レビュー
「ポケモン ルビー・サファイア」が「ポケモン X・Y」のシステムで生まれ変わった
ポケットモンスター オメガルビー・アルファサファイア
本稿では,製品版の「オメガルビー」を実際にプレイをしたうえで,ゲームの内容やプレイフィールなどを紹介していく。なお,「オメガルビー」と「アルファサファイア」では,登場するポケモンが一部異なったり,敵となる組織が違ったりはするものの,それ以外のゲームシステムや基本的なストーリーの流れは同じとなっている。
12年前リリースの「ポケモン ルビー・サファイア」を
「ポケモン X・Y」のシステムをもとにリメイク
1996年から続く「ポケットモンスター」シリーズ作品では,プレイヤーが若きポケモントレーナーとなり,最初にもらうポケモンや野生のポケモンを育成して,ポケモントレーナーのチャンピオンを目指すという共通の設定があるが,本作でもそれは同様だ。
元となった「ポケモン ルビー・サファイア」は,それまでゲームボーイ向けにリリースされていた本シリーズでは初となるゲームボーイアドバンス向け作品だった。ハードウェアが変わったことによるグラフィックスや演出の強化,ポケモンの「せいかく」(性格)や「とくせい」(特性)といった能力をはじめとする新要素の導入などが高い評価を得て,2014年9月30日時点で,全世界1622万本のセールス(任天堂調べ)を記録している。
今回のリメイクにあたっては,約1年前の2013年10月にリリースされた「ポケットモンスター X」「ポケットモンスター Y」をベースにしたグラフィックスやゲームシステムが採用されており,12年前にはドットグラフィックスで表現されていたホウエン地方(本作の舞台となる地域)を,3Dグラフィックスで冒険できる。
かつてゲームボーイアドバンスで「ポケモン ルビー」をプレイした筆者は,正直なところオープニングの引っ越しのシーンや,オダマキ博士にポケモンを借りてバトルをするくだりはすっかり忘れていたのだが,そのシーンを3Dグラフィックスの「ポケモン オメガルビー」で思い出すという,懐かしくも新しい,不思議な感覚が味わえた。
最初に手にするポケモンは3匹から選ぶ。旅の終わりまで活躍してくれるパートナーだ |
ハルカ(ユウキ)の父,オダマキ博士。主人公は彼から最初のポケモンをもらうことになる |
「ポケモン X・Y」のゲームシステムがさらに洗練。
「ポケモンマルチナビ」が便利すぎる
筆者はこれまで,ほとんどの「ポケットモンスター」シリーズ作品をリアルタイムでプレイしてきているが,自分では,プレイヤー同士で対戦するためにじっくり吟味しながらポケモンを育てていくタイプではなく,1人でポケモン図鑑をコツコツ埋めながら,自分好みのポケモンを連れて,RPGとして物語を楽しむという,どちらかといえばライト層寄りのプレイヤーだと思っている。
そんな筆者が本作をプレイしてまず感じたのは,「『ポケモン X・Y』以上にプレイヤーに優しい方向へ進化している」ということだった。懐古的なよさももちろんあるが,それだけではなく,「ポケモン X・Y」のゲームシステムが1年でさらに磨きをかけられ,隅々まで配慮が行き届いた作りになっていることが伝わってくるのだ。
それを如実に感じられたのが,「ポケモンマルチナビ」の存在である。ポケモンマルチナビは通常,3DSの下画面に映し出されていて,ゲームを進めていくことで4つの機能が備わっていくものなのだが,その中にある「ずかんナビ」が実によくできている。
下画面に映し出されているのがポケモンマルチナビ。右側の小さな画面をタッチして,4つの機能を切り替える |
ずかんナビは周囲に出現するポケモンの分布図を表示。最初はシルエットだが,捕まえるとちゃんと姿が表示されるようになる |
ずかんナビが赤く光ったら,近くにポケモンが隠れている証拠。忍び足で近づいて画面を切り替えると,ポケモンのデータが表示される。データは距離が近いほど正確になる |
これはプレイヤーの周囲にどんな野生のポケモンが出現するのかが記録されていき,まだ捕獲していないポケモンが一目で分かるという,これまでにありそうでなかった機能を持ったものだ。また,本作では野生のポケモンの体の一部が草むらや水面上に飛び出していることがあるのだが,それに「忍び足」で近づいて,ずかんナビをタッチすることで,そのポケモンのデータを確認できるという機能もある。「忍び足」は本作から使えるようになった新しい要素。3DSのスライドパッドを少し“入れる”ことで,主人公がゆっくりと歩く。この状態で草むらから体の一部を出しているポケモンに接触すると戦闘に。特殊な技を覚えたポケモンも多いので気を引き締めて戦おう。
これにより,それまで一部を除いてランダムでしか遭遇できなかった野生のポケモンに,種類や能力を把握したうで,任意に遭遇できるようになったというわけだ。ポケモンの個体差にこだわるヘビープレイヤーはもちろん,筆者のようにポケモン図鑑をコツコツ埋めていきたいプレイヤーにとっても革新的な新要素だ。
また,ゲーム内のニュースを3DSの下画面で随時見られるポケモンマルチナビの機能「テレビナビ」も,個人的にはかなり気に入った。これはプレイヤーが大きなイベントをクリアしたり,ゲーム中に登場するテレビクルーの取材に答えたりする(インタビューへの回答としてメッセージを入力する)と,ホウエン地方のニュースとしてリアルタイムに伝えられるというもので,さらにすれちがい通信を行うと,ほかのプレイヤーのニュースも伝えてくれる。「ポケモン ルビー・サファイア」では街にあるテレビで楽しめた要素が進化したのだ。
ポケモンマルチナビには,「ずかんナビ」「テレビナビ」のほかに,マップを確認できる「マップナビ」,「ポケモン X・Y」で実装されたPSS,ポケパルレ,スパトレが組み込まれた「プレイナビ」がある。テレビナビはほかの3つと比べると攻略面での意味合いは薄いのだが,かつて“テレビを持ち歩く”ことを夢見ていたアラフォー世代の自分が,ワンセグ携帯を初めて持ったときのような感慨深さがあった。
上画面でのゲームの盛り上がりとはあまり関係なく,淡々とニュースが流れていく様子も何やらシュールで面白く,筆者はテレビナビの画面を開いてプレイするスタイルが定着している。ぜひ一度試してみてほしい。
マップナビでは,ホウエン地方のマップと主人公の現在位置,街や道路の名前などを調べられるほか,ポケモンの分布図や,再戦が可能なポケモントレーナーの位置なども表示可能だ |
プレイナビには,ほかのプレイヤーとコミュニケーションできる「PSS(プレイヤーサーチシステム)」,ポケモンとふれ合える「ポケパルレ」,ポケモンを鍛えられる「スパトレ」といった機能がある |
Yボタンに登録できる道具は,「ポケモン X・Y」を継承して4種類登録可能。Yボタンを押したあと,十字ボタンで選べる |
見覚えのある風景やポケモンにも新鮮さを感じるはず
前述のとおり,本作は「ポケモン X・Y」のシステムを継承し,時代に合った内容にブラッシュアップされており,キャラクターや背景は3Dグラフィックスで描かれ,マップ上の要所ではカメラの角度が変わって周囲の情景が映るような演出もある。また,街やポケモンジム内部の風景は個性的で,フランスをイメージしたという「ポケモン X・Y」のカロス地方とはまた違った雰囲気を楽しめるはず。さらに「ポケモン ルビー・サファイア」を知っている人は,同じ場所であるはずなのに,受ける印象が違うことに驚かされるのではないだろうか。なお,画面に関する仕様は「ポケモン X・Y」と同様に,特別なイベントとバトルシーンが3D立体視に対応している。
グラフィックスの進化は,冒険を共にするポケモン達の魅力も高めている。本作で冒頭から出会えるポケモンたちは,「ポケモン ルビー・サファイア」を知っているプレイヤーにとっては親しみのある存在であり,序盤から彼らと旅をして,動く姿を見られるのも本作のポイントといえるだろう。彼らのデータを記録したポケモン図鑑では,姿形と鳴き声のほか,アニメーションを見ることも可能となり,ポケモンを集めるモチベーションもグッと上がるだろう。
本作ではゲーム全般におけるBGMのアレンジも特筆もの。もともと評価が高かった「ポケモン ルビー・サファイア」のBGMが,さらに引き立てられており,音楽無しでゲームをプレイするのをためらってしまうほどだ。
筆者は携帯ゲーム機をプレイするときもヘッドホンはあまり使わず,ハード本体のスピーカーから直接流れる音を聞いて楽しむことが多いのだが,本作のBGMはニンテンドー3DSの内蔵スピーカーでもサラウンドがほどよく効いており,楽曲の魅力を高めている。
新規に追加された要素や機能が目立つ一方で,「ポケモン ルビー・サファイア」や「ポケモン X・Y」からなくなった要素もある。
「ポケモン X・Y」で印象的だった,プレイヤーキャラクターの見た目が変わるブティックでの着替え要素は,元となる「ポケモン ルビー・サファイア」に準じて存在しない。ポケモンの魅力をステージで競う「ポケモンコンテストライブ!」用に,プレイヤーのステージ専用衣装と,ここでもらえる特別なポケモン「おきがえピカチュウ」の衣装が用意されているが,コーディネート要素が無くなっているのは少々残念だ。
また,「ポケモン ルビー・サファイア」のキンセツシテ(ホウエン地方の大きな街の一つ)にあった「キンセツ ゲームコーナー」がなくなっていたことも個人的には寂しかった。正確には「閉店」という扱いだが,あるべきものが無い,という演出が,いろいろな意味で淋しいのだ。まぁ,このあたりは懐古主義中年プレイヤーの個人的な嘆きと捉えていただければと思う。
懐かしいストーリーだからこそ,ポケモンの進化ぶりが分かる
本作の発売後,ネットなどには「簡単すぎるのでは」という評価が見受けられた。筆者も実際にプレイしてみて,ゲームの進行ペースが思っていた以上に速いと確かに感じた。
これは使いやすくなったゲームシステムやインタフェースのほかに,「ポケモン X・Y」で変更された仕様が本作に引き継がれた「がくしゅうそうち」(ゲーム中に入手する道具。オンにしておくとバトル終了後に、バトルに出たポケモンだけでなく、連れているポケモン全員に経験値が入る)の存在なども影響しているかもしれない。「がくしゅうそうち」は任意にオンオフが可能なので、もう少し手応えがほしいと思ったら、オフにして進めるのも楽しみ方の一つだろう。
本作は,主に「ポケモン X・Y」で導入された新要素を,懐かしいシナリオのもとに体験する,というコンセプトで作られているのではないかと思う。筆者のように「ポケモン ルビー・サファイア」をプレイした経験がある人ならば,完全新作よりも“最新ポケモンの進化ぶり”が分かりやすいのではないだろうか。その意味で,シリーズからしばらく離れていた人にはとくに薦めたい作品である。また,「ポケモン ルビー・サファイア」では描かれなかった,ホウエン地方にまつわる新たな物語「エピソード デルタ」も楽しめるので,そちらもしっかりプレイしてほしい。
「ポケモン X・Y」から約1年という,「ポケットモンスター」シリーズとしては短い期間で発売された本作。こうなると次の新作が一体いつ出てくるのか気になるところでもあるが,それはひとまず置いておいて,筆者はもうしばらくホウエン地方の旅を続けることにしたい。
「ポケットモンスター オメガルビー・アルファサファイア」公式サイト
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(C)2014 Pokémon. (C)1995-2014 Nintendo/Creatures Inc. /GAME FREAK inc.
ポケットモンスター・ポケモン・Pokémonは任天堂・クリーチャーズ・ゲームフリークの登録商標です。
ニンテンドー3DSのロゴ・ニンテンドー3DSは任天堂の商標です。
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