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PlayStation VRのメディア向け体験会でさまざまなソフトを体験し,楽しみ方やその可能性を考えてみた
本稿では,筆者が個人的に気になってプレイしたタイトルの感触から,PS VRに一体どんな楽しさがあり,そしてどんな可能性が秘められているのかを考えてみた。やや主観が多めの内容となるが,購入検討の参考などになれば幸いだ。
「PlayStation VR」公式サイト
レールシューティングは,
VR空間を体感するための最適なジャンル
3D空間を特定のルートで移動し,目の前に現れる敵を撃ち落としていく,いわゆる「レールシューティング」に当たる作品は,VRにおける全方位映像を味わうという意味において,現時点で最適なジャンルだと個人的に思っている。今回体験できた「Until Dawn: Rush of Blood」や「Rez Infinite」でも,あらためてそれを実感できた。
移動はゲームに依存し,プレイヤーは画面に現れるターゲットを狙って撃つだけという操作系は,移動する方向を意識しなくてもプレイができるので,適度なタイミングで全方位空間を自由に眺めることができるのである。Rez Infiniteなどはプレイヤーが向いた方向にいる敵をロックオンできるという操作で,3D空間を眺めること自体がゲームシステムの一部となっている仕様がなかなか面白い。
また,全方向を見渡せる状態で視界が移動すると,まるでプレイヤー自身の体が本当に動いているように感じられる,「ベクション(vection=視覚誘導性自己移動感覚)」の効果を実感できる。日本科学未来館などにあるドーム状のシアターや,バンダイナムコゲームスの「機動戦士ガンダム 戦場の絆」で使われている半球状の筐体などで体感できたが,視界が完全密閉状態のVRならその効果も増大しているように思える。Until Dawn: Rush of Bloodの遊園地のトロッコに乗っている感覚や,Rez Infiniteの浮遊感がまさにそれであり,これまでの家庭用平面ディスプレイでは味わえなかったものだ。
ゲームとしては若干古い印象を受けるレールシューティングだが,VRの効果を確実に味わえる題材として,あらためて注目を集めることになるだろう。
なお「FINAL FANTASY XV VR EXPERIENCE」も,眼前に現れるベヒーモスと戦う一人称視点のシューティングタイプのデモとして出展されていたが,こちらは特定の地点へワープするという,プレイヤー自身が移動する操作が採用されていて,ベクションの効果こそないが,落ち着いた状態で狙って撃てるガンシューティング的な感覚で楽しめた。
ガンタイプのコントローラー「PlayStation VR Aim Controller」の発売も決定しており,「狙って撃つ」ことに徹したFPSよりもハードルの低いガンシューティングは,PS VRユーザーにも需要がありそうだ。
[CES 2016]「Until Dawn」のPlayStation VR向けスピンオフ「Until Dawn: Rush of Blood」を体験
[GDC 2016]PlayStation VR用タイトル「Until Dawn: Rush of Blood」と「THE PLAYROOM:WANTED」を体験してきた
[E3 2016]「FINAL FANTASY XV VR EXPERIENCE」プレイレポート。操作はシンプルながら,巨大なベヒーモスとの戦闘は迫力満点
ゲーム中のキャラクターになりきれる一体感を
VRタイトルで体感
E3 2016にも出展された「バットマン:アーカム VR」のVRデモバージョンは,「究極のバットマン体験」というコピーを打ち,プレイヤーがバットマンに変身するシーンをVRで再現している。
執事からカギを受け取り,そのカギでピアノを開けて弾くと,足元の床が開いてバットケイブへとエレベーターが降りていき,目の前に現れるマスクやグラップル・ガン,バットラングなどの装備品を,自分の手とシンクロしたブルース・ウェインの手がつかみ取って自身の体に装着していくという一連の演出は,自分がバットマンになっていく気分を堪能させてくれる。この演出は,SF映画や特撮番組の変身シーンなどにも応用できるのではないだろうか。
また「サイバーダンガンロンパVR学級裁判」のVRデモバージョンでは,主人公の苗木 誠となったプレイヤーが学級裁判の証言台に立った視点で展開され,登場キャラクターたちが手の届きそうな場所に立って証言を行う。キャラクターと目が合ったりすることもあり,ファンにはたまらない体験となるだろう。
VR空間に自分がいるだけでなく,登場キャラクター本人になりきれるという演出は,今後のVRタイトルでもスタンダードとなりそうだ。
[E3 2016]PS VR用ソフト「Batman: Arkham VR」をさっそく体験。ロサンゼルスでバットマンになってみた
一人称視点アクションの没入感は最高!
しかしその一方で……!?
今回プレイさせてもらった中で,近年のゲームに近い感覚でプレイできたのが,「PlayStation VR WORLDS」に収録されたSFアクション「Scavenger's Odyssey」だ。
武装した多足歩行メカに乗り込み,宇宙空間や小惑星などを探索する,一人称視点のアクションゲームで,プレイヤーは登場したメカを自由に操作することができ,あらゆる方向への移動のほか,ジャンプして離れた場所に飛び移ることも可能。敵が現れたときはもちろん銃撃を行い,FPSに近い感覚でゲームを楽しめる。
プレイヤーがさまざまな方向を視認できるように,搭乗メカが「機動戦士Zガンダム」に出てくるような全方向型ディスプレイ(ディスプレイではなく実視界かも?)という設定だったのも粋な演出だった。
ゲームは面白かったのだが,本作で筆者は軽い「VR酔い」をしてしまったこともお伝えしておきたい。今回筆者は自らが移動するゲームをあまり選ばなかったため,本作では気持ちのいい移動やジャンプを無駄に行ってしまい,前述のベクションが過剰に働いてしまった結果だと思われる。「VR酔い」はVR対応ソフトを発売する開発陣の課題の一つであり,各社の今後の対策に期待したいところだ。
またFPSなどで酔ってしまわないか気になる人には,購入前に体験会などに参加しておくことをオススメしたい。
PS VRにおけるVR映像視聴や,
2D画面のディスプレイとしての需要
体験会では,ゲームだけでなく,360度パノラマ写真のビューワーや,VR化されていないPS4タイトルを試せる什器も用意されていた。
前者はリコーの「Theta」の発売などで,より手軽に撮影できるようになった360度パノラマ写真や動画を見られるもので,解像度の高いクッキリとした全方位写真を眺めることができる。PS VRは完全密閉型なうえ視界も広いので,これらの写真や映像のビューワーとしても優れている。
個人的にはWii Uでリリースされていた「Wii Street U」のような,Googleストリートビューを使って世界の街をVRで眺めて回れるソフトの発売を期待しているのだが,どうだろうか?
また,VR化されていないタイトルについては,没入型のTVディスプレイとして目の前に画面が映し出されるという仕様でプレイすることができた。ここではPS4版「風ノ旅ビト」を選んだのだが,16:9のゲーム画面が数10cm先の目の前に現れ,1990年代に流行った前時代HMDの「○メートル先に○インチの画面が見える!」みたいなハッタリコピーとは違う,本当の大画面を楽しめるようになっている。なお画面のサイズは変更可能とのことで,端が見にくいようなら,設定変更で画面を小さくすれば見やすくできる。
PS VRの発売後は,このようにパーソナルなディスプレイとしても十分役立ってくれるだろう。
PS VRに興味を持っている人達全員が
体験できるような機会を設けてほしい
2時間という時間で,体験できる本数も限られてはいたが,ジャンルの異なる複数のタイトルをプレイできたことは,PS VRの可能性を知る意味でも非常に有意義な機会だった。できればこのぐらい意義のある体験を,興味を持った人達全員ができるような環境があればいいと思ったのだが,どうにかならないだろうか。
また,今回の体験は斬新でありつつも現時点である程度完成しているものではある。しかし,まとめてさまざまなタイトルを体験していくにつれて,将来的には現在の我々では予想もつかない体験ができるようになる可能性が間違いなくあることを感じられた。そんな期待も込めて,今年10月13日の発売を待つことにしたい。
「PlayStation VR」公式サイト
- 関連タイトル:
PlayStation VR本体
- 関連タイトル:
Until Dawn: Rush of Blood
- 関連タイトル:
Rez Infinite
- 関連タイトル:
FINAL FANTASY XV
- 関連タイトル:
バットマン:アーカム VR
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