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ゲーマー向けのビデオキャプチャデバイス「AVT-C875」レビュー(前編)。HDMIにも対応したPCレス録画ツールの実力を検証する
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印刷2013/11/30 00:00

レビュー

小さいボディでHDMIにも対応する録画ツールの実力を,PCレスの録画モードで検証(前編)

AVerMedia AVT-C875
(Live Gamer Portable)

Text by 西川善司


AVT-C875
メーカー:AVerMedia Technologies
問い合わせ先:公式サイト
実勢価格:1万9000〜2万4000円(2013年11月29日現在)
画像集#001のサムネイル/ゲーマー向けのビデオキャプチャデバイス「AVT-C875」レビュー(前編)。HDMIにも対応したPCレス録画ツールの実力を検証する
 ゲームのプレイ動画作成に適したビデオキャプチャデバイスをリリースしているAVerMedia Technologies(以下,AVerMedia)の製品には,PC不要での録画をウリとした「AVT-C281」や「AVT-C281J」といった製品と,PC用のビデオキャプチャカード「AVT-C985」という,2種類の製品がラインナップされている。
 今回レビューする「AVT-C875(Live Gamer Portable)」(以下,AVT-C875)は,AVT-C281の特徴であるPCレスの録画機能と,AVT-C985で導入されたHDMI入力対応を,小型筐体に詰め込んだビデオキャプチャデバイスだ。前後編で細かくその実力をチェックすることにし,前編となる本稿では,PCレスでの録画機能に焦点を当てていきたい。


まずは外観とインタフェース類をチェック


 AVT-C875は,ビデオキャプチャデバイスとしては異例と言っても過言ではないほどコンパクトな製品だ。本体サイズは131(W)×70(D)×22(H)mmで,3.5インチHDDよりも一回り小さい程度しかない。
 赤いボディを黒いフタで挟んだデザインから,これをパッと見でビデオキャプチャデバイスだと理解するのは難しいほどである。

渦巻きマークは録画ボタン。周囲の円環は動作状態を示すインジケータだ
画像集#021のサムネイル/ゲーマー向けのビデオキャプチャデバイス「AVT-C875」レビュー(前編)。HDMIにも対応したPCレス録画ツールの実力を検証する
 本稿の冒頭でも述べたとおり,AVT-C875はPCレスでの録画に対応するが,本体上部中央にある渦巻きのような部分は録画ボタンになっており,これを押すと録画開始,録画中に押すと終了といった挙動を示す。録画ボタンの周囲は円環状のLEDインジケータになっていて,青や赤のイルミネーションで動作状況が分かるようになっている。

 本体の背面には映像や音声の入出力端子が並ぶ。入力系は,独自形状のAV端子とデジタル映像&音声用のHDMI Type A端子,アナログ音声用の3.5mmステレオミニピン端子で,出力系はデジタル映像&音声用のHDMI Type A端子とアナログ音声用の3.5mmステレオミニピン端子だ。独自形状のAV端子には,付属の「AV IN-コンポーネントAV変換ケーブル」や「専用PlayStation3ケーブル」を接続すると,コンポーネント信号とアナログ音声信号を入力できる。

入出力端子が並ぶAVT-C875の背面。左からAV入力用,HDMI入力用,HDMIパススルー出力用,アナログ音声入力用,アナログ音声出力用となっている
画像集#002のサムネイル/ゲーマー向けのビデオキャプチャデバイス「AVT-C875」レビュー(前編)。HDMIにも対応したPCレス録画ツールの実力を検証する

本体前面にはモード切替スイッチがあるだけだ
画像集#003のサムネイル/ゲーマー向けのビデオキャプチャデバイス「AVT-C875」レビュー(前編)。HDMIにも対応したPCレス録画ツールの実力を検証する
 そのほか,前面側には「モード切替スイッチ」と名付けられたスライドスイッチ,左側面にはPCとの接続に使うUSB 2.0対応のUSB mini-B端子,右側面にはSDメモリーカードスロットがある。これらに関しては追って説明しよう。

画像集#004のサムネイル/ゲーマー向けのビデオキャプチャデバイス「AVT-C875」レビュー(前編)。HDMIにも対応したPCレス録画ツールの実力を検証する 画像集#005のサムネイル/ゲーマー向けのビデオキャプチャデバイス「AVT-C875」レビュー(前編)。HDMIにも対応したPCレス録画ツールの実力を検証する
左側面(左)にはPCとの接続用となるうUSB mini-B端子,右側面(右)にはSDメモリーカードスロットそれぞれ用意される

 入力端子の話に戻ると,「HDMI入力があるのに,別途AV入力経由でのコンポーネントビデオ入力に対応する」理由は,PlayStation 3(以下,PS3)の映像を録画するためだ。知っている人も多いかと思うが,PS3のHDMI出力には,著作権保護(HDCP)信号が入っているので,AVT-C875のHDMI入力にPS3をつないでも,録画できないのである。
 Xbox 360やWii Uでは,HDMI出力にHDCPが入っていないので,問題なくHDMI入力で録画できるのだが,PS3はこうした特徴ゆえに,HDCPが入らないアナログのコンポーネントビデオ接続を利用する必要がある。なお,AVT-C875とPS3を接続するときには,先述した「専用PlayStation3ケーブル」を使えるので,ほかにケーブルを用意する必要はない。

AVT-C875の製品ボックス内容物。ケーブル類は左から,USBケーブル,「専用PlayStation3ケーブル」,「AV IN-コンポーネントAV変換ケーブル」,HDMIケーブル,3.5mmミニピンサウンドケーブルとなっている
画像集#006のサムネイル/ゲーマー向けのビデオキャプチャデバイス「AVT-C875」レビュー(前編)。HDMIにも対応したPCレス録画ツールの実力を検証する

左から順に,「専用PlayStation3ケーブル」,HDMIケーブル,「AV IN-コンポーネントAV変換ケーブル」をそれぞれ接続した状態。PS3用には専用ケーブルがあるので,右のケーブルを使うのは初代Xboxやゲームキューブ、Wiiの映像を録画したいという場面くらいだろうか
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 パススルー出力用のHDMI出力からは,HDMI入力とAV入力からの映像が,一切加工されることなく出力される。かつて,ビデオキャプチャデバイスを使おうと思った場合は,映像分配器を別途用意する必要があった。しかし,AverMediaのビデオキャプチャデバイスは,AVT-C281以来,一貫してビデオのパススルー出力を用意してきている。そのため,ゲーム機→AVT-C875→テレビという順序で接続すれば,ゲームをプレイしながらのリアルタイム録画が行えるのだ。


AVT-C875を分解して中身もチェックしてみた


 外観を一通りチェックしたところで,AVT-C875の内部も見てみることにした。言うまでもなく,製品の分解はメーカー保証外の行為であり,分解すると保証が受けられなくなるので真似はしないでほしい。
 もっとも分解自体は簡単で,底面のプレートを開けてネジを外し,ボディを底面側と本体側に分離するだけだった。

画像集#022のサムネイル/ゲーマー向けのビデオキャプチャデバイス「AVT-C875」レビュー(前編)。HDMIにも対応したPCレス録画ツールの実力を検証する
ネジを取って底面側を外した状態
画像集#023のサムネイル/ゲーマー向けのビデオキャプチャデバイス「AVT-C875」レビュー(前編)。HDMIにも対応したPCレス録画ツールの実力を検証する
上面側も外すと,基板が丸見えに

 AVT-C281Jのレビューでも,「内部の基板はシンプル」と記していたが,小型のAVT-C875はさらに小さい基板で,ファンもヒートシンクもない。

多数のチップが並ぶ基板の上面側。右側に見える大きめの2つは,ITE Tech製のHDMIレシーバと,Texus Instruments製のビデオデジタイザで,どちらも映像入力を担当。左側の大きめなチップはITE Tech製のHDMIトランスミッタで,映像出力が仕事だ
画像集#024のサムネイル/ゲーマー向けのビデオキャプチャデバイス「AVT-C875」レビュー(前編)。HDMIにも対応したPCレス録画ツールの実力を検証する
 基板の上面側には,録画ボタンに使うスイッチを挟んで,左にITE Tech製のHDMIトランスミッタ「IT6613E」と,Nanya Technology製で容量512MBのLPDDRメモリチップ「NT6DM16M32AC-T1」が配置されているのが目を引く。メモリチップの左には,樹脂で覆われた正体不明のチップも見える。
 スイッチ右側には,こちらもITE Tech製のHDMIレシーバ「IT6604E」と,Altera製のプログラマブルロジックチップ「5M40Z」,そしてTexus Instruments製のビデオデジタイザチップ「TVP7002」がある。ビデオデジタイザが,コンポーネントビデオ信号のデジタル変換を担当しているのだろう。

こちらは基板の底面側。中央やや右上がSoC,左にある銀色のプレートはmicroSDカードスロットだ
画像集#025のサムネイル/ゲーマー向けのビデオキャプチャデバイス「AVT-C875」レビュー(前編)。HDMIにも対応したPCレス録画ツールの実力を検証する
 基板を裏返して底面側を見ると,中央付近に大きめのチップがあった。読み取りにくいマーキングをなんとか読んで調べたところ,どうやらNuvoton Technology製の「NuMicro NUC100」というSoC(System-on-a-Chip)であるようだ。
 これは,ARMの32bit CPUアーキテクチャ「ARMv6」をベースにした組み込み向けCPU IPコア「Cortex-M0」を搭載するSoCで,小容量のFlashメモリやDRAM,外部I/Oインタフェース機能も内蔵したものである。おそらく,これがAVT-C875のCPUに当たるのだろうが,HD品質のリアルタイムビデオエンコードをこなすほどの機能はないようだ。
 ほかにビデオエンコードができそうな規模のチップといえば,上面側にある正体不明のチップくらいだが,それ以上のことは分からなかった。AVT-C281Jでも,ビデオエンコーダらしいチップは名前が隠されていたので,AVerMediaにとっては名前を知られたくないほど重要なチップなのかもしれない。


単体録画とPC録画,2つのモードを用途に応じて使い分け


 冒頭からPCレスというキーワードを何度か繰り返してきているが,AVT-C875には2種類の動作モードがある。1つはPC不要の「単体録画モード」で,本体のみでプレイ動画を録画できるモードだ。こちらがPCレスモードというわけである。もう1つは,付属のUSBケーブルでAVT-C875とPCを接続して使う「PC録画モード」で,こちらの場合,AVT-C875は外付けのPC用リアルタイムH.264エンコーダのような扱いになる。
 単体録画モードとPC録画モードの切り替えは,AVT-C875前面にあるモード切替スイッチで行う。モードチェンジには実測で約15秒の待ち時間が必要で,モードチェンジ中はパススルー端子からの映像出力も停止する。

 まずは単体録画モードから説明しよう。このモードでは,本体右側面のSDカードスロットに挿入したSDメモリーカードが,映像の保存先になる。
 AVT-C875の製品仕様を見ると,SDメモリーカードは「SDHC Class 10以上」が推奨とある。そこで,筆者が手持ちのClass 10対応SDHCカード(容量32GB)で試したところ,コマ落ちもなく録画できていた。対応する書き込み速度が遅いSDメモリーカードでどうなるのかは試していないのだが,容量32GBのClass 10対応SDHCカードなら3000円未満で買えるので,ケチらずClass 10仕様の製品を使ったほうが無難だろう。

AVT-C875を単体で使うには,USB端子からの電力供給が必要。PCに接続するか,市販のACアダプターを使うのが無難だが,電力さえ足りるなら,こうしたモバイルバッテリーで動かすことも可能だ
画像集#010のサムネイル/ゲーマー向けのビデオキャプチャデバイス「AVT-C875」レビュー(前編)。HDMIにも対応したPCレス録画ツールの実力を検証する
 単体録画モードで注意しなければならないのは,電源をどこから供給するかだ。というのも,AVT-C875はスマートフォンやタブレットのように,USB Mini-B端子から給電する仕様なのだが,そこにつなぐべきACアダプターが付属していないのである。つまり,単体録画モードでも使うときにも,PCとUSBで接続するなどして,電源を供給しなければならない。
 単体で録画できるのが利点のモードなのに,電源供給のためだけにPCとつなげるというのは,なんとも無駄に思える。スマートフォン用のACアダプターを流用するとか,USB給電対応のACアダプターを用意するほうがいいだろう。

単体録画モードの画質を設定するには,PC上でPC-Free Utilityを使わなくてはならない
画像集#028のサムネイル/ゲーマー向けのビデオキャプチャデバイス「AVT-C875」レビュー(前編)。HDMIにも対応したPCレス録画ツールの実力を検証する
 電源以外にも面倒に感じる点は,単体録画モードで使う場合でも,画質の設定はPC録画モードに切り替えてPCと接続し,設定ソフト「AverMedia PC-Free Utility」(以下,PC-Free Utility)で行う必要があることだ。その点では,単体で設定もこなせるAVT-C281のほうが手軽だったし,そもそも“PC-Free”で使うためのユーティリティをPCで使わなくてはならないというのは,どうかと思う。

 一方,もう1つの動作モードとなるPC録画モードだと,AVT-C875がリアルタイムエンコードした録画データは,USB経由でPC側に転送され,PC側のストレージに保存されるという仕組みになっている。そのため,SDメモリーカードを使う単体録画モードほどにはストレージの残量を気にする必要もなく,録画後に編集したいというときにも,いちいちPC側に取り込み直す手間もいらない。これはメリットだろう。
 なお,PC録画モードでは,AVT-C875本体側にSDメモリーカードを差していたとしても,こちらには録画されない。

 さて,PC録画モードでAVT-C875を利用するには,AVerMedia製のビデオキャプチャ製品に使われるアプリケーションソフト「AVerMedia RECentral」(以下,RECentral)をPCにインストールしておく必要がある。
 このソフトはAVT-C985のレビューでも取り上げたのと同じもので,映像を録画するだけでなく,インターネットの映像配信サービスを利用してリアルタイム放送する機能があり,AVT-C875でも利用が可能だ。なお,映像配信については後編で詳しく紹介するので,今回はRECentralの紹介を割愛する。


HDMI接続で単体録画モードの録画性能を検証


 それではAVT-C875の録画性能を評価しよう。前編ではHDMI信号を単体録画モードで録画したものを評価するので,この点は注意してほしい。コンポーネントビデオ信号での評価は後編で行う。

 PC-Free Utilityで選択できる項目は,ビットレート(Video Bitrate)と録画解像度(Resolution)の2種類だけだ。録画解像度は「720p」(1280×720ドット)と「1080p」(1920×1080ドット)の2パターンから選択する。
 また画質を設定するときには,フレームレート60Hz(60p)で録画できる解像度に制限があることも注意しておくべきだろう。以下の表に,フレームレート別の最大入力解像度と最大録画解像度を示すが,どのフレームレートでも入力解像度は1920×1080ドットまでなのに対して,60pで録画できる最大解像度は1280×800ドットまで,1920×1080ドットでは30pまでとなっている。

画像集#026のサムネイル/ゲーマー向けのビデオキャプチャデバイス「AVT-C875」レビュー(前編)。HDMIにも対応したPCレス録画ツールの実力を検証する

 この制限はAVT-C281Jでも同様だったので,AverMedia製品が採用しているエンコーダチップに共通の限界なのだろうか。理由はともかく,高いフレームレートで録画したければ,単体録画モードでの解像度は1280×720ドットまでとなることを覚えておこう。

 今回はXbox 360をAVT-C875と接続して,「Forza Horizon」のリプレイを1280×720ドット/60Hz(以下,720p)と,1920×1080ドット/30Hz(以下,1080p)で出力し,それを4Mbps,8Mbps,12Mbps,16Mbpsの各ビットレート設定でAVT-C875から録画してみた。その結果が,下に8本並べたムービーだ。
 もちろんこれらは掲載用に再エンコードしたものなので,あくまでも参考用。別途4Gamerのサーバーに「録画ファイル」をアップロードしておいたので,必要に応じてそちらもチェックしてもらえればと思う。

 動画ダウンロード:201311_forza_720p_4Mbps.ts
 動画ダウンロード:201311_forza_720p_8Mbps.ts
 動画ダウンロード:201311_forza_720p_12Mbps.ts
 動画ダウンロード:201311_forza_720p_16Mbps.ts

 動画ダウンロード:201311_forza_1080p_4Mbps.ts
 動画ダウンロード:201311_forza_1080p_8Mbps.ts
 動画ダウンロード:201311_forza_1080p_12Mbps.ts
 動画ダウンロード:201311_forza_1080p_16Mbps.ts

 ムービーを見比べてみると,720pでは12Mbps設定と16Mbps設定の見映えがほとんど変わらないのが分かる。一方で4Mbps設定から12Mbps設定までは,ビットレートの引き上げに応じて画質が順当に向上しているのも見て取れよう。とくに,階調表現付近で現れるブロックノイズや輪郭付近で現れるモスキートノイズが4Mbps設定では目立つのに対し,ビットレートが上がると低減されていくのは分かりやすい。

 1080pのムービーでは,12Mbps設定と16Mbps設定でも,見映えに違いが現れる。16Mbps設定でも,暗い階調表現付近ではブロックノイズが時々見えるので,もう少し高いビットレートが設定できればいいのだが,SDメモリーカードに録画する単体録画モードではこのあたりが限界なのかもしれない(※PC録画モードでは最大60Mbpsまで設定可能)。

 ムービーを比較したうえで,ビットレートの使い分けを考えてみた。まず,720p/8Mbps以下や1080p/12Mbps以下は,映像メモ程度での利用に留めておき,720p/12Mbps以上や1080p/16Mbpsは,プレイの高画質記録用に使うというのが適当に思える。
 そもそもPS3やXbox 360,Wii U世代のゲームは,1080p出力対応が謳われていても,実際のレンダリング解像度は720pだったりする。それを踏まえると,単体録画モードでは720p/12Mbpsないしは720p/16Mbpsあたりで録画するのがよさそうだ。


アナログ音声入力時は,HDMI側の音声は録音されない


 実際にAVT-C875でHDMI映像の録画を行ってみたところ,音声関連で気になる点があった。それは本体背面にあるアナログ音声入力の振る舞いだ。

 この音声入力にマイクをつないで,実況音声を入力すれば,HDMI経由のゲーム音声とミックスさせることができるのではないか……と期待を持つかもしれない。ところが実際に試したところ,ミックスはされず,アナログ音声のみが録音され,HDMI経由の音声は録音されなかった。
 これはなぜかと考えてみたが,おそらくはPC側のDVI出力から,DVI−HDMI変換ケーブルを用いてAVT-C875に映像のみを入力し,音声は別途アナログで入れるような接続形態を想定した仕様だからではないだろうか。

 もし,ファームウェアやPC側アプリケーションのアップデートで対応できるのであれば,「HDMI経由とアナログ入力のどちらを優先して録音するか」の設定や,「デジタルとアナログそれぞれの音声を,指定した割合でミックスする」設定なども追加してほしいところだ。そうなれば,実況プレイ動画を制作するときに,ミキサーを用意しなくてもAVT-C875単体でできるようになり,便利になるだろう。


「表示遅延なし」が謳われるパススルー機能も検証


 先述したとおり,AVT-C875にはHDMI信号のパススルー機能がある。これのおかげで,HDMI分配器を用意しなくても,ゲーム機とテレビの間に挟んで接続するだけで,表示遅延の影響を受けずにゲームのプレイと録画を同時実行できる……と謳われている。それでは実際に遅延がないかどうかを調べてみよう。

 今回の遅延測定には,筆者によるテストでは定番である,私物の東芝「レグザ 55ZG2」と「レグザ 26ZP2」による測定を行った。両製品の表示遅延の公称値は,26ZP2が1080p/60Hz入力時に約0.2フレーム(約3ms),55ZG2は1080p/60Hz入力時に約1.1フレーム(約18ms)とされている。

画像集#011のサムネイル/ゲーマー向けのビデオキャプチャデバイス「AVT-C875」レビュー(前編)。HDMIにも対応したPCレス録画ツールの実力を検証する
上の「00:00:19.814」が55ZG2で,下の「00:00:19.827」が26ZP2の画面。この差が13msというわけだ
画像集#012のサムネイル/ゲーマー向けのビデオキャプチャデバイス「AVT-C875」レビュー(前編)。HDMIにも対応したPCレス録画ツールの実力を検証する
55ZG2の前にAVT-C875を接続しても,上の測定と同じ結果になった。パススルー出力に遅延はないといえる
 両製品で表示遅延が異なるので,AVT-C985のレビュー記事で行ったのと同じ方法で,テレビ側の遅延をそれぞれ測定しておいた。結果は,右の写真にあるとおりで,26ZP2の方が55ZG2よりも13msほど速く表示されており,公称値の差である15ms(18ms−3ms)に近い結果であることが確認できる。

 遅延測定は,分配器と55ZG2の間にAVT-C875を接続して同じテストを行う方法で行った。この計測での結果は右の写真にあるとおりで,上述したテレビ同士の遅延と変わらない。つまり,AVT-C875のHDMIパススルー出力には,ほぼ遅延がないといえよう。
 パススルー出力に遅延がないのであれば,録画していないときでも,ゲーム機とテレビの間にAVT-C875を接続したままの状態で,プレイには支障を来さないということだ。

 さて後編では,PS3のコンポーネントビデオ信号を録画した画質の評価や,AVT-C875をPC録画モードで使用して,PS3の実況プレイ動画をニコニコ動画で配信することに挑戦してみる。乞うご期待。

「AVT-C875」製品紹介ページ

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