開発者が今明かす，「メタルスラッグ3」の未使用アイデア。「急斜面を滑走するメタルスラッグ」や「時限爆弾の解除」など，さまざまなシチュエーションを紹介

　名作2Dアクションゲーム「メタルスラッグ3」の未使用アイデアについて，同作の開発に携わったakio氏が自身のXのアカウントで語っている。公開されたスケッチには「急斜面を滑走するメタルスラッグ」や「時限爆弾の解除」「歯車を蹴ってのサッカー」など，ワクワクするようなアイデアが記されており，ファンは必見だ。

【『METAL SLUG3』未公開アイデア、その１】
『METAL SLUG3』を開発中、時間がなくて実装出来なかったアイデアのラフ画が出てきました。当時はこんなナンセンスなことばかり考えていたんだなと、ニヤニヤしてしまいます。
①… pic.twitter.com/a3sonaP3KL
— akio (@akio_1963) March 6, 2025

　この記事に反応するような読者に細かな説明は必要ないかもしれないが，「メタルスラッグ」シリーズは，1996年のアーケード版から続くミリタリー系横スクロールアクションシューティングで，主人公たちと小型戦車「メタルスラッグ」との戦いを描いている。
　アクションゲームとして練り込まれていることはもちろん，とくに印象深いのは，鬼気迫る描き込みのドット絵が生き生きと動く様子だ。ザコ兵の動き1つとっても，談笑したりビビったり，マグカップ片手に焚火に息を吹きかけたりと，実に芸が細かい。さまざまに展開するシリーズだが，タワーディフェンスの「METAL SLUG ATTACK RELOADED」では，敵兵たちを使えることがウリの1つになっており，いかにキャラクターたちが魅力的であるのかが分かるはずだ。

「アケアカNEOGEO」公式サイトより**「メタルスラッグ」**

「アケアカNEOGEO」公式サイトより**「メタルスラッグ2」**

「アケアカNEOGEO」公式サイトより**「メタルスラッグ3」**

　「メタルスラッグ3」には，とくにバラエティ豊かなキャラクターとさまざまなアイデアが盛り込まれているが，akio氏によれば実装されなかったアイデアもあるという。
　「時限爆弾解除」は爆発させないために2本あるコードのいずれかを切るというもので，ミニゲームとして盛り込まれる想定だったのだろうか？　失敗して爆発させたときのリアクションも見てみたかった。
　「T-1とサッカー」は，マルコとザコ兵が歯車をボールのように蹴り合い，ウインチにシュートすると橋が跳ね上がってモーデン城に攻め込めるというフィーチャーだ。こちらは，ステージ間のデモなのかもしれない。akio氏がスケッチを見つけた際，歯車で何をするのかを忘れていたが，「T-1」がザコ兵であることに気づいてアイデアの詳細を思い出したとのこと。T-1＝ザコ兵というのは，開発に関わっていたakio氏だからこそのことで，第三者が見たのでは不正確な解釈になっていた可能性がありそうだ。ゲームを記録として保存するうえで，当事者の記憶がいかに大切であるかが分かる。

画像集 No.005のサムネイル画像 / 開発者が今明かす，「メタルスラッグ3」の未使用アイデア。「急斜面を滑走するメタルスラッグ」や「時限爆弾の解除」など，さまざまなシチュエーションを紹介

　ワクワクしてしまうのが，「急斜面を滑走するメタルスラッグ」。メタルスラッグの動きは速くないのだが，「大ジャンプ台などを設置して空中に飛び上がり，メタスラ初の空中戦が見もののステージ」という構想だったそうだ。
　「マリンスラッグが水没した都市を行くシーン」は，幻の「METAL SLUG 4」で登場する新たな敵「海底人」の伏線であったという。実際の「メタルスラッグ4」は，akio氏たちとは別のスタッフが開発を担当しているが，もし続投していれば海底人との激闘が見られたかもしれない。

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水没都市のスケッチが写るシーンは，動画がかなり暗い。左下の「8」番に描かれている図は，akio氏自身も何を意味するものか分からないという

　スケッチにはこのほかにも「たくさんの鍵が箱に詰まっている中から，本物の鍵を探す」「豚型の鍵穴があるので，豚を連れてきてはめ込む」など，さまざまなアイデアが書かれている。ゲームのギミックとしてすぐに使えそうなものだけでなく，コメディ映画的なシチュエーションが混じっているのが興味深いところだろう。
　スケッチの最後には，akio氏にも分からないという図が載っている。なかなか謎めいているが，ああでもない，こうでもないと頭をひねってみるのも楽しいだろう。

　akio氏のXアカウントでは，「R-TYPE」の不気味なボス「ゴマンダー」の制作秘話や，メタルスラッグの主人公たちの顔がなぜ濃いのかなど，いろいろな情報が発信されており，いずれもゲームの歴史を考えるえで貴重な証言だ。これからも，こうした発信が増えることを望みたいが，akio氏たちは新作「Black Finger JET」を開発中とのことで，こちらも完成が楽しみだ。