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[GDC 2023]Epic Gamesが「Unreal Engine 5.2」を発表。「フォートナイト」を魔改造できる「Unreal Editor For Fortnite」もリリースへ
最初のセッションでは,最新版の「Unreal Engine 5.2」(以下,UE5.2)が提供する新機能や新ツールのお披露目が行われている。本稿では,発表された各項目からホットなトピックスを紹介していこう。
Epic Games「GDC 2023」特設サイト
開会の挨拶を行ったEpic Gamesの創設者兼CEO,Tim Sweeney氏 |
Epic Gamesの業績をアピール |
Unreal Engine5.2の新機能とは
まず公開されたのは,UE5.2を活用した技術デモ映像だ。下の動画の「00:19:50」あたりが該当シーンになる。解説を担当したのはEpic GamesでVP of Engineeringを務めるNick Penwarden氏だ。
ジャングルを制作したのはEpic Games傘下のスタジオQuixelのJakob Keudel氏で,彼は植物表現のエキスパートだという。現在も,UE5に統合予定の新たな植物レンダリングシステムを開発しているそうで,その成果物がジャングルシーンとのこと。なお同氏は約2年前に別の森林シーンを手掛けており,その仕上がりは下の動画で確認できる。
水しぶきは,流体シミュレーションで生成されたエフェクトだ。デコボコの悪路に応じてタイヤが変形する様子も見られるが,これもシミュレーションの結果を反映したものになる。ただし,水しぶきはUE5のエフェクトツール「NIAGARA」を使って事前生成しており,タイヤの形状変形も事前計算ベースとのことだ。
圧倒的物量のジオメトリは,UE5に初めて搭載されたジオメトリエンジン「NANITE」によってマイクロポリゴン化されながら描画される。そのため,EVが奥に進むにつれて拡大される背景は,ポッピング(ポリゴン数の異なる3Dモデルへの差し替えるとき,その瞬間が見えてしまうこと)をいっさい起こさず,無段階のLOD処理がリアルタイムに行われ,自然に拡大されれていく。
NANITEを使ったこのシーンでは,7100万のマイクロポリゴンをGPUが描画しているという。
00:22:00からは,R1Tのボディカラーがオパール(OPAL)柄に変化する。「Rivian社のEVを実際にオパール柄にすることはできない」とPenwarden氏は述べたうえで,「OPAL」は,新マテリアル設計ツール「Substrate」(旧名「Strata」)に搭載予定機能のコードネームだったと明かした。
このオパール柄,複数の色の鉱物が奥行きのある多数の層にちりばめられ,入射光と視線の関係が変化することで異方性の発色をすることが見て取れる。さらに,最表層に泥がかかった場面では,泥の影がオパール柄の鉱物に投射される様子も確認できる。
Substrateは,このオパール柄のような,「多層からなる複雑なマテリアル」の設計が可能であることをウリにしているわけだ。あえて補足しておくと,この多層構造に見える車のボディそのものは,表層のポリゴンだけでモデリングされており,あくまでSubstrateで設計された材質表現により,ある意味フェイクの多層表現が行われているにすぎない。しかし,どう見ても多層構造なのが,この新材質システムのすごさ,ウリ,ということだ。
プロシージャル技術で4km四方の地形を半自動モデリング〜PCGツール
Penwarden氏は,続いてUE5.2エディタに搭載予定の新機能「Procedural Content Generation」(以下,PCG)の紹介に移った。
PCGは,一言で表せば「プロシージャル技術」を応用した地形生成ツールだ。プロシージャル技術とは,アルゴリズムとAI技術の中間的な技術で,具体的には,表現対象物を多様な手法(解析的な場合もあれば,測定値から最も近い関数に当てはめる場合もある)で,多段の非線形関数の組み合わせにし,必要十分な品質の自然現象や構造物を作り出す技術のこと。
今や,自然に生まれたとしか思えないキリンやシマウマの複雑な毛並模様や,多様な貝類の形状,そして多くの植物の葉や枝などを関数に基づいて表せることが判明している。また,人間のさまざまな建造物が自然界にある植物と同系の関数で書けるという面白い研究報告もある。
AIより,いくぶんシンプルなぶん,使い手の都合に合わせやすいため,ゲーム実行時よりはむしろ,ゲーム制作プロセスを支援する技術として10年以上前から研究,実用化が進められてきた。
UE5.2のPCGを用いて岩石の配置,河川や道路の設定,植物の植生設定などを行うと,設定パラメータに応じた地形を半自動で生成できる。
デモでは,シーン内の樹木の増減,岩石の配置を変更し,短時間で望んだ景観を作り出す様子を見せている。「背の高い樹木の下には背の低い植物が育ちやすい」「岩石の縦壁には植物が少なめ」など,そうした「自然の法則」の適用もプロシージャル技術の範疇に入る。Penwarden氏によれば,「昆虫,鳥類などの発生位置,発生量もコントロールできる」とのことで,相当に凝った屋外シーンが作れそうだ。
今回のデモは,4km×4kmの範囲をPCGで生成し,R1Tが走り回るコース周辺,200m×200m四方をアーティストが手作業で作り出したと,Penwarden氏は明かしていた。
「フォートナイト」を好き放題改造できるツールが爆誕!?
このタイミングで登壇したLead Technical ArtistのJon Lauf氏は,「フォートナイトのチャプター4では,ゲームフィールドが,UE5が誇るNANITEの無段階LODシステムで描画されることになる。そのため,かつてないほど圧倒的な眺望が得られるようになった。また,UE5の大局照明システムLUMENの採用により,例えば建物の外壁が破壊された場合,大局照明が動的に変化して表現に矛盾が起こらなくなった」と述べ,「フォートナイト」のゲーム体験(とくにビジュアル体験)がUE4ベースだった前シーズンからガラリと変わったことをアピールした。
UEFNは,ゲームエンジン「Unreal Engine」のメイン制作ツールである「Unreal Editor」をベースに,単体アプリとして「フォートナイト」に最適化したものということになる。なお,UEFNは,PCでのみ動作し,3月22日にβ版が公開されることも発表された。
UEFNがユニークなのは,フォートナイト世界を改変,改造でき,さらには新規コンテンツを作ることまで可能であることだ。
Unreal Editorの基本機能の多くはそのまま使用でき,地形の盛り上げ,盛り下げや,植生の変更などが自在に行える。また,過去のフォートナイトに登場したアイテムやガジェット,乗り物などを自由に配置し,マーケットプレイスで購入したさまざまな3Dモデルなどをインポートできるので,まったくフォートナイトには見えないゲーム世界を構築したり,オリジナルゲームの作り込みも行えるとのこと。その意味では,マインクラフトに近い遊び方ができそうだ。
ゲーム進行の制御には,UEFN用に開発されたプログラミング言語「Verse」を使うことになることも発表された。
面白いのは,シネマティックエディタの「Sequencer」が搭載されているところだろう。つまり,ゲーム世界だけでなく,自分でイベントシーンまでをも作れるのだ。やろうと思えば,「フォートナイトの世界観を使った映像作品」なども作れるはず。
MetaHumanやマーケットプレイスに関する新情報も!
このほか,Epic Gamesが誇るバーチャル人間キャラクター生成システム「MetaHuman」の新機能セット「MetaHuman Animator」も発表された。これは,スマートフォンで撮影した人間の表情を,MetaHumanのキャラクターに適応できるというもので,2023年内にリリースされるとのことだ。
MetaHuman に対して高忠実度パフォーマンス キャプチャを簡単に適用できる新しい MetaHuman Animator 機能セット
Epic Gamesは近年,QuixelやArtStation,Sketchfabなど,デジタルアセットの販売事業を手がける企業を買収しているが,それぞれが独自に運営していたマーケットプレイスを,Unreal Marketplaceへ統合するという発表も行った。
名称は「FAB」で,移行は2023年の後半までに行い,FABで配布,販売されるコンテンツは,UE5はもちろんUEFNでも使えるという。
4Gamer「GDC 2023」掲載記事一覧
「GDC 2023」公式サイト
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Unreal Engine
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