インタビュー
[GDC 2016]PSのハード&ソフトを統括する伊藤雅康氏に聞く。PlayStation VRと将来のPS4について
発表会後に,SCEの執行副社長にして,PSプロダクト事業部事業部長とソフトウェア設計部門部門長を務める伊藤雅康氏に話を聞く機会を得た。PSVRや将来のPlayStation 4(以下,PS4)についてさまざまな質問をぶつけてみたので,その内容をまとめてみよう。
10月発売は数量を確保するため
PS Cameraは事実上必須に
4Gamer:
伊藤氏:
そうですね。発売時期は,2016年前半の予定から,だいぶ後ろにずらした形になりましたが。
4Gamer:
RiftやViveが2016年春に出荷される一方で,PSVRは2016年10月まで待たなくてはならないことに対しては,「遅い」という声も上がりそうですが。
伊藤氏:
10月に発売をずらしたことについては,もちろん理由があります。それは,10月までに量産を進めて,在庫を十分に用意しておくためです。品薄感はあまりいい効果を生みません。欲しいと思っている人に行き届かないのは,やはり問題ですから。
その代わり10月には,潤沢な数量で世界同時発売を迎えられる予定です。
4Gamer:
伊藤氏:
今回,値段とともに発表したのは,PSVRの「基本セット」であり,今後,PS Camera同梱の製品を設定するかどうかを含めて,検討していくことになると思います。製品ラインナップが1つしかない,ということではありません。
4Gamer:
PS Cameraを持っていないPS4ユーザーが,PSVRの基本セットのみを購入した場合,PSVRは使えないのでしょうか。
伊藤氏:
その場合でも,PSVRをメディアプレイヤーとして利用できます。ただ,PSVRをVR HMDとして活用するためには,PS Cameraが必要です。
※2016年3月17日11時頃追記:PS CameraがPS4に接続されていない場合,PSVRの初期設定時にエラーが発生すると,SCEから追加連絡がありました。つまり,PSVRを利用するためには,PS Cameraが事実上必須となります。
4Gamer:
基本セットにはイヤフォンが付属するようですが,マイクはどうなっていますか。
伊藤氏:
マイクは,PSVRの本体側に組み込まれています。今回,デモ展示会場では,1つの仮想空間に複数のPSVRユーザーが集合して楽しむノンゲームタイトルの「ソーシャルVRデモ」を展示していますが,このコンテンツでは,PSVRの内蔵マイクをフル活用していますよ。
4Gamer:
伊藤氏:
もちろんです。
4Gamer:
PSVRでは,メディアプレイヤーの機能が搭載され,360度カメラで撮影した動画や静止画を楽しめますが,今のところ,ソニー自身はコンシューマ向けの360度カメラを発売していませんよね。これは,今後,ソニーが360度撮影カメラを発売するという可能性があるということでしょうか。
伊藤氏:
SCEとしては,PSVRにとって,インタラクティブなVRゲームや,VR体験型コンテンツがメインのアプリケーションであると捉えています。ただ,360度映像に代表されるカジュアルなVRコンテンツは,ソニーグループを上げて取り組んでいく必要があるでしょうね
PSVRに最適化されたUIは今後の課題
4Gamer:
2015年のGDCで,PS4は,PSVRと接続した場合に限って,90Hz(90fps)や120Hz(120fps)での映像出力が可能になることが明らかにされました(関連記事)。しかし,現在開発されているPSVR向けタイトルはすべて,60fpsでの描画となっていて,Temporal Reprojection(時間再射影,関連記事)により90Hzや120Hzで出力しているのが実情です。
PS4の実性能よりも,よい意味でPSVRのほうが高性能という感じがしますが。
伊藤氏:
現在のPS4では,グラフィックスに凝ったものを90fps以上で描画するのは難しいですが,とてもシンプルな画面のものであれば,それも可能です。
4Gamer:
伊藤氏:
それは今後の課題ですね。PSVR専用というか,PSVRに最適化されたUIのようなものは,やっていかないと,とは考えています。
4Gamer:
ところで,PSVRをPCに接続して,PC周辺機器のVR HMDとして活用することはできるんでしょうか
伊藤氏:
現状,PSVRはPS4と組み合わせて活用することを想定しています。
PS4のHDR対応はやりたいが,対応テレビの普及がネックに
4Gamer:
2015年10月掲載のインタビューでお聞きしたことを再確認させていただきたいのですが,まず1つは,APUの話です。
AMDの次世代APU(※開発コードネーム「Zen」を採用するAPU,関連記事)は,14nm FinFETプロセスで製造されるといわれていますが,現在は28nmプロセスで製造されているPS4のAPUも,今後はこのプロセスに移行していくのではないかと考えているのですが。
伊藤氏:
4Gamer:
2015年のインタビューでは「高性能版PS4の可能性」についてお聞きしました。その後,具体的な進展はありましたでしょうか。
伊藤氏:
ないですが(笑),選択肢として(高性能版PS4が)なくなったわけではありません。
4Gamer:
PS4による,High Dynamic Range(以下,HDR)出力への対応はどうでしょう。GDC 2016のセッションにも,HDR対応ディスプレイに出力するためのレンダリングパイプラインを解説するセッションがありました。2015年にお話ししたときには,「PS4でHDRの対応はしなきゃいけないかな」という話が出ましたが。
伊藤氏:
いつになるかは申し上げられませんが,HDR出力への対応はやっていきたいとは思っています。ただ,現在のHDR対応テレビは,すべて4Kテレビなんですね。
もちろん,4KテレビはフルHD解像度の映像入力も可能ですから,こうしたテレビに対して,「フルHD×HDR」で作った映像を出力してもいいわけです。しかし,HDR表示を楽しめるテレビの普及率ということでみれば,まだまだという感じですね。
4Gamer:
4K Blu-rayこと「Ultra HD Blu-ray」(以下,UHD BD)にPS4は対応するのでしょうか。2016年前半には,UHD BDの映像ソフトが発売されますし,対応するBDプレイヤーも登場します。Blu-rayの申し子として,PlayStation 3が一世を風靡したことも考えると,PS4でも……といきたいところですよね。
伊藤氏:
現行のPS4で,UHD BDは再生はできません。製造プロセスを縮小したAPUを採用する将来のPS4で対応させるかどうかは,議論に上がって検討をしていますけどね。そもそも,現行のPS4が内蔵するBDドライブでは,(UHD BDで使う)三層タイプのBlu-rayディスクは読み出せませんからね。対応させるとなるといろいろと大変ではあります。
4Gamer:
PS4のAPUに統合されているH.264デコーダを,仮にH.265デコーダに変えたとしても,それによってトランジスタ数が激増してしまうことはないですよね。H.265は,いうなればH.264の仕様を拡張したマイナーチェンジ版みたいなものですし。
伊藤氏:
一般論としてお答えしますと,はい,その通りです(笑)。
4Gamer:
最後にもう1つだけ。2016年のE3あたりで,PS4本体の大きな発表とかはないものでしょうか(笑)
伊藤氏:
あったとしても,言えるわけないじゃないですか(笑)
4Gamer:
ありがとうございました。
PlayStation VR公式Webサイト
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