レビュー
PlayStation 4に待望のレースゲームが登場
DRIVECLUB
レースゲーム不足のPlayStation 4(以下,PS4)において,レースゲーマーから発売を待望されていたタイトルが「DRIVECLUB」だ。日本では,PS4のローンチタイトルとして発売される予定だったので,筆者も本体と一緒に早々に予約を入れていたのだが,まさかの発売延期……しかし,2014年10月9日についに発売となった。万歳!
果たして「人がいるから,もっとレースが面白くなる」「次世代ソーシャル・レーシングゲーム」と銘打たれた本作は,一体どんなレースゲームなのか,さっそく見ていこうと思う。
とことんレースをこなして多くの名声ポイントを獲得していこう
シングルプレイのゲームモードは「ツアー」と「シングルイベント」が用意されている。
メインとなる「ツアー」では,世界各地で行われているイベント(レース)に参戦し,それぞれのイベントに課せられた目標を達成してスターを獲得しながら,より高いレベルを目指していく。
レベルは,ルーキー,アマチュア,セミプロ,プロフェッショナル,レジェンドの5つに分かれていて,合計で52種類のイベントが用意されている。最初はルーキーレベルしか挑戦できないが,後述するプレイヤーレベルや獲得したスターの総数により次のレベルがアンロックされ,レジェンドレベルのトロフィーイベントを制することが最終目標となる。
イベントは,ゴールラインまでの順位を競い合う「レース」,コースの最速タイムを狙う「タイムアタック」,ドリフトのスピード,アングルでポイントを競う「ドリフト」の3つが用意されている。各レベルは,この3つのレースモードが混在した構成で,一部のイベントと各レベルを締めくくるトロフィーイベントでは,「レース」と「ドリフト」など,複数のモードで競うこともある。
ルーキーレベルのマシンは比較的扱いやすく,ライバルカーも簡単に勝たせてくれる。しかし,レベルが上がるとゲームの難度も上がり,じゃじゃ馬のようなマシンをコントロールしながら,アグレッシブに攻めてくるライバルカーを相手にすることになっていく。
レースなので優勝を目指すのは当然だが,それぞれのイベントには「3位以内にゴールイン」「タイム1:41以下」「274KM/H以上のスピードに達する」など,2〜3個の目標が用意されており,それらを達成することでスターが獲得できる。普通に走っているだけで達成できるものもあれば,洒落にならないほど難しいものもあるが,すべての目標を一度のイベントで達成しなくても大丈夫。数レースを使って1つずつ達成していけるので,根気さえあれば全目標のクリアも何とかなるはずだ。
レース中はできるだけ“名声ポイント”を獲得できる走りに徹したい。名声ポイントとは,レース中に「順位を上げる」「ドリフトやスリップストリームを使う」「一定区間を接触なく走行する」などの特定の条件を満たすと加算されていき,コースアウトしたり,ほかのマシンや障害物に接触したりすると減算される。
レース中に獲得した名声ポイントは累積されていき,一定の数値に達することでドライバーレベルやクラブレベル(後述)が上がっていく仕組みで,ドライバーレベルが上がることで使用できるマシンがアンロックされる。
また,コース上の一定区間に発生する「フェイスオフ」でも名声ポイントを稼ぐことができる。フェイスオフは,指定されたラインを走る「コーナリングフェイスオフ」,区間の平均スピードを競う「平均スピードフェイスオフ」,ドリフトポイントで競う「ドリフトフェイスオフ」があり,規定値を上回ることで名声ポイントを獲得可能。できるだけ多くの名声ポイントを獲得してゴールすることが重要なのだ。
もう1つのゲームモード「シングルイベント」では,好みのコースとマシンを選択して,レース,タイムアタック,ドリフトの3つのイベントを楽しめる。ライバルカーの台数や難度,レース開始時刻や天候,昼から夜などの時間経過速度,フェイスオフ発生の有無なども設定してプレイできるので,ツアーの練習として走り込んでもいいし,ツアーでは選択できないマシンでコースを攻めるといった楽しみ方もできる。
なお,ツアー,シングルイベントのどちらも,各イベントごとに世界中のプレイヤーが記録したタイムやスコアなどがランキングされるので,ランキングトップを目指して挑戦してみよう。
街で見かける市販車から高級スポーツカーまで50種類以上のマシンを収録
登場するマシンは,「スポーツコンパクト」「スポーツ」「ハイパフォーマンス」「スーパー」「ハイパー」のカテゴリに分かれており,ミニクーパーやフォルクスワーゲン・ビートル,メルセデスベンツ Aクラスなど,街中で見かける車のほか,アウディ R8 V10クーペプラス,マクラーレン MP4-12C,マクラーレン P1,フェラーリ 458 イタリアやフェラーリ F12 ベルリネッタといった高級スポーツカー,さらにアリエル・アトム 500 V8やBAC Monoなどの公道を走れるレースカーを含め,50種類以上のマシンが収録されている。
収録車種のすべてが実在する自動車メーカーの車種で,外装から内装にいたるまで緻密に再現されており,運転席視点でプレイすると,リアルに再現されたハンドルやダッシュボード周りが見事。さらに車外から聞こえてくるエンジン音などのこもった感じもうまく再現されており,臨場感を高めてくれる。
筆者としては,最近のレースゲームでは珍しく,日本車が一台も収録されていないことに驚いてしまった。とはいえ,順次追加車種をリリースする予定はあるとのことで,世界的に知名度の高い日産GT-RやレクサスLFAなどが登場する可能性はありそうだ。
なお,パーツ交換などのマシンカスタマイズのほか,サスペンションやエンジン,ギア比,重量バランス等のマシンセッティングなどは一切できない。用意された挙動特性のまま走りを楽しむしかないので,あれこれとマシンを取っ替え引っ替えしながら,コースにあったマシンを見つけ出すのが勝利への近道だ。
車以外の部分について述べると,収録されているロケーションは,カナダ,チリ,インド,ノルウェー,スコットランドで,カナダの森林地帯,ノルウェーの冬の山岳地帯など,各国の景観や風土が再現されている。基本的にストリートコースが主体ではあるが,クローズドサーキットも用意されている。また,時間帯の変化が再現されており,夕方から夜,夜から朝へと移り変わっていくところは一見の価値あり。美しい風景に見とれてクラッシュしないようにしよう。
レースゲーム初心者には遊びやすいカジュアルな挙動
本作のマシンの挙動は,リアルな見た目とは裏腹にアーケード志向の強いカジュアル向けの味付けになっている。そのため,全体的に走らせやすく,レースゲーム初心者でも楽しめると思う。個人的に気に入ったのがスピード感で,美しい景色の中をかっ飛ばすのは非常に気持ちが良い。
ちなみに,ゲームパッドでプレイすると,アナログスティックでのステアリング操作は,速度が遅いマシンならば問題ないが,高速域になるにつれてカクカクとした動きになってしまい,そのままコントロールを失ってしまうことが多々あった。ゲームパッドに関する感度設定なども用意されておらず,この辺は慣れるしかないようだ。
ゲームバランスという点で気になる部分が多いので触れておきたい。まず,基本的に道路から大幅に外れて走れない作りになっており,路肩にタイヤを落とすと唐突にスピンしたり,ときに「なんで?」というあらぬ方向へ飛ばされたり,ハチャメチャな展開になることが多い。最近流行のミスを無かったことにするリワインド機能もないため,泣く泣くリスタートするハメになった。
また,ショートカットの判定が非常にシビアで,ちょっとしたショートカットでもコーナーペナルティとして数秒間のスローダウンを強いられる。レースゲームでは路肩にタイヤを落としながらコーナーを直線的に走り抜けて「オレって上手いなぁ」と自画自賛するのも醍醐味だと思うが,そういった走りが阻害されるシーンが多い。大きくコースアウトすると3秒のカウントダウン中にコース上に強制的に戻されるという仕様は,今時のレースゲームでは珍しく,少しばかり懐かしさを感じるところだ。
コーナーをショートカットしたり,派手に追突すると衝突ペナルティで数秒間のスローダウンを強いられる |
レコードライン表示などはないが,コーナー手前にあるフラッグの色でコーナーの角度が分かり,緑→黄→赤の順で角度が厳しくなる |
さらに,できるだけコースアウトせずに走りたくても,アグレシッブすぎるライバルカーによって苦戦を強いられる。自分の周りを常にチョロチョロするような調整がされており,大幅に引き離しても恐ろしい速度で追いついてきて(いわゆるブースト),その勢いのままぶち抜かれることもある。
ライバルカーはプレイヤーが前にいようが,自分の走行ラインを徹底的に走るバランスになっている印象で,ストレートでさえ強烈に追突してくるし,コーナーで横からぶつけてくるから怖い。
実際のところ,ライバルカーが勝手に追突しているのに名声ポイントが減算されたり,接触されたせいでコースアウトしてスローダウン,コーナーで突然の急減速を避けられず追突してスローダウンなど,理不尽なペナルティを食らうことが非常に多い。熱い接近戦を再現するためなのかもしれないが,個人的には非常にストレスのたまる味付けに感じられたのが残念なところだ。
熱い人間同士のレースを楽しめるマルチプレイだが,クリアすべき課題も多い
本作のウリでもある「マルチプレイ」は,オンラインでつながれている最大12人のプレイヤーと,ソロやチームプレイでの抜きつ抜かれつのレースを楽しめる。ホストとなるプレイヤーがレースを立ち上げてプレイヤーを募集するという方法ではなく,ロビーとなるイベントブラウザでイベントが一覧でき,各イベントの受付時間内にエントリーすることで,同じイベントにエントリーしているプレイヤーとマッチングされてイベントが始まる流れだ。
イベントによって使用できるマシンやマシンクラスが指定されており,所有していないマシンを使う場合は,レンタルカーという形で参加できるが,この場合は名声ポイントが加算されないので,シングルプレイのツアーやシングルイベントなどでドライバーレベルを高めて,多くのマシンをアンロックしておくのがオススメだ。
マルチプレイでは,人間同士のレースということで,ときにシングルプレイのライバルカー顔負けの体当たりや暴走をするプレイヤーもいるにはいるが,クリーンなレース展開をするプレイヤーが揃えば,人間同士の非常に熱い競い合いを楽しめる。また,マルチプレイでもフェイスオフが発生するが,競い合う相手は参加しているプレイヤー達ということもあって,フェイスオフを狙ったばかりにレースに負けた……なんてこともある。
ほかには,フレンドや見ず知らずのプレイヤーと「クラブ」を作成して,そのメンバーとオンラインレースを楽しむこともできる。クラブにはクラブレベルが用意されており,メンバーがレースやタイムアタックで獲得した名声ポイントによってクラブレベルが上がり,メンバー全員に新しいマシンがアンロックされるといった恩恵を受けられる。ただし,クラブの参加人数が最大6人と極端に少ないため,クラブというよりもチームっぽいのが悲しいところだ。
ほかには自分のラップタイムなどをフレンドやライバルに送信して挑戦してもらえる「チャレンジ」など気になるモードも用意されているが,こちらは今のところ一度もプレイすることができなかった。
というのも,発売当初からサーバーが不安定で,原稿執筆時点でまともにマルチプレイを体験できなかったのだ。発売から1週間ほど経過したところで,やっとサーバーにつながるようになり,クラブなどは機能するようになってきたものの,サーバーに接続できなかったり,マッチング段階で切断されたりすることが多く,不安定な状態が続いている。ソーシャルレースゲームとマルチプレイをウリにしたゲームにおいて,肝心のマルチプレイを快適に楽しめないというのは,早急に何とかしてほしいところだ。
レースゲームとして見ると,とことんレースをやらせる“生粋のレースゲーム”な作りになっている反面,マシンの挙動などはかなりカジュアル寄りなので,プレイヤー層を選ぶタイトルと言える。総評としては,手軽に遊べるレースゲームとして,初心者などに向いているのではないかと思うが,全体を通して単調な作りになっており,細かい詰めの甘さも見受けられるのが残念なところだ。マルチプレイは“レースができると”非常に面白いので,とにかく早急に思う存分にマルチプレイを楽しめる環境を構築してほしいところだ。
実際にプレイしてもらえると話が早いのだが,本作の一部を無料で体験できるPlayStation Plus加入者向けの「DRIVECLUB PS Plus エディション」についても配信が延期になっており,こちらの準備も進めてもらいたいところである。
「DRIVECLUB」公式サイト
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(C)Sony Computer Entertainment Europe. Developed by Evolution Studios
- DRIVECLUB (初回封入特典:オリジナルカラーのクルマ3台(RUF R12 R/ McLaren 12C/ Mercedes SLS AMG Coupe Black Series)
- ビデオゲーム
- 発売日:2014/10/09
- 価格:¥5,310円(Amazon) / 5957円(Yahoo)