インタビュー
正式サービスが始まった「千年勇者〜時渡りのトモシビト〜」。本作の魅力をプロデューサー横山祐樹氏に聞いてみた
ブラウザゲームらしく,手軽にゲームが楽しめる本作だが,「大討伐」という多人数参加型コンテンツや「合成」によるキャラクター育成など,とにかくやり込み要素が満載な作品だ。7月1日〜5日には,クローズドβテスト(プレイレポート記事)の結果を踏まえたオープンβテストも行われ,バランス調整を含んだ多岐にわたる改修が行われている。満を持して,正式サービスが始まった本作の魅力とは何なのだろうか。
今回,千年勇者のプロデューサーである横山祐樹氏にインタビューし,クローズドβテスト以降の改修内容に関する話や,本作が持つ魅力を聞いてみた。
「千年勇者〜時渡りのトモシビト〜」公式サイト
千年勇者では,万人に愛される王道的なファンタジーの世界が描かれる
4Gamer:
今回は「千年勇者」のゲーム内容について,たっぷりと話を聞きたいと思いますが,その前に,簡単に自己紹介をお願いします。
はい。千年勇者プロデューサーの横山です。以前は,DSとWii版のチョコボシリーズ,「ニーア レプリカント」「ニーア ゲシュタルト」(以下,ニーア)などのパッケージタイトルに関わっていました。ブラウザゲームは,千年勇者が初めてになります。
4Gamer:
ニーアつながり,というわけではないと思いますが,ヨコオタロウさんも本作の制作に携わっているそうですね。
横山氏:
ええ。私自身が,「ドラッグ オン ドラグーン」でプロデュースを担当した,柴 貴正氏のアシスタントをしていた時代があるんですが,それから「ドラッグ オン ドラグーン 2」,ニーアと関わって,ヨコオタロウ氏とは一緒に仕事をしてきています。その流れで千年勇者もご一緒させていただいています。
4Gamer:
ドラッグ オン ドラグーン,ニーア辺りは,いわゆる中二病テイストな作品ですよね。一方,千年勇者はほんわかした雰囲気に思えます。ですが,横山さんとヨコオさんのコンビということで,実は思想の対立を描くような裏設定とかがあったりするんじゃないか……と思ってしまうのですが(笑)。
横山氏:
いえ,脱中二病というわけではありませんが,千年勇者はオーソドックスな王道的RPGを目指していますよ(笑)。ストーリーに関しては,ヨコオタロウ氏に監修で入ってもらっていますが,シナリオと世界設定のメインは白本奈緒氏にお願いしています。白本氏もニーアで一緒にやっていたんですが,彼女らしい味のある物語に仕上がっていると思います。
4Gamer:
物語については後ほどお聞きするとして,「千年勇者〜時渡りのトモシビト〜」というタイトル名に込められた意味などがあれば教えてください。
横山氏:
「勇者」という単語は,最初から使いたいと思っていたんですよ。というのも,パッケージタイトルだと,物語の主人公がイコール勇者だったりしますが,不特定多数のプレイヤーが同時に遊ぶオンラインゲームだと,プレイヤー自身がその他大勢であるかのように感じますから。
4Gamer:
一般的なオンラインRPGだと,基本的にプレイヤーはその世界における冒険者の一人ですからね。
横山氏:
ええ。ですが,本作ではプレイヤー一人一人が勇者なんですよ。だから勇者という単語で,プレイヤーの立場を印象付けたかったんです。サブタイトルについては,世界観のフレーバーですね。現代と過去とを行き来する物語と,その物語のキーアイテムである「祈りの炎」から「時渡りのトモシビト」と名付けました。
バランス調整に注力し,ゲームとしての面白さを引き立たせる
4Gamer:
5月10日〜15日にクローズドβテストが行われましたが,初めてのオンラインゲーム運営ということで,手応えはどうでしたか。
個人的に,かなり勉強させていただきました。ですが,ロード時間の長さや多人数参加型コンテンツ「大討伐」のバランス調整の甘さなど,改修すべき項目がかなり多く,プレイヤーの皆さまにはご迷惑をお掛けした部分が多々あります。
クローズドβテストのユーザーアンケート結果も踏まえて,問題点の改善に努めていますので,7月1日から行われるオープンβテスト以降は,格段に遊びやすくなっていると思います。
4Gamer:
公式サイトで,「オープンβテストでの追加,および改善項目のご報告」が掲載されていましたが,追加要素だけでなく,細かいバランス調整も行ったようですね。
横山氏:
クローズドβテスト後のアンケート結果では,システム面は多くの方に支持されていましたので,バランス調整に時間を割きました。とくに注意したのは,ゲーム全体のテンポ感です。例えば,クローズドβテストではダンジョンで“いどう”をクリックすると歩き,ダブルクリックをすると走る仕様でしたが,ワンクリックで敵が出てくるまで自動で移動するようにしました。
4Gamer:
バランス調整については,具体的にどんな調整を行ったのでしょうか。
横山氏:
クローズドβテストは期間が短かったこともあって,それに見合ったバランスにしていましたが,「簡単すぎる」という意見が多くありました。それもゲーム性うんぬんの前に,ただクリックしているだけという印象になっていたんです。本来は,ダンジョンをどこまで進んでどこで戻るか。そうした度胸試しのような楽しみ方を想定していたのですが……。
4Gamer:
確か,ダンジョン内でキャラクターが死んでしまうと,そこで手に入れたアイテムがなくなってしまうんですよね。だから,無理せずボス前で戻って,アイテムだけ確実に手に入れるのか,それともボスに挑戦するのかみたいな判断が必要になっていたはずだと。
横山氏:
そうなんです。ですから,合成によるキャラクター強化の進行も計算して,ダンジョン攻略で緊張感が出るよう調整しています。
4Gamer:
とくに本作は,単にレベルを上げて強くするだけでなく,スキルのレベルや属性レベルなど,合成のやり込み要素も満載ですから,バランス調整はなかなか難しいでしょうね。
横山氏:
正式サービス開始の時点で調整終了というわけではありませんし,バランスは長期的にずっと考えていく必要があります。通常ダンジョンに関しては,属性を気にせずにクリアできるくらいが良いと思いますが,例えば,ある属性の武具を集めていると有利に進められるような,特別なダンジョンを登場させるのも面白いかもしれませんね。
4Gamer:
装備選択の幅が広がりそうですね。
横山氏:
ええ。ともあれ,まずはイベントダンジョンなどでプレイヤーさんの反応を見ながらやっていきます。
4Gamer:
イベントダンジョンといえば,クローズドβテストで「まぼろしの塔」が公開されていましたね。
横山氏:
まぼろしの塔は100階まであって,育成したキャラクターでどこまでいけるか,限界に挑戦して楽しむコンテンツでした。
4Gamer:
一番進んだプレイヤーは,どれくらいまで到達したんですか?
横山氏:
100階まで行くと最後にドラゴンが登場するんですが,我々としては倒せないだろうと思っていたんですよ……。
4Gamer:
ということは……。
横山氏:
はい。討伐した方がいらっしゃいました。
4Gamer:
おお,それは凄いですね。
横山氏:
ここは,簡単に突破できるようなバランスではなかったのですが,脱帽です(笑)。
4Gamer:
いつも思いますが,本当にプレイヤーって制作者の想定を上回りますよね……。まぼろしの塔は正式サービス以降も登場するのでしょうか。
横山氏:
そのままかどうかは分かりませんが,イベントダンジョンとして一定の期間内で遊んでもらって,プレイヤーの皆さんが何を求めているのか,反応を探っていこうと思っています。
その結果,クローズドβテストのまぼろしの塔は100階までありましたが,1階しかなくてそこに強力なボスキャラが1体だけ出現するとか,属性の影響が強いダンジョンにするとか,アイデア次第でバリエーション豊富なダンジョンを楽しんでいただけると思います。そういった意味で,開発に力が入る要素ですね。
ストーリーと世界観,合成とジョブ,それぞれ密接な関係を持つ千年勇者に不可欠な要素
4Gamer:
アンケートでは,ほかにどんなデータが集まったのでしょう。例えば,プレイヤーが本作で一番興味を持った要素とは,なんだったんですか?
世界観とストーリーですね。
4Gamer:
ブラウザゲームだと,ストーリーを読み飛ばしてしまうプレイヤーが多いような印象を持っていたのですが,千年勇者に関しては,しっかりと読まれているんですね。
横山氏:
そうですね。クローズドβテストに参加してくださるのは,どちらかというとゲームシステムを重視している方だと思います。ですが,そこに興味を持っていただいたことは,素直に嬉しいです。
当初は,先ほどもお話ししましたが,親しみやすいオーソドックスなファンタジーなので,そこが不評になるのではないかと考えていました。しかし,スクウェア・エニックスらしい,ファンタジー/RPG感を意識して作っていますので,そこが皆さんの興味を引いたのかもしれません。
4Gamer:
なるほど,スクウェア・エニックスらしい作品だからこそ,というのはありそうです。ちなみに,作中で主人公の選択として「はい」「いいえ」が選択できますが,この選択に意味はあるんですか。
横山氏:
これは,物語が長く続くとやはり読み飛ばしたくなりますから,メリハリを付ける目的で「はい」「いいえ」の選択肢を入れました。物語が分岐するとか,選択によってメリット/デメリットが生まれることはありませんので,自分ならどちらの選択をするのか悩んでもらえればと思います。
4Gamer:
クローズドβテストで遊べた範囲だと,「いいえ」を選ぶと,ちょっと面白い話の展開になりますよね。最初はまじめに「はい」を選んでいたのですが,途中からずっと「いいえ」を選んで楽しんでいました。
横山氏:
シナリオ担当の白本氏に,どちらか一方をクスっとできるような話にしてほしいと要望を出しました(笑)。ぜひ,ゲームのナビゲーターを務めるロビィのリアクションを楽しんでください。
4Gamer:
はい(笑)。ところで,千年勇者は勇者と魔王の話を扱っていますが,クローズドβテストでは,魔王の話題が全然出てきませんでしたね。
横山氏:
クローズドβテストでは5つのダンジョンがありましたが,実は6つめのダンジョン以降で魔王に関連した話が徐々に語られるんですよ。
4Gamer:
なるほど。魔王が出てこないことで,実は勇者が魔王なんじゃないかとか,設定の裏を考えて楽しんでいる方もいたようですね。
横山氏:
浅野氏(ブレイブリーデフォルト プロデューサー浅野智也氏)がクローズドβテストをプレイしてくれたのですが,そのときに「ロビィが良い奴すぎる。ラスボスなんでしょ?」と言われました(笑)。
4Gamer:
ああ,その線もありますね(笑)。ストーリー展開に関しては,現状どの程度まで決まっているんですか?
横山氏:
終章までの大枠の流れは決めています。ですが,オンラインゲームですから,細かな設定はアップデートごとにアイデアを出し合って決定していく方針です。
4Gamer:
分かりました。物語の展開も気になるところですが,個人的にプレイしていて,適度な文字量のせいか読みやすいと感じました。
横山氏:
そうですね。そのあたりは気を使っています。本当の意味で“気軽に楽しめる”ように,新しく覚えることは少なく,また一度に読む文章量も少なく抑えました。ブラウザゲームですから,仕事から帰ってきて気軽に楽しめる,ライフサイクルに組み込めるようなタイトルにするのが理想です。
4Gamer:
ブラウザゲームでも,PCの前に張り付くようなタイプもありますが,千年勇者はあくまで気楽にプレイできる方向性なんですね。装備を変えただけでジョブが変わる要素は,そんな手軽さを意識してのものなんでしょうか。
横山氏:
手軽さというよりも,装備を集める/ジョブを増やすという楽しみが必要だと思ったからですね。
もともとアバター要素は,開発の初期段階から考えていました。同時に,ゲーム的にもビジュアル的にも,わくわく感を演出するうえでジョブや職業といったものも必要だと思ったんですよ。この二つは外すことができないと判断したので,じゃあ,装備でジョブを決めてしまおうという話になったんです。
アンケート結果ではジョブや合成を「面白い」と感じてくれた方が多く,ホッとしています。
4Gamer:
ジョブに関しては「?」マークで隠されているものもありましたが。
横山氏:
ありますね(笑)。ジョブは今後確実に拡張されていく要素ではありますが,正式サービス開始のタイミングでは,勇者/戦士/武闘家/僧侶/魔法使いの基本5ジョブのみとなります。
4Gamer:
分かりました。ちなみに新ジョブが追加されるときは,対応する武器と防具が追加されて,それを装備することで新しいジョブになれるんでしょうか。
横山氏:
はい,そうなりますね。
- 関連タイトル:
千年勇者〜時渡りのトモシビト〜
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