インタビュー
シューティングゲームの未来に芽吹く種を植えたい。「カラドリウス」に込めた(脱衣だけではない)思いを開発スタッフに聞いた
“この先が見たい”と思わせるために作り込んだキャラクターや世界観
4Gamer:
カラドリウスというタイトル名を検索してみると,神話に登場する神の使いと出てきますね。
星野氏:
元々は中世ヨーロッパの神話で,王様が亡くなるときに姿を現すと言い伝えられている鳥のことなんです。ゲームでは,戦闘機に乗った主人公たちをカラドリウス,王国の危機を王のいまわの際になぞらえているというわけです。自分では,しっくりきたタイトルかな,と思っています。
4Gamer:
世界観は早い段階から固まっていたとのことですが,キャラクターが女性2人,男性1人というのも決まっていたのでしょうか? 羞恥ブレイクのことを考えると「なぜ男がいるんだ」という素朴な疑問が浮かんでしまうのですが(笑)。
星野氏:
キャラクターの人数や男女構成は企画初期から決まっていました。やはり「なんで男がいるの?」という意見もありましたが,結局は「男がブレイクしたっていいじゃない!」という結論に至った記憶があります。
駒澤氏:
むしろ「脱がせたい」みたいなノリだったよね(笑)。
星野氏:
そこもある種の間口の広さというか(笑)。でもこれが全員女性だと「なんだ萌えゲーか」みたいな色眼鏡で見られてしまう可能性が高いので。男性キャラならではの,男らしいストーリーも大事にして訴求していきたいと思っています。
4Gamer:
キャラクターデザインにヤスダスズヒト氏を起用した経緯はどんなものだったのですか。
駒澤氏:
声をかけさせていただいたのは3年くらい前になります。繰り返しになりますが,シューティングの持つシンプルさ,ストイックさ,プレイしてのカタルシスを大事にしつつも,新しいプレイヤー層を呼び込めるものにしたかったんです。
当然ながらキャラクターデザインには現在第一線で活躍されている方を起用したいと思い,その結果ヤスダ先生にたどり着きました。話を持ち込んだところ「実はシューティングゲームが好きなんです」と,かなり前向きに応じていただいたんです。
4Gamer:
偶然とはいえ,これ以上ない人選となったわけですね。ヤスダ先生とのデザイン面でのやり取りはどのように?
やりとり自体はこちらのコンセプトを伝えてラフスケッチをいただく,という通常のものでしたが,作業を進めるうちにデザインの方向性が大きく変わりました。
当初こちらが考えていたものは,従来の意味でのゴシックホラーに近い,ゴテゴテしたデザインだったんです。けれどヤスダ先生から「もっとすっきりとしたデザインラインを目指したい」という提案がありました。確かに通り一遍のゴシックイメージでは,埋もれてしまうようにも思えたんです。ある種の賭けではあったんですが,結果としてはゴシックの要素を残しつつ,新らしさも生まれたのではないかと思っています。
4Gamer:
ゴシックホラーと聞いて,ああいったテイストのキャラクターを思い浮かべる人はそういないと思います。
星野氏:
キャラクター以外のデザイン面も,元々デザイナーである駒澤の厳しいチェックが入りましたので,かなりいいものに仕上がったと感じています。
作業中,突然資料として「God of War」を手渡されて「ステージのグラフィックスはこんな感じで」と言われたり(笑)。さすがにプロジェクトの規模が違いすぎるので,同じクオリティとまでは行きませんが,目指す気持ちはそこに持っておけと。
4Gamer:
言われたほうは困りますね(笑)。
駒澤氏:
目指す山は高いほどいいですから(笑)。
星野氏:
ゲームの特性上,描き込みすぎても弾が見づらくなったりするので,そのあたりを探りつつでしたが,これまで作られてきたシューティングタイトルのどれよりもいいと言われるところを目指しました。
4Gamer:
グラフィックスのリッチさは,昨今のシューティングゲームの中でも頭ひとつ抜けていると感じます。
駒澤氏:
決してクオリティ至上主義ではないのですが,グラフィックスも“先が見たい”という意識に訴える大事な要素だと思うんです。昔は,多重スクロールであったり,自機の映り込みであったりと,見た目の驚きを演出しようと各メーカーが競うように作り込んでいましたが,最近はその流れも途絶えていたように見えますし。
4Gamer:
ビジュアルだけでなく,サウンドもベイシスケイプさんが担当するなど,力が入っている印象です。
駒澤氏:
これも“先が見たい”という点からですね。昔はゲーム音楽のサントラって人気がありましたけど,改めてそこを意識してみようと。曲単体で聴いても「これ何のゲームの曲?」と,興味を持ってもらえるような音楽ということで,シューティングゲームに理解があり,世界観を踏まえた上で,十分に聴きごたえのあるものを作れる方,という絞り込みをしていったら,ベイシスケイプさんにたどり着きました。
シューティングゲームの新たな起点を作るため,入れるべきものをすべて詰め込んだ
4Gamer:
この辺で,羞恥ブレイクについてもう少し詳しく聞かせてください。概要を説明したときのスタッフの反応はどうだったのでしょうか。
星野氏:
男性スタッフが多いせいか「素晴らしい!」と,満場一致で(笑)。開発の早い段階で実際に動作するデモを作ってみてたのですが,そこでの反応を見て「これはイケるな」と確信を持ちました。
あとはバランス調整や出現条件の設定など,ゲームとしてどう必然性を持たせるかという部分に気を配ったり。
やはり,自機がダメージを受けたら脱げる,というだけでは淡白ですし,自機がやられるというマイナス要素が,普段と違う絵が見られるというプラス要素に転じるのをうまく演出したい,と考えましたね。
4Gamer:
たしかに現金なもので,羞恥ブレイクがあると,ゲームオーバーになっても“もう一丁”という意欲が湧きやすいです。ですが,例えば「キャラクターなんていらない」とか,「気が散る」といった反応は心配していませんでしたか。
星野氏:
そういう方もいらっしゃるのはわかっていましたので,設定で羞恥ブレイクをオフにできるようにもなっています。
ですが,実際に遊んでいただければ,羞恥ブレイクはゲームを阻害するものではないし,このシステムあってのカラドリウスになっているというのはわかっていただけるかと思います。
駒澤氏:
“脱衣シューティング”という話題が先行していますし,それを否定するわけではないのですが,決してそういう要素だけにへつらわないようにはしています。
ユーザー訴求だけを考えれば,「オッパイぼよよ〜ん」みたいなパッと見の刺激が多いほうがいいのでしょううが,決してそれだけのゲームではないので。
4Gamer:
コアなプレイヤー向けの仕掛けもあるということですよね。
星野氏:
このインタビューが掲載される頃には情報が公開されていると思いますが,スコア稼ぎの部分にもこだわっています。本作ではゲージを消費して放つエレメントシュートで敵を倒すほど得点倍率がアップしていくのですが,ゲームを一度クリアすると,本来キャラクター固定のエレメントシュートを,自由に入れ替えて使えるようになるんです。
ですので,攻略スタイルの幅が増えますし,より自分のスタイルを追求できるようにもなります。シューティングゲームの攻略というものは「最適解」を探す行為なのですが,その点には十分に満足してもらえると思いますよ。
4Gamer:
今後の展開についてお伺いしたいのですが,Xbox 360版のあとにアーケード版のリリースが予定されていますよね。
駒澤氏:
まだ調整中ですが,夏ごろにはリリースしたいと考えています。
星野氏:
レベルアップや難度など,まずは家庭用として開発してきたのでバランス調整は必要ですが,キャラクターや世界観などに興味を持ってくれたプレイヤーさんを突き放さないようなものにしたいと思っています。
4Gamer:
こうしてじっくりお話しを伺っていると,カラドリウスというタイトルは,シューティングゲームというジャンルが,予算や市場などもろもろの都合で捨てていったものをきちんとすくい上げて,丁寧に再構築したものだと感じます。ただ,商売としては大丈夫なのだろうかと,外野ながら心配にもなるのですが……。
星野氏:
この場を借りて言わせていただくなら,駒澤にはたいへん感謝しています。
(一同笑)
駒澤氏:
数字だけを考えれば,若干後悔することになるかもしれませんが,それくらいの気概で挑まないとジャンルに目を向けてもらえないということですね。
今回にしても,業界の人に「今度新作シューティングを出すんですよ」とカラドリウスを紹介しても「雷電の新作じゃないんですか?」と聞き返される。その裏には「雷電の新作のほうがよかったんじゃないの」という気持ちが織り込まれているんですよ。
4Gamer:
確かにそうかもしれませんね……。言った本人は意識していないかもしれませんが。
駒澤氏:
なので,「お,こっちもいいね」と言われる作品にしなくちゃいけない。もちろん,手間をはしょってゲームを発売することはできたし,そういった手法をビジネスとして否定するものではないけれど,今回に関しては,新しいものを作るというところにこだわりました。
雷電ではできない,違った面白さのあるタイトルを,本当にしっかり作り込まないと意味がない。なので,これだけ時間がかかっているんです。
4Gamer:
では,やろうと思った企画はすべて詰め込んだと。
星野氏:
ええ,入れ込めたと思います……が,まだ時間がもらえるなら,もっといじっていたいですね。
駒澤氏:
勘弁してよ(笑)。
4Gamer:
気の早い願望ですが,せっかくここまで構築された世界観があるのなら,例えば他ジャンルのゲームであったり,コミックやフィギュアであったりと,カラドリウスのスピンオフ作品も見てみたいですね。
駒澤氏:
希望としては当然持っていますが,そればっかりは私たちだけで賄いきれない部分なので(笑)。まずはゲームをヒットさせて,ある程度みなさんに認知してもらわないことには何も始まりません。
これだけの手間暇をかけたタイトルなので,作品性が広い形で受け入れられたら嬉しいし,その予感もあります。私たちだけの創作物ではないので,あまり勝手なことは言えないですが,二次創作的な広がりがあれば,なお嬉しいですね。個人的な関心事でいえば,ブレイク後のコスプレは大歓迎です(笑)。
4Gamer:
それは私もぜひ見たいですね(笑)。たっぷりとお話しを伺いましたが,最後に,読者へのメッセージをいただけないでしょうか。
駒澤氏:
大きなことを言うようですが,カラドリウスでは“新しいスタート地点”を作りたかったんです。シューティングゲームの現状って,以前ヒットしたタイトルの続編を出す,あるいは別ハードへの移植や別バージョンを出す,という感じで……何をか言わんやですよね。
私たちはここでそれをリセットして,新たな起点を作りたかった。もちろんカラドリウスは製品なので,売れてくれないと困るのですが,それ以上に「シューティングでも,まったくのブランニューがあり得るんだね」という,今後に芽吹く種を植えたかったということですね。幸い種を植えるところまでは行けたと思うので,あとはどう育てていくのかが課題だと思っています。
星野氏:
僕の方からは,とにかく「気楽に遊んでほしい」ということをお伝えしたいですね。シューティングって,パズルと一緒で本来はカジュアルに遊べるジャンルなんですよ。それがいつの間にか,ゲームの中でも「一見さんお断り」みたいな,とびきりハードルの高いジャンルになってしまったと感じています。
ですから,スコアや勝ち負けを気にせず,まずは自分の満足のいく範囲で遊んでほしいですね。2人協力プレイ時に,自機同士が近づくと弾消しバリアが出現するのも,そういった思いからです。アイテム欲しさに動いたら,バリアがなくなってミスしてケンカ,みたいなのもまたヨシということで(笑)。
4Gamer:
本日は長い時間どうもありがとうございました。
本文中の駒澤氏の発言にもあるように,どこか既視感のあるタイトルばかりが目立っていたシューティングゲームというジャンル。そんな中に登場した本作は,ジャンルに対して「待った」をかける本気度に満ちていると感じた。
その本気度は,実際にゲームをプレイすればより強く感じられるはず。4月20日には,試遊&ライブイベントが予定されている(詳細はこちら)ので,このインタビューを読んで,カラドリウスが気になったという人は,ぜひ会場へと足を運んで,自身の目でその出来を確かめてほしい。
「カラドリウス(Caladrius)」公式サイト
- 関連タイトル:
カラドリウス(Caladrius)
- 関連タイトル:
カラドリウス エル・シエル
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