プレイレポート
今度は「信長の野望」14タイトルを一気にプレイ。着実に進化を続けてきたシリーズの歴史を振り返る
その中でも特に有名なのが「信長の野望」と「三國志」シリーズであることには,議論の余地がない。「信長の野望」と「三國志」は,コーエーテクモゲームスの歴史シミュレーションにおける二枚看板と言っていいだろう。
その二枚看板の1つである「信長の野望」の最新作「信長の野望・創造 戦国立志伝」(PC / PS4 / PS3 / PS Vita)が,2016年3月24日に発売される。家臣から城主・大名まで,さまざまな立場で戦国の世を生き抜く「武将プレイ」が可能になるほか,攻城戦・海戦が本格導入され,戦中において発生するミッション「陣中録」も追加されるなど,合戦のシステムも大幅に進化。さらには,真田幸村関連のシナリオやイベントを拡充し,これまで関ヶ原の戦いの時期までだった歴史イベントも,幸村が活躍した大坂夏の陣まで描かれるとのこと。加えて「大坂城」「真田丸」もリアルに再現されるなど,ドラマのファンが楽しめそうな要素も追加されている。
さて,2016年1月に,「三國志」シリーズの最新作「三國志13」のリリースに先駆けて,筆者が三國志の全ナンバリングタイトルを踏破する記事を掲載し,それに大きな反響をいただいた。であれば,まもなく「信長の野望」の最新作が出ようとする今,「信長の野望」シリーズを通してプレイしてみようというのは,自然な流れだ。
……とはいえ,「信長の野望」にナンバリングタイトルはないうえ,フィーチャーフォン/スマートフォン向けのヒットタイトル「100万人の信長の野望」や,MMORPGである「信長の野望 Online」,登場人物が猫になった「のぶニャがの野望」などなど,非常に幅広く展開されている。
これらすべてをプレイするのはあまりにも散漫と思えるので,今回は「PCでプレイできる,歴史ストラテジーとしての信長の野望」に絞ってみることにした。
※プレイにあたっては,2013年に発売された「『信長の野望』 30周年記念歴代タイトル全集」と,2014年発売の「信長の野望・創造 with パワーアップキット」を使用している
さて,日本におけるPCストラテジーゲーム市場の基礎を作ったと言っても過言ではない「信長の野望」は,どのようなゲームとして誕生し,どのように成長してきたのだろうか。順に見ていこう。
信長の野望(1983年)
初代「信長の野望」は,当時「マイコン(マイクロコンピュータ)」と呼ばれていた非常に限定されたスペックのPCで開発された。使用言語はBASICで,ソースを書いたのはデザイナーたるシブサワ・コウ自身である。
かなりの余談になるが,当時のPCはスペックが低かっただけでなく,記録メディアとしてはまだカセットテープが主流だった。このため「信長の野望」には「カセットテープ版」と「フロッピーディスク版」が存在し,前者は後者と比べると機能が制限されている。
ゲームとしてはシンプルなものだが,既にこのとき,「信長の野望」の基本的なコンセプトは完成していた。以下にその要素を列挙してみよう。
- プレイヤーは戦国大名となって全国統一を目指す
- プレイヤーは戦争によって他国を征服するだけでなく,自国を富ませ,それによってより多くの武力を行使できるようにしなければならない(富国強兵)。
- 領地に住む民衆もシミュレートされており,苛政が過ぎると反乱(一揆)が起きる。
- ゲーム内の経済は「金」と「米」で回っている。
「信長の野望」がほかのストラテジーゲームと違っていたのは,この「領地を経営する」「ゲーム内に経済が存在する」という点だ。
「信長の野望」が世に放たれる以前にも,アナログのウォーゲームをベースにしたPC向けストラテジーゲームは存在していた。だが「信長の野望」は戦争だけに焦点を絞るのではなく,国家をマネジメントするという要素を強く打ち出したのである。
このこともあって,「信長の野望」は,当時のメディアから「マネジメント技術を磨けるゲーム」「経営センスが問われるゲーム」などといった文脈で紹介されることも多かった。
さて,大枠の話はさておき,ゲームとしての「信長の野望」を見てみると,これはこれでなかなか特徴的なゲームになっていることが分かる。
まず,当時のPCスペックを反映するかのように,マップが狭い。登場するのは日本の中部に存在する17国のみである。加えて,プレイヤーが担当できるのは織田信長か武田信玄のみだ。
また,グラフィックスも最低限の表現で作られており,武将の顔グラフィックスは存在しない。そもそも本作には一介の「武将」という概念がない。ゲームに登場する人物は,それぞれの国を治める「戦国大名」だけだ。
一方で,既にこの段階において,「戦国大名のパラメータ」は存在していた。「健康」や「野望」といった数値が戦国大名に設定されていたのである。
が,ここもまた面白いところで,これらのパラメータは固定値ではなかった。ゲームを始めるときに各種能力値がランダムで決定され,それによってゲームの展開は変わってくるのである。
また,内政は全国マップで行うが,戦闘は国ごとに異なる戦闘マップで行う。マップはヘクスが採用されており,時代を感じさせる。
ユーザーインタフェース(以下,UI)は初期の三國志シリーズでも見られたCharacter User Interface(CUI)で,コマンドは番号入力によって行う。一見すると不便だが,「三國志」のプレイレポにも書いたように,慣れていれば下手なマウスオペレーションよりは快適だったりする。
ゲームの展開として言えば,マップが狭く,また細かなバグが残っていたため,「裏ワザ込みの定石」といったものが成立しているゲームである。が,無論それなしでは勝てないというものでなく,真正面から戦ってもきちんと天下統一は可能だった。
ただ「台風」などの自然災害イベントが強烈な効果を持つため,「序盤に台風が来たら諦める」といった運ゲー的な展開となってしまうことも多い。
行動管理のメカニズムは「1つの領国につき,1ターンに1コマンド」という直感的なもので,4ターンで1年(つまり1ターン=1季節)となる。
本作は難度を上げれば上げるほど運の要素が強くなり,またそれでなくても,序盤は何かと運に左右される。今遊んですごく面白いかと言われれば,いろいろと苦しいところがある,というのが正直なところだ(無論,今現在でもこのレベルに達していないゲームは見かけるが)。
だが「信長の野望」というゲームの設計思想の根底部分は,これ以降のシリーズ作品に引き継がれていく。そして本作も含め,「信長の野望」がシリーズとして成功を収めていくその歴史こそが,シブサワ・コウが最初に作り上げたゲームデザインの面白さを,見事に証明していくことになるのだ。
信長の野望・全国版(1986年)
「信長の野望・全国版」(以下,全国版」)は,初代「信長の野望」を正統進化させた作品である。プレイヤーは,北は北海道(の南端)から南は鹿児島までの日本全国50か国から自身が担当する戦国大名を選択でき,ゲームは常に全国規模で動き続ける(17か国モードもある)。
基本となるゲームシステムには初代から大きな変化はないが,ゲームバランスにはさまざまな調整が施されている印象だ。
行動管理は1領地=1コマンドで前作同様だが,理論上最大49か国に命令を下さなければならないこともあって,領地を「委任」することも可能になった。委任した国は,プレイヤーが設定した方向性に従って経済を発展させたり軍備を増強したりするが,場合によっては勝手に隣接国を攻撃したり,謀反を起こして独立したりといったデメリットも発生する。
本作には,まだ「武将」というシステムは実装されていない。だがこのように「プレイヤーの意志とは関係なく行動を起こすことがある」という仕掛けは,プレイヤーに「武将」の存在を思わせるに十分だった。
もっとも,これは武将がキラ星のごとく登場するゲームが当たり前になった後,一周回って思うことであり,筆者の記憶が確かであれば,「全国版」が発売された当時は,「謀反や勝手攻撃といったシステムは,部下となる武将がいないと不自然に感じる」といった感想が見受けられた。このあたりは「三國志」で既に武将が登場していたことと無関係ではないだろう。
本作では歴史イベント(「本能寺の変」イベント)が実装されたことも大きなトピックだ。このイベントによって信長(プレイヤー)が明智光秀に倒されると,プレイヤーは羽柴秀吉となってゲームを継続することになり,旧織田領は羽柴・柴田・明智によって分割される。イベントの規模にしても,その後の展開にしても,「ゲームに重大な影響をおよぼす歴史イベント」の先駆者と言えるだろう。
ともあれ「全国版」は,ゲームとして非常に完成度が高い。バーチャルコンソール(Wii U / Wii)やゲームアーカイブス(PS3 / PS Vita / PSP)でプレイできるほか,iOSアプリとしても提供されているので,「武将が出てこなくても,戦国時代の国盗りゲームはこんなに面白い」ということをぜひ実感してほしい。
信長の野望・戦国群雄伝(1988年)
「信長の野望・戦国群雄伝」(以下,群雄伝)は,現代に至る「信長の野望」シリーズの,直接の原点と呼べる作品かもしれない。
ゲームシステムとして最も特徴的なのは,「武将」のシステムが組み込まれたことだ(登場する武将は400名で,この段階で既に充実している)。これは「三國志」シリーズと事実上同じシステムを使っており,プレイヤーは戦国大名として,配下の武将を駆使しながら,天下統一を目指す。教育によって「政治」や「戦闘」のパラメータを上げるといったことも可能だ。
行動管理もまた武将を中心に組み直されており,各種コマンドは,それを行う武将の「行動力」を消費して実行される。1人の武将が複数の行動を行えることもあるので,プレイヤーが1ターンに入力できるアクションの数は「全国版」から飛躍的に増えているが,金を消費するアクションであれば,経済力によって上限が自ずと定まるため,「ひたすらアクションを叩く」ゲームにはなっていない。
戦闘にも新要素が入っており,野戦だけでなく籠城戦も別マップで展開されるようになった。もっとも戦闘マップ自体は相変わらずのヘクスマップで,戦闘のテイストもこれまでと大きくは変わらないが,「野戦」には時刻の概念が追加されたことで夜襲なども可能になった。
かようにシステムを大幅に追加し,操作量が多くなる方向へ舵を切った「群雄伝」だが,一方で規模を縮小した側面もある。それがマップで,「群雄伝」では東北と九州がマップからオミットされた(これには当時のPCが持つ性能的な限界もあったのではと推測される)。
ともあれ本作は,「戦国大名として配下の武将をマネジメントし,国を富ませ,兵を養って,天下統一を目指すゲーム」としてのスタート地点となった。
信長の野望・武将風雲録(1990年)
「信長の野望・武将風雲録」(以下,風雲録)は,「群雄伝」を拡張・整理したような作品だ。
前作の「群雄伝」は,武将という新システムを中心に組み立てられたゲームだった。一方で「風雲録」は,より武将をマネジメントすることに力点が置かれたシステムをとっている。
このことは,行動管理システムに顕著に現れている。
群雄伝において,アクションは武将個人の行動力を消費して行われた。だが風雲録では,大名(ないしその国の城主)の能力値をベースにした,国ごとの行動力を消費して,アクションを実行する。
面白いのは,国に設定される「行動力」が,大名や城主の「政治」パラメータによって決まる一方で,大名や城主自身が行動すると,行動力を大きく消費してしまうところだ。
このため,優秀な武将を大名や城主にし,実際の行動はその配下に就けた武将が行う,というのが理想的な形になる。優秀な大名や城主自身が動いてしまっては,せっかく行動力を増やしてもあまり意味がなくなってしまうのだ。
実に心踊る,そしてリアルなジレンマである。管理職というのは,「何もしていないように見える」のが最も理想的な勤務状態なのだ。管理職本人が動く事態は,だいぶ切羽詰まっているということである。
このようにアクション管理が大幅に整理された本作だが,登場する武将の数やマップの広さという面においても拡張が図られており,東北や九州も再びゲームエリアに組み込まれた。“独眼竜”や“首おいてけ”が好きな人でも安心だ。
また技術や文化という概念が新しく実装された。技術開発によって鉄砲の生産などが可能となり,文化を高めていくと経済がより良く回って,武将の教育効果も高まるというメリットがある。
個人的にいいと思ったのは,全国マップが画面一枚に収まっていることだ。全状況を一望しながらプレイが進められるというのは,非常に快適だ(遺憾ながらこの快適さは,作品が重ねられるにつれて失われていく)。
風雲録は,ゲームとしてのまとまりがとても良く,プレイしていてUIや情報管理で妙なストレスを感じることもない,優れた作品として完成している。
信長の野望・覇王伝(1992年)
「信長の野望・覇王伝」(以下,覇王伝)は,前々作「群雄伝」を拡張したようなゲームとなっている。
まず特徴的なのは,マップの変化だ。これまで領地単位(エリア単位)で戦ってきたものが,「覇王伝」では城単位での管理に変わった。城と城は街道で結ばれており,自分の城と街道でつながれていない城への移動や攻撃はできない。このポイント・トゥ・ポイント式のマップは,これ以降のシリーズ作品に引き継がれていく。
またマップの表示自体も,大きく変化した。1画面に全国地図が入っていた風雲録に対し,本作では横長のマップをスクロールさせて確認するようになった。ただしこれは当時の話。1920×1080ドット解像度の画面があればマップ全体が入りきるので,現在の一般的な環境でプレイするなら「超横長の1画面マップ」と言ってもいいだろう。
各種アクションは武将ごとに実行するシステムで,アクションを行う武将は,それぞれの武将に定められた「気合」を消費して行動を完了させる(どれくらい気合を使うかはプレイヤーが指定できる)。このため,1人の武将が1ターンに複数回行動することも可能だ。
だがこれは同時に,配下の武将数が増えるに従って,コマンド入力数も急激に増えていくことを意味する。無論,金銭などによって行動数が制限されはするが,本作では総じてコマンドの入力数が多くなりがちだ。
本作で最も興味深いのは,論功行賞および知行制のシステムだろう。
これまでのシリーズ作品に登場した武将には「忠誠度」が設定されていたが,これは俸禄(給料のようなもの)を払えなかったりすると下がり,褒美を与えたりすると上がる,といった割とシンプルなものだった。
だが本作では,戦争で手柄を立てた武将には「勲功」が蓄積され,勲功が高まっているのに褒美がないと,その武将が不満を抱き,忠誠度が下がる(しかも本作では忠誠度が数値として明示されない)というシステムになっている。
そこで彼らを管理する側としては,勲功を上げたものには「論功行賞」を行って相応の褒美を出していくことになるのだが,これがなかなか厄介なのだ。
本作における最も一般的な褒美は知行の増加,その武将により広い領地を与えることだが,当然与えた分だけ大名の直轄地は減り,そこから得られる収入も少なくなる。行き過ぎると兵糧生産などが思うように行えず,大名家に悪影響をもたらすことになる。
従ってプレイヤーは,褒美とする知行を確保するためにも,農地開発に励まねばならないが,最も効率的なのが「他人から土地を奪う」ことであるのは,言うまでもない。
そして歴史に詳しい読者であれば,防衛戦争が続いた場合,手柄(勲功)は増えるが,知行として与えるべき土地は増えないという罠がある点にも気づくだろう。有能な武将を手元に留め続けるためにも,プレイヤーは積極的に他国へ攻め込み,勝ち続けるしかないのである。
褒美としてはこれ以外にも,官位を与えたり,大名の名前から一文字与えたり(実際に武将の名前が変わる)といったことができる。
戦闘も変化しており,ユニットに「方向」の概念が付与された。ただ本作の戦闘はマップの広さに対してユニットの移動力が少ないため,普通にプレイしているとややダルさを感じる。この点については,戦闘を委任してしまうとサクサク進むので,合戦の現場で戦術的に頑張るよりは,国を富ませてより多くの兵を揃えたほうが楽だろう。
「覇王伝」は野心的なシステムをいくつも採用した作品だが,UIは全体的にクリック数が多くなる傾向でまとめられており,またフルHD画面でプレイすると各種ウィンドウが広大な画面に飛び散って表示されるため,マウスカーソルの移動距離も大きくなりがちだ。プレイの際は,画面を低めの解像度にしてプレイすることを強く推奨したい。
信長の野望・天翔記(1994年)
「信長の野望・天翔記」(以下,天翔記)は,「風雲録」を発展させた作品と言える。前2作は1ターン=1か月だったが,本作では1ターンで1季節が経過するスピーディなものになった。
本作の特徴は,「軍団」の概念にある。ゲーム中で行うアクションは,軍団長(最初は戦国大名その人)の配下にある武将が「行動力」を消費して実行する。
使える行動力の数値は,軍団長の能力,とくに「野望」パラメータに依存し,同じ軍団に所属する武将の間でシェアされる。このため,管理すべき城の数が少ない序盤は,基本的に優れた人物である大名が軍団長となっていることもあり,1軍団だけで,プレイヤーが望むアクションをすべて実行できてしまう。それこそ経済的な理由が制限となることも多い。
だが管理すべき城の数が増え,経済的にも安定してくると,優れた軍団長であっても行動力が不足し始める。プレイヤーはどこかで新しい「軍団」を設立し,その長がもたらす行動力でアクションを実行しなければならなくなるのだ。
当然ながら使える行動力は高いほうがいいのだが,ここで素直に「野望」パラメータが高い武将を軍団長にしてしまうと,それだけ謀反の確率が高まってしまう。かといって裏切らなさそうな武将を長にしても,早々に行動力が足りなくなって新たな軍団を作らざるを得なくなるというわけだ。このあたり,なかなか良い形でのジレンマがある。
戦闘も大幅に変化しており,戦闘が起きた地域を中心として,隣接するエリアも「戦場」として扱われるようになった。このため,1度の戦闘で敵の城が複数落ちるといったことも起こりうる。
また面白いのは,この「戦場」に含まれたエリアの勢力が,そこで戦う勢力と直接の利害関係がなくても戦闘に関与できるところだ。戦争を始めた二勢力が激しい衝突で消耗したところを見計らって火事場泥棒を働くといったプレイも可能となる。
そのほかの面白い試みとしては,AIのコントロールに人間が口を挟めるという要素がある。本作ではある程度ゲームを進めると軍団を作って統治を委任していくのが基本路線となるが,そのAIの振る舞いに対して「指導」が行えるのだ。
なおAIの側もプレイヤーの行動から学習して方針を決めていくため,「なんでコイツは無茶な喧嘩をふっかけるんだよ!」と思う場合は,自分も無茶な喧嘩をふっかけまくっている可能性が高い。
また,武将の成長もクローズアップされている。教育や合戦によって経験を積んだ武将は,ときにその才能を大きく開花させ,とんでもなく強力な武将へと成長する……というか成長しすぎて,登場が遅い有名武将が,初期から働くうち才能を開花させた無名武将の前にあっけなく敗れるというシーンも,よくある。
ゲームのテンポは良く,また広域を扱った戦闘は展開もダイナミックだ。UIは非常によく練りこまれており,クリックの多さとマウスカーソルの移動量の多さに悩まされることもない。現代においても心地よく楽しめる作品と言えるだろう。
信長の野望・将星録(1997年)
「信長の野望・将星録」(以下,将星録)は,信長の野望において初めて「1枚マップ」が採用された作品だ。これに伴い,非常に多くの新要素が登場している。
そういった意味で本作もまた,「群雄伝」同様,これ以降の「信長の野望」の基礎を作ることになった作品と言えるだろう。
将星録のマップは,無数のスクエアで構成された,1枚の巨大な日本地図となっており,基本的には内政も戦争もこのマップ上で行われる。
「内政がマップ上で行われる」と書くと分かりにくいが,土地を開墾したければ,その場所に担当武将を移動させて「開墾」を指示すれば,そのスクエアが水田(田畑)に変化し,そのエリアを支配する城の統治者は,より多くの収穫を得ることになる,という感じだ。
金を稼ぐための「町」や,兵力の源となる「村落」も,同様にマップ上に建設し,発展させていく(最大で3レベルまで上昇する)。
戦争もまた,基本的には戦闘ユニットをマップ上に配置し,移動させる形で行われる。開墾を指揮していた武将に,他勢力の軍勢が攻撃を仕掛け,その武将を捕らえるといったことも起こるし,攻め込んだ先のスクエアを焼き払うなどして,敵国の内政にダメージを与えることも可能だ。
戦闘ユニット同士がぶつかったり,城攻めが発生したりすると,一枚マップとは別の抽象的な戦闘マップが開き,戦闘はその上で行われる。
ここでは1人の武将が指揮する部隊が複数のユニットに分かれて戦うのだが,本隊となるユニットが撃破されると,その時点で負けとなる仕組みだ。側面や背面から攻撃されてむき出しになった本隊に集中砲火されて壊滅,といった展開になりやすいので,複数部隊で連携を取ることが望ましい。
将星録は,このように斬新なシステムが数多く取り入れられた野心的な作品だったが,野心的なだけに先例がほぼなく,結果としてUIはあまりこなれていない。特に現代的な「この手のゲーム」に慣れている人がプレイすると,致命的なくらい「思うように動かせない」こともあるだろう。
加えて,グラフィックスの問題もある。スクエアが小さいため,ぱっと見ただけでは,「そこに何があるのか」が分かりにくいのだ。慣れれば「これは市場」「これは水田」といった判別がつくようにはなるが,それまでは相当苦しい。
だが,だからといって本作がつまらないかというと,そういう話でもない。簡単に言えば,本作は「面白さがつかみにくい」ゲームなのだ。
このため,まずは本国をAIに完全委任して,1〜2年ほど回してみるのがオススメだ。AIが途中まで完成させた状況を見て,そこから本作の定石をつかんでいくのである。
また,確かにUIには未完成な部分が目立つが,「面倒くささ」はあまり感じられない。要は,あまりにも先駆的な要素が多すぎるがゆえに,操作が独特すぎるのが問題なのであって,それは慣れによって克服できる範囲の問題なのである。
ともあれ本作は,「1枚マップの上で内政も戦争も行っていく」という,いわばシムシティ的な「信長の野望」の,スタート地点となった。このシステムは,これ以降のシリーズに引き継がれていくことになる。
信長の野望・烈風伝(1999年)
「信長の野望・烈風伝」(以下,烈風伝)は,将星録を大幅に改善した作品となっている。ユーザーインタフェースも,グラフィックスも,「将星録でやりたかったのはこういうことか!」と納得できる作品だ。
烈風伝における最大のポイントは,グラフィックスの強化だ。
本作では解像度が向上したことに加え,オブジェクトの色使いが大幅に見直されたことにより,1枚マップ上にどのようなオブジェクトが置かれているかがひと目でわかるようになった。
「ストラテジーゲームでグラフィックスなんて二の次だろう」と思われるかもしれないが,1枚マップの上で直接オブジェクトを置くことが「内政」となる本作においては,そのオブジェクトの視認性がゲームとしての快適さに直接影響するのだ。
UIも大幅に改善されており,1枚マップ上に武将を送り込まねばならなかった前作に比較し,「その城の有効範囲をどのようにデザインするか」を決定する専用のウィンドウが開くようになった。
またこのとき,複数の武将に作業を担当させることもできる。これによって作業効率は大幅に上昇する。
ストラテジーゲームが「状況判断」「計画立案」「行動」「修正」という流れを繰り返すゲームである以上,これらすべての快適さ・正確さを司るグラフィックスとUIは,ゲームとしての良し悪しに極めて強く影響する,ということを,本作のプレイで改めて感じさせられた。
また,各武将には「威信」をどう評価するかという性格付けがなされている。それを重視する武将であれば,威信が高い武将に雇用された場合,最初から高い忠誠度を持つことになる。
「威信」(後の作品では「名声」などと名前を変える)というアイデアは,これ以降の信長の野望シリーズにおいて,外交に大きな影響を与えていくことになる。
なお戦闘にも新アイデアが投入されており,参加する部隊が多ければ多いほど,その全体を指揮する武将の能力が問われる,という仕組みになっている。具体的には,優れた武将であれば,中規模以上の戦闘で使用できる陣形の種類が多くなるといった感じだ,
これ自体は優れたアイデアなのだが,しかし戦闘のUIはいささかスムーズさに欠ける仕上がりとなっており,とにかく敵ユニットや城門などをクリックするのが難しい。このあたりは,本作における数少ない残念な部分と言えるかもしれない。
総じて言えば,本作は「1枚マップの上ですべてを行う」というシステムとUIの基本が完成した作品と言える。
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- ライター:徳岡正肇
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