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[E3 2015]新型HMD「StarVR」を西川善司が体験。「5K解像度で視界角210度」はVR体験をどう変える?
今回,筆者は2時間半並んでStarVRを体験することができたので,仕組みやスペックから実際の使用感までをじっくりとレポートしたい。
StarVRの特徴は「5K解像度」と「210度の広視野角」
そんなStarbreezeがなぜVR対応型HMDを? という疑問はもっともだが,StarVRはもともと,フランスのInfinitEye VRが開発していた広視野角HMDだった。他社のVR対応型HMDを見たInfinitEye VRが,「我々ならばもっといい物が作れる!」と奮起して開発したのが,StarVRの原型なのだという。
そして,そのInfinitEye VRがStarbreezeに買収されてStarbreeze Parisとなり,開発中だったHMDは,StarVRとして世に出ることになったというわけだ。
1つめのポイントは,画面解像度の高さだ。Riftの製品版が片目あたり解像度1080
Starbreezeでは,「5K解像度のHMD」というキャッチコピーを与えて,StarVRのハイスペックぶりをアピールしている。
ちなみに,垂直方向の視野角も130度とのこと。こちらも,RiftやMorpheusよりも随分と広い。
頭部の動きの追従(ヘッドトラッキング)は,前後左右と上下の移動,上下左右の首振り,時計回りと反時計回りの首傾きという6軸自由度に対応。この点はRiftやMorpheusと同等だ。この6軸自由度ヘッドトラッキングは,StarVRに内蔵された加速度センサーとジャイロスコープ,そして,外部に置いたカメラによって実現されている。
Riftの場合,HMD上に実装された複数の赤外光LEDマーカーを,単眼カメラで撮影してトラッキングする方式を採用している。Morpheusでは,HMD上に実装された複数の可視光LEDマーカーを,ステレオカメラで撮影してトラッキングする方式だ。
それに対してStarVRでは,LEDのような自照式マーカーは使わず,HMD上に取り付けた白黒の幾何学マーカーを,外部の赤外光カメラで撮影する方式になっている。
今回はStarVRプロジェクトのプロデューサー,Tyler Sparks氏に話を聞くこともできたのだが,氏によると,今回持ち込んだシステムは,試作一号機という位置付けとのこと。気になる対応プラットフォームは「当面はPCに限られる」とのことだった。StarVRは両眼合わせて5120×1440ドットもの画面描画が必要なるため,現行世代のゲーム機には重荷なのだ。
ちなみに氏いわく,最終製品ではいくつかの点で仕様を変更する予定。たとえば,解像度2560×1440ドットのディスプレイパネルは,試作一号機だと液晶なのを,有機ELへ変更する可能性があるという。
価格は当然ながら,現時点では未定とのこと。StarVRは高解像度のディスプレイパネルを2枚採用することから,1枚のディスプレイパネルでまかなうRiftやMorpheusよりも,確実に高価な製品になるはずだ。
また,2枚のディスプレイパネルとその駆動回路も含めると,HMD本体の重量がRiftやMorpheusより重くなる可能性もあるがと質問したところ,HMD筐体の素材にカーボンファイバーを採用することで対応するとSparks氏は答えていた。しかし,これもまた価格を押し上げる要因になりそうである。
あくまで筆者の予想だが,StarVRはコストパフォーマンスを度外視してスペックや性能重視の設計をしているようなので,RiftやMorpheusよりも上の,ハイエンドHMDというポジションを狙っているのかもしれない。
なお,気になる製品版の発売時期について,Sparks氏は「2016年後期を目標にしている」と述べるに留めていた。
ドットの見えない高精細さと上下左右に広がる視界の没入感はスゴイ!
体験できたのは,StarbreezeがOV
デモでプレイすることになったのは,ゲーム本編から抜粋したFPS風の1シーン。プレイヤーは足を負傷して車椅子に乗っているという設定なので,ブースでも実際の車椅子に座って,StarVRを体験するという仕組みだ。ゲームの舞台は廃墟と化した病院で,足を負傷したプレイヤーがそこから脱出するというシチュエーションで展開する。女性のキャラクターがプレイヤーの座る車椅子を押すという設定のため,移動操作は基本的に自動で行われる。
ゲームは前後左右から襲い来るゾンビ――The Walking Deadでは「Walker」と呼ばれている――と弾数制限のあるショットガンで戦い,どれだけの敵を倒し,長く生き延びられたかを競うという内容だった。
StarVRを装着してまず驚かされたのは,圧倒的な解像感だ。片目あたり25
210度の広視野角も感動的だ。視野角100度前後のRiftやMorpheusでも,左右を向けばそちらの方向が見えはするのだが,左右をしっかり見るためにはそちらにちゃんと首の向きを変えなければならない。一方,StarVRなら,左右の視界も開けているので,頭を横に向けなくても,目線を横にずらすだけで横方向がしっかり見えるのだ。正面を向いたままで,側方の敵を狙って撃つこともできる。すばらしい。
人間の視覚において,視界左右端はぼんやり見えている程度にすぎない。にもかかわらず,VR対応型HMDで視界の左右が広がって見えていることは,没入感をここまで高めてくれるとは,正直,思いもしなかった。
StarVRの視野角は上下方向にも広いのだが,これも没入感の増強に大きく貢献している印象を受けた。ちょっと目線を下に向けるだけで,車椅子のタラップに乗せた自分の足(CGで描かれた足だが)が見え,目線を上に上げれば,壊れた天井やエアダクトを確認できる。
VRコンテンツといえば,頭を上下左右に動かして没入感を楽しむものと思っていたが,StarVRでのVR体験では,現実世界と同じように,目線をまず動かしてから,次に首を動かすようになるのだ。
ちなみに,デモは短いながらも,ゲームの完成度やストーリー進行がよくできていた。プレイヤーの車椅子を押する女性キャラクターは,「車椅子が思ったよりも重い」とか「私1人でこんなの動かすのは無理」などと愚痴をこぼすのが,パニック状況下ではむしろリアルな心理描写であるように感じられる。後ろを見れば,車椅子を押しながら不安そうな表情を浮かべる女性がちゃんと見えるので,なおさらゲームに引き込まれる。
デモは,最後に弾切れとなってゾンビの群れに殺されてゲームオーバーとなるのだが,ここでも,上下左右に広がる視界がゾンビに埋め尽くされていくので,
では,StarVRには欠点はないのだろうか。
1つ気になったのは,視界の中央が,ややぶれ気味に見えることだ。StarVRでは,
個人差もあるとは思うが,RiftやMorpheusではそのように感じたことがなかったので,これはStarVR特有の現象ではなかろうか。光学系の工夫で解消できる問題のように思えるので,製品版では改善されることを期待したい。
StarVRは,VR対応型HMDが高解像度と広視野角という特徴を備えることで,VRコンテンツにおける没入感を大きく進化させる可能性を垣間見せてくれたように思う。VR対応型HMDの第3勢力として,StarVRは,E3 2015で大きなインパクトを残せたのではないだろうか。
StarVR公式Webサイト(英語)
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