インタビュー
新キャラクターも追加されるVer.2.00で「カオスコード」は何を目指すのか。開発のFK Digitalに台湾から見た格ゲー事情について聞いてみた
台湾に拠点を持つ海外デベロッパ・FK Digitalの手による同作は,2010年に稼働を開始し,今年でまる4年が経過したタイトルとなる。4Gamerでは,その最初期に開発者インタビューを掲載し,同社が日本のアーケードを目指す経緯などをうかがっているが,今回のバージョンアップを機に,同社で本作の開発に携わるお二人――Mickey Lin氏とMichael Lin氏に,改めて話を聞いてみた。Ver.2.00のコンセプトや新キャラクターの詳細,また台湾からみた現在の格ゲーシーンなどについても聞いてみたので,興味のあるプレイヤーはぜひチェックして欲しい。
■関連記事:
「カオスコード」公式ポータルサイト
AC版「カオスコード-ニューサインオブカタストロフィ-」公式サイト
FK Ditital公式サイト
待望の新キャラクター,ルピナスとレイ
4Gamer:
2014年8月と9月に新バージョンのロケテストが実施されたとのこと。このVer.2.00では,どんな変化を予定されているのでしょうか。
カオスコードのコンセプトは,追加の必殺技や超必殺技であるアルティメット・カオスを選択できるスキルセレクトにあると我々は考えています。しかし,稼働から3年が経過したことで,各キャラクターごとに「正解」が決まってしまっているように感じていました。この部分に手を加え,スキルセレクトにもう一度光を当てたいというのが,今回のVer.2.00の狙いです。
Michael Lin氏:
私は毎日カオスコード関連のニコニコ生放送をチェックしていますが,プレイヤーの皆さんが選ぶスキルがいつも同じなんですよね(笑)。なので,Ver.2.00ではスキルセレクト対応技を含む,ほとんどの技に調整を加えています。プレイヤーの皆さんには,ぜひスキルセレクトで大いに悩んでもらいたいです。
4Gamer:
なるほど。ロケテストを行ってみて,プレイヤーの反響はどうだったのでしょうか。
Mickey Lin氏:
「カトリーヌをもっと変えてくれ」という意見が多かったですね。我々としてはすべてのキャラクターに調整を加えたつもりだったのですが,まだ足りなかったようです。参考にさせていただきます(笑)。
4Gamer:
ゲームバランスの調整以外にも,システム面での変更があると聞いています。
Mickey Lin氏:
ええ。まず,投げ抜けのコマンドが[C]から[A]+[C]に変更になり,よりプレイヤーのスキルが求められるようになりました。[C]だけだとちょっと簡単すぎましたね(笑)。
もう一つ,ガード不能な攻撃であるガードブレイクにも変更が入り,ステップを含むさまざまな動作でキャンセルできるようになりました。このため,ダッシュセレクト※がより重要なものになっています。これまでは,ステップタイプを選ぶのはブラボーぐらいでしたから。
※カオスコードではダッシュの性質を,一足飛びを行うステップと前方に走り続けるランから選択できる。
Mickey Lin氏:
それからこれはゲームシステムではありませんが,Ver.2.00では対戦後のゲームモードを,アーケードモードとプラクティスモードから選択できるようになる予定です。さらにNESiCAを使った戦績表示にも対応します。プレイヤーネームを変更したり,CPランキングをチェックしたりもできるので,ぜひご期待ください。
4Gamer:
おお,それはやり込み勢には嬉しいですね。ではキャラクターについてはいかがですか。公式サイトにもあるように,Ver.2.00では新キャラクターとしてルピナスとレイが登場するとのこと。
Mickey Lin氏:
どちらも,今までのカオスコードにはない遊び方ができるキャラクターです。まずルピナスは,スピーディな万能タイプのキャラクターで……格闘ゲームファン向けに言えば,キャミィに似ています。
Michael Lin氏:
彼女の技はどれも威力が高いのですが,連続技を作るのはほかのキャラクターよりも難しいかもしれません。ただ,格闘ゲーマーならすぐにコンセプトを理解できるはずなので,扱いやすいでしょう。
Mickey Lin氏:
スピーディでありながら,ロボットアームを駆使したリーチの長い技を持っている。さらには投げや中段に派生できる技もあるので,扱いやすいだけでなく,色々な戦術を考えられると思いますよ。
4Gamer:
コンボよりも立ち回り重視のキャラクターという理解で良いのでしょうか。
Mickey Lin氏:
はい。ただコンボについては……うちの会社では,「まあ,このぐらいでいけるだろう」ってチューニングをするのですけど。
Michael Lin氏:
プレイヤーの皆さんのコンボ開発能力が高すぎるので,どうなるのかは正直分かりませんね(笑)。
(一同笑)
Mickey Lin氏:
あと,ルピナスのコマンド投げである八拾九型=戦虎(ベルセルク)はぜひ注目してほしいです。追加コマンドを特定のタイミングで入力すると,スペシャルフィニッシュになってダメージが向上しますので。
Michael Lin氏:
こういったタイミング入力技は好みが分かれるところですが,Ver.2.00の新しいプレイフィールとして用意した要素です。練習量が結果に結びつく部分ですし,なにより成功すると爽快なので,ぜひ試してみてほしいですね。
4Gamer:
分かりました。ではもう一方の新キャラクター・レイについてはどうでしょう。
Mickey Lin氏:
レイは3D格闘ゲームのような豊富な連係が特徴のテクニカルキャラクターです。必殺技の「まだまだいくぜぇ!」からの派生技を見てもらえれば,一目瞭然ですね。
Michael Lin氏:
レイにはカオスゲージのほかにスペシャルゲージがあって,「まだまだいくぜぇ!」からの派生を出すためには,このゲージが必要になるんです。ゲージが十分に溜まっていればものすごい連続技を作れますが,ゲージが溜まるまではディフェンシブに戦わなくてはならない。そこが面白いポイントですね。
4Gamer:
ああ,ゲージ管理がキモになるキャラクターなんですね。
Mickey Lin氏:
ええ,スペシャルゲージは時間経過や相手から攻撃を受けることで溜まるほか,スペシャルゲージを溜める必殺技もあります。なので,かなり特殊なキャラクターと言っていいでしょう。
Michael Lin氏:
「まだまだいくぜぇ!」からの派生技以外にも特殊な性能の技が多くて,例えばアルティメット・カオスの「よし、そろそろ時間だ」は発動時に暗転演出がない。その後スーパーアーマー状態で2秒ぐらい歩いてから殴りつけるんです。
Mickey Lin氏:
当たると半分ぐらい減ります。いわゆる初見殺しですね(笑)。
(一同笑)
4Gamer:
この技,なんだかとても既視感があるんですけど……。
Mickey Lin氏:
お気付きですか! レイのバトルコンセプトは,鉄拳シリーズを大いに参考にした部分がありまして,そのオマージュになっているんですよ。
4Gamer:
なるほど(笑)。かなりマニアックなキャラクターになっていそうですね。
Mickey Lin氏:
そうですね。レイはもともと,クティーラと同じタイミングで追加する予定のキャラクターだったんです。ですが,特殊なシステムを持った難しいキャラクターでもあるので,プレイヤーに受け入れられるかどうかが心配だった。そのときは完成度を高める時間もないということで,実装は見送ることになりました。
Michael Lin氏:
あの当時,僕はクティーラのバトルコンセプトを一心に考えていたので,レイにそこまで時間を割けなかったというのもあります。どちらも中途半端になるよりは,クティーラの完成度を高めたかった。
4Gamer:
クティーラはクトゥルー神話がモチーフになっていることもあってか,人気の高いキャラクターになりましたね。
Michael Lin氏:
ええ。一番人気かもしれません。クティーラとレイを同時に出していたら,レイのインパクトは薄れてしまっていただろうから,今思えばあのときは見送って正解でした。今回のレイは調整を重ねて面白いキャラクターに仕上がっていますので,格闘ゲーム好きの方はぜひ遊んでみてください。
Mickey Lin氏:
そうそう。レイのアルティメット・カオスに「一つ教えてやろう」という投げ技があるんですが,ロケテスト版では決めたときに「製品版をお楽しみに!」というボイスが流れていたと思います。製品版では,相手キャラクターごとに台詞が用意されているので……。
Michael Lin氏:
製品版をお楽しみに!
台湾のゲーム事情と,カオスコードのこれから
4Gamer:
せっかく台湾からお越しいただいたので,台湾のゲーム事情についてちょっとお聞きしても良いでしょうか。台湾での格闘ゲーム人気はどれくらないのでしょうか。
Mickey Lin氏:
うーん,格闘ゲーマーの数で言うと,あまり多くはありませんね。
Michael Lin氏:
いないわけではないのですが,ゲームセンターがほとんどないんです。だから日本ほど対戦レベルは高くないですね
とはいえ,台湾には数々の大会で好成績を残しているプロゲーマー,GamerBee選手がいますよね。
Mickey Lin氏:
そうですね,何人かの素晴らしいプレイヤーがいます。例えば「闘劇」に台湾代表として出場したTetsuは,今うちの会社でチューニングスタッフとして働いています。あと,香港のプレイヤーではありますが,HumanBomb選手は昔からの親友です。
Michael Lin氏:
それこそ,「ストリートファイターII X」時代からの付き合いで,「TOBAL 2」を始め,色々な格闘ゲームを一緒に遊びましたね。
4Gamer:
おお,そうなんですか! ゲームセンターはほとんどないとのことでしたが,まったくないわけではないんですか?
Mickey Lin氏:
あるにはありますが,オンラインサービスであるNESiCAxLiveやALL.Net P-ras MULTIが稼働していないので,新しい格闘ゲームが入ってこないんです。それこそ,「THE KING OF FIGHTERS 2002」が現役で人気が高いという状況です。
4Gamer:
ああ,オンラインサービスが利用できないのは厳しいですね。
Mickey Lin氏:
正確には,価格面で台湾のアーケード事情と折り合いがつかないというのが正しいかもしれません。台湾でのワンプレイ相場はおよそ10〜15台湾ドルなので,日本円にすると大体50円ぐらい。でもオンラインサービスは従量課金制なので……。
4Gamer:
物価の差が問題になってくるわけですね。
Mickey Lin氏:
格闘ゲームはそんな状況ですが,「グルーヴコースター」などでNESiCAカードを使ったサービスは台湾にも入って来ています。リズムゲームの場合は,プレイ料金がちょっと高くても皆納得するみたいなので。
Michael Lin氏:
しかしアーケードはともかく,家庭用ゲーム機では格闘ゲームはとても人気があります。一番人気は「ウルトラストリートファイターIV」ですが,7月に出た「UNDER NIGHT IN-BIRTH Exe:Late」も売り切れ店が続出でしたし。これから発売される「電撃文庫 FIGHTING CLIMAX」(以下,電撃FC)や「GUILTY GEAR Xrd -SIGN-」(PS4 / PS3)(以下,GGXrd)にも期待しています。
Mickey Lin氏:
台湾における格闘ゲームの主戦場は,家庭ゲーム機のネット対戦になっていますね。
4Gamer:
日本も徐々にそうなりつつある気もしますが,台湾ではよりその流れが顕著なんですね。FK Digitalさんご自身は,新しいゲームを作る予定はないのでしょうか。カオスコードではない,新しい格闘ゲームとか。
Michael Lin氏:
すっごく作りたい! カオスコードも最初はなるべく簡単に楽しめるゲームにしようと思って作ったんですが,今では連続技を覚えないと勝てないゲームになってしまいました。バランス調整をすることも考えましたが,コアなプレイヤーはきっとそれは望んでいないと思うんです。
Mickey Lin氏:
格闘ゲームは,どんどん複雑になってしまうものだけどね。
Michael Lin氏:
でも,最近はそうでもないじゃないですか。電撃FCとかは初心者にすごく配慮していて,連続技よりも立ち回りの部分で勝負が決まるようになっている。そのために,日本では若い格闘ゲーマーが増えたと聞いています。素晴らしい仕事です。
4Gamer:
おっしゃる通り,電撃FCはその辺りをとてもよく考えて作られたタイトルだと思います。
Michael Lin氏:
我々としても,そういった遊びやすいタイトルを作ってみたい。一方で,世に出るのが早すぎたタイトル――「武力 -BURIKI ONE-」「TOBAL 2」「エアガイツ」みたいな,まったく新しいプレイスキルが必要になるゲームも作ってみたいです。
Mickey Lin氏:
ただ,格闘ゲームを作るのにはとても時間がかかるんです。また最初からコミュニティを育てなければならないですし,今のところはカオスコードをメインに続けていくつもりです。カオスコードのキャラクターを使ったスピンオフ作品のアイデアもありますし,格闘ゲーム以外のものも手がけていきたいと思っています。
Michael Lin氏:
2年前のエイプリルフールに皆さんにお見せした,セリアのシューティングゲームはいつか作ってみたいよね(笑)。
4Gamer:
おお,期待したいと思います。では,格闘ゲーム以外でなら台湾ではどんなゲームが人気なんですか?
Mickey Lin氏:
ちょっと前まではPCゲーム,中でも「League of Legends」が大人気でした。
4Gamer:
ああ,Season 2の世界大会で優勝したTaipei Assassinsは,台湾のチームですよね。
Michael Lin氏:
ええ,そのときにものすごく人気が出たんです。ただ,最近はあまり成績が振るわないためか,一時期ほどの人気ではありません。あとはやはりスマホゲームが人気で,とくに若い人達はスマホのゲームをメインに遊んでいるようです。
4Gamer:
スマホではどんなタイトルが人気なんですか?
Mickey Lin氏:
「Tower of Saviors:神魔之塔」というゲームが大人気なんですが……。
Michael Lin氏:
これがもう,「パズル&ドラゴンズ」(以下,パズドラ)にそっくりで! もともと香港で制作されたゲームなんですけど,むしろ台湾で人気のようです。
4Gamer:
なるほど(苦笑)。本家のパズドラは台湾ではサービスしていないのですか?
Mickey Lin氏:
いや,パズドラのプレイヤーもたくさんいますよ。ただ,サービスインが遅かったんですね。だから,お互いのコミュニティはいつも喧嘩しています(笑)。
Michael Lin氏:
うちの社員はみんな日本の作品が好きなので,パズドラ派ばっかりですね(笑)。
4Gamer:
日本のゲームメディアとしては,嬉しい限りです。では,カオスコードの今後について聞かせてください。PS3用のアジア版は,2014年9月にアーケード版のVer.1.03相当となるアップデートがありましたが,日本はまだですよね。これは予定にないのでしょうか。
Mickey Lin氏:
日本のPS3版も,年内にはアップデートしたいと思っています。
4Gamer:
では,家庭用ゲーム機版も,ゆくゆくはVer.2.00にアップデートされるのでしょうか。
Mickey Lin氏:
もちろんそうしたいですが,どういった形でのアップデートになるかは,まだ検討中です。
4Gamer:
分かりました。では最後に日本のファンに向けたメッセージをお願いできますか。
Michael Lin氏:
最近はたくさんの格闘ゲームがリリースされていて,しかもそのどれもが面白いという素晴らしい状況だと思っています。タイトルの垣根を越えて,日本の皆さんがもっともっと格闘ゲームを遊んでくれればと思っています。
Mickey Lin氏:
電撃FCもGGXrdも,アーケードでの稼働が決まった「スカルガールズ アンコール」や「ヤタガラス Attack on Cataclysm」も,みんなカオスコードのライバルではありますが,一緒に格闘ゲームを盛り上げる仲間だと思っています。Ver.2.00も2014年11月末には稼働しますので,ぜひ応援してください!
Michael Lin氏:
いやあ,格闘ゲームをずっと遊んできた一人として,GGXrdのグラフィックスを見ると涙が出てくるんですよ。もう凄すぎて,格闘ゲームもここまで来たのか!って(笑)。
Mickey Lin氏:
日本の格闘ゲームクリエイターの皆さんに対しても,メッセージを贈らせてください。ストリートファイターIIの時代,格闘ゲームで初めて遊んだときの感動を僕らは忘れていません。その感動を,我々は今のプレイヤーに伝えたい。格闘ゲームの灯を,共に絶やさず広げて行けたらと思っています。
4Gamer:
本日はありがとうございました。
「カオスコード」公式ポータルサイト
AC版「カオスコード-ニューサインオブカタストロフィ-」公式サイト
FK Ditital公式サイト
- 関連タイトル:
カオスコード-ニューサインオブカタストロフィ-
- この記事のURL:
キーワード
(C)F K Digital