COMPUTEX TAIPEI 2015の期間中,GIGA-BYTE TECHNOLOGY(以下,
GI
GA
BY
TE)が高層ビル「台北101」にプライベートブースを構えているという話は
すでにお伝え済みだが,今回は,そこに,AVerMedia Technologies(以下,
AVer
Me
dia)製の
ハードウェアビデオエンコーダを搭載するゲーマー向け薄型ノートPC
「
AORUS X5」があったという話をお届けしたい。
AORUS X5。GIGABYTEがマザーボード以外のゲーマー向け製品で統一的に使っているブランド「AORUS」の新製品となる。なぜマザーボードの「G1 Gaming」とブランドが分かれているのかはよく分からないが,GIGABYETのスタッフ複数名に聞いた限りでは,俗にいう「縦割り行政の弊害」的な感じだった
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AORUS X5は,15.6インチ,解像度2880×1620ドットのIPS液晶パネルを採用し,NVIDIA独自のディスプレイ同期技術「G-SYNC」に対応するノートPCだ。390(W)
×270(D)×22.9(H)mmという筐体に,「GM204」コアの「GeForce GTX 965M」を2基搭載し,SLI動作させているのもポイントといえるだろう。
Broadwell世代の4コアCPU「Core i7-5700HQ」を搭載している点や,Serial ATA 6Gbps接続のM.2スロット×3と2.5インチストレージトレイ×1を備える点など,スペックは文句なしにハイクラスだが,それに飽き足らず,GIGABYTEは,AVerMediaのハードウェアビデオエンコーダを搭載してきた,というわけである。ゲーマー向けのハードウェアエンコーダを採用するノートPCはこれが世界初とのことだ。
デバイスマネージャからエンコーダを確認したところ。積極的にはアピールされていなかったが,一応「Live Streaming Engine」という名前もあった
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デバイスマネージャから「CM311B」という型番を確認できるこのエンコーダは,PCHとPCI Express 2.0 x1接続され,最大で1080pの60fps録画(※リアルタイム配信時は30fpsまで)が可能とのこと。AVerMedia製デバイスではあるものの,同社のゲーマー向けキャプチャデバイスで用意されるような専用設定ソフトは用意されておらず,「XSplit Gamecaster」や「Open Broadcaster Software」(OBS)から指定すれば,すぐに使えるようになっているという。
AORUS X5には,XSplit Gamecasterの1年間のプレミアム利用権が付属。XSplit Gamecaster側で解像度やフレームレートなどといった基本設定を行うと,あとはXSplit Gamecaster側の操作だけで,ゲームプレイのリアルタイム配信をさくっと行えた。右の写真で奥にあるディスプレイは,ゲーム画面をミラーリングで出力できるという例のために用意されたもの
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ハードウェアエンコーダを搭載する以上,たとえばゲーム機のプレイ映像をAORUS X5に入力すれば,総合的なゲームキャプチャ&配信環境を実現できるのではないかと考えた人もいると思うが,結論からいうと,AORUS X5はビデオ入力端子を持たないため,物理的に対応しない。
説明員いわく,「もちろん検討はしたが,今回は薄型筐体でSLIを実現することのほうを実現した」とのことだった。実際,HDMI入力だけなら付けられたが,録画しつつ低遅延でパススルー出力するための機構までは,搭載するスペースを確保できなかったのだそうだ。
AORUS X5の側面および背面インタフェース。HDMI出力は本体向かって右側(※左側にも「HDMI」と書かれた場所はあるのだが,蓋が被さっていた)で,別途背面側にアナログRGB(D-Sub 15ピン)出力が用意されており,ポート類の配置に苦労したことが窺える
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ちなみにこちらは,17.3インチで解像度1920×108ドットのG-SYTNC対応液晶パネルを搭載するバリエーションモデル「AORUS X7 PRO-SYNC」。「GeForce GTX 970M」のSLI構成を採用する一方,AVerMedia製エンコーダは採用しないので,現在,ハードウェアエンコーダ対応ノートPCはAORUS X5のみということになる
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もう1つ,GeForce GTX 965MをSLIで構成しているなら,自動&手動両対応のNVIDIA製キャプチャ機能「ShadowPlay」を使えばいいのではないかという疑問を持った人もいるのではないかと思う。この点も聞いてみたが,GIGABYTEでは,仮にシステム負荷がそれほど大きくないとしても,限られた電源および温度リソースのなかでShadowPlayが一定の負荷を生むことにより,GPUやCPUの自動クロックアップに負の影響をもたらす可能性があり,その可能性を排除するために,エンコーダを別途搭載することにしたのだそうだ。
もちろん,AVerMedia製エンコーダの利用は強制ではないため,ユーザーが任意で選択すれば,ShadowPlayを使ったり,あるいはCPUによるソフトウェア処理を使ったりすることもできる点は付記しておきたい。
GIGABYTEによると,AORUS X5は時期こそ未定ながら,それほど遠くない将来に日本市場で発売すべく準備中とのこと。主にオンラインの通販サイトで展開予定だそうだ。税込価格で30万円を下回るよう調整中だという。
返すがえすもHDMI入力を持たないのは惜しいが,全体としては非常にバランスが取れているので,PCゲームの配信に特化したG-SYNC対応ノートPCとして,特定の層のニーズには合致するのではなかろうか。