人形兵を配置できる結魂書が手に入ることも。最大8人まで編成可能だ |
魔力の源「マナ」が,人形兵達の探索の運命を左右する
ルフランの地下迷宮には複数のエリアが存在していて,ストーリーの流れに沿って順番に挑んでいく。探索や特定の敵の撃破などによってフラグが立ち,物語が進行していくスタイルだ。オートマッピングも実装されていて,旅団が踏破した場所は2Dマップで描かれていき,いつでも確認できるようになる。
迷宮内には特定の場所に置いてある宝箱のほか,迷宮に入るごとにランダムで拾える宝物があり,人形兵達の武器や防具などは主にここから入手することになる。その内容に大きく影響しているのが,同様に迷宮内で入手できる「マナ」の存在だ。魔力の源であるマナをたくさん持った状態で行動すると,その魔力によってレアリティの高いアイテムを引き寄せてくれる。ただし,それと同時に迷宮内でのさまざまなデメリットを旅団にもたらしてしまうため,任意のタイミングで拠点にマナを持ち帰って0にする必要もあり,その見極めが探索の面白みの一つとなっている。
ちなみにマナは,レキテイが身に付けていく「レキテイスキル」を開放したり,ゲームの難度変更を行ったりできる「魔女嘆願」や,傷ついた人形兵の修復などに使用できるので,多く持ち帰って損をすることはない。
なおマナは緊急脱出用のアイテムやスキルを使ったり,人形兵が全滅して強制帰還させられたりしてしまうと,持ち帰れる量が大幅に減ってしまう。探索をしてその足で戻ってくるのが,ベストな結果となるわけである。
迷宮探索の大きな特徴となっているのが,敵が見える状態で出現するということだ。ゲーム序盤に身に付けられるレキテイスキル「レキテイ可視力」によって,敵はフィールド上に球体のシンボルとして現れ,こちらの行動に合わせて移動する。シンボルには向きがあり,赤い模様が正面を意味していて,隣接したときに模様がこちらを向いていると,「臨戦」状態となって追跡してくる。また,向いていない状態でこちらから接触すれば「不意打ち」を仕掛けられるなど,戦略的な要素も含んでいる。
敵シンボルは「レキテイ千里眼」のレキテイスキルによって,画面右上の2Dマップにも表示されているので,動きの法則をある程度理解できていれば,「待機」(フィールド上で[□]ボタン)や「潜む」(フィールド上で[L]ボタン)といった行動をとることで,敵をやり過ごしたり,不意打ちを仕掛けるチャンスを作り出したりできるのである。
レキテイ可視力取得後に敵のシンボルが見えるようになる。ただし敵の種類は分からず,強敵が現れる場合もある |
敵に発見されると臨戦状態となり,こちらを執拗に追いかけてくるようになる |
ここまで何度か触れているレキテイスキルも,ゲームシステムとしてなかなか面白いのでいくつか紹介していこう。
このレキテイスキルには無条件で使えるものと,より便利な「リインフォース」があり,後者は画面左上にある同名の数値を消費して使用するものだ。この数値はマナを取ることでわずかに回復するものの,量は限られているので使いどころを考える必要がある。
リインフォースの一つとして存在するのが,「壁壊し」である。その名のとおり,迷宮の壁をぶち破って通り道を作ってしまうという,ダンジョンRPGとしては掟破りの能力で,これによりただ歩くだけでは行くことのできない場所にも行けるようになるのだ。
もちろん迷宮はこの力を使って探索することを考慮して設計されていて,壁の向こう側に現れる敵はこの力を得たときのレベルに合わせて強くなっているなどのバランスが取られている。
[R]ボタンで開くショートカットにスキルがセットされる。壁を壊すときは[○]ボタン |
マップ上では薄い茶色が壊せる壁を表す。赤は壊したあとの壁だ。壊しても必ず通路が現れるわけではないので,むやみに壊すとリインフォースの無駄遣いになる |
もう一つ面白かったのはレキテイスキルの「キャリーオーバー」だ。これは戦闘終了後,獲得した経験値を次の戦闘に持ち越すというもので,連続して勝利することでボーナス補正がかかり,次の戦闘を終えたときにより多くの経験値をもらえるというものだ。筆者が確認した限りでは,最大3倍になったが,途中で逃げ出してしまったり全滅したり,あるいはうっかり拠点に戻ったりしてしまうと,それまでに得た経験値がすべてパーになってしまうリスクもあるので,いつキャリーオーバーを終了させるのかもポイントになってくるわけだ。
これらのレキテイスキルは前述の魔女嘆願などで少しずつ習得していき,迷宮攻略における助けになるわけだが,その効果は本作の迷宮攻略にひと味違った手触りを与えていて,プレイヤーの好奇心を刺激してくれる要素となるだろう。
奥の深いシステムを備えながらテンポよく進む戦闘シーン
迷宮探索時に遭遇する敵との戦闘は,コマンド入力式によるターン制というオーソドックスなシステムながら,斬新な仕組みを取り入れつつ,テンポよく進められる内容となっている。
戦闘においては本稿序盤で述べたカヴンの編成が大きく影響してくる。戦闘に参加するアタッカー(戦闘画面に登場し,敵と直接戦う人形兵)はカヴン1組につき最大3人が設定できるが,通常攻撃以外の行動はカヴン単位で行う仕組みとなっている。もしアタッカーが最大の15人(アタッカー3人×カヴン5組)に設定されていたとしても,本作の魔法に当たる「ドナム」はカヴン単位の行動のため,1ターンで最大5回しか使えないということである。
ちなみにドナムの習得は,カヴンの編成時に必要な「カヴン結魂書」に依存していて,人形兵のファセット(職業)とは関係ないため,例えば攻撃重視の「アステルナイト」でも,回復や補助のドナムを習得できる結魂書のカヴンに編成すれば,それらのドナムを使えるようになる。もちろん相性のいいファセットと結魂書を合わせたほうが,より有利に戦えはするが。
戦闘のテンポは軽快で,アタッカーに攻撃させるだけなら[△]ボタンで決定するだけで敵を自動でターゲッティングして攻撃してくれる。もちろんコマンドを選択して個別に対象を選んだり,ドナムを使ったりすることも可能だ。
人形兵の性格や互いの友好度によって強力な攻撃を発動する「共振」や,連続してドナムを使うことでまれに発生する「共鳴」,相手の部位を破壊する「クリティカルゴア」,カヴンの前衛と後衛の組み合わせによって特別な効果を発揮する「陣形」など,活用すればより有利に戦える要素も数多く用意されているので,意識してみよう。
斬新なシステムや独自の用語はさほど気にならず,初心者でも入りやすい仕様
本作は,カヴンやファセット,ドナムなど独自の用語があることでハードルが高いように思えるかもしれない。しかし,ゲームの作りは非常に丁寧で,ダンジョンRPGはご無沙汰だった筆者でも,すんなり入っていくことができたのは,高く評価したいところだ。
それでいて,プレイヤーはレキテイという,パーティメンバーの人形兵とは違うポジションに置かれており,これに独自の編成システムや多数の戦闘に関わる要素が用意され,攻略に一役買っているのも面白い。ダンジョンRPG初心者からコアなファンまで,幅広い層が楽しめる内容になっているので,ぜひプレイしてみてほしい。
「ルフランの地下迷宮と魔女ノ旅団」公式サイト
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ルフランの地下迷宮と魔女ノ旅団
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