プレイレポート
若者よ,人間の未来を担う労働者となれ。独特の世界観とオンラインプレイが特徴的な「The Tomorrow Children」クローズドαテストをレポート
冷戦時代のソビエト連邦の研究が招いた予期せぬ事件により,滅亡寸前まで追い込まれてしまった人類と文明の再建のために,残された人類が作りだした「プロジェクションクローン」なる少女の姿をした生命体が活躍するという本作。50人から100人のプレイヤーがオンラインで協力しながらプレイする,戦略性の高いアクションゲームになるということ以外は,これまであまり具体的に発表されていなかった。
今回は筆者が実際にαテストに参加してゲームをプレイし,そこで判明したゲームのルールやプレイフィールなどについてお伝えしていこう。
冷戦時代のソビエト連邦をイメージした世界設定がインパクト大
本作は,人形のようなキャラクター達が繰り広げる3人称視点のアクションゲームで,シンプルながらも味わいのある世界を舞台に進められていく。バックストーリーにあるのが冷戦時代のソ連ということで,NPCとの会話にはロシア語が飛び交い,街のオブジェクトに貼られたスローガンや,労働を促す大音量の音楽とアナウンスが,抽象的に描かれた世界とのギャップによる大きなインパクトを生んでいる。プレイヤーキャラクターのプロジェクションクローンが少女の姿をしているというのも印象的だ。
プレイヤーは最初に5つのクラス(職業)のプロジェクションクローンから1体選び,人の意識が変化した「ボイド」と呼ばれる物質に覆われた世界へとくり出していく。最初に降り立つのは行動の拠点となる街で,プレイヤーはこの街をオンライン上の同志(ほかのプレイヤー)とともに「労働」をすることで発展させていいくのだ。そして,その周囲を探索することなどで手に入る「マトリョーシカ」(姿を変えられた人間)を持ち帰り,これを使って人間を復活させるというのが主な目的となっている。
人類復興のためにはとにかく労働
プレイヤーがこの世界で行える主な労働について,順を追って説明していこう。
■探索と採掘
拠点となる街を発展させるために,必要な資源を探して持ち帰る作業だ。街の周囲には一定時間「島」と呼ばれる奇妙な形をした地形が現れ,ここで手持ちのピッケルやシャベルなどを使った採掘を行うことで資源が手に入り,それを持ち帰って街の発展に役立つ道具を生産するための資材とするのだ。島にいる敵を倒したときに手に入る「クリスタル」は,街が発展するために必要なアイテムで,これを「タウンホール」に入れることで街は2段階に分けて発展。使える施設が増え,さらに便利な道具も新たに生産できるようになる。
こちらは2段階成長した街。街のあちこちにスローガンをかかげた立て看板や,アナウンスが流れるスピーカーが建ち並び,はためく赤い旗も印象的だ |
序盤は島に渡るために,定期的に運行しているバスに乗って移動する。持ちきれない資材などをバスの荷台に置くことで運搬も可能だ |
また,島ではマトリョーシカも見つけられるので,それを持ち帰って「人民再組成機」にセットすれば,それが人の姿に組成され,街の人口を増やすことができる。今回のテストでは,マトリョーシカを持ち帰り,街の人口を250人まで増やすことがゲームクリアの最終目的となっていた。
プロジェクションクローンは暗い場所にいると耐久力が徐々に減ってしまうという特徴を持っている。光が届かない島の内部では,そこに生息する光るキノコや,手持ちのライトなどが必須だ |
持ち帰ったマトリョーシカを人民再組成機にセット。台座の数だけ置くと人の姿に戻る。上に見える緑の数字は,復元した人民の数を表している |
■供給
現在の街の状態を維持するためには,電力や食糧の供給が不可欠になる。これらは常に消費されていき,供給が止まれば増えた人口がどんどん減ってしまうため,常に気を配らなければならない。電力は街の中にある「人力発電機」でちょっとしたミニゲームをプレイすることで給電ができ,食料は木になっている果実を「資源置き場」に持っていくことで補充できる。木は街中で栽培できるほか,島にも生えていて,定期的に果実が採れるだけでなく,切ることで「木材」にもなる重要な資源である。
これが人力発電機。中央のメーターのラインを[R2]ボタンで調整しながら発電するミニゲームになっている |
樹木は街にも数本あり,苗木を使うことで栽培ができる。定期的に実をつけるので,序盤はそれを集めるだけでもそれなりの貢献度が稼げる |
■防衛と修繕
街には時折「イズベルク」という怪獣が現れ,施設を破壊していく。街の耐久度が0になってしまうと壊滅し,そこでゲームオーバーとなってしまうので,イズベルクが現れたときは,プレイヤーは手持ちの武器や,街に設置された防衛用砲台などを使って,これを撃退していくのだ。倒したイズベルクは資源となり,街の発展にもつながっていく。
イズベルクに破壊されてしまった施設は修繕が必要で,炎が出ている場所で特定のコマンドを入力するミニゲームを成功させると元に戻り,街の耐久度も回復する。ただし修繕には規定数の木材が必要だ。
■生産
イズベルクを撃退するための砲台とその弾薬,防衛用の壁,あるいは植樹用の苗木などは,持ち帰った資源を使って生産できる。街にある「工作台」で,資源の数や街の発展度などに応じて便利な道具を作り出すことが可能だ。
砲台や壁などの防衛用設置物のほか,看板やテレビなど飾りの意味合いが強いものも含め,生産物はすべてプレイヤーが街に自由に置くことができ,RTSやミニスケープ的な楽しさも盛り込まれている。
また街が発展することで,移動用の乗り物「ホバーマシン」や「ホバータンク」なども生産できるようになり,街と島との行き来が一気に楽になる。
これらの作業を1人でこなすというのは難しい注文だが,本作はオンラインゲームであり,同時に複数のプレイヤーが街の中で労働をこなしている。何をやるかはプレイヤーの自由で,強制されることもないが,労働による街への貢献はプレイヤーの成長をうながし,さらにそれまでの労働内容を街にある「労働監査局」に報告することで,アイテムなどを購入するための「配給クーポン」がもらえたり,その街にいるプレイヤーの貢献度のランキングなどがリアルタイムで発表されたりするので,積極的に働くことがプレイのモチベーションアップへとつながっている。このゲームをプレイしていて,SCEJAのとあるゲームで聞いた「レッツ貢献!」というフレーズを思い出したのは,恐らく筆者だけではないと思う。
上記に挙げた労働作業はそれぞれゲームとして成り立っていて,その名のとおり若干作業的なところもあるが,コツを掴むとクセになる面白さもある。街を発展させればこれらの作業効率もグッと上がるので,プレイヤーとしてはまず何よりも,街を最高の段階まで発展させることが重要だと感じた。
プレイヤーが街の外にでると,ボイドの海にずぶずぶと沈んでしまうが,街が1段階発展したところで生産できるホバーマシンがあれば,バスに乗らずとも島への行き来が可能だ |
アイテムを使って橋をかけることもできる。プレイヤーがいつでも島を行き来できるメリットがあり,ほかのプレイヤーがこの橋を渡ると貢献度もアップする |
労働監査局に現状を報告すると,貢献度が細かく評価され,それに応じてアイテムを買うための「配給クーポン」が支給される |
配給クーポンを使えば,採掘用のアイテムや,対イズベルク用の武器を購入できる。効果の高いものほど,必要なクーポンの数は増える |
購入したアイテムはアイテム欄に置くことで,方向キーですぐに選べるようになる。持ちすぎると重くなり,移動が遅くなるので注意が必要だ |
夜になるとその日の日報を見られるようになり,同時にプレイしているプレイヤーの貢献度の順位が発表される |
ちなみに今回のαテストは,プレイヤーにいろいろと試してもらうべく,ゲームの定石などについては詳しく教えず,チュートリアルもあえて入れなかったと,開発スタッフが11月18日に行われたニコニコ生放送の番組にて明かしていた。そのため,頼りになるのは公式サイトの遊び方ページぐらいで,あとは街にいるキャラクターの話を聞いたり,時折現れるほかのプレイヤーの動きをなんとなく見たりしながら理解していく必要があった。
こうした手探りプレイも,本作の独特の世界観に沿っているとも言えるが,実際にプレイをしてみると前述の通りプレイヤーがやるべきことは多く,直感的に理解しづらい部分もあって,現状のままでは面白いと感じるまでに投げ出してしまうプレイヤーもいるように思えた。筆者も実際に定石を把握するまでそれなりの時間を要したこともあったので,完成したバージョンでは街に入る前にでも,「どこで何をするとどうなるのか」といった,世界観を壊さない程度のゆるいチュートリアルは入れてほしいと思った次第だ。
シングルプレイのようだが時折マルチプレイの感覚を味わえるオンラインプレイ
本作はオンラインゲームではあるが,街にいるべき同志たちの姿は時折チラチラと見えるだけで,常に確認できるわけではない。実はこれが本作の最大の特徴ともいえる要素で,特定のアクションを行っているときだけ,ほかのプレイヤーの目に見えるというルールを採用している。普段のプレイフィールはシングルプレイだが,同志の姿が見えることでマルチプレイということが実感できる,不思議な感覚が味わえるようになっているのだ。
お互いがやろうとしていることは姿が見えたときに分かるので,ちょっとした意思の疎通ができると嬉しく,またその動きを見ることで,初心者が何をすべきかもなんとなくわかるという一石二鳥な仕様でもある。コミニュケーションの手段は[R1]ボタンで出せるジェスチャーのみなので,余計な気を遣うこともなく,オンラインゲームに抵抗がある人でも比較的すんなり入っていけるはずだ。
SCEJAは「風ノ旅ビト」という独特のオンラインプレイが楽しめる作品を配信しているが,本作はあれよりももう少し人の気配が感じられるオンラインプレイという印象だ。αテストという関係で,筆者がプレイしたときは街にいるプレイヤーが最大でも15人程度(メニュー画面で何人が参加しているかが確認可能)だったが,サービス開始時に一体どのぐらいの人数が同時にプレイするのか,そして人が多くなることでプレイヤー相互の負担がどれほど軽減されるのかも気になるところである。
道具や資源は同志の共有財産。無駄遣いはゲーム進行を妨げるかも!?
もう1つ面白かったのは,プレイ中の街や島に存在するものは,基本的にプレイヤー同士で共有されるという点だ。砲台や乗り物は,誰が生産したとしてもほかのプレイヤーは自由に使うことが可能で,さらに敵を攻撃するための砲弾の数なども全員の持ち物として数えられている。誰かが砲台で1発撃てば,共有している砲弾の数が1発減る。逆に誰かが攻撃中でも,別のプレイヤーが工作台で砲弾を生産することで補充されていくのである。
これは生産や修繕のために消費される資源についても同様で,とくに序盤の資源の少ない状況では,必要ないものは無駄に作らないほうが賢明だろう。
それを踏まえたうえでゲームの定石が掴めてくると,互いにコミュニケーションを取らなくとも,メニュー画面で現在の街の状況を見るだけで,自分が今何をすべきなのかが自然にわかるようになるというのも,本作に秘められた面白さの1つのように感じられた。
またとある街では,ゲームの進行には目もくれず,アイテムを使って黙々と街の中にミニスケープ的な情景を作っている人も見かけた。ほかのプレイヤーの迷惑にならない範囲での楽しみ方としてはもちろんありで,自由な遊び方ができる本作を象徴する遊び方の一例である。ちなみにこのときのプレイヤーは,ほかのプレイヤーと共有しないアイテムを使っていたことも好ましかった。
このαテスト版のクリア条件である「250人の人民を助ける(=250個のマトリョーシカを持ち帰る)」という目的は,テストゆえのいくつかの障害が重なったこともあって,残念ながら筆者は一度もそれを達成するところに立ち会えなかった。一度プレイを終えて再開したときに,それまでプレイしていた街がすでに壊滅しているということが多く発生し,新規の街でやり直すという繰り返しが続いたのだ。
ただ,そんな状況にも関わらず,事実確認やスクリーンショット撮影のためにログインしてなんとなくプレイしてみると,気付かないうちにかなりの時間が過ぎていたということが何度もあり,ちょっとした中毒性も感じられる。
特殊な仕組みを多く持ったゲームだけに,ここからのバランス調整は大変そうで,開発に当たるQ-Gamesの手腕に期待がかかるところだ。気になるプレイ料金や配信日のほか,次回ユーザーに向けたβテストなどが開催されるのか否かも含め,筆者も続報を楽しみに待つこととしたい。
「The Tomorrow Children」公式サイト
- 関連タイトル:
The Tomorrow Children
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