レビュー
GTX 1080より100ドル安価な新型GPUは,2017年クリスマス商戦の主役となり得るか?
GeForce GTX 1070 Ti
(GeForce GTX 1070 Ti Founders Edition, ROG -STRIX -GTX1070TI -A8G -GAMING)
10月26日の記事でお伝えしているとおり,北米市場における搭載カードのメーカー想定売価は449ドル(税別)。これは「GeForce GTX 1080」(以下,GTX 1080)の同549ドルと比べると100ドル安く,一方で「GeForce GTX 1070」(以下,GTX 1070)の同349ドルと比べた場合には50ドル高いという位置づけになるわけだが,この新しいGPUは,2017年の年末商戦期で主役を張れるだろうか。
※本稿では,GPUおよびカード紹介パートを米田 聡氏が,ベンチマークパートとまとめを宮崎真一氏が担当します。
“GTX 1080 LE”的なスペックのGTX 1070 Ti
Pascalアーキテクチャにおいて,演算ユニットあたりのシェーダプロセッサ数は128基なので,シェーダプロセッサの総数は128
一方,メモリ周りのスペックはGTX 1070と完全に同じで。GTX 1080では10GHz相当(実クロック1.25GHz)のGDDR5Xグラフィックスメモリを組み合わせてあるのに対し,GTX 1070 Ti(とGTX 1070)は8GHz相当(実クロック2GHz)のGDDR5となる。メモリインタフェースは変わらず256bitなので,メモリクロック分だけ,GTX 1080のほうが優位だ。
表1は,そんなGP104世代のGPUを比較したものとなる。
従来モデルと同じデザインを採用するGTX 1070 Ti Founders Edition
ただ,PCI Express x16スロット部の近くにあるシルク印刷を見ると,パーツナンバーは「180
電源部は5+1フェーズ構成で使われているパーツもGTX 1080 Founders Editionと共通だった |
フェーズコントローラはuPI Semiconductor製でNVIDIAのOpenVRM規格に対応するフェーズコントローラ「uP9511」だ。基板裏に実装されている |
Micron TechnologyのGDDR5メモリチップは,刻印だけだとグレードが分からない。ただ,MT41J256M32のラインナップは6Gbpsと7Gbps,8Gbpsの3種類なので,GTX 1070 Tiの仕様上,8Gbps対応の「-80」と見てまず間違いないだろう。
独自デザインを採用し,クロックアップ動作モードを持つROG-STRIX-GTX1070TI
そのカード長は実測約300mm,クーラーは2.5スロット仕様で,Founders Editionと比べるとかなり大きなグラフィックスカードになっている。
2.5スロット仕様のGPUクーラーは,GPUの熱を6本のヒートパイプで2か所のヒートスプレッダ部へ送り,いずれも90mm角相当の3連ファンで冷却する仕様である。
2.5スロット仕様のカードを横から見たところ。ASUSによると,ヒートスプレッダの厚みを,2スロット仕様のクーラーと比べて40%広げることができるため,2.5スロットデザインを採用したとのことだ |
カード長はいわゆる300mm級。2.5スロット仕様で,厚さは実測約50mmということもあり,搭載できるPCケースは相応に選ぶ。この点は要注意だ |
外部出力インタフェースはDisplayPort 1.4
カード後方を覗き込むと,4ピン端子が2つ見えるが,これはファンを追加するための「FanConnect II」端子だ。PWMファンとDCファンの双方に対応しており,専用ソフトウェア「GPU Tweak II」を使うと,追加ファンの制御を行えるようになる。
ただし,最近のASUS製グラフィックスカードとして,ROG
3モードの動作クロックは以下のとおりで,OCモードを選択したときのみ,ROG
- OC:ベース1683MHz,ブースト1759MHz
- Gaming:ベース1607MHz,ブースト1683MHz(※工場出荷時設定)
- Silent:ベース未公開,ブースト1657MHz
後述するテスト環境でクロックの推移を追ったところ,OCモードは1962MHzまで,Gamingモードは1886MHzまで,それぞれ上昇しているのを確認した。
ちなみに,同様のテストをGTX 1070 Ti Founders Editionでも行ったところ,動作クロックは1911MHzまで上がるのを確認できている。Gamingモードと比較すると,Founders Editionのほうが最大クロックは高いわけだ。
グラフィックスカードのクーラーを取り外すのはメーカー保証外の行為だが,今回はレビューのため特別に取り外してみよう。
クーラーはカバー部とそれ以外に分割できる |
MaxContactの概要 |
一方,3連ファンのほうは,DirectCU時代と同じく,先端が折れ曲がった「Wing-Blade Design」を採用するものになっている。このブレード形状により,一般的なファンと比べて約105%高い(=2倍強)静圧を実現しつつ,リファレンスカードと比べて静音性は3倍に向上しているという。
というわけで基板だが,サイズが異なることから想像できていたように,そのデザインはFounders Editionとまったく異なる。とくに電源部が6+1フェーズになっている点は要注目で,1フェーズ増えている分だけ,効率のよい電源管理を行える設計になっていると言える。
電源部の右側に並ぶ,「FP 78GC 271 16」という印刷入りのものは,ニチコンの子会社である日科能高電子(蘇州)の導電性高分子アルミ固体電解コンデンサ「FP Cap」(270μF/16V)と思われる。
VRM部に並ぶ「5KX35」という印刷入りのものは,型番からしてFP Capではなさそうだが,同じく導電性高分子アルミ固体電解コンデンサの一種だろう。容量は820μFのようで,470μFという仕様のものを載せていたFounders Editonよりも大容量になっている。「容量が大きいからいい」というものもないのだが,瞬間的な電流の増減には対応しやすいだろう。
一方,GPU周辺のデザインはFounders Editionを踏襲している。組み合わせてあるグラフィックスメモリチップがMicron Technology製のMT41J256M32-80なのも変わらずだ。
新たにShadow of Warのテストを追加しつつ,上位および下位モデルと比較
前置きが長くなったが,テスト環境のセットアップに入ろう。
今回は,GeForce GTX 10シリーズにおけるGTX 1070 Tiの立ち位置を明確化すべく,比較対象としてはGTX 1080およびGTX 1070のFounders Editionを用意した。
また,主役の片方であるROG
テストに用いたグラフィックスドライバは,GTX 1070 Tiのレビュワーに対してNVIDIAから配布された「GeForce 388.09 Driver」。公式にはより新しい「GeForce 388.13 Driver」がリリース済みだが,テスト開始タイミングの都合もあり,今回はレビュワー向けドライバで統一することをあらかじめお断りしておきたい。
そのほかテスト環境は表2のとおりだ。
テスト方法は基本的に4Gamerのベンチマークレギュレーション20.1準拠。ただし,21.0を先取りする形で,以下のテストを追加している。
- 3DMark「Time Spy」の「Extreme」テスト
〜テスト方法は“無印”に準拠する - 「Middle-earth:Shadow of War」(以下,Shadow of War)テスト
〜「Superposition Benchmark」を差し替え。ゲーム側の公式ベンチマークモードを利用し,描画負荷が最も高くなる「ウルトラ」プリセットを採用する
テスト解像度は,GTX 1070 Tiの立ち位置から,3840
GTX 1070 Tiの性能はGTX 1080とGTX 1070のちょうど中間!?
以下,グラフ中に限り,ROG
グラフ1は,3DMarkのFire Strikeにおける総合スコアをまとめたものだが,GTX 1070 TiはGTX 1080の92〜93%程度,GTX 1070の112〜114%程度というところに落ち着いている。
ROG
Fire StrikeのGPUテスト結果である「Graphics score」を抜き出したグラフ2でも,総合スコアをおおむね踏襲する結果が出ている。GTX 1070 TiはGTX 1080の約91%,GTX 1070の約114%というスコアで,ROG
続いてグラフ3は3DMarkのTime Spyにおける総合スコア,グラフ4はそのGPUテスト結果をまとめたものだ。
ここでGTX 1070 Tiは対GTX 1080で93〜95%程度,対GTX 1070で114〜119%程度のスコアを出している。なので,Fire Strikeよりも相対的によい数字ということになるだろう。
GTX 1070 TiとROG
ここまでのテストで,ROG
グラフ5はGTX 1070 Tiの3条件で,Time Spy実行中のGPU動作クロックを「GPU-Z」(Version 2.4.0)から追ったものだ。これを見ると,GTX 1070 TiとROG
以上を踏まえつつ,ゲームタイトルを用いたテストの結果を見ていくとしよう。
グラフ6〜8は「Prey」の結果である。1920
面白いのは,ROG
グラフ自体はなだらかなスペック順になっているので,とくにおかしくないと言えばそれまでだが,ちょっと気になるところではある。
続いて「Overwatch」の結果がグラフ9〜11だ。ここでも平均フレームレートを追ってみると,OverwatchでGTX 1070 TiはGTX 1080の約90%,GTX 1070の114〜115%程度なので,ほぼ中間の位置という理解でいいのではなかろうか。
GTX 1070 Tiと比べると,ROG
グラフ12〜14は「PLAYERUNKNOWN'S BATTLEGROUNDS」(以下,PUBG)の結果だが,GTX 1070 Tiの平均フレームレートは対GTX 1080で88〜91%程度,対GTX 1070で115〜116%程度なので,立ち位置はここまでと変わっていない。ただ,4Gamerが合格ラインとする平均100fps,最小80fpsのラインを,1920
ROG
「Tom Clancy’s Ghost Recon Wildlands」(以下,Wildlands)の結果がグラフ15〜17だ。
平均フレームレートでGTX 1070 TiはGTX 1080の91〜93%程度,GTX 1070の114〜115%程度で,やはり両者の中央程度というところに落ち着いている。ROG
今回初登場となるShadow of Warの結果がグラフ18〜20だ。Shadow of Warは,ウルトラプリセットを選んだ場合,解像度1920
そこでそれ以外のテスト条件でスコアを比較することになるが,GTX 1070の平均フレームレートは対GTX 1080で91〜92%程度,対GTX 1070で115〜116%程度と,ここまでとほぼ同じ傾向になっている。
一方,ROG
「ファイナルファンタジーXIV: 紅蓮のリベレーター ベンチマーク」(以下,FFXIV紅蓮のリベレーター ベンチ)の総合スコアをまとめたものがグラフ21である。
FFXIV紅蓮のリベレーター ベンチでは,1920
ROG
グラフ22〜24は,そんなFFXIV紅蓮のリベレーター ベンチにおける平均フレームレートと最小フレームレートをまとめたものになる。
平均フレームレートはスコアを踏襲したものとなったが,最小フレームレートはCPUの影響を大きく受けるため,平均フレームレートほどはGPU間のスコア差が開いていない。ただそれだけに,2560
「Forza Horizon 3」の結果がグラフ25〜27だ。
ここにおいて,GTX 1070 Tiは平均フレームレートでGTX 1070より15〜22%程度高い,ほかのテストよりもスコア差を付けた結果を残している。対GTX 1080だと91〜94%程度で,こちらはあまり変わらないが,ROG
なお,Forza Horizon 3で最小フレームレートが極めて低くなるのはGeForceの仕様だ。実際にGTX 1070 Tiでプレイアブルなのは,最小フレームレートが20fpsを超える2560
消費電力はGTX 1070比で30W近く増大。ROG -STRIX -GTX 1070 TI とGTX 1070 Tiとの違いはあまりない
続いて,GTX 1070 Tiの消費電力もチェックしていこう。まず,「4Gamer GPU Power Checker」(Version 1.1)を用いて計測した,FFXIV紅蓮のリベレーター ベンチ実行時におけるカード単体の消費電力推移をまとめたものがグラフ28だ。
GTX 1070 Tiは100W台から200W前後を推移し,まれに300Wを超えてくるのを確認できる。ROG
そんなグラフ28のスコアから中央値を求めたものがグラフ29となる。GTX 1070 TiはGTX 1070と比べて約26W上がり,GTX 1080とのスコア差は10W弱だ。
一方,GTX 1070 TiとROG
念のため,ログの取得が可能なワットチェッカー「Watts up? PRO」を用いてシステム全体の消費電力も計測した。その結果がグラフ30だ。
テストにあたっては,ゲーム用途を想定し,無操作時にもディスプレイ出力が無効化されないよう指定したうえで,OSの起動後30分放置した時点を「アイドル時」,各アプリケーションベンチマークを実行したとき,最も高い消費電力値を記録した時点を,タイトルごとの実行時としている。
スコアはおおむねグラフ29を踏襲しているが,それだけに,GTX 1070 TiとGTX 1070のスコアがより大きく開く傾向にあるのは少し気になるところだ。
最後に,「GPU-Z」(Version 2.4.0)を用いて計測したGPU温度も確認しておきたい。
ここでは,温度24℃の室内で,テストシステムをPCケースに組み込まず,いわゆるバラックに置いた状態から,3DMarkの30分間連続実行時を「高負荷時」として,アイドル時ともども,GPU-Zから温度を取得することにした。
結果はグラフ31のとおり。GPUごとに温度センサーの位置が同じとは断定できず,とくにROG
一方のROG
そんなROG
気になる動作音だが,筆者の主観であることを断ってから記しておくと,GTX 1070 Ti Founders EditionのそれはGTX 1080やGTX 1070のFounders Editionと変わらない。
対するROG
GTX 1080とGTX 1070の間を埋めるモデルとして相応の存在感はあるGTX 1070 Ti。問題は一にも二にも価格だ
ならGTX 1070 Tiはというと,発売時点での実勢価格は6万円台半ばから8万円程度。つまり,GTX 1080搭載カードとほとんど変わらないのである。発売日時点の話に限って言うのであれば,GTX 1070 Tiカードを選ぶ理由はない。
GTX 1070搭載カードの実勢価格は4万円台後半から6万円程度(※2017年11月2日現在)。となるとGTX 1070 Tiカードの適正価格は5万円台中後半ということになるのではなかろうか。年末商戦にかけて,そこまで下がってくるようなら,GTX 1070 Tiカードは狙い目である。
NVIDIAのGeForce GTX 1070 Ti製品情報ページ
GTX 1070 Tiカードをパソコンショップ アークで購入する
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