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[COMPUTEX]NVIDIAはAIとVR,ゲームの世界で「誰にも作れないもの」を作る。総帥ジェンスン・フアン氏,オンステージ
そこで本稿では,イベントでHuang氏が何を語ったのかを中心に,その概要をレポートしたい。NVIDIAが今,何に注力しているかが,Huang氏の発言から見えてくるだろう。
PascalによってVRとAIコンピューティングの時代が始まる
イベントの冒頭で,「過去数年,我々は単なるPC向けのGPUを開発する企業から,GPUコンピューティングカンパニーへと変革を遂げてきた」と切り出したHuang氏は,3つのキーワードを軸にプレゼンテーションを進めていく。そのキーワードとは,人工知能(AI)と仮想現実(VR),そしてPascalアーキテクチャだ。
Huang氏は「GPUはまさに今,AIとVRという,過去に例のない,最も複雑な技術に応用されつつある」と述べる。その上で,これらの分野についてNVIDIAは,2つの技術に注力しているとした。1つは「コンピューティング・イマジネーション」(Computing Imagination)で,もう1つは「コンピューティング・インテリジェンス」(Computing Intelligence)である。
どちらも初耳という人も多いと思うが,大雑把にいうと,コンピューティング・イマジネーションは「想像力を持つコンピュータ」,コンピューティング・インテリジェンスは「知性を持つコンピュータ」といったところか。
この2つの技術こそ,「VRとAIによって世界を変革するために必要な技術であるのだ」とHuang氏は訴える。そして,この2つの技術を加速させるために開発したのが,Pascalアーキテクチャというわけだ。
Huang氏がGTX 1080の特徴としてまず取り上げたのは,消費電力当たりの性能(以下,消費電力対性能比)だ。「Pascalアーキテクチャは,従来のMaxwellアーキテクチャに対して消費電力対性能比が3倍にジャンプアップしている。そして,性能は2倍に引き上げられた」と,Huang氏は語る。消費電力対性能比は,次世代のコンビューティング性能に直結するため,Pascalではその引き上げに最も注力したというわけだ。
また,GTX 1080の機能面では,とくに「Simultaneous Multi-Projection」(サイマルテイニアス・マルチプロジェクション,以下 SMP)に重点を置いた説明が行われた。Huang氏は,「GTX 1080は,SMP機能によって,VRをフルスピードで楽しめるGPUである」と強調。SMPをフル活用しようと考える開発者に向けて,VR対応ライブラリである「VRWorks」を提供しており,これを使うことによって,極めて美しい映像によるVRゲームが楽しめるようになるだろうと予告していた。
AI分野にはTesla P100を投入
一方のAI分野に関してHuang氏は,「世界にとって,最も重要な変革」であると主張する。「自分でプログラムを記述するコンピュータ」が遠からず登場するだろうという未来像を語った。これは,ディープラーニング(深層学習,機械学習)にも使われるディープニューラルネットワークが,自らプログラムを記述して進化していくといったようなイメージで,こうした技術が世界に変革をもたらすはずだと,Huang氏は語った。
一方,AIにおける「認識」を担う製品としてHuang氏が取り上げたのが,速報で掲載した「Pascalベースの次世代Tegra SoC」と,自動運転技術の開発用プラットフォーム「Drive PX 2」だ。
「このPascalベースのTegra SoCは,12TFLOPS以上の演算性能を持ち,インテリジェントなマシン,たとえば命令を理解して自分自身で動くロボットや,自動運転を実現する」とHuang氏は述べている。
最後にHuang氏は,「今,まさに新しい時代が始まった。我々のPascalによってVR,AI時代のコンピューティングが始まったのだ」と高らかに宣言して,プレゼンテーションを締めくくった。
プレゼンテーションに続いては,Huang氏が報道陣の質問に答えるQ&Aセッションが開かれた。かなり内容の豊富なQ&Aだったので,いくつかの分野ごとにまとめてみよう。
NVIDIAが作るのは,他の誰も作れないプラットフォーム
――電力効率やVRの将来性は,スマートフォンの分野でも重視されている分野ですが,NVIDIAは(現在),スマートフォン向けの戦略を有していませんね。
Huang氏:
スマートフォンにおけるVRは,ちょっと興味深いね。たとえば,スマートフォンを使えば,簡単にVR写真を作れる。ボタンひとつタップするだけで,360度のリアルなVR写真を作れる。
だが,PCでは驚くべきVRを体験することができるが,スマートフォンのVRはまだそのレベルに達してない。スマートフォンは何千万人もの人が手軽にVRを体験することができるデバイスだとは思うが,PCに比べれば簡単なVRしか体験できないだろう。
実を言うと,我々は,モバイルデバイスにはもう興味を持っていないのだ。というのは,NVIDIAが今フォーカスしているのは,他の誰も作ることができないコンピューティングプラットフォームだからだ。
だが,我々NVIDIAはAIの未来を信じており,AIにいち早く手を付けた。そして他にはないユニークな製品を作り上げたのだ。
話をスマートフォンに戻すと,すでにスマートフォンはコモディティ化している。そして非常に安価に生産でき,多くの人がスマートフォンを使っている。だが,それは我々のビジネスではない。
――GTX 1080や「GeForce GTX 1070」(以下,GTX 1070)は,VRに最適なGPUということですが,VRを普及させるためには,もっと手軽にVRが楽しめる環境を提供する必要があるのではないか。VRが楽しめるフォームファクタ戦略や,VRプラットフォームのコストに関するNVIDIAの戦略はあるのでしょうか。
Huang氏:
PascalはハイエンドのGPUで,VRに最適なGPUであり最高性能のGPUだ。Pascalなら最高のVR体験ができる。
――もっと小型のフォームファクタでVRが楽しめるようになりませんか。たとえばスマートフォンとか。
Huang氏:
スマートフォンには興味がないんだ(笑)。
――ならばラップトップ(ノートPC)では?
Huang氏:
それについては,もちろんまだ何も言えないよ(笑)。
――VRはこの先5年で大きく成長するということですが,とくに,どのような分野にVRが広がっていくと考えていますか。
Huang氏:
我々NVIDIAは,「コンピューティングバーチャルリアリティ」にフォーカスしており,まさにコンピューティングバーチャルリアリティ企業になろうとしている。
今まさに,NVIDIAはVR環境を構築するために努力をしており,VR関連の技術開発に,今後何年も取り組むことになるだろう。
また,NVIDIAの顧客は,VRを指向している。たとえば,ゲーマーやデザイナー,科学者や研究者といった人々だ。彼らにとってVRは,非常に多くのメリットを提供してくれるはずだ。
――将来のVRには何が必要だと思いますか。
Huang氏:
それについては,言いたいことがたくさんあるね(笑)。今のVR機器が使うディスプレイは,まだ発展途上で,もっとエレガントになる必要がある。たとえば,有線で接続されているのはいただけないし,解像度はもっと高くなる必要があるだろう。
VRにおける物理シミュレーションも,もっとリアルになる必要がある。たとえばVR向けの感覚フィードバックのような技術が発達すれば,VRはもっとリアルになるだろう。こうした進化が,この先20年で起こるのではないだろうか。楽しみだね。
――VRで成功を収めるために,必要なことはなんでしょうか。アプリケーションなのか,それともハードウェアでしょうか。
Huang氏:
今,我々は,ヘッドマウントディスプレイ(以下,HMD)を使ったVRのための新しいプラットフォームを手にしている。新しいプラットフォームには,特別なアプリケーションが必要だ。
Googleのディープラーニング専用プロセッサは興味深く素晴らしい仕事
――NVIDIAが最も注力している最先端技術は何でしょうか。
Huang氏:
それは,何がお金になったかどうかで,いずれ分かるんじゃないかな(笑)。
(先述のとおり)我々は,いまだ誰も創り出したことがない技術を,社会に提供することを目標としている。そしてNVIDIAは,世界の多くの人々に製品を提供している。たとえばゲーマー,デザイナー,科学者などだ。AI研究者には自動運転を実現するコンピュータを提供している。
こうした(誰もがやらない)挑戦は,もちろん常にリスクをともなうが,見返りは大きい。我々は20億ドルと1000人/年の人月を,AI向けのコンピュータ開発に費やしている。狂ってると思うかもしれないが,しかしそれらはうまく行っていると思う。
――Googleがディープラーニング専用のプロセッサ(※Tensor Processing Units,TPU)を作りました。TPUはNVIDIAのビジネスに影響しませんか。
Huang氏:
とても良い質問だ。ディープラーニングには2つのサービスがある。学習と認識だ。学習は,認識に比べると多くの時間と複雑な作業を必要とする。一方,認識も非常に重要で,いずれはすべてのデバイスが,AIの認識力を必要とするだろう。いずれはすべてのデータセンターで,AIの認識が活用されるようになるはずだ。
我々は2年前に,AIの学習に対応する最初の製品をリリースした(※おそらくディープラーニング向けライブラリ「cuDNN」のこと)。我々のアーキテクチャは,認識より学習に適していたからだ。しかしPascalでは,認識も従来の25倍に高速化している。
それと同時にGoogleは,TPUというディープラーニングの認識を高速化する専用のプロセッサを開発した。これはとても興味深く素晴らしい仕事だと私は思っている。
重要なのは,この事実(※GoogleがTPUを開発したこと)が意味しているのは,いずれはすべてのデータセンターにとって,学習やトレーニング,認識の高速化が必要になるということだ。
ある企業(たとえばGoogle)が認識のためのチップを開発したとしても,それは我々のビジネスにとって何の問題にもならない。というのは,世界中の超大規模なデータセンターが(AIの)アクセラレーターを必要としていて,その最も優れたソリューションがPascalだからだ。
話をまとめると,まずディープラーニングは,超大規模なデータセンターが必要としているソリューションであるということ。そして,ディープラーニングにおける学習には,GPUのアーキテクチャが最適であり,認識においても,GPUは優れた性能を持っているということだ。我々は,学習プロセスのところでDGX-1を有しているし,認識にはPascalベースのTegraを有している。
――AIの時代が来たとのことですが,技術が進んでもっと大きなメモリバンド幅が実現するといったことがあれば,人間の脳をシミュレートできるようになるのでしょうか。
Huang氏:
ちょっとした例を挙げよう。卓球とテニスの基本的なスキルは大きく違うが,テニスプレーヤーが卓球を学ぶことはできるし,これまでのスキルを応用することもできる。
一方,現在のコンピュータは,すべてのタスクが専用に設計されている。ある分野のタスクを別の分野に使おうとしても,それはとても難しい。(ディープラーニングでも)ある分野に応用するためには人間が監督しながら多くの学習が必要になる。人間の脳とはかなり異なるのだ。
――AIはどんな企業で利用されるようになるのでしょうか。たとえば半導体の設計にAIが使われるようになりますか。
Huang氏:
それはもう,数多くの企業でAIが利用されるようになるだろうね。AIには膨大な機会がある。
たとえば,ソフトウェアの作成や,半導体のデザインといった分野や,消費者の嗜好を捉えて適切なサービスを提供するといったことにも応用されるだろう。ディープラーニングの応用分野は多彩だ。私が思うに,AIは,産業にとって大きな変革を起こすソフトウェア技術だ。
現在は手作業で行われているデザイン作業をAIが行うようになり,コストの面で変革を起こすことも,私には当然のことに思える。例を挙げるなら,ゲームのテクスチャをAIが作成するといったことだ。
――AIビジネスの将来像をどう見ているのでしょうか。
Huang氏:
私は近い将来,超大規模データセンターにおいて,「ヒューマニティコンピューティング」が主流になると確信している。すべての先端技術,たとえば車載コンピュータや携帯電話のコンピュータ,カフェのコンピュータ,小型ロボットのコンピュータが,パワフルなデータセンターのクラウドに接続するようになるだろう。
我々は超大規模データセンターのAI,ディープラーニングにフォーカスしている。これらの分野は始まったばかりだが,私が思い描く将来像は,世界のすべてのデータセンターでAI技術,ディープラーニングが必要とされるようになるというもので,そうなると私は信じている。(AI技術が)常に学習し常にソフトウェアを刷新していくような,そんな将来が必ず来る。
GPUは学習や認識に最適なアーキテクチャだ。まだAIは,市場としては小さく,まだ始まったばかりだが,とても速く成長している。いずれNVIDIAに大きな利益をもたらすはずだ。
PascalによってPCゲーム市場はさらに大きくなる
――GTX 1080の手応えを聞かせてください。
Huang氏:
PCゲームの将来性に疑問はない。Pascalは,GPUの歴史において,過去に例のない非常に大きなステップアップをもたらすだろう。2倍の性能と3倍の電力性能を実現し,新しいディスプレイ技術を搭載する。これらがソフトウェアに信じられない進歩をもたらすはずだ。
そして,この技術によって,PCゲーム市場はさらに大きくなるだろう。PCゲームはNo.1のゲーミングプラットフォームなのだ。
――NVIDIAはクラウドゲーミングに力を入れていますが,クラウドゲーミングが普及すれば,パワフルなGPUがクライアント側に必要とされなくなるのではありませんか。
Huang氏:
クラウドゲーミングには大きな可能性がある。NVIDIAのGeForceは,クラウドゲーミング向けに多数のデータセンターで活用されている。
しかしながら,(クラウドゲーミングの普及と)同じ時間軸で非常にリッチなグラフィックスを使ったゲームが登場し,さらにVRも登場してきている。ネットワークの回線も同時に帯域が拡大してはいるが,こうしたリッチなゲームをサービスできるだけの帯域になるには,まだ長い時間がかかるだろう。
こうした技術の進歩は,同時並行で起きているが,NVIDIAがすべてのゲーマーに素晴らしい体験を提供するという目標には,変わりがない。現在,NVIDIAは,10億人のPCゲーマーにGeForceによる素晴らしいゲーム体験をもたらしている。将来的には数百万人,数千万人がクラウドゲーミングを楽しむようになるかもしれないが,それでNVIDIAの目標が変わることはない。
――コンソール(据え置き型ゲーム機)のゲームについてはどうでしょうか。PCゲームと同じタイトルが数多くコンソールに出ていますが。
Huang氏:
過去5年,ゲームタイトル数は拡大し続けてきたが,その背景のひとつに,MicrosoftとソニーがPCと同じアーキテクチャを用いたコンソールを出したことが挙げられる。これは非常に大きな進歩だ。
ゲームパブリッシャは,素晴らしいゲームを3つの異なるプラットフォームに出すことができるので,ゲームタイトルに対して大きく投資できるようになった。これはゲームパブリッシャにとって大きな変化だ。以前は3つのプラットフォームそれぞれにゲームを開発しなければならかったが,いまや唯一の,同じアーキテクチャのプラットフォームに対して開発すればいい。
さらに,素晴らしいゲームエンジンもある。たとえば,「Unreal Engine」という素晴らしいエンジンがあるし,Crytekの素晴らしいゲームエンジンもある。これらのエンジンは,3つのプラットフォームに対して完全に互換性を持っている。そして,これらを使った美しいゲームは,ハイエンドのGPUに対しても最適化できるのだ。これは素晴らしいことだ。
Tegraの目標は,スマートフォンではなくまったく別の分野
――Tegraでは,ARMベースのDenverをCPUコアとして採用しています。将来的にハイパフォーマンスコンピューティング(以下,HPC)分野に,DenverコアのようなオリジナルのCPUを展開していくことはあるのでしょうか。
Huang氏:
我々のアーキテクチャは,すべてがCUDAをサポートしている。そして,x86をサポートし,IBMの「Power」アーキテクチャをサポートし,ARMもサポートする。またOSは,Windows,Linux,MacOS,Androidをサポートしている。我々は,世界にあるすべてのプラットフォームをサポートしているのだ。
したがって,(CPUの)市場は重要なことではない。たとえば,Drive PX 2のCPUコアはDenverで,OSにはLinuxのARM版を採用している。だが,マーケットが求めるのならMacOSやWindowsや他のOSでもまったく構わない。我々の技術はそれらのOSすべてをサポートできるから何の問題もないのだ。我々はすべてのプラットフォームに,我々の技術を展開できる。
――GPU戦略について聞かせてください。HPC向けには,(GP100コアの)Tesla P100を提供している一方で,コンシューマー向けにはアーキテクチャが異なる「GP104」を提供している。GP100の設計におけるバックグラウンドは何でしょうか。また今後,HPC分野向けとデスクトップPC向けのGPUは分かれていくのでしょうか。
Huang氏:
とても重要な質問で,答えにはイエスとノーがあり,それはなぜなのかをお答えしたい。
GP100とGP104は同じアーキテクチャでもあり,異なるアーキテクチャでもある。両方ともPascal(アーキテクチャがベース)で,CUDAは同じように使える。しかし異なるところもある。
たとえば,GP100はメモリにHBM2を採用しているし,NVLinkを持っている。一方,GP104はGDDR5Xメモリを採用し,(GPUのリンクには)PCI ExpressとSLIを使う。
両GPUのアーキテクチャは同じだが,問題は,アーキテクチャとは別のところにある。それはスケーリングに関する問題だ。強いスケーリングは非常に難しい。びっくりするくらい難しいのだ。とくにニューラルネットワークではスケーリングが重要で,またメモリ帯域も必要にする。GP100はそれを実現したGPUだ。
――GP100には倍精度と半精度の演算器がありますが,GP104にはありません。
Huang氏:
GP100は,強いスケーリングが必要とされる分野向けで,それにはディープラーニングや流体シミュレーションといった分野が挙げられる。だから倍精度と半精度の演算器が搭載されている。だが(GP104の用途である)ゲームでは,これらは(さほど)必要ないということだ。
――NVIDIAのサーバー分野における戦略を教えてください。現在はIntelがサーバー向けCPUを支配していますが,Intel以外のCPUや自社製CPUをサーバーに展開するといった戦略はあるのでしょうか。
Huang氏:
企業が成功する秘訣は,(我々の)素晴らしい製品にすべてのユーザーがアクセスできるようにするということだ。したがって,重要なのは異なるチップ(CPU)に対しても,良い製品を提供していくということになる。
我々はもちろん,Intelとも協業している。たとえば,このDGX-1は,高性能なXeonプロセッサを2基と,8基のPascal GPUを搭載する。
我々のサーバービジネスは,汎用サーバー向けのビジネスではない。HPC向けサーバービジネスであり,AIサーバービジネスなのだ。
これらはメインストリームのマーケットとはいえないかもしれないが,我々の戦略はそこにある。この分野に対して,10倍の高速化,20倍の高速化,さらに50倍の高速化といった高いパフォーマンスを提供することが我々の目標だ。
我々が作っているのは普通のPCではないし,普通のサーバーではないし,普通の携帯電話でもない。さらなる(普通以上の)高性能を必要とするユーザーに対してビジネスを行っているのだ。
――地域ごとに(取るべき)戦略というものはあるのでしょうか。
Huang氏:
我々のコアビジネスはPCゲームで,言うまでもなくグローバルなビジネスだ。
2つめのビジネスはエンタープライズ分野で,とくにHPC分野に注力している。たとえばBaidu,Alibaba,Microsoft,Google,eBay,Twitter……これら企業に対しても,我々は世界で広く成功を収めている。
我々は超大規模データセンターに対して最適な製品をいち早く提供し,極めて高性能な製品をデータセンターに転用していくことが重要だと考えている。それが我々に大きな利益をもたらしてくれるだろう。
たとえば,DGX-1はこれ1台で12万9000ドルだ(笑)。だが顧客には,100万ドルの価値をもたらす。DGX-1は,大規模なデータセンターを超大規模データセンターへと拡大することを可能にする。
――Tegraを搭載したゲームコンソールは,市場で大成功を収めているとは言いがたい状況です。今後も新しいTegraを搭載したゲームコンソールを手がけていく計画はあるのでしょうか。
Huang氏:
Tegraの基本的な戦略と目標は,コモディティ化してしまっているスマートフォンではなく,まったく別の分野だ。
たとえば,モバイルデバイスとしてのロボットを挙げることができるだろう。周囲の世界を理解して,自律的に動くロボットがTegraのターゲットになる。さらに,ロボットが時速80マイルで自動ドライブするような,自動運転タクシーといったものを実現する。これが1つめのTegraの戦略だ。
SHIELDは非常に高速で,とても楽しく,完璧で,常に新しいソフトウェアが提供されている素晴らしいプラットフォームだ。このように,Tegraの戦略も,誰も作ったことがないものを作り出すことにある。
――過去数年にわたって半導体企業では多くの合併がありました。NVIDIAは半導体企業の合併をどう見ているのですか?
Huang氏:
合併が起こる最大の理由は,長期にわたってその半導体企業が成長していないからだ。過去3年でトランジスタの性能は2倍になり,半導体の規模も2倍になったが,半導体市場はそこまで成長していない。
しかし,NVIDIAのゲーマー向けビジネスは,過去3年で2倍の規模に成長した。凄いだろう? 半導体産業の成長は鈍いが,我々のゲーム市場は順調に成長しているのだ。そして今後は,AI市場が急成長するはずだ。このように我々は成長市場にフォーカスしており,成長市場に投資している。
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