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「ポッ拳」とは一体どんな対戦ゲームなのか。原田&星野Pへのインタビューと共にお届けするプレイインプレッション
ポケモンシリーズと鉄拳シリーズの夢のコラボということで注目度は当然ながら高く,試遊台は常に満員の状態。両日ともにステージイベントも開かれ,たくさんのポケモンファンで賑わっていた。
本稿では,そんな「ポッ拳 POKKÉN TOURNAMENT」(以下,ポッ拳)のインプレッションをお伝えするとともに,バンダイナムコゲースの原田勝弘氏と,バンダイナムコスタジオの星野正昭氏へのインタビューを掲載しよう。オンライン対戦を導入した経緯や,ピカチュウが繰り出す“あの浮かせ技”についてなど,色々と聞いてみたので,本作が気になっているポケモンファン,鉄拳ファン,そしてアーケードゲーマーはぜひご一読いただきたい。
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「ポッ拳 POKKÉN TOURNAMENT」公式サイト
「ポッ拳 POKKÉN TOURNAMENT」とはどんな対戦ゲームなのか
ここからは,JAEPO2015出展バージョンを遊んでみてのインプレッションをお届けしていこう。
まず,これまでの情報で判明しているように,本作のバトルは2つのフェイズによって構成されている。いわゆるTPS的な視点で遠距離での駆け引きを楽しむ「フィールドフェイズ」と,格闘ゲームライクな横視点で接近戦を行う「デュエルフェイズ」だ。このフェイズの移行は,特定の攻撃をヒットさせたり,一定以上のダメージを蓄積させるなどで発生するようだ。こうして2つのフェイズを行ったり来たりしながら,本作のバトルは進行していくことになる。
フィールドフェイズでは,お互いに飛び道具でけん制しつつ,相手のスキをついて強攻撃([X]ボタン)やポケモンわざ([A]ボタン)でダメージを与えていくのがセオリーだが,ここでのダメージは全体的に抑え目に調整されている印象を受けた。
もちろん使用するポケモンにもよるのだが,フィールドフェイズでは積極的に体力を奪いにいくよりも,フィールド上に出現する「共鳴エネルギー」(共鳴ゲージが増加するアイテム)を回収しつつ,フェイズチェンジ技(ヒット時に「共鳴ゲージ」が大きく増加)を狙うといったゲージマネジメントが駆け引きのキモとなるように思える。
対するデュエルフェイズでは,相手を浮かせて連続技が狙えるため,攻撃ヒット時のリターンが大きくなる。積極的にダメージを取りに行きたいところだが,ここでポイントとなるのが本作における「3すくみ」の構造だ。
一見して格闘ゲームのような画面となるデュエルフェイズだが,そこでの駆け引きの実態は格闘ゲームとは異なっている。「相手のガード([R]ボタン)をいかに崩して攻撃をヒットさせるか」という点は同じだが,本作のガードには上段下段の区別がない。つまりガードしている相手を崩せるのはいわゆる投げ技である“つかみ攻撃”のみなのだ。
しかし,“つかみ攻撃”は攻撃を出している相手を掴むことはできない。通常攻撃を出されると一方的に負けてしまうため,なんとか相手を“黙らせる”必要がある。そこで必要になるのが,相手の通常技に勝てる“ブロック攻撃”だ。
ブロック攻撃は,相手の攻撃を防ぎながら攻撃する技で,通常技に一方的に勝つことができる。格闘ゲーム風に言えば「ガードポイントのある打撃技」といったところで,通常技に比べ若干発生が遅いようだ。そしてここまで来れば想像がつくように,この行動はつかみ攻撃には一方的に負けてしまう。
この“つかみ攻撃”“通常攻撃”“ブロック攻撃”の3つが,本作における「3すくみ」を形作っている。この構造自体はフェイズを問わないので,例えばフィールドフェイズであってもつかみ攻撃を決めることは可能だ。いわゆる“投げ間合い”はかなり広いのでまったく不可能ではないのだが,空振り時のスキも大きい。つまりリスク&リターンを考えるなら,デュエルフェイズへ移行してから狙った方がお得感がある。
なお少々マニアックな話になるが,ブロック攻撃を含むデュエルフェイズ中の打撃技は,ガードされてもほとんど反撃を受けなかった。攻撃にもよると思うが,ガードされても若干不利となるだけなので,そこでまた読み合いが発生する。つまりガードを成功させても,状況が好転するとは限らないのだ。
上段下段の別がなくガードが強力な分,リターンも少なくなっているのだと思うが,これによって結果的に対戦のハードルが下がっているのが面白い。いずれかのアクションを行っているだけで駆け引きに参加し続けられるため,適当にボタン押しているだけでもそれっぽいバトルが展開される。もちろんJAEPO2015出展バージョンでの感想なので今後変わる可能性はあるものの,ポッ拳らしいバトルデザインと感じられたポイントだ。
ここまでが本作における駆け引きの基本だが,先にも述べたとおり使用するポケモンの個性によって得手不得手はある。
今回のバージョンではロケテスト時と同様,ルカリオ,ピカチュウ,スイクン,カイリキー,サーナイトの5体が使用可能だったが,例えば“ハイドロポンプ”を持つスイクンは,フィールドフェイズにおいても大きなダメージを与えられる。その代わり,デュエルフェイズでの動きはどうも緩慢で,ここが弱点となっているようだ。逆にカイリキーは飛び道具に乏しく,フィールドフェイズでは相手に接近するのに苦労するが,つかみ攻撃のリーチがとにかく長く,いったん近付いてしまえば強烈な攻めを繰り出せる。
いずれにせよ,どのポケモンを使ったとしても,ラウンド中には複数回のフェイズチェンジが発生する。強力な攻撃ほどフェイズチェンジを発生させやすいようになっているため,例えばスイクンがいかにフィールドフェイズで猛威をふるおうとも,いつかはデュエルフェイズへ移行する。苦手なフェイズをどう凌ぎ,得意なフェイズをどう活かすか。早々にフェイズチェンジ技を当てて逃げるも良し,グッとこらえてゲージ溜めに専念するのも良し。こういった使用ポケモンごとの戦略も,本作の魅力となりそうだ。
ノリノリで実装されたピカチュウの風神拳――原田氏&星野氏ミニインタビュー
というわけで,JAEPO2015出展バージョンのプレイフィールについて紹介してきたわけだが,本作で気になるのはバトルデザインに止まらない。ステージでも触れられた店舗間通信対戦やバナパスポートと連動した「成長要素」,またモーションの話についてなど,トピックスはいくつもある。ステージイベント終了後の原田氏と星野氏に,これらについて話を聞いてみた。
4Gamer:
ステージでも触れられましたが,本作は「鉄拳7」と同じく,店舗間通信対戦に対応するんですよね。ロケテストでも,神奈川と大阪の店舗を結んで対戦が行われたそうで。
原田勝弘氏(以下,原田氏):
実はね,最初は店舗間通信対戦だけでやるつもりだったんですよ。
4Gamer:
店内対戦には対応しない予定だった,ということですか?
星野正昭氏(以下,星野氏):
ええ。“ポケモンは好きだけどアクションゲームは苦手”という人に遊んでもらいたい,というのがポッ拳のコンセプトなんです。しかし,そういったポケモンファンにとって,アーケードでの対面対戦はハードルが高いんじゃないか,という話があったんです。
原田氏:
「ゲームセンターで乱入なんてできないよ」「乱入なんてされたくないよ」という人も,自宅だったら,例えばマリオカートだったりで普通にオンライン対戦を遊んだりする。だからポッ拳も,あの感覚で全国対戦をプレイしてもらえたらと。
4Gamer:
なるほど。ロケテストの反響はいかがでしたか?
原田氏:
鉄拳7のロケテストのときは店舗間通信対戦がかなり話題になったけど,ポッ拳ではそこが取り上げられること自体が少なかったんだよね。
星野氏:
鉄拳7が先にあったからか,皆さんもう普通のことだと思っているかもしれませんけど。でも技術的にまだまだハードルが高い仕組みなので,ちゃんと対戦できるのか,開発側としては結構ドキドキだったんです。幸いにも,ラグを感じるといった感想は全然上がっておらず,我々も胸をなで下ろしているところです。
4Gamer:
確かに,そもそも話題になっていない気がしますね。
原田氏:
その理由はたぶん二つあって。一つは星野が言ったように,ラグを感じる人が少なかったために,誰も気にとめなかった。これは良い意味でね。あともう一つが,単純に通信対戦であることがまったく伝わってなくて,誰も気づかなかったという可能性です。皆,普通に店舗内で対戦していると思ってたんじゃないかなあ。
4Gamer:
なるほど(笑)。しかし,それって普段ゲームセンターに来ないような層がロケテストに足を運んでくれたってことなのでは? パッド型の専用コントローラを採用したのだって,そういうポケモンファンに向けた施策ですよね。
星野氏:
そうですね。多くのポケモンファンにとっては,やはりパッドの方が馴染みがあると思うんです。ロケテストでも「遊びやすかった」という感想がかなり多かったので,採用は正解だったと思っています。
原田氏:
あの専用コントローラは,開発側のアイデアではなく,営業から出てきたものなんですよ。アーケード用ということで耐久性は考えてありますし、メンテナンス性についてもかなり意識して作っています。
4Gamer:
ステージでは,そのほかバナパスポートカードと連動した成長要素についても触れられていました。プレイを重ねることで,ポケモンが成長していくとのことですが,アーケードの対戦ゲームでは珍しいシステムですよね。
星野氏:
対戦ゲームにおける成長要素って,公平性を崩すので嫌がる人も少なくありませんが,ポッ拳の全国対戦では同じくらいのランクの人とマッチングするようにしています。例えば一方の攻撃力が3倍ぐらいある,みたいなことにはなりませんが,同じポケモンでもプレイヤーの個性を少し出せるようにしています。
原田氏:
あと,ポケモンのスピンオフ作品は幾つかありますが,原作のような成長要素を備えたものって実は珍しいんです。そういう意味では,これもポケモンファンのために入れた要素だったりします。
星野氏:
プレイし続けることで,選択できるサポートポケモンのセットが増えて戦略が深まっていくので,ぜひバナパスポートカードを使って遊んでほしいですね。
4Gamer:
では,少し格闘ゲーム寄りの質問になるのですが,ポッ拳って格ゲーのファンにはクスりとさせられる要素がたくさん入ってますよね。攻撃モーションとか,やられモーションとか。
星野氏:
おっ,よく気づきましたね。色々なポケモン達に散りばめているので,鉄拳ファンはぜひ探してみてほしいです。
4Gamer:
ピカチュウが風神拳を出してたり,勝ちポーズが平八だったりとか。あれはさすがに笑ってしまいましたけど(笑)。
原田氏:
意外と似合ってるでしょ? 電気つながりだからさ(笑)。
4Gamer:
可愛らしさとカッコ良さが違和感なく同居していて,素晴らしいと思いました。「ピカチュウってこんなにカッコ良くなるんだ!」って。
星野氏:
それは良かったです。我々としても,目指したのはカッコ良いピカチュウですから。
原田氏:
ああいうモーションは,ポケモンさんと一緒にアイディアを出し合った中から生まれてきたんですよ。せっかくポケモンと鉄拳のコラボなんだから,ピカチュウがあの技を出してみたらどうだろうって。……というか,割とポケモンさん側がノリノリだった(笑)。
4Gamer:
そうだったんですね。
原田氏:
元々は鉄拳やソウルキャリバーのモーションなんだけど,ポッ拳用にちゃんとカスタマイズしたので,手間はかなりかかっています。
星野氏:
あと,チューニングにもソウルキャリバーシリーズのスタッフは関わっていますよ。
4Gamer:
ああ,なんとなく分かる気がします。フィールドフェイズの駆け引きはソウルキャリバーシリーズの8Way-Runに通じるところがありますね。マッチポイントを迎えたとき,追い詰められた側にボーナスが入るのも「ソウルキャリバーV」に似ています。
原田氏:
壁やられは鉄拳なんだよね。
星野氏:
本作は鉄拳とポケモンのみならず,ソウルキャリバーの要素も組み入れていますので,格闘ゲームファンにもぜひ遊んでほしいですね。
4Gamer:
現在,プレイアブルなバトルポケモンは5体が発表されていますが,稼働時にはどれぐらいになりそうですか。
原田氏:
そこは難しいところなんだけど,最初からいっぱい選べちゃうと対戦ゲームとしてバランスを取るのが難しいですし,プレイヤーも覚えきれないですから,最初は少なくするつもりでいます。鉄拳7と同じく,ネットワークで順次アップデートして増やしていくつもりです。
星野氏:
最初は分かりやすい,個性が際立ったポケモンを揃えたいと思っています。
4Gamer:
分かりました。続報に期待したいと思います。最後に,本作に期待しているファンに向けてメッセージをお願いできますか。
星野氏:
ポッ拳は,ポケモンファンのために作ったアクションゲームです。背景にもポケモンをいっぱい散りばめていますし,ファンが楽しめる要素をたくさん用意していますので,アクションゲームが苦手という人にもぜひプレイしてもらいたいです。あと開発チームには格闘ゲーム製作経験者も多いので,奥の深さもバッチリです。対戦ゲームが得意な人にもやり込んでもらえたらと思います。
原田氏:
ポッ拳のロケテストを見に行ったら,カップルが遊びに来ててさ,彼女の方が「あ,ピカチュウだ。このゲーム何?」って彼氏に聞いてたんだよ。そしたら彼氏が知ったかぶりして,「これねえ,鉄拳のポケモン版」って答えててさ。
(一同笑)
原田氏:
まあ,別に間違ってはいないんだけど(笑)。ただ,どうしてもそういう風に――従来の格闘ゲームのイメージで伝わっちゃっているところがあります。何度も説明しているように,ポッ拳は従来の格闘ゲームとは違う概念のタイトルなので。
4Gamer:
TGSのときにも,その点を強調されていましたね。(関連記事)
原田氏:
うん。だからそういうイメージは一度捨ててもらって,新しいアクション対戦ゲームとしてトライしてほしいなと思ってます。そうしたら,PVなんかで見られるカッコ良い対戦が自分でもできるんだってことを分かってもらえるはずなので。2015年夏の稼働までに,またポケモンファンの皆さんに体験してもらう機会を作りたいとも思っているので,ご期待ください。
4Gamer:
本日はありがとうございました。
2015年夏の稼働が決まった「ポッ拳POKKÉN TOURNAMENT」。今回の出展バージョンはまだまだ開発中のものではあるが,筆者としては,本作のバトルデザインに制作者達の“思惑”を感じられたのが収穫だったといえる。「間口は広く,奥は深く」とは言うものの,それを実現するのは容易なことではない。しかし本作にはその可能性がある。そう感じさせられただけでも,今は十分だろう。間もなくのリリースとなる鉄拳7に続き,稼働が楽しみなタイトルだ。
「ポッ拳 POKKÉN TOURNAMENT」公式サイト
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