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「頭文字D パーフェクトシフト ONLINE」開発ディレクターの後藤功士氏にインタビュー。シフトチェンジだけの“カジュアルレースバトル”に挑戦した理由とは
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印刷2014/04/10 10:00

インタビュー

「頭文字D パーフェクトシフト ONLINE」開発ディレクターの後藤功士氏にインタビュー。シフトチェンジだけの“カジュアルレースバトル”に挑戦した理由とは

画像集#001のサムネイル/「頭文字D パーフェクトシフト ONLINE」開発ディレクターの後藤功士氏にインタビュー。シフトチェンジだけの“カジュアルレースバトル”に挑戦した理由とは
 セガのニンテンドー3DS向けオンラインゲーム「頭文字D パーフェクトシフト ONLINE」(以下「パーフェクトシフト」)の正式サービスが,4月2日に開始された。「こちら」の記事で紹介したように,現在は新規登録キャンペーンをはじめとしたイベントが行われている。登録者数はサービス開始後4日間で10万人を突破しており,そのスタートは好調といえそうだ。

ニンテンドー3DSカメラ用のQRコード
画像集#002のサムネイル/「頭文字D パーフェクトシフト ONLINE」開発ディレクターの後藤功士氏にインタビュー。シフトチェンジだけの“カジュアルレースバトル”に挑戦した理由とは
 「パーフェクトシフト」は,基本プレイ無料+アイテム課金方式を採用した,いわゆるFree-to-Play(F2P)のタイトルだ。ニンテンドー3DSで本格的な「基本プレイ無料」のゲームは,筆者が記憶する限り本作が初めてのはずだ。

 本作におけるプレイヤーの目的は,「頭文字D」の登場人物やほかのプレイヤーとレースバトルを繰り広げながら“公道最速”を目指すこと。
 レースは原作同様1対1のバトル形式で行われるのだが,プレイヤーが行うクルマの操作は,シフトアップとシフトダウンのみ。チューンナップした愛車と「キャラクターカード」のスキルを駆使すれば,原作に登場するドライバーのような超絶テクニックがなくとも,迫力あるレースバトルが楽しめるようになっているのだ(関連記事)。

※記事内で使用している画面写真は開発中のものです。
画像集#003のサムネイル/「頭文字D パーフェクトシフト ONLINE」開発ディレクターの後藤功士氏にインタビュー。シフトチェンジだけの“カジュアルレースバトル”に挑戦した理由とは 画像集#004のサムネイル/「頭文字D パーフェクトシフト ONLINE」開発ディレクターの後藤功士氏にインタビュー。シフトチェンジだけの“カジュアルレースバトル”に挑戦した理由とは

 セガでは,しげの秀一氏の漫画「頭文字D」をモチーフにしたレースゲーム「頭文字D ARCADE STAGE」シリーズをアーケードで展開している。そのため,「パーフェクトシフト ONLINE」の発表時に,レース中に行う操作がシフトチェンジのみという“カジュアルレースバトル”であることに驚いた読者も多いのではないだろうか。

 今回4Gamerでは,本作の開発ディレクターである後藤功士氏にインタビューを実施し,「パーフェクトシフト」がF2P,しかもニンテンドー3DSで展開することになった経緯とともに,本作がどのようなコンセプトで制作されたのか,話を聞いてきた。
 本作に興味を持った人は,ぜひ最後まで読み進めてほしい。

「頭文字D パーフェクトシフト ONLINE」公式サイト



4Gamer:
 本日はよろしくお願いします。
 まずは,「パーフェクトシフト」のプロジェクトを立ち上げた経緯を教えてください。

後藤功士(ごとう かつひと)氏:
「頭文字D パーフェクトシフト ONLINE」開発ディレクター。代表作は「サクラ大戦」シリーズ,「クロヒョウ」シリーズ,「脳に快感!アハ体験」シリーズなど。「サクラ大戦2〜V」では主にADVパートを担当し,「サクラ大戦4」ではディレクターを務めた
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後藤功士氏(以下,後藤氏):
 「パーフェクトシフト」はもともと,ニンテンドー3DSでF2Pができないか,という考えから始まったプロジェクトなんです。ただ,当時は3DSでF2Pをやるなんて考えたこともなかったので,プロデューサーの小川から最初に話を聞いたときは,「本当にやるの?」と一瞬思ってしまいましたが(笑)。

※本作のプロデューサーである小川陽二郎氏(セガ 第一CS研究開発部 プロデューサー)。

4Gamer:
 PCやスマートフォンといった,F2Pのビジネスモデルが浸透しているプラットフォームがある中で,なぜユーザーにあまりF2Pが馴染んでいない3DSを選んだのでしょう。

後藤氏:
 これまでの3DS市場は,F2Pのタイトルが皆無といっていいほどの状況でした。誰もその領域に踏み込まなかったのは,成功の目が薄いという見方もできますが,誰もやったことがないのであれば,可能性は未知数です。
 F2Pでタイトルを展開する場合,プラットフォームとなるデバイスが普及していて市場規模が大きいことが条件になりますが,日本でいえば3DSはその条件を十分に満たしていますよね。そこに新たな市場が開けるのではないかという可能性を感じ,今回セガが先陣を切って飛び込んだわけです。

4Gamer:
 確かに,F2Pスタイルの競合相手がほぼいない市場とも言えますから,ビジネスチャンスにつながる部分はありそうですね。

後藤氏:
 3DSを持っているほとんどの方は,ゲームを遊ぶために本体を購入しているでしょうから,スマートフォンなどのデバイスと比べると,ゲームに対するモチベーションが高いんです。
 また3DSは,ソフトを買ってからゲームを遊ぶのが基本のスタイルとなるデバイスですから,ゲームを遊んで面白かったらお金を払うというF2Pのスタイルも,十分ユーザーの皆さんに受け入れてもらえるのではないでしょうか。

4Gamer:
 3DSユーザーには比較的低めの年齢層が多いという印象が強いのですが,オンラインゲームということは,ターゲットの年齢層を比較的高めに考えているということですか?

後藤氏:
 そうですね。現段階では,原作ファンの方がメインターゲット層になると想定しています。原作の「頭文字D」は連載が18年続いた歴史のある作品ですし,20代後半から40代くらいの男性層が中心になるのではないでしょうか。
 一方で,セガがアーケードで展開している「頭文字D ARCADE STAGE」シリーズは,通算7作をリリースして12年目に入りました。こちらは中高生層にも遊んでもらっているというデータがありますから,若い世代の方々にもプレイしてもらえる可能性も十分にあると思います。
 今回はF2Pスタイルでもありますし,原作ファンとアーケード版のプレイヤー,両方の層にプレイしてもらえたら嬉しいですね。

※シリーズ第8弾の「頭文字D ARCADE STAGE 8 インフィニティ」が発表済みだが,まだロケテスト段階で稼動日は未定となっている(関連記事)。

4Gamer:
 あらためてお聞きしますが,3DS初のF2Pタイトルに「頭文字D」を選んだのはどのような理由だったのでしょうか。

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後藤氏:
 やはり,原作漫画の「頭文字D」の存在と,アーケードの「頭文字D ARCADE STAGE」シリーズが育っていたというのが大きいですね。
 先ほどもお話ししましたが,最初はF2Pのスタイルでやることしか決まっていなくて,「じゃあ何をやればいいんだろう?」という状態だったんです。3DSでF2Pをやるならどんな形に昇華させていくのがいいか,という部分が大きな課題でした。
 F2Pでカジュアルに遊ぶタイプのゲームを大きく展開していくためには,分かりやすさが重要になってきますし,ネームバリューもあったほうが有利です。いろいろと考えた結果,題材として分かりやすいレースゲームかつ人気IPということで,「頭文字D」が最初の候補に挙がり,話をさせていただきました。

4Gamer:
 「パーフェクトシフト」の企画を,しげの秀一先生や講談社に伝えたときの反応はどうでしたか?

後藤氏:
 やはり最初は,皆さんあっけにとられていましたね。シフトワークに特化したゲームと説明されても,普通は想像がつかないと思います(笑)。でも,実際に作ったものを見てもらったことで,納得していただけました。

4Gamer:
 オンラインゲームである「パーフェクトシフト」では,プレイするときにインターネット接続が必要になりますよね。ニンテンドー3DSは携帯端末ですが,単独でインターネット接続はできないデバイスなので,相性が良くない部分もあると思うのですが,そこはどのように考えているのでしょうか。

後藤氏:
 基本的には,自宅などインターネットに常時接続できる環境でプレイしていただくスタイルを想定しています。
 「パーフェクトシフト」は,セーブデータがサーバーに保存される形のオンラインゲームですから,プレイする際はインターネット接続が必要になりますが,3DS本体のインターネット接続率は,ここ数年でかなり上がってきていますし,プレイする際のハードルになるほどではないと考えています。

4Gamer:
 では,モバイルWi-Fiルータや携帯電話のテザリング機能を使えば,外出中でもプレイできるものなのでしょうか。

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後藤氏:
 基本的に,通信が発生するのはクエスト開始時と終了時,それとカードの合成やクルマのカスタマイズなど,セーブデータに変更が加わるときですね。最初のクライアントダウンロードやアップデート時を除けば,それほど大きなパケット通信が発生するわけではないので,外出中にプレイすることも十分可能です。

4Gamer:
 通信が切断されたときはどうなるのでしょうか。

後藤氏:
 基本的には,つながるまでリトライする仕様なので,インターネットに接続されれば続きをプレイできます。
 それと,チュートリアルが終わるまではゲームをオンラインで進める必要がありますが,オフラインでもクエストを遊べるようになっているんです。ただ,カード排出などのクリア特典はなくて,プレイできるクエストもオンラインでクリア済みのものだけになります。

4Gamer:
 インターネット接続しなくてもレースを楽しめるのであれば,クエストの練習をするには便利ですね。オフラインモードは,いわばプラクティスモードといったところでしょうか。


運転の醍醐味を究極まで突き詰めた結果が“シフトチェンジ特化”


4Gamer:
 「パーフェクトシフト」のシステムは,実際にプレイしないと分かりづらい部分もあるので,あらためてゲームの概要を簡単に説明してもらえますか?

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後藤氏:
 基本的なシステムとしては,レースで報酬を稼いで,クルマをチューンナップしたりデッキのカードを強化したりして,さらなる強敵の待つレースに挑戦していく,という感じです。
 レース中の操作は,スタート時とシフトチェンジだけですが,単にボタンを押すだけのゲームではないですし,カードでデッキを組むとは言っても,強いカードを集めれば勝てるというものではありません。

4Gamer:
 それにしても,レース中に行う操作がシフトチェンジだけというのは,かなり思い切りましたね。

後藤氏:
 最近のレースゲームは,カッコ良いプレイができるものがたくさんありますし,走行ラインやブレーキングポイントのガイドが表示されるといった,ユーザーフレンドリーな機能も積極的に採り入れられています。ただ,それでも操作を難しいと感じる人も少なからずいると思います。

4Gamer:
 誰もが「頭文字D」のドライバーのような運転ができるわけではないですからね。

後藤氏:
 でも,気持ちとしてはやはり「頭文字D」ごっこがしたいじゃないですか(笑)。
 「ARCADE STAGE」シリーズでは,実際の公道ではできない「頭文字D」ごっこのバーチャル体験ができますが,「パーフェクトシフト」では,レースゲームやアクションがあまり得意でない人でも「俺,カッコいい!」って感じてもらえることを目指しました。
 レース中にクルマを操作する要素を極限まで絞った結果,レース中の操作がシフトアップ/ダウンのみになったんですよ。

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4Gamer:
 素人考えだと,クルマを運転する要素の中で,「走る」「曲がる」という挙動をプレイヤーが操作しないという発想は,なかなか出てこないと思います。ハンドル操作やアクセルワークを残さなかったのは,どういった理由だったのでしょうか。

後藤氏:
 実は僕らも,最初はシフトチェンジのプライオリティを少し低めに考えていました。簡単な操作で遊びやすく,ゲームとして楽しくするにはどうしたらいいか,いろいろと試してみたのですが,あまりしっくり来るものがなかったんですよ。
 たとえば,アクセルワークだとベタ踏みになりがちで,ボタンを押してすぐにレスポンスが返ってくるという,操作の気持ち良さにつながりにくいんです。走っている感じがしないというか,まるでスロットカーで遊んでいるみたいになってしまって。

4Gamer:
 確かにレースゲームだと,加速する間中アクセルのボタンを押しっぱなしで,ブレーキングのときだけボタンを離すみたいな感じになりますね。あとはサイドブレーキを使うかどうかくらいで。

後藤氏:
 ハンドル操作を行うのはコーナーがメインで,ストレートでは何もしないこともあります。コーナーが近づいたら指示されたボタンを押すだけになってしまい,面白く感じられなかったんですね。

4Gamer:
 通常のレースゲームでは,ハンドル操作やアクセルワークが複合するからこそ成り立つわけですね。どちらもクルマの運転には不可欠な要素ですが,単独で切り出しても面白くはならないと。

画像集#010のサムネイル/「頭文字D パーフェクトシフト ONLINE」開発ディレクターの後藤功士氏にインタビュー。シフトチェンジだけの“カジュアルレースバトル”に挑戦した理由とは
後藤氏:
 ところが,シフトチェンジを試してみたら,意外にもこれが気持ち良かったんですよ。考えてみるとシフトワークって,ストレートだろうがカーブだろうが関係なくやり続けるものなんですよね。複合カーブなどでは,シフトを下げたり上げたりと忙しくなることもありますし。
 そこを突き詰めていったことで,シフトチェンジだけでも面白くなることが確信できたという感じです。

4Gamer:
 実際に峠道などを運転するときも,シフトチェンジの必要性は高いですよね。“攻める”かどうかは別として,シフトチェンジでエンジンブレーキを使いこなさないと,とくに下りでは危険ですし。

後藤氏:
 ドライバーの人達に話を聞いてみても,シフトワークが一番難しくて,うまい人はすごく速いと,皆さん口をそろえておっしゃるんですよ。実際のレースでも,シフトワークはすごく大切みたいですね。
 それから,操作を極限まで絞ったことで,レースゲームとして新しい演出面を実現できたのもポイントですね。

4Gamer:
 新しい演出とは,具体的にどのようなものですか?

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後藤氏:
 カメラ視点です。
 普通のレースゲームは,ドライバー視点なり車両後方からの視点でプレイするケースが多いじゃないですか。でも「パーフェクトシフト」では,カッコいいカメラワークをリアルタイムで見ながらプレイできるんです。

4Gamer:
 確かにレースゲームと言えば,リプレイ以外は一人称視点か後方からの俯瞰視点になるのが普通ですよね。シネマティックな視点でクルマを運転できるゲームはあまりないですし,運転できてもその視点では操作がしにくくなってしまいます。

後藤氏:
 いわゆるレースゲームとしての操作を必要としない代わりに,カメラワークには徹底的にこだわったので,かなりカッコいいものになっていると思います。でも,映像に見入るとシフトミスしやすくなるので気をつけてください(笑)。

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40台以上の車種と多数のカスタマイズパーツは,実在のものを忠実に再現


4Gamer:
 「パーフェクトシフト」には,どのくらいのクルマが収録されているんですか?

後藤氏:
 拓海のハチロク,高橋兄弟のRX-7をはじめ,登場キャラクター達が乗るライバルカーは20台ほど登場します。プレイヤーが乗れるクルマは,キャラクター用のクルマとは別に40台以上用意しました。
 今回,クルマのモデルにはかなり力を入れています。3DS向けに最適化した部分もありますが,「ARCADE STAGE」で使われているモデルほぼそのままの見た目になっており,しかも手に入れた車のチューニングもできるんです。

4Gamer:
 色変更やエアロパーツの装着といったカスタマイズもできるんですか。

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後藤氏:
 種類を豊富に用意しているので,原作に登場するキャラクター達と同じ仕様のクルマにするのはもちろん,自分だけのカスタマイズをすることもできますよ。
 ゲームに登場するクルマだけでなく,カスタマイズ用のパーツもライセンスの許諾をいただいているので,フェンダーやリアウイングをはじめとしたパーツのディテールは,実物と同じになっています。もちろん,パーツは今後のアップデートで増やしていく予定です。

4Gamer:
 ちなみにゲーム内で,登場キャラクター達が乗っているクルマと同じ仕様の状態で購入することはできますか? 

後藤氏:
 今のところ予定はないので,クルマと原作にかなり詳しい人でないと,完全再現は難しいかもしれません。
 ゲームには「チーム」というコミュニティ機能があるので,チームメンバーでクルマに詳しい人に相談するなど,コミュニケーションの材料にしていただければ,と考えています。

4Gamer:
 ゲームにはストーリーモードがありますが,原作のどのあたりまでプレイできるのでしょうか。

後藤氏:
 サービス開始のタイミングでは,原作で“プロジェクトD”が始動するまでの,いわゆる第一部までがプレイ可能です。クローズドβテストの段階でプレイできたのは第一部の第3章まででしたが,正式サービス以降は,第9章までプレイできるようになります。
 ちなみに,カードで登場するキャラクター達は,基本的にストーリーモードに連動する形で追加されていくことになります。

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4Gamer:
 「パーフェクトシフト」のカードは,デッキを組んでレース中に使用するという,カードゲームのようなシステムなんですよね?

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後藤氏:
 キャラクターカードにはそれぞれプレッシャー,精神力,スキルといった要素が含まれていて,それらをデッキに組み込んでレースに挑みます。プレッシャーはいわゆる攻撃力で,精神力がHPといったところですね。
 デッキは,メイン4枚,サポート4枚の計8枚構成で,スキルを使えるのはメインデッキの4枚のみです。プレイヤーのプレッシャーと精神力はデッキ全体の合計値になりますから,サポートデッキはその底上げに使うといった感じです。

4Gamer:
 スキルにはどのようなものがあるのでしょうか。

後藤氏:
 スピードやコーナリングなどクルマの性能を一時的にアップさせるものや,相手に与えるプレッシャーを上げるものなど,種類はいろいろありますよ。ヒルクライムやダウンヒルに限ってクルマの性能が上がるといったシチュエーション限定のものもあります。
 「パーフェクトシフト」のレースバトルは1対1なので,どの局面でどのスキルを使うか,その駆け引きが重要になってきます。

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4Gamer:
 カードの入手方法はどうなっているのでしょう。

後藤氏:
 基本的には,各種レースのクリア報酬で手に入ります。クリア報酬はレース結果に応じたボーナスが付与され,成績がいいほどレアカードの排出率が高くなったり,カードがレベルの高い状態で獲得できたりするんですよ。
 ただ,レースがうまくならない限りレアリティの高いカードが手に入らないという訳ではありません。カードを最大レベルまで強化すれば,グレードが高いカードに進化させられます。それなりに時間をかける必要はありますが,グレードが一番低いノーマルカードを,最高グレードまで進化させることも可能です。

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4Gamer:
 ソーシャルゲームのガチャなどでよくある,「課金しない限り手に入らないカード」はないということでしょうか。

後藤氏:
 そうですね。やはり遊んでいただく皆さんに,安心して遊んでもらえるのが一番ですから,課金に関連する部分についてはとくに気を遣いました。

4Gamer:
 一般的にF2Pのオンラインゲームでは,課金したプレイヤーが有利になる傾向があります。「パーフェクトシフト」のような対戦要素が含まれたゲームでは,その傾向が顕著になると非課金プレイヤーが減っていく懸念も出てきますが,そのあたりはどう考えているのでしょうか。

後藤氏:
 タイミングよくシフトチェンジを行うことが重要なゲームなので,テクニックはある程度求められますが,基本的には,クルマの性能やカードスキルの差をテクニックで補えますし,その逆も然りです。
 たとえば,「パーフェクトシフト」の課金要素には,リアルマネーを使ってチャージする「Dコイン」があります。このDコインを使うと,レア以上のカードが確定で手に入る「プレミアムレース」に挑戦できるのですが,レースの成績がいいと獲得したカードに経験値ボーナスが付いて,最初から成長したカードを手に入れることができるのです。

4Gamer:
 テクニックに自信がない人はどうすればいいのでしょうか。

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後藤氏:
 そこは,クルマの性能とチューンナップである程度カバーできます。チューンナップすればクルマの性能を底上げできるほか,シフトチェンジのタイミング判定を甘めにできるものもあります。それでもバトルで勝てなければ,よりスペックの高いクルマに乗り換える,といった感じです。
 また,クルマのスペックが高くなるにつれて扱いも難しくなって,パーフェクトシフトが出しにくくなります。プレイヤーのテクニックも上げていく必要があるので,高スペックのクルマに乗れば勝てるようになるとは限りません。
 加えて,カードのスキルによる駆け引きもありますから,クルマのスペックやプレイヤーのテクニック差をひっくり返して勝つことも十分あり得るわけです。そのあたりのバランスをうまく調整していくことで,ゲームとしての楽しさを提供できればと考えています。

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4Gamer:
 カードの話に戻りますが,何種類くらいのカードがあるのでしょうか。登場するのが第一部のキャラクターであれば,それほど人数は多くない気がするのですが。

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後藤氏:
 カードは全部で150枚程度ですね。カードのチョイスは,人物というよりは原作の名シーンを基準に選んでいるんです。
 ですので,人物以外にも「拓海が練習に使っていた紙コップ」のようなカードもあります。スタッフ皆が「頭文字D」を好きで,思い入れのあるシーンがいっぱいあるので,候補はどんどん出てきますね。
 ときどき,どうステータスを割り振ったらいいか分からないようなシーンまでカード候補として上がってくるのが,目下の悩みの種でしょうか(笑)。

4Gamer:
 先ほどDコインの話が出ましたが,プレミアムレース以外には,どのような課金要素がありますか?

後藤氏:
 プレミアムレースのほかには,レースで使う「ガソリン」や「プライド」の回復,それからクルマやパーツの直接購入ですね。主に時間短縮の意味合いが強いです。
 ガソリンやプライドは時間経過でも回復しますし,クルマやパーツはゲーム内通貨でも購入できます。基本的には,無課金でもきちんと遊べるように作っています。

4Gamer:
 クローズドβテストが1月16日から23日まで実施されましたが,3月末に正式サービス開始が発表されるまで,スケジュールは明かされないままでしたよね。

後藤氏:
 正直にお話ししますと,3DSでF2Pというスタイルは誰もやったことがない未知の領域だったので,クローズドβテスト以降のスケジュールは本当に未定だったんです。サーバーにどのくらいの負荷がかかるのかなどをはじめ,やってみないと分からないことが多かったんですね。
 時間がかかりましたが,クローズドβテストの結果を踏まえ,ユーザーの皆さんからいただいた意見を反映させるのにようやくめどが立ち,4月からの正式サービスにたどり着くことができました。

4Gamer:
 オンラインゲームとしては,コンテンツを追加し続ける宿命にあると思いますが,原作の「頭文字D」は,18年にわたる連載が2013年に完結しています。
 少々気の早い話ですが,「パーフェクトシフト」のコンテンツが原作に追いついたあとは,どのように展開していく計画なのでしょうか。

後藤氏:
 セガは「頭文字D」のIPをお預かりしている立場なので,「仮にしげの先生や講談社さんに許諾をいただければ」という前提になりますが,私個人としては,原作では描かれなかった“if”の展開をやってみたいですね。
 私は和歌山の出身なのですが,プロジェクトDが謳っていたのが「関東完全制圧」で,関西以西への遠征がないのを残念に思っていたクチなので(笑)。

4Gamer:
 それでは最後に,読者に向けてメッセージをお願いします。

画像集#030のサムネイル/「頭文字D パーフェクトシフト ONLINE」開発ディレクターの後藤功士氏にインタビュー。シフトチェンジだけの“カジュアルレースバトル”に挑戦した理由とは
後藤氏:
 「頭文字D パーフェクトシフト ONLINE」は,簡単な操作でドリフトやレースの楽しみ,そして1対1のバトルの駆け引きを楽しめるゲームになっています。
 レース中の操作はシフトチェンジのみという思い切ったシステムですが,実際にプレイしていただければ,ボタンを押すだけのゲームじゃないことを分かっていただけると思います。
 インターネット接続環境があれば無料で遊べるゲームなので,「頭文字D」ファンの人もそうでない人も,熱い走り屋チームのバトルに参加してもらえると嬉しいです。よろしくお願いします。

4Gamer:
 これからの「パーフェクトシフト」の盛り上がりを期待しています。
 本日はありがとうございました。


 記事を最後まで読んでもらえたなら,本作にはソーシャルゲーム的な要素はあるものの,ただボタンを押せばいいというゲームではないことが分かっていただけたと思う。レース中に行うクルマの操作はシフトアップとシフトダウンだけだが,タイミングを合わせるのはなかなか難しく,アクション性は高めだ。しかし,クルマをチューンナップしてタイミング判定を緩和させたり,カードのスキルで対戦相手より優位に立てたりできるので,アクションが得意ではない人でも十分プレイできるはずだ。

 また,デッキを組むカードを最高グレードまで進化させられるという点も,地味ではあるが注目しておきたい点だ。
 基本プレイ無料のゲームの場合,グレードの高いカードを入手するには,ガチャなどで課金するしかないパターンが多い。しかし,本作では時間さえかければ,非課金でも最高グレードのカードを手に入れられるという。非課金プレイヤーの割合が多いであろうF2Pタイトルにおいては、非常に「優しい」仕様であると言える(カードの強化/進化にどれだけ時間がかかるかにもよるが)。

 冒頭にも書いたが,「頭文字D パーフェクトシフト ONLINE」の正式サービスが4月2日に開始されており,ニンテンドーeショップでダウンロード(※必要ブロック数は2521)すれば,誰でもプレイできる。
 また,以前「こちら」の記事でお伝えしたように,ゲームにログインするだけで,「ガソリン回復チケット」や「プライド回復チケット」などのアイテムがもらえるキャンペーンが4月16日まで実施されている。
 本作は基本プレイ無料なので,興味を持った人は,キャンペーン期間中にゲームを始めてみてほしい。

「頭文字D パーフェクトシフト ONLINE」公式サイト

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    頭文字D パーフェクトシフト ONLINE

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