プレイレポート
デッキ構築型カードゲーム「Pirates of Liberta」の先行バランシングテストレポート。荒削りだが今後の進化に期待が持てる
このプロジェクトは,ボードゲームショップ「ドロッセルマイヤーズ」の渡辺範明氏が参加し,「ドミニオン」のオンラインゲーム開発者が所属する「ライフツービッツ」が携わるという布陣が発表されたときからボードゲーム関係者の耳目を集めていた,ブラウザタイプのデッキ構築型対戦オンラインカードゲームである。
3月13日〜17日にその先行バランシングテストが,2000人という規模で行なわれた。デッキ構築型ゲームの骨子である「シンプルなルールから生まれる多様な戦略性」はそのままに,スリル感が加わったその内容を詳しくご紹介していこう。
「Pirates of Liberta」公式サイト
○「Pirates of Liberta」の基本ルール
ここではゲームルールの基本を説明する。「ルールはいいから,遊んだ感想だけ知りたい」という人は,囲みの下まで進んでいただきたい。
・ゲームの目的
プレイヤーの目的は,海賊団を率いてライバルよりも多く財宝を集めることだ。
最初のデッキは全員同じ内容で,「下級船乗り」×5,「樽」×3,そしてトラブルカードの「食料不足」と「嵐」が2枚ずつの,計12枚。
自分のデッキから1枚ずつカードを引き,引いた船乗りカードが持つ「獲得力」を使って新たなカードを獲得し,デッキに加えていく。「獲得力」を上げると財宝カードを獲得できるようになり,2〜4人で対戦し,最終的にデッキの中の財宝が一番多いプレイヤーが勝ちだ。
4人プレイ中のゲーム画面
・カードのドロー
本作の特徴は,決まった「手札」というものがなく,毎ターン好きなだけデッキからカードを引ける(ドローできる)ことだ。ただし,航海中の困難を表すトラブルカードは,ドローを妨げる。つまり,同じ種類のトラブルカードを2枚引いてしまったら,「バースト」が発生して,そのターンは何もできず強制的に終了してしまう。なので,様子を見ながら途中で引くのを「やめる」という選択が必要になるのだ。
・カードの獲得
「下級船乗り」は1枚で1獲得力を持つが,ほかにも獲得力を増やすカードがいろいろとある。毎ターン,場に出ているカードの合計獲得力を支払って,カードを1枚獲得してデッキに加えることができる。
※例
獲得数が増えれば,さらに追加のカードを獲得できる。
獲得力3→中級船乗りを獲得
獲得力4,獲得数2→中級船乗りと少年を獲得
ただし,カードを1枚獲得したら,自分の場に出ているカードの中からどれか1枚と必ず交換しなくてはならない(トラブルカードとは交換できない)。なお,交換したカードは廃棄される。
獲得力3で「中級船乗り」カードを獲得 その「中級船乗り」と交換するカードを選ぶ
たとえば,デッキに最初から入っている「樽」はただの1得点カードなので,「中級船乗り」を獲得してこの「樽」と交換するのは,序盤の基本戦術だ。
しかし,たとえば「上級船乗り」×3を使ってカードを1枚獲得した場合,貴重な「上級船乗り」を1枚,代わりに手放さなければならなくなってしまう。いくらでもカードを獲得すればいいというわけではないのが難しいところだ。
獲得したカードはデッキ内のカードと入れ替わるため,デッキ枚数は基本的に12枚から増減しない。
ただし,「少年」のように,獲得するときに場のどれかと交換する必要がなく,そのままデッキに入る例外カードがある。あとあと,デッキ内のカードがどれも強くなってきたときに,交換に差し出しやすいので役に立つ。また,デッキ枚数が増えるため,トラブルカードを引く確率が下がり,バーストしにくくなることにもつながる。
・アクション
毎ターン,アクションポイントの分だけアクションカードを使える。基本的には1ポイントだが,アクションポイントを増やすカードもある。アクションカードを使うことで,「安全ドロー」でトラブルを避けつつカードを引いたり,相手を攻撃したりと,いろいろなことができるので,うまく活用すれば勝利が近づくだろう。
・財宝の獲得と勝利
財宝カードは全部で12枚存在し,必要な獲得力と,得点が少しずつ異なる(先行バランシングテスト中に何度か変更された)。
4枚ずつ並んだ財宝の列がどれかなくなるとゲームが終了し,その時点でデッキ内の得点が多い順に順位付けされる。
各プレイヤーの得点は常に表示されているので,誰がもっとも勝利に近いかはすぐに分かる。トップを走っているプレイヤーは,総得点が少なくても同じ列の財宝を獲得し続けて早くゲームを終わらせようとするし,遅れを取っているプレイヤーは高い得点の財宝を獲得して逆転しようとする仕組みだ。
また,財宝の列がなくならなくても,20ターン経過したらその時点でゲームは終わり,得点の高いプレイヤーの勝利となる。
・勝利の報酬
ランク戦で勝てば増え,負ければ減る「ランクポイント」によって,プレイヤーの段位が上下する。先行テストでは1段からスタートし,9段まで上がってから最高位「海賊王」にまで昇格することができた。
順位に応じてランクポイントやハート,使い方は不明だったがメダルも獲得できる
またゲームを遊ぶごとに必要な「ハート」は時間の経過で回復するが,ランク戦で勝てばハートが増えることもある。
・条件は皆同じ
全員の初期デッキが同じことも本作の特徴として挙げられるだろう。つまり,相手が何段の強者であろうと,スタートの条件は対等なのだ。「オンラインカードゲーム」ではあるが,あとから始めたからレアカードが手に入らないとか,最初からやっている人のほうが有利とか,そういった要素がない「フェアネスさ」は,この手のゲームには珍しいといっていい。
先行バランシングテストの様子
先行バランシングテストは,名前の通りゲームバランスの実験的な要素が多く含まれ,短い期間ではあったがプレイヤーの声を反映してさまざまな調整が行なわれた。
・3つのモードでの違い
また,使用するカード群を変えることで,毎回異なる展開のゲームになるのも「デッキ構築型カードゲーム」の特徴だ。使うカードを選ぶ方法としては,1枚ずつ好きにピックアップする「アラカルト」,決まった組み合わせから選ぶ「セット」,勝手に決まる「ランダム」がある。
「アラカルト」では使いたいカードを各プレイヤーが順番に8枚ずつ選択する |
「セット」では3種の基本的な組み合わせが選べる |
「一人で遊ぶ」は,AIを相手に1人でプレイする練習モード。先行バランシングテスト中は試験的な運用だったためか,AIはアクションカードを使わなかった。また,たまに獲得力が足りているのに財宝を獲得しない,といった謎な行動をとったが,挙動はサクサク。
友人と対戦の練習ができる「フリー対戦」は,部屋を作って人を募集する仕組みだ。負けてもペナルティがないので,新しい戦術を試せる。
「ランク戦」は,自分の段位に近いプレイヤーとオートマッチングする。バランシングテストの期間中にランキング最上位となった3名に賞品が出たので,真剣勝負でにぎわった。このモードでは夢のコンボをねらうよりも,バーストを最低限に抑える堅実なプレイングが重要だった。
・人数の違い
フリー対戦モードとランク戦モードは,2〜4人の好きな人数でプレイできる。
2人戦は相手より一刻も早く得点を稼ごうとカツカツの勝負になりやすく,ミスをすると取り返しにくいが,4人戦だとややパーティゲームの趣になり,バーストが連続したり,攻撃カードが飛び交ったりすると盛り上がる。
スタンプでの感情表現が楽しい
専用のチャット用スタンプ27種が画面右下にあって,ドヤ顔をしてみせたり,「ナイスバースト!」と煽ったりするのが,かわいくて意外と楽しい(そんな要素は不要だという意見ももちろんあるだろうが,個人的には待ち時間にも人の行動に茶々を入れられるのが,上記のようなパーティゲームらしさにいい味を出していると思う)。
スタンプは右から左へ流れていく 普通のテキストチャットもある
友達相手ならむろん,知らない人を相手にした対戦でも,鬼引きのあと軽くドヤ顔を表示させ,相手から悲しい顔のレスポンスをもらったりして,気楽にコミュニケーションをとりながら遊べる。特に「ナイスバースト!」のスタンプのウザさは異常。自分がバーストしたあとにこれを連打されると,イライラを通り越して笑ってしまうほど。
カンタン戦術指南
先行バランシングテストに登場したカードだけでも,さまざまな戦法がとれる。代表的なパターンをざっと紹介しよう。どれも万能ではなく一長一短といったところだが,使えるカード群や相手の展開速度に応じて,臨機応変に使い分けよう。
《速度重視型》
アクションをほとんど入れず,ひたすら船乗りを上級に格上げしていく。単純だが失敗しにくく侮れない戦法。「下級船乗り」+「娼婦」,あるいは「樽」+「散財」によって序盤にブーストをかけるやり方も。
《引き切り型》
アクションを増やし,安全ドローをして,さらなる追加アクションと安全ドローにつなげる。あるいは「船医」2枚でトラブルカードを打ち消して全カードをドローするデッキも,うまく作れれば強い。
《攻撃型》
しかしどんな戦い方をとるにしても,もっとも重視しなければならないのはスピードだ。このゲームは最長でも20ターン,早ければ10数ターンで終わる。それまでにバーストを何度も起こしていては,大きな差がついてしまう。バーストをできるだけ減らすように動くのは当然として,「強いが時間のかかる戦術」は失敗することも多いので注意しよう。
覚えておくといいのは,カードを獲得したあとでもアクションポイントがあれば獲得したアクションカードを即座に使える,というルールだ。アクションポイントがあまっているなら,「荒くれ」などの獲得力+1,獲得数+1のカードを取ってすぐ使うことで,おまけの「少年」を得られる。
実際にやってみるとよく分かるが,獲得力1でデッキを厚くしていける「少年」の重要性は,想像以上だ。このゲームをごく端的に表現するなら「少年を獲得して財宝と交換するゲーム」と言ってもいいほど。
全体に関してと,今後への期待
カードやインタフェースへの要望などが書き込まれたレビューページ |
つまり,序盤に「樽→嵐→嵐」のような,どうしようもない引きでバーストを起こし,他人より出遅れると巻き返すのは難しいので,やる気をなくしがちということだ。もちろん運の要素が絡む以上,どんなに負けていても逆転できる可能性はあるが,先行したプレイヤーが堅実にプレイしさえすればいいのに対し,出遅れたプレイヤーはバースト覚悟で賭けに出なければならないことが多く,逆転の可能性はあまり高くない。なので,バーストをなんらかのメリットに変換できるようにするといった改善を求める声が多かった。
また,1回プレイするごとにハートを1つ消費するうえ,ランク戦で負けるとさらに減るので,少しやり込んでプレイしようとするとハートはすごい勢いでなくなる。先行テストではハートを無限に使えたので気にならなかったが,実際の運用がスタートした場合,課金しても続けようとするだけのモチベーションを,始めたばかりの人が保つのは少々きついかもしれない。現状で課金の形態がどのようになるかは発表されていないが,経験の少ないプレイヤーが負けても楽しく続けられるような導入部分に関しては,何らかの工夫が必要ではないかと感じた。
ただし,先行テスト中に,弱くて使いにくかったカードに能力が追加されて強くなったり,逆転しやすくなるように財宝カードの並び順が変更されたりと,プレイヤーの意見を取り入れていろいろな改善が施されるといった対応の早さは,プレイヤーとして嬉しかった。
デッキ構築型カードゲームのファンにはもちろん,「手軽にサクサク遊びたいが,単純な作業ゲームはつまらない」という人にも,思考の重要性がちょうどいいバランスなので,次の機会にはぜひさわってみていただきたい。
先行バランシングテストでは,毎日のように追加カードが導入されたり,プレイヤーの意見を取り入れてゲームバランスがちょくちょく変更されたりしていた。したがって,そのたびに新しい戦術を編み出したり,うまい人のやり方を研究したりして一戦ごとに新発見があり,常にワクワク感を持ってプレイすることができたのは好印象。一方でまだ改善できそうな点も多かったが,プレイヤーの意見が反映される余地が多い,進化するゲームということでもあるので,今後に期待できそうだ。
ドミニオンの世界チャンプが見たPirates of Liberta
「ドミニオン」の世界選手権優勝者であるre_neさんも,今回の先行バランシングテストに参加していた。短い時間しかプレイできなかったというが,きっちり9段まで昇格しているあたり,さすがとしか言いようがない。
元祖デッキ構築型カードゲーム「ドミニオン」の2011年世界選手権で優勝したre_neさん
そんなre_neさんに感想をうかがってみたところ,「バーストという実験的な試みを取り入れていたので,ドミニオンとは違う新鮮な気持ちで楽しめました。ただ,序盤の不運なバースト連発でいきなり厳しくなってしまうところはあるので,その救済措置は何かしらあってもいいかも。テストプレイ中にもいろいろ修正があったので,本実装でいったいどうなるのか楽しみです」とのことだった。
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